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作者: 水沢麻莉衣 (総ページ数: 27ページ)
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「なぁ、カイトさぁ、手術するんだってよ」
「ーーーーえ?」
ミドリはあたしに聞き返した。
あたしだって驚きなのだ。
手術嫌いだよ!なカイトなのに。手術こわいよ!やだ!みるのばか!なカイトなのに。
なんでまたいきなり?
あいつも大人になったんだなぁ。
て、大人だっつの。
「えと、なんで?いきなり?」
「明日香のためだろ」
あいつがなにか動くときなんて必ず、明日香の為だしな。
ふ、お父さんなわけでだな。
「そっかぁ。あのカイトが。でもさ、不謹慎だけど、もし治っちゃったら・・・、ダミーのカイトはおそらく・・・だよね?
治っちゃったらなんてほんと不謹慎だけど。
でも、ほんとダミーでも感情あるわけでしょ?すごく良い人だよ。ボク、話したことあるし。感情あるから、アイと結婚してるわけでしょ。
不謹慎だけど・・・素直には喜べないな、ボク」
そうだ。
あのダミーはカイトの変わりの切り札『院長』の役割があり、それの為だけに生きている。いや、生かされているのだ。
カイトのクローン。
性格は、しっかりものだがな。
つまりは、カイトが完治すれば、ダミーは消される。
役目を果たし終えた為、処分される。
これは絶対だ。
なにを誰が足掻こうと、処分される。
ルフェリ族なんてそんなものだ。
「そう言われれば、病院に働くマユとかは・・・素直には喜べないな。」
「マリーちゃんは喜ぶだろうけどさ」
「もういないがな」
「もー、そ〜ゆーこと、いわないの!ミルカちゃん!」
ふ。
仕方ない。
カイトの、妻、マリーは何年かまえ、事故で亡くなったのだ。
そのため、明日香を守るために、手術を決意したのだろう。
そうか。そうなのか、カイト。
あたしも、いつまでもあの時を引きづらないで、進まねばならない。
カイトのためにも。
いや、この隣にいる、ミドリのためにも。
あたしはこんな、日常を守るために、今日もこうして。
カイトだって同じくだ。
さぁ、あたしも進もうではないか。
ふとみた窓ガラス。
夕焼けが綺麗だった。
いつもとはすこし違う景色に見えた。