コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

☆星の子☆  新板に移転しました。
日時: 2019/10/20 22:08
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1a/index.cgi?mode=view&no=11909

 この度コメディ・ライト板の新板にスレッドを移転しました。
 今後の更新はそちらでしますので、是非新版の方に遊びに来ていただけたら幸いです。
 URLを載せておきます。
             2019/10/16 朱雀


  ※大事なお知らせ※>>781

クリックありがとうございます^^
初めて小説作成するので未熟な部分がありますが、楽しんで読んでくれると嬉しいです<(_ _)>
アドバイスや感想などもお待ちしております。
こてこてファンタジーなラブ(?)コメディです。
イメージソングは>>119の参照で聞けます♪
キャラ絵は>>397で!!
※星の子のキャラ絵を担当して下さっているPANDA。さんがキャラ絵専用ページを作ってくださいました^^ 是非見に行ってみて下さい。   


※只今初期のお話を修正中ですので、一人称だったり三人称だったりします。ご了承ください。


人物紹介は盛大なネタバレ含みます。ご容赦ください。余裕があったら良い感じに書き直します…笑
>>1 主人公・部員紹介
>>2 Gトップチーム、反乱軍

「まとめ」1>>45 〜まとめてみました。
「まとめ」2>>59 〜輝さん(空の義父)の話を簡潔にまとめてみました。



∞1幕∞

1章        2章         3章
1話ー>>3    10話ー>>22      20話ー>>49    
2話ー>>4    11話ー>>23      21話ー>>52
3話ー>>5    12話ー>>26      22話ー>>56
4話ー>>9    13話ー>>31
5話ー>>12    14話ー>>32
6話ー>>13    15話ー>>35
7話ー>>15    16話ー>>36
8話ー>>18    17話ー>>40
9話ー>>19    18話ー>>42
         19話ー>>44




4章         5章          6章
23話ー>>60    33話ー>>85     42話ー>>123
24話ー>>61    34話ー>>90      43話ー>>132     
25話ー>>64    35話ー>>93     44話ー>>135
26話ー>>65    36話ー>>96     45話ー>>143
27話ー>>66    37話ー>>97     46話ー>>148
28話ー>>67    38話ー>>103
29話ー>>70    39話ー>>107
30話ー>>72    40話ー>>114     
31話ー>>80    41話ー>>119
32話ー>>83





7章         8章         9章                
47話ー>>153    60話ー>>223     67話ー>>275-276     
48話ー>>158    61話ー>>237     68話ー>>291-292     
49話ー>>163    62話ー>>239     69話ー>>301     
50話ー>>167    63話ー>>245     
51話ー>>175    64話ー>>252     
52話ー>>191    65話ー>>255     
53話ー>>192    66話ー>>260
54話ー>>199
55話ー>>202
56話ー>>209
57話ー>>212
58話ー>>214
59話ー>>216




              ∞2幕∞
10章           11章            12章
70話ー>>325       75話ー>>366        81話ー>>419
71話ー>>328       76話ー>>374-375       82話ー>>422
72話ー>>333       77話ー>>378          83話ー>>426-427
73話ー>>343       78話ー>>387-388        84話ー>>434
74話−>>363-364     79話ー>>398-399       85話ー>>436-437
              80話ー>>403         86話ー>>440-441



『戦争』
13章            14章           15章
87話ー>>445-446      92話ー>>469        97話ー>>498
88話ー>>452        93話ー>>474-475      98話ー>>501-502
89話ー>>460        94話ー>>479-480      99話ー>>505-506
90話ー>>461-46      95話ー>>486-487      100話ー>>510-511
91話ー>>466-46      96話ー>>490-491




16章           17章    
101話ー>>525-526      107話ー>>555-556
102話ー>>532-534      108話ー>>779-780
103話ー>>537
104話ー>>539
105話ー>>543-545
106話ー>>551



☆番外編☆

〜葵〜>>410>>411

『100話突破記念 短編3本立て!』
 1「冥界」>>516
 2「科学者Xの休日」>>518
 3「星の子学園! Ep1」>>521

『バレンタイン企画!』 
 「少女と少年と約束」>>553>>554
 
                 



☆読者の皆様☆
*ちり様       *PANDA。様          *黒田奏様
*零十様(虎様)   *。・*+みつき*+・。様       *日織様
*ボリーン様     *風様               *書き述べる様
*貴也様       *ああ様              *織原ひな様
*恋音様       *宇莉様              *てるてる522様
*友桃様       *杏様               *ひなた様
*星ファン★様    *王翔様
*山口流様      *あんず様     
*アスカ様      *朝倉疾風様
*青龍様       *ARMA3様(書き述べる様)


☆朱雀のオススメ!本紹介☆

第一回〜<秘密>>>222
第二回〜<トワイライト>>>250
第三回〜<灼眼のシャナ>>>281
第四回〜<妖界ナビルナ>>>329



☆人気投票結果発表☆
*第一回>>238
*第二回>>435


スレッド作成日
2010.7.20

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119



Re: ☆星の子☆     最新話うp! ( No.553 )
日時: 2014/01/04 19:40
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: nEqByxTs)
参照: 最新話107話の前にお読み下さい。

