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episode2「パイラタウン」パート2
「グギャハハハハハハ!いいぞムウマージ、お前がその姿になるお陰で俺様はここで威張っていられるのさ!さあ、お前の力を見せてやれ!」
セニョが叫ぶとムウマージはギロりと彼を睨んで来た。
「な、お、おい、どうしたってんだ・・・?」
自分を睨んできた手持ちに背筋が凍る。まるで自分よりも力が下の相手に命令されるのを嫌うような目をしていたからだ。
「おい、睨んでないで早くそいつらをやっちまえよ!主人の俺様の命令が聞けないのか、おい!」
ムウマージは目を見開いて音波を飛ばした。
「ぐ、ぐああああああ!痛え、頭が痛え!!!」
音波はセニョの脳内に届いて頭痛の作用を起こさせた。そして念力で彼を宙に上げて建物に叩き付ける。
「ぐぎょお?!」
叩き付けられて落下すると、シャドーボールが飛んで吹っ飛ばされる。すっかり腰砕けになり、もう一体のパートナーのエネコもすっかり怯えていた。
「うわ、うわ、うわ、うわああああああああ!!!」
気味悪い笑い方をする小物は一目散に逃げていった。パートナーであるエネコも置き去りにである。ムウマージがエネコに視線をやるとエネコは恐怖で体を震わせていた。主人を探そうにも既に跡形もなく逃げ去っていた。
「ムウマージ・・・!!!」
マジカルリーフが飛んでエネコに襲いかかる。
「ヌーンさん、あの子を助けて!」
「任せて、エーフィ!」
ヌーンの指示でエーフィはひかりのかべを張ってマジカルリーフからエネコを守った。すぐにヌーンがエネコを抱えてムンに渡す。
「エーフィ、ブラッキー、ムウマを助けるぞ!」
エーフィとブラッキーがサイケこうせんとあくのはどうを飛ばしたが、ムウマージはマジカルフレイムを旋回させてシールド代わりにしてこれを防いでしまう。そしてうらみをして二体の動きを封じると、何かを念じ始めた。
すると、地面が紫色に変色して無数の触手が伸び出てエーフィとブラッキーを巻き付けて負の念を流して苦しませてきた。
「ムウマージ!」
ムウマージが無数のシャドーボールを飛ばして攻撃し、エーフィとブラッキーを吹っ飛ばした。そしてのろいに使う剣を二本召喚させてそれを飛ばしてきた。
「フィ、グググ!」
「ブラ!!!」
剣は二体に刺さって大ダメージを与えた。ブラッキーは何とか持ちこたえたがエーフィは力尽きてしまう。
「エーフィ・・・」
「ヌーンさん、頑張って!」
「エニャーっ!」
ムンと助けてもらったエネコが応援する。ヌーンはボールを手に取って次のポケモンを出した。
「行け、マクノシタ!」
ボールからマクノシタが出て来てムウマージを睨んだ。
「頑張って、マクノシタ!」
ムンが声をかけるとマクノシタは振り向いて笑顔をする。ムウマージが特大のシャドーボールを飛ばして来た。
「マクノシタ、掴め!」
マクノシタはそのボールを掴むとスイングをして投げ返した。ムウマージは一回転してこれを弾き返した。マクノシタはパンチをして弾き飛ばした。しばしの跳ね返しが続いて、マクノシタのパンチがボールを豪速球に変えて飛ばし、ムウマージは直撃してダメージを受けた。
「ムウマージ!!!」
シャドーボールを再び飛ばしてくる、マクノシタは再びパンチで飛ばそうとしたが、ムウマージはのろいをかけてマクノシタの動きを封じてしまう。
「マクノシタ!ブラッキー、ムウマージを!」
ヌーンの指示でブラッキーが攻撃に出ようとしたが、ムウマージに動きを封じられマクノシタと共にシャドーボールを直撃して吹っ飛ばされてしまう。
「ブラッキー、マクノシタ!う、これは・・・!」
ヌーンは自分の体が動かなくなっているのを感じた。そう、ムウマージが念力をして硬直させてしまったのだ。
「ヌーンさん!きゃああ!」
さしおさえの鎖が飛んでムンとエネコを巻きつけた。マクノシタが体を起こすと彼女の姿が目に映った。
「きゃああ、やめて、やめて、苦しいよ、ほどいてよ・・・」
鎖に巻かれて泣いているムンの姿を見てマクノシタはムウマージにやめろと叫び声を上げるがムウマージはサイコキネシスをしてマクノシタを吹っ飛ばした。
「マ、マク・・・!」
傷だらけになって体を起こすマクノシタ。その目は大切な人を傷付ける相手への憎悪に燃えていた。握り拳を作り、けたたましい声を上げると、マクノシタの体から邪悪なオーラが浮かびだした。
「ゴオオオオオオオオオ!!!」
怒りが頂点に達して黒雲がマクノシタを包んでその姿を変えた。
「マクノシタ!」
ヌーンとムンが見るとマクノシタの姿は変わっていた。恰幅のある体は大きくなっていて、両手は押し出しやつっぱりが出来るように大きく肥大していて下半身も抑えが聞くようにがっしりとしていた。進化系であるハリテヤマにその姿を変えたのだ。
「まさか、これもダークポケモンの力なのか?」
赤いオーラを光らせてハリテヤマが走り出した。そしてムウマージを掴むと、イズナ落としをして地面に叩き付ける。
「きゃ?!」
ここでヌーンとムンの拘束が解かれるがハリテヤマの暴走は止まらなかった。ムウマージを押さえつけて、平たい手で拳を作って殴打していく。かくとうタイプの技ははゴーストタイプに通用しないはずだがハイパー状態の作用で関係なしに攻撃が当たるようになってしまったのだろう。
頭を掴んで気を流してダメージを与えると、再び地面に叩き付ける。近くに岩があるのを見つけるとそれを持って鈍器にしてムウマージを叩いていく。
「ムウ、ムウ、ムマ・・・?!」
ムウマージはすっかり怯えてしまい、命乞いをするがハリテヤマの暴走は止まらず襲いかかろうとする。
「やめてーーーーーっ!!!」
ムンが走ってムウマージを守るように手を広げてマクノシタの前に立った。
「私が苦しんでいたからこんなことをしたんでしょう、でも、憎いからって暴力で痛めつけちゃダメよ!だからお願い、元に戻って!」
しかし、ハリテヤマはつっぱりをしてムンを吹っ飛ばした。
「ムン!くそ!」
「待って、お願い、私に説得させて・・・」
ヌーンを押しとどめるとムンはハリテヤマに視線を合わせて必死に説得する。
「お願い、私達は貴方を傷付けたくない、貴方は優しい子よ。貴方はこんなことに屈したりはしないわ。だから、優しさを取り戻して・・・・」
涙を流して両手を広げ、相手を受け入れる仕草をするムン、その姿にハリテヤマの目から涙が溢れ出した。力が抜けたように両手をだらけ、起立の姿勢になると光に包まれて小さくなっていき、マクノシタの姿に戻っていた。
「マ、マク・・・?」
元に戻ったマクノシタをムンは優しく抱き締めた。マクノシタも涙を流して泣きじゃくり、ムンの胸元に顔を埋める・・・。
続く・・・。