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*11*
『百合菜~!海和様、ドラマに出るんだって!最近すごいよね~♡』
腹立つなぁ、栞凪。私は海和と付き合ってるんだから知ってて当たり前だし。
『うん。私も海和から聞いたよ。楽しみだね」
前デートした時に聞いたんだっけ。その日以来会ってないな。体の関係も途絶えてる。
「海和、会いたいな」
仕事中にもそんな事ばっかり考えて、全然頭が回らないので早退した。
『今会える?』
海和のスケジュールは把握しているので、多分大丈夫だろう。
したいな、海和と。
合鍵を握り締めて誰もいない事を確認して、マネージャーのフリをして部屋に入る。
「海和!会いたくて、来ちゃった」
乙女のようなこの甘いセリフは、私に良く似合う。
部屋をキョロキョロ見渡す。早く、海和来ないかな。
「あれ?」
おかしいな、海和が来ない。いつもすぐ来るのに。
急な仕事?家族の私用?嫌、全部把握してる筈。
不安になったので一応付けていたGPSのアプリを開く。
「海…和?」
『ホテル』
勿論、ビジネスじゃない、ラブの方の。
一気に崩れ落ちて、涙を流す。
あの愛の言葉も、アイドルとしての嘘だったのかもしれない。
海和にとって、古参も新参も変わり無かったのかもしれない。
考えるにつれて、精神が擦り減っていく気がした。
海和、海和、海和。
その夜は、割とすぐ眠った。
翌日、[相手は?]という疑問が脳裏に浮かび、海和がよく話す人の事を思い出す。
マネ…は男性だったし、他の関係者とあまり接点はない。
ファン?ファンの誰かと…?私と付き合ってるのに…?
じゃあファンの中で1番よく聞く名前は…
「栞凪」
さっとスマホを手に取り、『夏樹瀬栞凪』の欄に触れる。
違う、海和は栞凪にそんな欲求____ッ!
『ねぇ栞凪』
『あ、百合菜!どーしたの?』
『昨日、海和と何かあった?』
『えっ』
返信が途絶える。
『海和様と…デート、しちゃった!』
嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!
『それって、大人の関係アリ?』
『…そう、かも?』
『そっ……か、ごめんね、言いづらい事聞いて』
『いーよいーよ!丁度、誰かに言いたかったし?』
『ありがと、そういう時はいつでも頼って?』
『ありがとー!百合菜大好き!』
「なら、良かった」
私はスマホを握って、大好きな海和の夜に、染まる事にした。
続く