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いつだって私達は。
作者: のゆり  (総ページ数: 17ページ)
関連タグ: 熱愛 依存 サイコパス 風俗 復讐 自惚れ 嫉妬 
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10~

*8*

第3章・明鏡百合菜「夜に染まれ」

 「私には、彼氏がいるの」
 同居の姉は訳あって人前に出ないのだが、椅子は配置している。
 その席には勿論誰も居ないけれど、彼女には姉が見えているようだった。
 「フフッあのね、その彼氏はね、普通じゃないんだ」
 言いたくてうずうずしている彼女。その様子は、まるで恋する乙女そのもの。
 「いまをときめく人気アイドルと、付き合ってるの」





 私は百合菜。区役所に勤務している、至って普通の社会人。

 そう、傍から見ればね。

 私はいつか、熱愛として出るかもしれない『側』の人間と付き合っている。
 人気ソロアイドル、海和(かいと)。
 今でこそトップに羽ばたいているが、実際は2年前から活動していた。
 私は海和の古参ファンで、デビュー時からずっと推している。
 収入はすべて海和に費やし、麗奈お姉ちゃんが毎月養ってくれるお金で生活を続けている。
 私は海和を推しているから、まだ売れてなかった頃の海和は嬉しかったのだろう。
 「僕と付き合わないか」
 そんな風に海和(おし)から告げるのだから。

 私は海和と付き合い始めた。
 海和とはたまに会っている。そして夜には愛を確かめる。
 私への愛があると知っているから、貢ぐ事をやめられない。
 海和の2年間が、どれだけ辛く、大変な事だと思ってるの?
 売れなくて、努力して、でも売れなくて…
 私のお金を彼がどれだけ必要としてただろう。
 それでも活動を続けてくれた事、本当に本当に感謝している。
 今売れているのが、私にとって複雑ではあるけど嬉しい。
 人気になるのは嬉しいけど、人気だから尻尾振って来た海和リスナーを名乗る人達は好かない。
 今まで目に留めなかった癖に。

 古参であればある程、海和は愛をくれる。
 一番私が昔から海和を推している、愛しているから、付き合って当然なんだ。
 人気になってから現れた同担拒否とか無理すぎる。
 自分勝手にも程がある。推してる自分が好きな癖に。
 そういえば、私と1対1だった売れる前、2人目のファンの事も覚えてる。
 貢いだ額が抜かされないように必死だったような。
 そう思う内に、ピコ、という通知音が聞こえたので、同居の姉、瑠璃歌かと思いすぐ目を通す。
 するとそこには、思いもしない人物からの、久しぶりのメッセージが寄せられていた。

 続く

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