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第二の人々
作者: ももた  (総ページ数: 13ページ)
関連タグ: クローン 
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10~

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第4章:脱出

脱出の準備は、順調に進んでいた。当分の間の食料に着替え、貨物飛行機の運行予定、発信機の取り外しもめどが立っていた。そんなある日、アイザックが言った。
「ねえ、シンリーのことはどうしよう?」
その名を聞き、ダンとノゾミは作業をする手を止めた。
「もちろん、連れて行こうぜ!居場所だって分かっているんだし」
「そうね、反対する理由がないわ。でも問題は……」
「シンリーが脱出を拒否した場合……か」
十分に思慮分別のついている3人と違い、シンリーは6歳の少女だ。3人の言葉を受け入れてくれるかどうかは疑問である。
「アイザックはどうしたいの?」
考えあぐねているアイザックに、ノゾミが問いかけた。
「僕は……連れて行きたい!ここに残して死なせたくない!またシンリーが死んでしまうのは嫌だ……」
「なら、そう言えばいいんじゃない?」
ノゾミは優しく微笑んだ。ノゾミの言葉に背中を押されたのか、アイザックは力強く頷く。そしてまた3人は、脱出の準備を再開した。

***

アイザックは綺麗に整えられた自分のベッドを見つめる。今日、自分たちはこの箱庭を脱出する。
「終わったわよ、ダン」
「ありがとう、ノゾミ」
発信機を取り外したノゾミは、それを小瓶に放りいれた。
「なんに使うんだ、そんな物?」
「ちゃんと使い道があるのよ。さあ、出発しましょう」
ノゾミは自分の荷物を担ぎ、立ち上がった。そして3人は部屋を後にする。物心ついてからずっと世話になっていた住処を出て、もう一人の親友の元に歩み始めた。

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