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第 3 章 ( 中編 )
恋わずらい
あいつの好きな音楽は何なのか。
好きな食べ物は? 趣味は?
好きな色は?
「 あっ・・・」
俺は今、あいつのことで頭がいっぱいだった。
「 早く明日が来ないかな・・・」
会いたくて会いたくて、時間が長く流れているかのように思えてしまう
「 ひい・・ら・ぎ。」
ボンッ 頭がもうパンクしそうで頬も熱い。
異様に喉も乾くし、真夏でもないのに暑い。
おかげでこの様だ。
「 ヤッホー! 元気ないね〜! 顔も気持ち悪・・・じゃなくて〜
可愛くて食べちゃいたいくらい赤く熟れて美味しそうだよ。」
「 氷魔、痛めつけるならもっと徹底的にだな・・・」
ゲッ 最悪、一番会いたくてしかたなくない。
大嫌いな先輩方のご登場でーす。
「 凍夜、わかりやすい表情をするな、そう威嚇するな。」
「 えーんえーん、氷魔兄ちゃん悲しー。」
「 棒読みでーす。とっとと消えてくださーい。」
いつものようにいじってくる・・・ しつこい。
だが今日はいいところに来た。
ずっと気になっていたこの気持ち。
先輩なら知っているかもしれない。
期待はしないが聞いてみる。
「 普段は役に立たない偉大な先輩方に聞くのですが。」
「 しょうがないな〜。 くそ生意気な可愛い後輩のためにきこうじゃな
いか〜。」
「 光魔兄ちゃん怖〜い。」
ムカッ
いいや、いかんいかん。
我慢だ。
「 ある人のことを考えると、頭がいっぱいいっぱいになって、
顔も熱くて、無性に会いたくなる、この気持ちはなんなんですか?」
『 えっ!? 』
二人が固まった。 俺は何かまずいことでも聞いたのだろうか・・・
「 ぷっ ぷぷっ ふふふ 」
「 それはだな〜 えっとね〜。」
氷魔先輩は笑うし、光魔先輩は何か気まずそうだ。
「 早く言ってください。」
じゃあ、言うぞと光魔先輩が小声で言う。
せ〜のまで聞こえた。
俺は期待と不安をちょっぴり含んで待った。
『 それは・・・ 恋と思われます。』
時間が止まった。 俺も止まった。
俺が・・・ 恋?
「 顔、洗ってきます・・・」
「 戻ったら、詳しくおしえてね〜」
うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!
「 あっという間にいなくなったな・・・」
「 光魔兄ちゃん、面白いことになりそうだね。」
「 そうだな。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バシャバシャッ
静かな空間に水の音だけが響く。
「 俺、死神なのに・・・」
でも、もう知ってしまったのだ。
温かい手のぬくもりも、幸せというものも、君という花の蜜の甘さも。
わかっているのに、明日が待ち遠しい。
しかし、現実はそう・・・
甘くはなかった。