完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

君はかわいい女の子
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 12ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~

*3*

 episode1【かわいい女の子って何?】

  恋なんて、男子なんて――。
春、桜も散り残ったそんな下旬。
廊下を歩いていると、男子が廊下に道を開けてくれる。
「虎だ!!道を開けろー!!!」
他の男子は青ざめた顔でザっと素早く開ける。女子は憧れの眼差しを向ける。
 あ、『虎』って?虎というのはあたしの名前でもなく苗字でもない。
ただの男子内でのあ・だ・な。

 なんで、こんなあだなになったかというとそれは――入学式になる。
女の子が上級生5,6人に絡まれていて困ってるのを皆、上級生だからって見て見ぬふりをしていた。
それを見たあたしは当然、助けに行った。
5,6人を投げ飛ばして女の子を助けた。
それを見た男子からは『虎。』虎=女らしくない怪物暴力女。
一方女子からは『王子様。』と呼ばれるように――。
ということになって、女子が困ってたら、助ける。それが今のあたしのモットー。

 「やぁだ。翔君、かっこい~。」
甘ったるくすごく、声が高い声が聞こえてきた。
 ?
何だろうと見ると—―そこには学校のアイドルこと藤咲さんと数名の男子。
「華音ちゃん、ちょーかわいい。虎とは違うよな。」
「あいつはただの獣だろ?華音ちゃんとは比べ物にもならねぇよ!」
やぁだ~怒られちゃう~ときゃきゃっ騒ぐ声が聞こえる。
 いや、あたしだって人間だし女だし……。
そもそもかわいい女の子って何?誰が決めるの?男子?大人?解らない……。
あたしは、ぎしぎしと唇を噛みながら廊下に提出物を届ける。

 さてと……この後は生徒会の集まりに部活に、自分で言うけど毎日大変だな。
生徒会室に行こうと階段を上ったり、下ったりしていると
穏やかなオルゴールの曲が聞こえてきた。
 この曲――すごい、落ち着く。
屋上……たしか、生徒は入れないよね。先生がいるのかな?
 キィ……。
ドアを恐るおそる開けてみるとそこには――。
「……はぁ、猫になりたい。」
生徒会長の瀬名 天がいた。瀬名 天とはゆるい考えの持ち主で新入生の挨拶で
ちゃんと挨拶をしないで笑いの場にしてた張本人!
しかも、生徒会長のくせに集まりにも出ないで授業にも出ないサボり魔!!
 生徒は立ち入り禁止なのになんで、ここに…。
生徒会長は気づいて真顔で言う。
「あ、のんちゃん。ここ、立ち入り禁止だけど?」
それと、あたしの事を愛称で呼ぶ。………のんちゃん。
あたしが怒りで震え、堪える為に立ち去ろうとすると呼び止める。
「待って、ストップ。のんちゃん、隣座っていいよ。」
 は?
 あたし、何してんだろ。
たった今、生徒会長であってこの上なくゆるい考えの人の隣で座ってる。
 はぁ何言われんだろ…。ってか、部活と集まり。サボってしまった…。
帰りたいと思い、会長に話しかける。
「あの、会長。サボりの時間を邪魔されてお怒りになのはすみません。ですがお怒りは次の機会に受け止めますので部活に行っても良いでしょうかっ!?」
 あたしは、丁寧に会長に言う。
会長はキョトンとあたしを見つめる。
 これは、状況が把握出来てないな……。あーもうっ!!めんどくさいなぁ!!
「……そんな怒ってないし。それに俺ものんちゃんも悪いことした、同罪ね。」
首を傾げあたしに笑いかける。
「じゃあっ!!」
「なんとなく、のんちゃん。寂しそうで悩んでそうだったから。」
適当とかなんとなくとかよく会長のゆるい考えだけど言ってる事は合っていて説得力もある。
 この人と話してると本当に調子狂う……。
「で、何悩んでたの。のんちゃんは?」
 弱み、話したくない。
「じゃあ、当ててみよっか。俺が当てたら話してね。」
いいですよと笑顔で答えるとあたしは心の奥底で思う。
そんな簡単に当てられないし……。ふふと心の中で笑う。
「んー、じゃあ男子絡みでの虎だとかの事かな?」
 は!?
「な……ん……れ!!」訳;なんでそれを!!
会長はにいっと笑い言う。
「あ、当たちゃった?なんでってなんか、いつものんちゃんの事見ててさ。そう呼ばれてた時に悲しそうな表情だったから、それから。」
 あたしの事、気にかけてくれた?この会長が?
「まぁ、相談してみて。俺の事、どんどん使えば?いつも、俺ものんちゃんに迷惑かけてるしギブ&テイクでしょ。」
 ギブ&テイク……。
「……あたし、女子は男子のサポートをし男子は女子を護るっていう考え方に納得いかないんです。女子でも女子を護りたいし男子の事も護りたい……!!でも、あたしの考え、間違ってるんですかね……!」
 会長はじぃとあたしの事を見つめ、黙って話を聞いている。
「そんな、あたしも女だし虎じゃないし、可愛い物も勿論、好きだしっ……なんか胸が痛くなちゃって。」
会長はあたしの頭をそっと撫でる。
「こんなあたしでも幼なじみがいてあたしの考えを受け入れてくれて甘えちゃってて二人が付き合うって事になって二人の邪魔したくないなぁ……ってだからひとり立ちを決めて多様性を大切にする自由な校風のこの高校に入学したんです。」
 二人の幸せそうな見たことない顔になっているのが嬉しくて。
「勿論、二人は引き留めてくれて心配してくれて。だから、あたしこの考えを持つ事やめたくないけど。」
ふーんと言いあたしの顔を見つめて言う。
「男子の言葉、真に受けすぎ。のんちゃんはちゃんとしたかわいい女の子だよ。」
 !あたしが……?
会長は、笑顔で続けて言う。
「その考え、俺も良いと思う。誰が誰を護るとかどうでもいいじゃん、法律でも決まってないし。誰が決めるの、そんなこと。」
 認められた……?私の思い、考え通じた?
ポンポンを頭を撫でる。大丈夫、大丈夫と繰り返しながら……。
 ヤバい、泣きそう……。
「天っ!!」
文月くんが突然入ってきて会長の名前を呼ぶ。
「ったくまたこんなとこに居たのか生徒会の奴らが副会長も会長も居なくて話が進まないって言っているぞ。副会長はどこ行ったんだが……。」
 え、あたしっ??
そう言うと文月君はびっくりした顔になる。
「なっ……!!副会長!!?二人で何して……!」
 知られたくない――あたしが弱音言ったこと。
会長はあたしを見てから言う。
「……業務連絡、話してた。」
 解ってくれた?あたしが嫌だって思ってる事……。
文月君は解らないといった顔で会長にデコピンをする。
「はぁ?取りあえず、いつも副会長に、任せてるんだからお前が今日、会議出ろよ。」
「えー、会議?俺、嫌いなんだよね……あのピリピリした感じ。」
「ん、行くぞ。あ、副会長は先帰ってていいよ。いつも、ごめんねこいつが。」
会長は文月君に引きずられて会議に出たくないから言い訳をしている。
その言い訳は文月君には利かないらしく軽くあしらわれていた。
 なんか、面白いな。あの二人のやり取り。
会長はあたしの方に振り向き口パクで言う。
『俺に頼ること、これ課題ね。』
か、課題っ?!明日も来ていいの?
……頼るってなんか久しぶりにしたかもしれない。しかも相手はあの会長に。






2 < 3 > 4