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*11*
第 3 章 ( 後編 )
恋わずらい
7月
あっという間に時は過ぎていった。
俺は毎日のように柊のもとへ行った。
少しでも長く、一分でも、一秒でもあいつと時間を共有したかった。
そう・・・
ただ、それだけだった。
タイムリミットは、あと1ヶ月
バカな俺は、柊の気持ちをこれっぽっちも考えていなかった。
「 凍夜さん、あと一か月ですね。」
「 ああ、お前とおさらばできるなんて嬉しいぜぇ。」
「 そうですか・・・」
素直になれない自分が、恨めしかった。
最近、柊はあまり笑わなくなった。
やはり、死ぬのが怖いのだろう。
時間がないのはわかってる。
でも、この気持ちを伝えるのが怖い。
伝える方法もわからないんだ・・・
「 凍夜さん、最後まで一緒にいてください。私はそれだけで満足です。
私は、凍夜さんのこと・・・」
「 おいっ! 菊一 柊、 しっかりしろ!」
その日、初めてあいつは俺の目の前で倒れた・・・
必死に握ったその力のない小さな手はもう、温かさを失っていた。
それから、あいつが目を覚ましたのは三日も後だった。
なぜ、俺は気づかなかったのだろうか・・・
衰弱しきった体、より白く染まった肌。
苦しさを紛らわしている作り笑い。
もう、前の彼女ではなかった。
残り27日。
あいつ、いや、柊は寝たきりとなった。
救いたい、助けたい、生きてほしい。
好きだと伝えたい。
そして、俺は・・・
禁忌を犯した
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