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いつだって私達は。
作者: のゆり  (総ページ数: 17ページ)
関連タグ: 熱愛 依存 サイコパス 風俗 復讐 自惚れ 嫉妬 
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10~

*10*

 「何で」
 ______『夏樹瀬(なつきせ) 栞凪(かんな)』
 私が1番嫌いで、1番会いたくなかった人の名前。
 スマホに映し出されたその5文字を睨みながら、昔の事を思いだす。



 ~2年前~

 今日も小さなライブ会場で、私の推しは歌っている。
 私以外のお客さんは居なくて、それでも海和は歌っている。
 「愛してるよ」
 息を切らしてそう告げる彼に、胸の鼓動が早くなる。
 「わっ私も…!愛してる!」
 まだ貢いだ額が少ない頃の私。
 自分しか居ないから、自分だけに愛を伝えていると思うと、やっぱりキュンとする。

 「かんなもー!海和様ぁ~♡」
 突然、知らない女の声が聞こえる。
 「フッ…栞凪かい?相変わらず騒がしいね」
 え?どういう事?今まで私、欠かさずライブに行ってたのに。誰とも会わなかったのに。
 恐ろしい程の嫉妬と憎悪が、体中に込み上げる。
 「あれ?君も海和様のファン?」
 栞凪という人物が、私の事を覗き込んで来た。
 地雷系ファッションに身を包んだ、いかにもな女の子だった。
 「そうだけど…」
 海和のファンが自分だけだと思いたくて、推しの顔を窺う。
 「ハハッ、実はね。百合菜に伝えていなかったけど、路上ライブをしたんだ」
 「そーそー!かんなね~?そこでガチ恋したの~!」
 「初耳だよ」

 うふふ、あはは。
 私の知らない所で、推しがガチ恋客を作った…?
 あり得ない、あり得ない!
 私が海和の知らない事なんて、無かったのに!何で!何で⁈
 私はこんなに愛してるのに、貢いでるのに何でよ!

 「栞凪ちゃんだっけ、私は百合菜。海和の1号客だよ」
 「マジかー!かんな2番目だったの~?」
 無理無理無理無理無理無理!!
 私の海和なんだけど。1番の古参は私なんだけど?

 脳内が栞凪という人物を拒絶しているけれど、私は麗奈お姉ちゃんみたいに態度には出さない!
 平常心、平常心よ、百合菜。
 「えへへ、海和にもファンが増えて良かったねぇ」
 推しに嫌われるよりも、嫌いな人と遊ぶ方がマシだよ!
 「あぁ、百合菜と栞凪、2人共可愛いから照れちゃうな」
 海和。私の方が可愛いよ。この子、絶対すっぴんヤバいって。
 「え~?私そんな可愛くないよ~?」
 そうだね。私の方が可愛いよ。私を見て。

 「じゃあ、そろそろ歌おうかな」
 「ヒューヒュー!海和様Love you~!」
 「……」

 それからずっと、私の目に栞凪が居るだけで、私から海和を奪っていった。
 だから、心の底から、私は栞凪が嫌いだ。

 続く

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