コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 新米教師と死にたがりの女生徒。 完結!
- 日時: 2010/02/14 14:00
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
とある中学校の始業式。新任教師の紹介が、その学校でも当然あった。
『今年から教師になりました、相沢タツキ先生です』
『初めまして、二年生に理科を教えることになった相沢タツキです。まだまだ新米ですが、よろしくお願いします』
俺に出来たのは、そのくらいのありふれた挨拶だった。
二年生だけの集会でも、似たような挨拶をした。
そこで、他の中学生とは全く違う雰囲気を放っている女生徒と目が合った。
他の生徒は陽気な笑顔を浮かべながら、時々周りと喋りながら話を聞いていた。いわゆる普通の反応だ。
だが、その女生徒はこちらの心を見透かすかのような視線を送り、周りとは一切喋らなかった。
——浮いている生徒がいるな。
最初はその程度しか思わなかったが、やけに印象に残ったので、他の教師に聞いてみることにした。
「あの生徒を知ってますか?」
「ああ、職員室でもよく話題になるな。頭はすごくいいんだが、何を考えているか分からないって評判だ」
「名前って分かります?」
「二年B組の『田中マナミ』。君も苦労するかもな」
それから、特に接点もないまま一年が経った。
そして、学年が一つ上がった頃。
俺は、『田中マナミ』がいる三年D組の副担任になった。
続く
久々にコメディ・ライトを書きました。応援ヨロシクです。
- Re: 新米教師と死にたがりの女生徒。 ( No.20 )
- 日時: 2010/02/08 20:24
- 名前: 沙羅 ◆sRhArO6uyM (ID: m/RYF1.C)
泣きそうです・・・
- Re: 新米教師と死にたがりの女生徒。 ( No.21 )
- 日時: 2010/02/14 13:35
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
時は流れて三月。気が付けば、卒業式当日になっていた。
『卒業証書、授与』
司会役の学年主任がマイクを通じて言い、A組から順番に卒業証書が渡される。
あっという間にD組までいき、最後の生徒が受け取った。
『以上、卒業証書授与を終りょ——』
言い終わるより先に、俺は壇上に上がった。
「相沢先生!?」
隣にいた教師の静止も聞かず、校長先生が持っていたマイクを奪う。
「……まだ卒業証書が授与されていない生徒がいるじゃないですか」
俺の発言に周りがどよめく。それもそうだ。『周りが知っている限りでは』全ての生徒に渡された。だが、『あと一人』渡されていない。
隠し持っていた『そいつ』の証書を取り出し、『そいつ』の名前を呼ぶ。
『三年D組、「田中マナミ」! どっかにいるんだろ、証書渡すから来い!』
「先生、何を……」
周りの空気が一瞬で静まり返る。田中はもうこの世にはいない。そんなことは誰だって知っている。
だが、『絶対』田中はどこかでこの卒業式を見ている。これだけは何となく分かった。
すると——
「あまり大きな声で呼ばないで下さい。鼓膜破れるかと思いましたよ」
今度は俺の目の前にいる人物に視線が集まる。
そいつは——『田中マナミ』だった。
「まさか卒業証書用意してるなんて、思ってもいなかったんですけど」
「……受け取るか?」
すると田中は、溢れんばかりの笑顔で。
「当たり前ですっ!」
卒業式が終わり、誰もいない校庭に、俺と田中はいた。
「お前、そういや成仏はどうした?」
「……先生があの日、屋上で言った言葉の続きが気になって成仏できませんでした」
「ああ、何か言いかけてたっけな」
「先生、続き、今聞かせて下さい」
『待て、田中マナミ! 俺はな……!』
あの言葉の続き。あのあと何度も考えて、やっと一つの結論に辿り着いた。
「お前、証書に触れたって事は、今実体があるんだな?」
「? はい、ありますけど?」
俺は田中を抱き締めた。
「なっ!? 先生、何やって……!」
「あの言葉の続き」
田中の動きが止まる。
「俺はな、お前が好きなんだよ」
田中が背中に腕を回す。
「……私もですよ……」
か細い声。でも、それは確かに俺に届いた。
「じゃあ、私はこれで、本当に成仏しますよ?」
「……ああ」
分かり合えた今、あえてこいつを引き止めるようなマネはしない。
「お礼に、良いもの見せてあげます」
田中が指を鳴らす。すると、田中の体が無数の桜の花びらとなり、空に舞い上がっていった。
「先生、ありがとうございます!」
花びらが完全に見えなくなった時、泣かないと決めていたのに、涙が出てきた。
何回も泣き止もうとしたが、それは無理なことだった。
結局、俺はしばらく校庭にうずくまって地面を涙で濡らし続けることしかできなかった。
続く
次回最終回です!
- Re: 新米教師と死にたがりの女生徒。 ( No.22 )
- 日時: 2010/02/14 13:58
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
四月になった。今年から、俺は担任を持てるようになり、早速一年C組の担任になった。
「明日は入学式か……」
一人、家で溜息を吐く。どんな奴らが入学してくるやら。
そんなことを延々と考えていると。
ピーンポーン♪
呼び鈴が鳴った。宅配便か集金か。そのくらいしか考えていなかった、が。
「……あ……?」
自分の目を疑う。
「二週間ぶりですね、相沢先生」
「……えーっと?」
これは夢か何かか? あれ、俺ってこんなに疲れてたっけ?
「念のため、自己紹介しておきます。今日から先生と同居することになった、『田中マナミ』です。これからよろしくお願いします」
「待て待て待て」
頭を抱えてそいつを静止する。
「……お前、成仏は?」
「しましたよー」
「……じゃあ、何でここにいる」
「成仏した後、周りの人から『私達の本来の寿命、分けてあげるからその先生と一緒に生きなさい!』って言われました。何か、署名活動までされました」
「寿命何年分もらったんだ」
「先生が死ぬ時と同時に私も死ぬようにもらってきました」
……えっと、それはつまり。
「そう! 先生とこれからずっと一緒にいられることになりましたー!」
「卒業式の時の涙を返せー!」
でも、内心すごく嬉しかった。
——ああ、こいつと一緒に暮らせるんだな、って。
「先生、この本読んでもいいですか?」
「あ、勝手に本棚漁るんじゃねぇっ!!」
……苦労も多そうだけれど。
+END+
次回後書きです。
- Re: 新米教師と死にたがりの女生徒。 完結! ( No.23 )
- 日時: 2010/02/16 16:41
- 名前: 沙奈 (ID: GpNW5AXi)
始めまして!!
沙奈と申します。・・・本当に凄いですね。
憧れちゃいます☆
これからも頑張ってくださいね♪
- Re: 新米教師と死にたがりの女生徒。 完結! ( No.24 )
- 日時: 2010/02/24 18:38
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
+後書き+
残すところ後書きだけだったのに、一週間以上待たせてすみません。
この小説を書いているところで、とある事情によりメチャクチャ忙しくなり、更新が延び延びになってしまいました。
それでも、こうして無事完結できたのはコメントをくれた皆さんのおかげです!
まだ忙しさは残っていますが、次回作は書きますので、よろしければ見て下さい。
最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございます!!
BY 転がるえんぴつ
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