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カオスヘッドな僕ら【連載終了】
作者: むう  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: コメディー 未完結作品 妖怪幽霊 現代ファンタジー 天使 
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10~ 20~ 30~ 40~ 50~

*30*

 お久しぶりです。
 ………「札狩ライフ始めました」っていう章題なのに
 まだ一度もガチで戦っていないカオ僕メンバー……。
 こっから本気出します(むうが)

 ********


 〈八雲side〉

 キーンコーンカーンコーン
 私こと、栗坂八雲(くりさかやくも)は六時間目終了のチャイムと共に校門へと駆け足で向かう。

 私が通っている中学校は、駅前にある公立中学。
 部活にも入っていない私は、今日の夕方にやるアニメ『モンスター・モンスター』略して【モンモン】をリアタイするために、只今階段を三段跳びで降りている。

 モンスター・モンスターは、『少年ジャンク』っていう少年漫画誌で絶賛連載中の漫画が原作。
 学園もの×妖怪幽霊もので、オカルトマニアな自分は連載当初からずっと推している。
 それがなんと、アニメ化するなんて!

「急がないとっ。うちのテレビちょっと電波悪いから録画とかも最近してないし……」


 トントントントントン


 ………ジ様!


「あぁぁぁぁあ、急げ急げええぇぇぇぇぇ!」


 ………ルジ様!


 トントントントントン


 もうなんなの~!? さっきから後ろで聞こえる甲高い声。
 いい加減ムッと来て振り向くと、宙にふわふわ浮いている彼と視線が合った。


「アルジ様! 話しかけてなのに無視って俺マジサッドで今絶賛cry(くらい)気持ちです」
「あーもうあんた今話しかけないで!」


 宙に浮かんで、右左に揺れているのは、私の相棒(?)の死神・紗明(さあき)だ。
 朝は酷く大人しいが、夕方の夕暮れ放送が鳴った瞬間に今のようにウザくなる、めんどくさい二重人格持ち。

 悪霊を退治する札狩(ふだかり)という職業をしていて、 強いことは強いらしいのだが、言動が言動だけに「コイツ絶対雑魚じゃん」とみんなが思っとる。

「ホワイ!? てゆーか待ってくださいアルジ様! 俺はマジで真剣な話を……」
「あーあー、帰ってからにしてくれる? 今日私急いでるけん」
「だってゴキブリの弟からメールもらッとんねん! これ、見ないとかマジでありえへんわ。マジでわっち泣きよるわ。マジでわっち……アルジ様………」


 マジマジうるっさい。あとなんで急に方言っぽくなんの。
 私は広島出身だからときどき広島弁が出るけど、あんたのその関西弁はなに!?
 てかあんた、大阪出身でも日本出身でもないじゃん!!


 紗明のすすり泣く声が、階段を降りるBGMと化すのがつらい。
 早く帰りたいのに、いつもこうして邪魔してくるので、帰りはよく遅くなる。
 うちで、百木周(ももきちか)ことおモチくんとあんちゃんが待っとるのに……。


 はーっ。やっと一階についた。あとはこのまま、渡り廊下を抜けて校門を出るだけだ。
 たったこれだけの過程が、とても大きい迷路を脱出した時のように疲れを与えるのはなぜ。


「それで? 用事ってなに? 聞いてやるけぇ言うてみ」
「アルジ様の方言ってめちゃくちゃ萌えますね! もうワンテイク行ってみます?」

「………………さっさと要件をいえ、このダボっっっっ!!!」


 ふーふーっ 
 顔を真っ赤にして怒り狂う私に、流石にやりすぎたと感じたのか紗明の表情がしゅんと萎れる。
 
 口をとがらせて、指先をもじもじさせて。
 時々ちらちら顔色を窺ったりなんかもしてると、黙らなければ可愛いのにと思う。


「す、スミマセン………もうしません。もう……しませええぇぇぇん………」
「………なに? 要件」


 目いっぱいに涙をためる紗明にうんざりと返すと、紗明は手の甲で涙を拭って、


「ゴキブリのっ……ぐすん……弟からメールが来てっぐすん……なんか、アヤシ—奴がゴキブリの友達で、居場所を知りらしいから、万一の為に後付けてくれって……」

「おモチくんの居場所ぉ? なんでそんなこと気になるんじゃ」
「俺に聞かれてもアイドンノウですよ! 俺言っとくけどIQマジ低いんで! 舐めんといてください」


 低いのは分かるし舐める要素もないわ。
 うーんでも、確かに怪しいことは怪しいし……。うーん……。

 おモチくんの居場所が知りたいなら、そのままスマホとかで調べるほうが効率がいいと思う。
 なんでわざわざ、朔くんに近づいたんだろう……。

 朔くんは黒札の資格者。彼の周りにいる、無害な霊なんかも黒札の力で寄ってくる。
 そして、有害な悪霊なんかも黒札につられて集まってくるから……。


 相手は、もしかするとおモチくんじゃのうて、朔くんが狙いじゃないかいな?
 札狩のなかには、黒札が狩られるのをよしとしない輩もいるようじゃけえ。

 
 うーん。
 モンスターモンスターのリアタイは、悔しいけど諦めよ。
 後でまた見れるんだし、あんちゃんに頼んで録画してもらうことにしよう。


「よし紗明、行くよ」
「え、ど、どこですか!? ウェア!? ウェア・イズ・ドコ!?」


 アンタいっぺん英語の文法から勉強した方がいいよ。
 ウェア・イズ・ドコって……日本語訳したら「どこですどこ」になるし……。


 Q:Where is doko?
 A:知らんわ。


「その怪しいやつをつける。ほら、いつだったか見せてくれた透明化! それか飛行!出番!」
「………えー、でもあれ、クソ操作めんどいんすよ。マジだるいですって。やりたくね……」
「………さぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁきぃぃぃぃいい」
「ハイやります!! いますぐ!! すみませぇぇぇん!!」


 いつもこう。主様(と勝手に決めつけられた)の私が彼の尻を叩いてやるのだ。
 いやほんと、コイツ本当に強いのかなってなんども疑ったし、みんなそう思ってるでしょ。


 ……こいつ、本当の実力はかなりのもんよ。
 まぁ見といて。絶対驚くけん。


「……コードは!? A? B?」
「B! 出力50%、目的地は朔くんの背後!」
「りょーかいです!! ……久しぶりっすねこれ。行きますっっ。ウィーキャンフラァァイ!」



 紗明が私の体を姫だきする。姫だきってなんのことが分かんない人へ、お姫様だっこのこと。
 その状態で、バサッッと言う羽ばたき音。
 首の角度を変えて、音のした方を見やると、いつもは閉じている紗明の背中の羽が大きく開いていた。


 ……念のため言っとくけど、彼の羽っていうのは皆さまが想像したようなもんではなくて。
 天使の羽……クコさんみたいな立派なもんではなく、言うならば……。
 鴉の羽程度のちっちゃな奴が、たくさん集まってできた、飛ぶにはなんとも心配になるような、黒い羽だった。


「………マジで言ってる?」
「大丈夫っス、死神のパワー舐めんといてください。俺の術をいったん発動します、それをバァァンってバクハツさせて、その風力でグゥゥゥンと上に上がるわけっす。イーズィーっしょ?」



「完全能筋プレイやん」
 


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