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Stories of Andalsia 創世の絆
作者: 流沢藍蓮  (総ページ数: 5ページ)
関連タグ: ファンタジー 神話 Stories of Andalsia 神々 創世 
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*4*


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〈秘話 神々の律法〉



 オレは人間を愛する神だ。それをおかしいと他の神は言う。
 彼ら曰く、「一度創った世界に余計な手を加えようとするな」だそうだ。
 そんな法、知ったこっちゃないね。オレは常にそう返してきた。
 極夜司る闇夜の鴉、闇の体現者、異界の渡し守、彼方なる闇に住まう神。
そんな二つ名を持つオレは、縛られるのが大っ嫌いな性分だ
 そしてその態度が原因で、オレはその日、敵を作った。

 智神アルアーネはオレに問うた。

「何故、あなたはこうも人間を愛するのですか?」

 何だ、そんな質問か? 簡単なことだぜ。

「人間は、面白い。何度傷付いても立ち上がり、守りたいもの、自分の信念、そういったもののために短い命を燃やす。挫折する奴もいれば、決して折れない奴もいる。そして、一人一人、それぞれ違った個性を持っている――。オレはそれらを、面白いと、思う」

 私には理解できません、とアルアーネが言ったので、理解しなくて良い、とオレは答えた。

「人間がそれぞれ違うように、オレたち神もまた、一つとして同じ神はいない――わからなくて良いさ。これがオレの価値観だ」

 しかし、アルアーネは食い下がる。

「しかし、こうも頻繁に地上界を訪れられては、神々の法を破ることになりませんか?」

 法? それはあんたの思い込みであり、厳密にはそんなものなんてない。
 オレがそれを指摘してやると、アルアーネは怒り出した。

「――神々は人間に深く干渉しないと決めたはずですっ!」
「それは例外を許さないのか? というか、それを言いたいならオレじゃなくて他を当たれよ」

 たとえば、戦神ゼウデラとか、な――。

「はぐらかさないでください! あなたは下々の神とは違うっ! 少しはご自分の立場をお考えください。わたしは貴方だからこそ言うのです!」
「ならばあんたはオレに従え。わかっているだろうが、オレの方があんたより上位だ。あんたに逆らう権利があるとは思えないが?」

 オレは言いつつも背を向けた。言葉の無駄だ。話は終わった。
 アルアーネは唇をわなわなと震わせながらも、初めてオレの名を呼んだ。


「――闇神っ! ヴァイルハイネンっ!」


 何だ、と振り返らずにオレは返す。
 アルアーネは、叫んだ。

「覚えて――覚えておきなさいっ! あなたがいくら上位の神であろうと! わたしは智神アルアーネだ! いつしかあなたに、人間を愛したことを後悔させてやりますからっ!」
「言っていればいい」

 アルアーネの真っ青な顔が目に見えるようだ。オレはそのまま歩きだす。その背をアルアーネの声が追いかける。

「――どこへ行かれるのですかっ!」
「地上界。面白い奴を見つけたものでな」

 アルアーネがそれを聞き、また何やら叫んでいるが……。聞き流す。
 オレは闇神ヴァイルハイネン。極夜司る闇夜の鴉、風の体現者、異界の渡し守。人間を愛する「奇妙な」神だが、オレはオレの好きなように生きてやる。
 アルアーネ? ほざいてろ。あいつ程度にこのオレが止められるものか。
 次の「相棒」への期待を抱きながらも、地上界へと足を踏み出す。

  ★

 しかし、アルアーネは智神。馬鹿ではない。オレはもっと警戒しておくべきだったんだな。舐めてたぜ。
 未来、オレは奴にはめられ、瀕死の重傷を負ったところをゼクに助けられる。だけど、それは別の物語、いつかまた、別の時に話すことにするか。
 とにもかくにも。この日を境にオレとアルアーネは対立し、今後、繰り返し衝突することになる。

 その昔、こんな物語が、天界にあった。

                   (終わる)


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