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THE SECOND TAKE ーAIでも英雄にー
作者: 多寡ユウ  (総ページ数: 20ページ)
関連タグ: 異世界、リープ、AI 
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10~

*5*


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



レジスタンスの本拠地が帝都にあるということで、僕とアイさんは帝都に来ていた。

移動の中、アイさんに今までのクランでの実情や身の上を話していた。今まで散々、ポーションを配ったり、お金を貢いだりしてきたこと。僕が貧しい村の出身であること。お金を稼ぐために、強くなりたいこと。直近の話題だと、ケルベロスを前にして3人とも逃げてしまったこと。

「そうか、そんなことが」

レジスタンスに参画した時点で、タクムのクランからは自動的に退会することとなった。だから、タクムたちの愚痴を言っても、もう大丈夫になったわけだ。

「ユウキくん。今ならまだ戻れる。君を搾取する人間はもういない。君のご両親と穏やかに暮らすことだってできるんだ。」

「そう・・ですね」
僕の身の上話を聞いて、アイさん的に心配してくれているんだろう。僕の親の話とか、いじめられていた話。それら全部を含めて、僕を心配してくれているのがわかる。

「さて、どうする?レジスタンスは危険な任務が多い。君はそれでも私とともに戦ってくれるのか」

それでも、僕はこの人のために戦いたい。親のために強くなりたいとか、収入を沢山稼いで大黒柱になりたいとか、そういう気持ちも確かにある。でも根幹には、僕はこの人のために強くなって、この人を守りたい。そのためなら、この人の下でクランメンバーの一員として働いて、強くなりたい。

「僕を地獄から救ってくれたのは、あなたなんです。だから、今度はあなたを守れるくらい、強くなりたいんです。地獄から助けてくれたあなたを守れるくらい、強く。」

もし、あなたが地獄に行ったら、僕が助けてあげられるくらい、強く。強くありたいんです。

「そうか。なら、改めて歓迎しよう。頼りにしているぞ、ユウキ君」

彼女から信頼されている。それだけで僕がここにいる意味になる。

「はいっ!」

力強く返事をすると、アイさんが僕を見てニコリと笑った。
(どくん、どくん)
彼女のそんな表情を見て、少しにやけてしまう僕がいた。血管の中の血液が全身に駆け巡り、心なしか悪寒さえ感じる。心の中からマグマのような熱が沸き上がり、胸だけが熱くなっていくのが肌感覚で分かる。

なんだろう。この感覚。

僕はこの時はまだ、この感覚に答えを出せずにいた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「うちのクランリーダーは口下手なんだ!どわははははは!気にするなよ、少年!」

帝都にあるレジスタンスの本拠地に行くと、早速めちゃくちゃチャラいお兄ちゃんに絡まれた。アイさんと帝都にあるレジスタンスに到着すると、総勢100人はいるであろうメンツが僕らを迎えてくれた。
レジスタンスの本拠地は、酒場のような雰囲気で、丸机が30個ほどはある少し大きな場所だった。その丸机に人々が座っている。みんなレジスタンスの隊員なのだろうか、面構えが違う。強者という感じがぷんぷんしてくる。

そして、その後、全体に自己紹介を兼ねて、僕がアイさんにレジスタンスに招待された経緯を説明したら、突然このちゃらいお兄さんが絡んできたわけだ。

「アイは、別にお前に入ってほしくないわけじゃねーよー。お前のことを心配しているんだぞ、少ォ―年!」

「こら、リュウ!うるさい!お前は静かにしとくことができんのか!」

「おーおーおー。怖いねぇ、今日もリーダーは!」

アイさんに怒られたチャラいお兄さん、改めリュウ。彼はチャラさ通りの短い茶色の髪で、身長も僕よりずっと高い。
役職は飛び道具を専門に扱う、ローグ。身に纏う防具も、軽さを意識した茶色の皮装備が主の様子だ。主な武器は後ろにある、どでかい・・手裏剣?
これがリュウの武器なのだろうか。まあステータスも確認した所、全く僕の及ぶ所ではない。さっきアイさんのステータスもチラ見させて頂いたが、リュウのステータスは、アイさんに負けず劣らずのステータスだった。会心率に特化したステータスぶりがなされていて、火力職担当ということなんだろう。

(僕が足手まといになるのは、確定っぽいな・・)

そんなこんなで話をしていると、奥から人をかき分け、なにやら2mはありそうな巨漢の男性がのっしのっしとやってきた。僕が見上げるサイズ感のその人は、荘厳な白銀の鎧に身を包み、右手には白銀の大楯を持っていた。
僕がその迫力にあぜんとしている中、リュウの近くに着くと、おもむろに口を開く。

