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第 5 章
〜 先輩の背中 〜
「 はぁはぁっ・・・ひい・ら・・ぎ!」
俺は、ひたすら柊のもとへと向かった。
息も絶え絶え、がむしゃらに前だけを向いて。
残された時間は、あと・・・
時はおよそ一時間前にさかのぼる。
光の届かない、暗闇の牢獄に凍夜は閉じ込められていた。
右も左も、前か後ろかさえ、わからない暗黒の世界の中、
凍夜は柊の事だけを考え、外へ出ようと必死にもがいた。
「 俺は、なんて無力なんだ。俺の力では柊を救うことはできないの
か・・・」
「 くそっ ここから出せーーーーーーーーーーーーー!!」
ガンッ ゴッ ドコッ
鈍い音だけが響き渡る。
凍夜は、何度も何度も体を鉄格子に叩きつけた。
骨が折れようとも、肉が裂けようとも、血が吹きだそうとも。
「 柊、俺はもう、お前に会えないのか?」
しかし、無情にも扉は開くことはなく、意識も遠のいていく・・・
?「 ははっ 兄ちゃん俺達後でお説教くらうね〜」
?「 まあな、今回だけだ。」
声? 誰の・・・ もう誰でもいいから、ここから早く!!
「 あれれ〜? 凍夜ったら血だらけだよ〜? 氷魔兄ちゃん心配!
ニコニコ 、えへっ!」
「 氷魔、嬉しがってるじゃないか! まあ、俺もだけどな!
ニコニコ、 えへっ!」
先輩達、なんでここにいるんだ・・・
「 せん・・ぱ・・い・・・」
体を起こすのもやっとの凍夜は、声を絞り出して先輩達に言った。
「 おねが・・です・・・だ・して・・くだ・・」
ガシャンッ
「 餅の論っ! そのためにここへ来たんだからさ!」
「 氷魔、それを言うなら、もちろんだぞ。」
「 光魔兄ちゃん! 細かいよ!!」
凍夜は何が起きたのかわからなかった。
錠が、扉が、 開いたのである。
「 何で・・・」
「 だってさ、ここ最近のお前、すっごく輝いて見えたんだよ、
愛情を知らないお前が、まさか人間から教わるなんてね〜」
「 今行かなければ後悔するんだろうが! いつもの毒舌を吐くお前
じゃないと、いじめがいがないだろ?」
二人の言葉が、凍夜の支えとなり、凍夜の心を熱くする。
「 ありがとうございます!!」
『 さあっ! いけっ凍夜!!』
「 はいっ!」
二人に背中を押されて、凍夜はまた一歩成長した。
柊のもとまで、あとわずか・・・
「 柊! 後少し、俺に時間をくれ!」