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君はかわいい女の子
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 12ページ)
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10~

*4*

episode2【あたしの居場所。】


 8:00 5車両目――。
「あぁ、春岡高校の虎だ-!!」
女の子を公共の場――駅でナンパしていたので足を引っかけてみたらこのありさま。
「た、助けて下さ、い……。」
ガタガタ震えてその集団は跪く。
 だから、虎じゃないし……。あぁ、イライラすんなぁ。
「はぁ??」
あたしがつい心の中の声を出してしまったことに、
びっくりして口を塞ぐと後ろから抱き寄せられた。
 ――だ、誰っ!!!
「望。どしたの、こいつら、お前に何した?言ってこ○すから。」
そこに居たのは親愛すべきあたしの兄だった。
ってか教師なのにそんな事言っていいの?と思い
にっこりしている、だけど殺気に満ちた兄の顔をあたしは見つめる。
「晴家先生!!」
ナンパされていた女の子が叫ぶとギョッとしてまた、ガタガタする。
「先生?!ど、どうもすみませんでしたっっ!!」
 あーあ、怖がらした上に逃げられちゃった……。まぁいっか、ナンパっていう悪いことしたし。
そう思って安堵しているとお兄ちゃんがにいっと笑う。
「なんか、一段落したな。怪我してないよな?」
うんと返すとお兄ちゃんはぎゅう~とあたしを抱きしめる。
「良かった、女の子なんだから体大事にしろよ。」
そう言うと頭を撫で学校の方に帰っていった。
 女の子か……。

屋上―。
 なんか、自然と足がこちらに向いてしまった……。
ドアノブと掴みドアを引くと、
 キィ……。
会長がこちらに気づき手を振る。
「今日、駅で女の子助けたんだって?」
 なんでそれを……!!
あたしがパクパクして驚いてると新聞みたいなものをくれた。
「校内新聞に晴家 望の武勇伝がまた一つ増えたって書いてあるでしょ。」
 ほ、ほんとだ……!!
キッチリ会長と言っていることが見出しになっている。
「すごいね、俺びっくりした。昨日あんなに落ち込んでたのんちゃんが女の子助けてんだもん。」
 偉いねと頭を撫でる。
「はい、ご褒美。」
とチョコレートを差し出してくる。
 !!こんな物、受け取れない!!
「ありがたいですが頂けません!?もらう資格なんかありませんし私は……。」
「いや、何の資格??」
会長は、不思議そうにあたしを見る。
「あたし、女の子だって男子も女子も護るだなんて力説しておいて虎だとか言われて落ち込んでたし、会長の課題を終わらせてないし……。そもそもあたしなんてもらう資格0なので。」
 ますます会長の顔が訳を解らなそうに強張っていく。
「は?」
「……実はそのあとはお兄ちゃんが登場しそのナンパしていた男たちが逃げていってあたしだけだったら追い返せなくてですね。もはやお兄ちゃんの手柄であってあたしの手柄ではないし……!!」
 あたしは初めてその時の本音を会長に伝えることができた。
「……しかも初めて怖かった。自分がどう言われるか他校の生徒でもあたしの事を噂で聞いているって言われた事があるので物凄く足が震えてしまって。だから、ご褒美なんてもらえません。情けないあたしには分不相応です。」
 そんなあたしの事を会長はじぃっと見つめる。
「…本当に真面目っていうか考えすぎっていうかもはや面倒くさいよね、意外にのんちゃんって。」
 面倒くさ……い!!
い、痛い。心が痛いっ!!ジンジンと痛くなった胸を抑える。
「女の子なんだから怖いに決まってんじゃん。それをのんちゃんは出来た、十分偉いでしょ。」
と、いいあたしの口にチョコレートを押し込む。
「もっとさ肩の力、抜いたら?お兄ちゃんのおかげだっていうけどさお兄ちゃんを呼び寄せたのは、のんちゃんがその女の子を助けていたからでしょ?のんちゃんは人の為に誰かを護る為に十分、ひとりで努力してんじゃん。」
 この人の言葉を聞くたびに温かくなる。
「今日、全部上手くできなくても一歩踏み出せた。だったらそんな考えすぎずにさ、もう少し気楽にいけばいいんじゃない?」
 気楽にいく……。
初めてだ、今までの中でいつも焦って、考えて一人で落ち込んで……その繰り返しだった。気楽にいくだなんて考えたこともなかった。
 会長は寝転がってあたしの顔を見ながら言う。
「んで、落ち込んだ時はここにきてさ。のんびり日向に当たりながら雲を眺めながらお菓子でも食べたらいいんじゃない。」
 
 そっか……入学式に流れてたあの緊張感だなんて吹き飛ばして皆、笑ってた。

「会長、今までごめんなさい。会長の事、勘違いしていました。会長のゆるくてテキトーな考えは生徒に対する思いやりの塊だったんだですねっ!」

「――は?いやっ……。」
「あたし、もっと頑張ります。会長みたいな一生懸命にテキトーに。」
 あたしは、会長を見つめて言うと会長は笑い出す。
「そういうところが真面目過ぎるんだよ。」
会長はにかっと笑う。
 あ、目……とろんとしててかわいいな。

全然、理解出来なかった。会長の言葉、考え。
逆に嫌だと思ってた事が今、魔法のように心を軽くする。













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