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*11*
「舞には兄弟はいたりするの?」
一瞬にして静まり返った。心なしか、部屋の温度が下がった気がする。
今は6月であり、もうじっとしているだけで、汗が流れてくるくらいなのに、
私の全身に鳥肌が立っていた。
私の背中につ―っと冷たい汗が流れた。
私は、舞の顔を見ようとしたが舞はうつむいてしまっており、表情をかくにんすることはできなかった。
だが、舞の髪がかぜでなびき、一瞬だけ、ちらりと舞の顔がみえた。
「ま…舞…?」
舞の顔は怒りで歪んでいた。…ようにみえた。
すると、舞はいきなり顔を上げた。
舞の顔は笑っていた。
「はい、いますよ。双子の兄が…」
「…そ、うなんだ。こ、今度遊びにおいでよ。2人 で…さ…」
「…はい。じゃあ、お言葉にあまえて…明日なんてどうですか…?」
舞は笑っている。
「あ、うん。だいじょうぶ」
「じゃあ、また明日。今日はありがとうございました」
舞はペコリと軽く会釈すると、部屋から出て行った。
舞は部屋から出て行くまでずっと笑顔だった。
たしかに、笑っていた。
あれは、きっと見間違いなんだ。
舞の瞳だけが笑っていないなんて。
舞の瞳が狂気に満ちたような瞳だったなんて――……。
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