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*8*
「殺?」
「ああ゛」
「エフォールがナニカを気にするなんて珍しい」
…確かに。いや一緒になって納得している場合ではないっ。
この場に居る誰よりも勘が鋭いエフォールのことだ。我が脱線しているのを見抜いているのだろう。
自分自身でも何を考えているのかよく分からん。仕事に支障をきたすのはよくないと、人に言える立場でないのは我の方であったか。
軽く首を振り頭の中を整理する。
我の仕事はなんだ? 目の前に横たわるメシアの生き残りが逃げないように見張る事。
王にあだなす若葉なら早急に摘み取らねばならぬ。気持ち? 意思など我には存在せぬ。我は叢。
―般若の面をつけた紅き鎧の騎士、叢なのだから。
「…ふぅ」
「殺殺殺殺」
礼を言うぞ、エフォール。貴様のおかげて整理がついた。これでもう大丈夫だ。
三人に顔を向け解散するときに言ういつもの台詞をはく。
「休憩は終わりだ。王の為にその身を粉にして働け」
舌打ちし睨み付け不機嫌極まりないザンクを見てさらに不機嫌そうな顔をするユウとエフォール。
我らの仲は最悪。仲良しこよしなどありえない。だが、戦場の上では背中を任せられる心強き見方だと我は思う。やつらはそうは思っていないようだが…な。
「これで…この部屋にはいる者は……」
我と横たわるメシアの生き残りだけ。
自然と視線は下に向く。
「スー」
何度見ても、見惚れてしまいそうな美しく綺麗な寝顔だ。
「………ッ我は何をしているのだ!?
自分でもはっとする。
気づけばルシアの……いや、メシアの生き残りの頬に手を添えていたのだ。
「……」
よかった…まだ寝ている。起きてはいないようだ。
もし起きていて我の姿を見られていたら……考えただけで不快な気持ちになる。
敵相手に変な感情を起こすなど、何を考えているのだ……やはり変な病気にかかってしまったのだろうか……頭痛がするようだ。
「少し外に出て新鮮な空気でも吸うとするか」
重く痛い頭を抱え、頑丈そうに見えるが経費の都合で張りぼてで作られたドアを開らき、新鮮な空気を求めて部屋の外に出て行った。
―この時、我は知らなかった。まさか、メシアの生き残りがもう目覚めていて我らの会話を盗み聞きしていたとは。