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*11*
シンリーは、眠りにつこうと自室に戻ってきた。片側には、荷物が全て片付けられたベッドがある。涙をこらえて、自分のベッドに横になる。
不意に、窓を叩く音が聞こえた。ここは一階だ。堂々と玄関から入ってきても差し支えは無いのにと思いつつ、シンリーはカーテンを開けた。外には、この間万博で出会った3人がいる。驚きながらも彼らに恩のあるシンリーは、窓を開けた。
「どうしたんですか……?」
シンリーは恐々尋ねる。
「シンリー、少し部屋の中に入れてくれるかな?」
「は……はい……」
窓を大きく開き、彼らを招き入れる。3人が部屋に入ってくると、その内の1人が鬼気迫った表情で話しかけてきた。
「シンリー、今すぐ身の回りのものを整えてほしい。僕たちと一緒に外へ逃げて欲しいんだ」
アイザックの声色は、小声ながらも凄みがあった。シンリーに恐怖心を与えてはいけないと思い、ノゾミが言葉を継ぐ。
「私たちは、この箱庭でドナーになるために生まれてきたの。ここにいれば殺されてしまう。だから、一緒に逃げて欲しいの」
「ドナー……?」
「誰かに心臓や骨をあげることだ。ドナーにされた方は死んじまう」
シンリーは、少し考えるそぶりを見せる。そして、頷いた。
「やっぱり……病気じゃなかったんだね……」
シンリーの予想外の言葉に、3人は顔を見合わせた。するとシンリーは、今は空になっているベッドを指差す。
「この部屋ね、前はもう1人住んでいたの。5日前に返ってきた健康診断で、病気にかかっていることが分かって死んじゃったけど……でもね、病院に行く前はすごく元気だったんだよ!だから、ずっと信じれなくて……」
堰を切ったようにシンリーは泣き出した。ノゾミはその体を抱きしめる。ふと、昔の自分を思い出した。同室だった彼女の死の真相を知ったのも、ちょうどこのくらいの年だった。
「ついて来てくれる?」
アイザックが優しく問いかけた。するとシンリーはもう一度頷く。涙をぬぐい、アイザックを正面から見上げた。
「よし、じゃあシンリーも身支度しようぜ!俺たちも手伝うから」
ダンは張り切って服の袖を捲り上げる。すると……
「その必要はないわ」
ノゾミがそれを制止した。