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*12*
どのくらい私はそこに突っ立っていたのだろう。
コンコンと誰かがドアをノックする音で気がついた。
「さえか、いるの?」
ノックの主は姉さんだった。
姉さんはすこし開けた扉の隙間から顔だけをひょっこりと出し、部屋の中を見渡した。そして、私の姿を確認すると、ホッとしたように、ふっと吐息を漏らした。
「さえか、いるなら返事をしてよ。何度よんでも、下へ下りてこないから、
いないのかと思ったわ」
姉さんはそういうと、どうしたの?と、わたしに問いかけた。なかなか
感がいい姉だ。
とても心配そうな顔だ。
「何でもないよ。何か用があった?」
姉さんに、よけいな心配をさせたくない。それに、アレはきっと私の見間違いだろう。
「夕飯の支度はしなくていいの?今日の当番はさえかよ?」
「あ」
しまった。今日は、私の番だったのか。すっかり忘れていた。
何を作ろうか。
「姉さん、今日はカレーでいい?」
簡単だし。
「えぇ。なんでもいいわ。じゃ、頑張ってね」
姉さんはそう言うと、下へ下りて行った。
…考え事してる場合じゃない…な。カレー作らなきゃだし。
私は椅子に掛けていたエプロンを手に取り、階下へ下りていった。
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