「リュウ、アイを茶化すな。お前の悪い癖だ。新入りが来た時にはしゃぐのは」

彼の声はもろ、彼の特徴を反映した低い声の持ち主だった。

「ん?ああ、わかってるよ、んなの。お前はお前で堅いなぁ、もっと場を盛り上げるとかできねーのか?ゴウ」

「それは私の守備範囲ではない」

「はいはいはい、さいですか。わかりましたーよ、私が悪ぅーござんした!」

むっとした顔を見せてゴウと呼ばれた男がリュウをにらむ。しかし、そんなことをリュウは警戒も何もせず、お構いもなしに見てみぬふりをして、またべらべらと僕に「どこからきたのとか」「週末何しているか」とかそんなくだらない話を始めた。

ゴウと呼ばれる彼のステータスを見ると、騎士職。彼のステータスもアイさんに負けず劣らずのようだ。ただ守備力に関しては、アイさんよりも一つ頭を抜けている。タンクで、チームを守る立ち位置ということだろう。

そんなことで僕が関心をしていると、また奥から「あーーーーらーーーーーー!!!」というオバ様チックな声を出して、人をかき分けてくる人影がもう一つあった。

背丈はリュウと同じくらい、さっきのオバサマチックという言葉を反省するくらい端正な顔立ちとスタイリッシュな紫色の装備を身に纏う少女?女性が近づいてきた。

「新入りちゃん?めずらしいわねー、何この子!かわいいぃぃ!!!私の婿にもらっていいかしらぁ!!」

そういいながら、意外と巨乳だったその人は僕に思いっきり抱きついてきた。そのたわわな胸に窒息死しそうになりながら、頭の中で幸せを感じていると、今度はアイさんがその女性にツッコミを入れる。

「こら!サユリ!ユウキ君は私が連れてきた子だ!イチャイチャするな!」

そういわれると、「ちぇっ」という言葉を渋々その抱擁を解く。

「アイちゃんも、そんなことでメンヘラになってると、お嫁にいけないわよぉ」

「ばっ!よ、余計なお世話だ!」

アイさんを茶化すと何故かサユリと呼ばれたその女性は上機嫌になったのか、もう一度僕を強く抱擁した。

(この人、絶対Sだ・・。)

僕の中のセンサーが感じている、いじめて高揚感を得るタイプの人だ。サユリさんって人は。
この人のステータスもチラ見すると、やはりアイさんに負けず劣らずのステータス。ジョブは、魔術師らしい。その証拠に特殊攻撃力は、リュウやゴウ、そしてアイさんまでを抜いて一番高いステータスだ。
(強者ぞろいというか、強い人限定なのかな)
再びここでやっていけるのか不安になっていると、アイさんが「よし全員そろったな」と言って、おもむろに説明をしだす。

「コホン、ユウキ君。紹介が遅れたな。この3人、ここにいる毎度のことうるさいリュウ、そこにいる真面目なゴウ、で、君の今目の前にいるサユリ。この3人が私たちレジスタンスの副リーダーだ」

「よろしくなっ、少年!」

「よろしく頼む、ユウキ君?だったか」

「お願いねぇ、ユウキ君」

三人からの暖かい迎え入れのメッセージを頂いたあと、アイさんがレジスタンスの構成について、説明をしてくれた。

「彼ら3人は、私たちレジスタンスの副リーダー、つまり各隊の隊長として活躍してくれている。全員非常に優秀な仲間たちだ。彼らが30名ほどの隊員をそれぞれまとめあげている。ローグ隊、騎士隊、魔術師隊。この3隊が、それぞれお互いに相乗効果を出し合い、レジスタンスは高め合っているというわけだ」

「すごい・・・」

正直すごいとしか言いようがない。僕がいたクランは立った4人のクランだった。クランとは名ばかりの少年グループのようなものかもしれないが。それがレジスタンスでは100名ほどの隊員がいて、それぞれに隊長がいる。30名ほどの隊が3隊あって、それを全体で統括しているのがアイさんってことか。

どんだけすごい所に来てしまったんだ僕は・・。やっていけるのかと不安な気持ちになっていると、サユリさんが僕に向かって口を開いた。

「さあて、ユウキ君。私たちレジスタンスの、役割・・・。じゃなかった、目標が何かは知っている?」

「?お、お互いを高め合う事、じゃないんですか?」

僕がそう答えると、サユリさんは僕の方から、アイさんの方に向き直りながら答えた。

「うーん、それも合っているけど。・・もしかして、まだアイちゃん、伝えていないの?」

「ん?あ、ああ。まだ伝えていないな。すまない、急だったものでな」

「目標?」

目標ってなんだろう?クラン全体でお金を10億くらい稼ぐとか、この国を統治できるクランになるとか、そういったどでかい目標でもあるんだろうか。

そんなことをどでかいと思っていた僕にとっては、そこからサユリさんとアイさんが言う言葉のスケールがいまいちピンとこなかった。

「私たちはね、この世界に反旗を翻しているの」

「??????????・・・・・アイさん、それって、どういう?」

「説明をしておらず、すまなかったな、ユウキ君」

アイさんが一拍深く深呼吸をして、僕のことをじっと見つめてくる。その様子は今思えば、僕にとっては大きな人生のターニングポイントだったのかもしれない。



「私たち、レジスタンス(反旗を翻す者たち)は、この世界から脱出することを目標にしている」


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