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繰り返される永遠の物語〜魔法界編〜
作者: 夕月カレン  (総ページ数: 27ページ)
関連タグ: ファジー  王国 
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10~ 20~

*13*


「守りたい人がいたんだ」

カオルくんと音楽に二人で浸っていた時だった。
カオルくんは、そんな話をわたしに聞かせてくれた。

「僕が生きていた時の話。」

ーーーー僕が生きていた時の話?
カオルくんは生きているのに?前世?
でもあえて触れなかった。
ふれれば、遠く行ってしまう気がしたから。

「僕をずっと見てきてくれた人。彼女はいつも僕より10離れてた。僕さ、生きていた時は、6歳の頃から白血病で、病院にいたんだけど、その時も仕事抜けて来てくれて。母親は忙してくて来れなかったんだ。僕のお母さんみたいな人だった。一言で言えないくらい大切にしてくれた。愛情をそそいでくれた。彼女は僕が一時退院した時、学校に行くことになったんだけど・・・。上手く馴染めなくて。16歳だったんだ。調子が良くなかったりで行ったり行かなかったりしてた。
途中で早退する時も迎えに来てくれたんだ。その人はよくベッドで僕がふせってると、林檎を剥いてくれた。」

ーーーー林檎を・・・。
母さんは剥いてくれたこと、なかったな。

「その人は不思議な事を言うんだ。
林檎と梨を間違えるんだ。それもいつもの様に。僕が林檎を剥いてって言うと必ず彼女は梨を持ってくる。形が一緒だからか。
僕はそのたびにいつも、林檎はこっち、って言うんだ。
それから彼女は必ずどっちが林檎?って僕に聞くようになった。
でも彼女はそれ以外にも、信号の色が認識できない感じだった。
僕が23になってやっと気付いたことがあったんだ。
それまでは知らないことなんて無いと思ってた。けど、あった。
彼女は『色覚』で、色がわからないんだって。彼女は白と黒に見えるって。」

カオルくんはさみしそうな顔をする。

「それから彼女は僕に聞くんだ。
貴方のみている景色は何色に空がうつるの?ってーーー」

それを聞く度、悲しくなる、さみしくなる、とカオルくんは言った。
彼女に一目、僕のみていた景色を見て欲しかった、と。

「こんなこと、美嘉が初めて話したーーー
不思議なんだ。なぜか、話せる。いや、聞いて欲しいんだ。」

「うんーーー」

カオルくんはどこかこの世の者ではない気配がした。
そしてどこか不思議な空間で。
不思議な時間が流れるのだ。

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