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君はかわいい女の子
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 12ページ)
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10~

*9*

episode6【デート。】

「―――……こ、ここはッ!!」
湖だった。周りにはカヌーを楽しむカップルで賑わっていた。
「えーと、なんで私と会長がここへ??」
心の中にできた疑問を口にすると会長は黙り込み顎に手を当てる。
「うーん、気分?」
気分であたしを誘ってくれたの!?
会長の気まぐれ、最高っ。
心を躍らせながら幸せそうなカップル達を見つめていると
会長は突然、手を握ってくる。
「!?」
私は握られた手をまじまじと口を開け会長の顔をガン見していると、
「一緒に乗る?」
と、会長は微笑む。

****

乗ってしまった…………!!
目の前に会長が居る、そして周りにはカップル!!
あたしと会長ってどういう風に見られているのかな?
もしかしたら……恋人とか思われてたら恥ずかしいな。
「…………。」
妄想をして一人でときめいたり、騒いだりしていたら会長に名前を呼ばれる。
「のーんちゃん。」
その声であたしは現実世界に引き戻された。
――――何も喋らずに終わってしまった。
「楽しかった?」
と聞かれ、何も言えないでいると、
「楽しくなかった………か。こういうので悠翔さんといれば、きっとのんちゃんでも楽しめるんだろうな…………。」
最後の方が聞こえなかったけど、がっかりしちゃってる?
罪悪感であたしは押し潰されそうになった。
あたしのせいで会長は楽しめなかった。
「飲み物でも買ってきますね。」
と言って走り去ろうとしたその時。
あたしの足は見事に木の根っこに引っ掛かり体は宙を舞ってしまった。
顔面から転ぶッと思い、目を瞑ると暖かい温もりが手に感じた。
「!」
目を開くと会長に抱きしめられていた。
頭が真っ白になった。
「のんちゃんは危なっかしいな。俺が買ってくるよ。」
スクッと立ち上がった会長は走り去ってしまう。

****

「ねえ、今のかっこいい人だれ?」
「モデルかなぁ?」
「あそこに座ってる女って彼女?」
「なわけないでしょ、妹じゃない?」
後ろに座っていた女の子達の囁きがあたしの胸を突き刺した。
あーあ、彼女なんかに見られないんだ…………。
自動販売機で飲み物を買っている会長を見つめる。
背が高くて、カッコよくて、自由奔放で、気遣いが出来て、優しくて。
あたしは……えっと、、、何もない。
釣り合う相手じゃないってことぐらいは知ってるけど。
でも。
でも、好きなんだ。
と改めて自分の気持ちを整理していると、スマホが鳴る。
LINEにはメッセージが十件あった。
誰からだろう??
恐る恐る開いてみると、はるちゃんからだった。
内容は、
『今、どこに居る?仕事終わったから、飯でも食いに行こ。』
とか。
『本当にどこに居る?家にもいないし、既読つかないし、心配になるから。』
はるちゃんの焦った顔が思い浮かんだ。
小さい頃から、あたしが居なくなるとすぐに心配して焦るんだから。
クスリと笑ってしまう。
「…………悠翔さんから?」
突然言われたことに対して、
「そうみたいです、あたしが居なくなったって心配して…………。」
と声の主の顔を見たら会長だった。
不機嫌そうな顔だった。
永い沈黙の末、会長はようやく口を開く。
「のんちゃん、あのさ俺と…………。」
その時だった。
あたしのスマホが鳴る。
電源をつけてみると、はるちゃんからの電話だった。
思わず、声を上げてしまいそうになった。
だって、はるちゃんの事で会長は不機嫌になってるのに!(多分。)
「えっと…………。」
あたしの反応を見て、会長の眉が寄る。
何かあったのかもしれない。
だって、LINEだけでもどこに居るんだなんて聞けるし。
苦渋の判断の末、私は通話ボタンを押す。
「はるちゃん。何かあったの?」
『望!!良かった、無事で――――今、どこに居るんだ?葵ちゃんは知らないと言っているけど迎えに行くよ。』
「あのね、今…………。」
居場所を伝えようとすると、会長はあたしの手からスマホを取って遮るように言う。
「電話代わりました、瀬名 天です。俺がちゃんと送るんで迎えは必要ないですよ、以上。」
そのあとから、はるちゃんの怒号が聞こえるが会長はお構いなしに電話を切った。

会長の表情は酷く怒っているようだった。
その顔に戸惑って、
「あの……会長…あたし…。」
謝ろうとした瞬間、手首を掬い取られる。
「ちょっと来て。」
連れていかれたところは人気の少ないところだった。
「あの―――……ごめんなさ…。」
「俺といるときだけでも他の男なんか見ないで俺だけを見てろよ。」
乱暴なその口調にあたしは目を丸くする。
俯いたまま、会長はあたしの方に顔を伏せる。
「会長。」
そう呼び掛けたら、腰に手をやり、あたしを強く抱きしめた。
あたしは恥ずかしさでどうにかなりそうになった。
身体は火照って、汗が出てきて。
噴き出しそうになった。

「俺の方が“望”の事、想ってる。なのにどうして―――……俺の方を見ないでどっか行こうとすんだよ。あんな男のどこがいいんだよ、俺ばっか嫉妬して、好きになっておかしくなりそうだ。」

会長はどうしたんだろう?
あたしの事を想ってるって…………えぇぇええ!!!
あたしは倒れそうになった。
会長はあたしの事が好きなの?
これって…………両想いってこと?

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