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*14*
「ほらほら、どないでっか!?」不規則に乱暴に鎖を振り回すロックス。「うわっ!?」飛んでくる分銅をかわすのでやっとのメシアの生き残りと「くっ」やはりあの一撃が尾を引いているのか、脳髄からの指令を受け取った体が指令通りに動くのにこんま二秒遅れる。それが致命的たった。本来ならばかわすなど当たり前、三分もあればこんなロックス程度すぐにでも一片の欠片も残さず粉砕してくれるものだというのに……こんま二秒体の動きが遅れるだけでかわせるものがかわせず攻撃を受けてしまいそのだめーじが蓄積され疲労となる。悪循環だ。
メシアの生き残りも分銅をよけるだけで精一杯といったところか。青ざめた顔から大量の冷や汗が流れている。本調子ではない我と役立たずのメシアの生き残り、絶好調であり我らを甚振ることを楽しんでいる。気に食わない。あぁ胸くそ悪い吐きそうだ。このような塵屑に弄ばれるなど憤懣やる方ない思いとはこのことをいうのだろうな。「スキありやっ!」大幅な体力を消耗し、疲れ切った我らを見て勝機を感じたのだろう。ロックスは右腕を大きく振り上げ鎖で繋がられた分銅も大きく飛び上がり「「…あれっ?」」絡まった。天井を覆いつくすようにいくつも配管された鉄ぱいぷに上手い事くるくると絡みほどけなくなったようだ。「ちょっ、ちょっと待ってな…今取るさかいに」ロックス両手で力いっぱい鎖を引っ張り鉄ぱいぷごと絡まった鎖を解こうと悪戦苦闘しているようだが、複雑に絡み合ったそれはもうそう簡単には解けない。
溜息が出るほどに阿呆な男だ。そっと静かにロックスも背後に立ち「え…? ムラクモちゃんそれはないわ〜。さすがに…卑怯やで? な? な?」とうぃんくをしてくるロックスに苛立ちを感じ「…待つわけないだろっ!!」鉈で奴の背を真っ二つに切り裂いた。「ムギャーー!!!」と響き渡るロックスの断末魔。あぁ――なんて耳障りな声なんだ。
「む、叢ちゃん……」まだ息が合ったか本当に黒光りする虫並みの生命力と気持ち悪さを持った男だな。蔑む視線を足元にすがり這いつくばる死にぞこないの屍に向ける。
「な、なぁ……このままじゃアカン」
「……なにがだ」
こんな死にぞこないの屍の話など聞いてやる必要性もなにもないのだが、なぜかその時我は止めを刺せなかった。話を聞いてやることにしたのだ。どうゆう風の吹き回しなのか自分でも分からなかった。只なんとなく、まだこやつの話を聞いていたかったのだ。
「ドルファフィーリング……はな……バーナード……は……叢ちゃんが思っとる……ような凄い男やない」
なにを―なにを言っているのだ、この屍は。我らの王。バーナード様を愚弄する言葉を吐くなどっ。槍を振り上げる。狙いは死にぞこないの屍の頭上。「――思い出すんや! 自分が何者だったのかを」ぐちゃり。元同僚だった男の最期はぐちゃり。頭部を槍で串刺しにされ悲鳴も断末魔も上げる間もなく一瞬の死。痛みも苦しみもない死。―即死。
ぐちゃり。ぐちゃり。ぐちゃり。なんども奴の体に槍を突き刺した。最初の一撃で死んでいたことは知っている。手ごたえがあったから、妄言しか吐かぬ口がやっと閉じたから、いやらしいものを見る瞳から生の光が消えたから――もうこと切れているのはわかっていた。それでも我は槍を突き刺し続けた。骨が砕け肉が途切れない贓物が破裂する。生臭い匂い。鉄の臭い。嫌な音。我の中に眠る黒き獣がドラゴンネレイドとしての本能が満足するまでこの無意味な虐殺は続けられた。椿の牢獄看守長ロックスと呼ばれた男が只の肉塊となるまで続けられた。
我は叢。この世界を支配する王 バーナード様の手駒 紅き鎧の騎士と呼ばれる者。それ以外の何物でもない。
-fan-