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*8*
【第2章突入です!】
〈朔side〉
背中まである白のロングの髪に、黒いワンピース。
ニーハイソックスを履いた、謎のロリータ少女、プリシラ・ローズベリ。
突然俺-百木朔に話しかけたと思いきや、その内容は妄言の類。
もしかしてヤバい奴?
け、警察に通報したほうがいいのかな。
えーっと、「黒札」とか「札狩」とか言ってるけど、最近のアニメの影響かなぁ?
アニメ観てないからよく分からないけど、今時アクションものが流行ってるっぽいからなぁ。
「…………あ、あの、ごめん。俺、ちょっと忙しいから、またね」
そうだ、急に話しかけられて一瞬忘れかけていたけれど、俺は家族を失った立場にあるのだ。
こんなところで右往左往しているわけにもいかない。
そんなことで時間をとられちゃ、死んだチカに怒られちゃう。
できるだけニコ―ッと愛想笑いをして、回れ右をする。
そして、目をつぶってダッシュでこの子から逃げようとしたのだが………。
「待って、『さっくん』!!」
「ふぁっ? ///」
制服のカッターシャツの裾を小さな手でつかんで、プリシラ―シアはにっこりとあどけなく笑う。
その笑顔に心臓を撃ち抜かれ、頭のてっぺんから爪先まで電流が駆け抜けていった。
そ、そ、それに、今、俺の名前……さ、さささ、『さっくん』?
か、かかかかかかかか、かかか、か、可愛いかよぉぉおおっ!!!
はぁぁぁぁぁぁ………っ。ヤバイ息が出来ない。
クラスの女子が使っていた「尊い」って言葉の意味、今になってやっとわかったよ。
ごめんね女子たち、「わけわからん」的な視線で見つめて。ごめん俺また明日炙り昆布おごる!
自分に妹が出来たらこんな感じなのかな。
双子でも充分ラッキーだと思うけど、やっぱりいいよねぇ、この感じ。
アハハウフフ……!
「………なに一人で何もない場所でニヤついてるんですかぁ? はっきり言って、きもいです」
「あぁぁぁぁ性格変わんないでっ! もうちょっとだけ、ね!」
「何言ってんですかぁ? はぁ…最近の若いもんの心理は、私にはさっぱりですぅ」
と、急に「お兄ちゃん大好き」的な態度を取っていたシアが、フッッッと嘲笑した。
俺は慌てて、彼女の肩に置いていた両手を慌てて離す。
の、乗せられたっ? 怖ッ!?
「………若いもんの心理って、キミ……何歳なの? っていうか、ひょっとして迷子?」
「ハァ? んなわけないでしょうっ! 私、これでもピッチピチの200歳なんですからねっ!?」
…その、ピッチピチの200歳を若いと思えばいいのか、お歳だと思えばいいのか、分かんない。
最近の小学生って、こう言うジョークが好きなんだろうか。
分からん。最近の流行りとか、俺得意じゃないんだよな。
「っていうか、さっくんさんも、もうちょい黒札の資格者ってことを自覚したほうがいいですよ」
「だから、その、黒札って何? えっと、ママ呼んであげよっか?」
「あのですね、だから私迷子じゃありませんっ! それに!」
シアがキーッと喚いて地団駄を踏む。
そして、ワンピースのポケットから小さい手帳を取り出すと、目の前に掲げて胸を張る。
「私、ちゃんと迷子手帳、持ってるんですっ!」
「……………『悪魔族 女 プリシラ・ローズベリ 迷子歴100年』……100年!?」
手帳に書いてあった文字を読み上げて、バッとシアに視線を移す。
彼女は耳まで赤くなって、両手で必死に顔を覆っていた。
この子、一体何者なんだ? 悪魔って、実在、するもんなの?
「わ、笑わないでくださいっ! ただフツーに道路を歩いてただけなのに、気づいたらここに」
「100年も?」
「そんな目で見ないでくださいっ。でも、この100年で男女の落とし方はバッチリ覚えました」
そんなロリロリ口調で、ショタの容姿で、そんなことを言われて、俺は何と答えればOKなんだろ。
あ、でも、100年もかけて落とし方…言い方はアレだけど、要するにモテテクだよね。
俺もさ、話聞いてて察すると思うけど、流行に疎すぎて、女の子と仲良くできないんだよね。
その、「黒札」とかの話はあとでちゃんと聞くから、その話聞かせてよ。
「はい、いいですよぉ。ちゃーんと立場を自覚してるみたいで、安心しましたぁ」
「キミ何様?」
「はい、お嬢様ですっ」
………いや、それ違うって。自分で自分のこと「お嬢様」って言うなよ。
はぁ、それで、モテテクはどんなのなの?
そう尋ねると、シアは更にニコニコ顔になり、キャピッと叫ぶ。
「モテテクその1 ご飯は人間の脚を選ぶ その2 デートは絶叫するほど高い所で」
「…………ニンゲンノ、アシヲタベル………」
「ハイッ。おいしーんですよ。で、その3 話題は怪談とかするといいかもしれませんねぇ」
「………それ、どこでの決まり?」
「天国でぇす」
…………チカ、大丈夫なんだろうか……!??
もし、人間の脚を食べられてたら………。
嫌な予感に、背中から冷や汗がタラーリ。
こ、この子と何十分も話をするのはまずい。かといって逃がしてくれそうな相手でもないし……。
そうだ、チカが良く推理小説を読むたび言っていた。
「人を知るには、まず聞くこと」だって。
よし、少しでもこの怪しいロリータ少女のたくらみを暴いてみせる。
そして、身の危険を感じたら超特急で逃げる。
ここで死ぬわけにはいかないもんね。チカが悲しむし、ママとパパも泣き崩れるだろうから。
俺は家族を裏切るようなことは絶対にしない。
だから今から、このかなりヤバそうな状況から脱して見せるよ!!