番外編「少年と少女と約束」


(——「キラさんは、バレンタインデーという行事をご存知ですか?」——)

 全てはこのピアの一言から始まった。そのため私は丸一日もかけてお菓子を作り、今こうして人気(ひとけ)の無い応接間で、ある人物を待っている。
 掌で大切に包み込んだピンクの包装紙から香る甘い匂いを嗅いで、私は一人虚しく溜息をついた。少しの緊張と、それ以上の気恥ずかしさが胸の中で疼く。
 ……やっぱり帰ろうかな。
 夜になるとよくここで彼が読書をする事は知っていた。何度かその姿を見かけたことがあったからだ。しかし必ずしも彼が今日ここへ来るとは限らないし、“バレンタイン”という話を耳にしてお菓子を作ってみたのも、私の単なる気まぐれなのだ。

「そう、単なる気まぐれよ……。」

 そう呟いて大きく欠伸をする。時計を見ると既に12時を過ぎていた。
 もう帰ろう。
 諦めて柔らかいソファから腰を上げた、その時。不意に扉の開く音がして私に声がかかった。

「——おや、先客ですか。」
「ハ、ハク……!」

 心臓が跳ね上がる。

「隣に座っても?」

 温和な笑みを浮かべた彼がそう聞いたので、私は動揺しながらも必死に頷いた。そして自分自身も少し端の方に寄って再び腰を下ろす。
 ち、近い……!
 すぐ隣にハクの手が、顔が、体がある。そう考えるだけで自分の顔が、真っ赤な林檎のように火照ったのが分かった。
 そんな私の気は知らずに、ハクが不思議そうに首を傾げる。

「しかし珍しいですね、何故キラがここに? それに先程から気になっていたのですが、この甘い匂いは……?」
「あっ、そうだった!」

 緊張の余り当初の目的を忘れかけていた。
 私はハクの方に向き直ってピンクの小包をおずおずと差し出す。

「あ、あのね、地球では二月に“バレンタインデー”っていう日があって、自分の好きな——じゃなくて、自分が日頃感謝している人に、お菓子を渡すの!
 それピアから聞いて、もう五月になっちゃうけどお菓子作りするのも良いかな、って……。」
「それでこれを僕に?」
「う、うん……。一番失敗が無いっていうクッキーを作ったんだけど、何故だか上手く焼けなくて。それ、六回目なの。まだちょっと焦げているけど……。」

 無意識のうちに早口になり、余計な事まで喋ってしまった。
 そんな私からクッキーを受け取ったハクは優しく微笑む。

「ありがとうございます。丁度糖分を取りたかったのですよ。」

 そう言って慣れた手つきでリボンを解いた。香ばしい香りと共に、褐色の良い焼き菓子が現れる。
 その一つをつまむと、ハクは何の躊躇いも無く口へ放り込んだ。私は彼がそれを黙々と咀嚼する姿を、緊張の面持ちでじっと見つめる。
 ——やっぱりまだクッキー黒かったような……味見したときは美味しかったけどハクの舌に合わなかったらどうしよう……。
 そんな思考の輪廻から逃げ出せずに頭を悩ませていると、突然ハクが手を止めた。

「ご馳走様でした。とても美味しかったです。」
「本当!? 良かったぁ……ってもう食べちゃったの?」
「えぇ、お腹が空いていたので。また作ってください。」
「うん!」

 私は破顔した。と同時に心の中でほっと胸を撫で下ろす。
 気に入ってくれたみたい。また作ってあげようっと。
 先程のハクの言葉を思い出すと、自然と笑みが零れる。が、彼に気付かれないよう必死に噛み殺した。

「……」
「……」

 沈黙が続く。
 ハクは別に気にならないようだが、私の方は何か会話を続けないと色々な意味で心臓が破裂しそうだ。
 何か話題を……。そう考えていると、ハクの持っている本が目に付いた。

「それ……何の本? よくここで読んでいるわよね。」
「あぁ、勉強ですよ。」

 言いながらさりげなく本の表紙を隠すのが見えた。

「勉強? もしかして、学校へ行きたいの?」
「…………逆にキラは、学校へ通いたいと思ったことはありますか? 例えば、あの有名な『銀河の学校』とか。」
「うーん……」

 聞き返されたので、私は困って首を捻る。少なくともそんな感情を抱いた記憶は、あまり無かった。
 その代わりに幼い頃の事を思い出し、辛くなる。
 その微妙な表情の起伏を感じ取ったハクが、心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「……どうしました?」
「あ……ううん。ちょっと小さかった頃思い出して。」
「キラの幼い頃、ですか。」

 ハクが少し興味を持ったようだ。
 ——困ったなぁ。
 私は苦笑する。本当は誰にも言わないつもりだったんだけどハクなら良いかなぁ……。
 「ちょっと長くなるけど」と前置きをして、ハクが頷いたのを確認すると私はぽつりぽつりと語り始めた。

Re: ