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作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (総ページ数: 12ページ)
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episode5【夏休み。】
夏休みに入って三日目、あたしは、はぁ……、とため息をつく。
与えられた宿題も一日に勢いで終わらせてしまい、やることがない。
目の前にはさっきまで黙々と宿題を解いていた葵も携帯を至近距離で真剣に見つめている。
出来れば三日前に、というか一か月前に戻りたい。
会長に会いたい、だなんて欲張りすぎる。
つい最近LINEも交換したばかりなのに。
私は携帯を開き会長とのLINEを見る。
“のんちゃん、夏休み楽しんでね。”
メールでも打とうかな。
会長に会いた__、、
……こんなことを書くのはやめよう。
会長だって忙しいし宿題だって、もしかしたら学校に居て今も業務をしているかもだし……。
欲張りは駄目。我慢、我慢……。
応援のメッセージくらいは送ってもいいよね……?
会長、どこにいますか?会い__、、
「わっ、わ――っ!!!」
一人であたしは叫ぶ。
「どうしたの??望、ねぇ。」
葵が心配そうに声を掛けてくる。
「だ、大丈夫。」
恥ずかしい、自分の欲望が溢れ出してる。
「―――――――ちょっと走ってくる。」
あたしはそう言い放ち、部屋、家を出る。
***
「のんちゃんは、、今頃―――――。」
俺は一人。生徒会室でほっと置けない女の子の事を考えていた。
『望の幼馴染です。』
幼馴染の悠翔さんと一緒に、どこか行っているのかな。
ギュ――……。
突如、胸を締め付けられるような痛みが胸に生じた。
「――――――なんだよ、もう。」
俺は胸を抑えながら携帯を握りしめた。
***
「……来てしまった。」
私は一人、そびえ立つ校門を見上げ入るか入らないか迷っていた。
どうするべきだろうか。
一人で悩んで約30分、聞きたい声が背後から聞こえた。
それは、学校から出てきた制服姿の会長だった。
「あれ。のんちゃん?」
「―――――――かい、ちょう??」
「ん、俺。会長だけど、どうしたのこんな日に?」
心底不思議そうな顔で見つめる会長の目があたしの胸の鼓動を早くさせる。
あぁああ、写真とか文章じゃなくて本物の会長が、生の会長が目の前に居るっ!!
幸せ。
……会長に会いたかったから、学校に来ましたなんて不純な理由を言ったら嫌われる。
ていうかドン引きされると思う。
何か言わなくちゃ、怪しまれる。
「え、えっと――――お兄……晴家先生に会いに来て。」
「そっか、そっか。じゃあ―――――晴家先生に感謝しなくちゃな。」
え?どうゆう事??
「だってさ、のんちゃんに引き合わせてくれたじゃん。感謝、感謝。」
そう言い手を合わせてあたしに微笑む。
「……嬉しいんですか。」
「――――っ。」
会長は息を呑むとまたニコッと笑って勿論と言う。
読めない、会長が何を思っているのか全然読めない。
「どっか行く?」
「え。」
突然、誘われたあたしは“はい”と答えるしかできなかった。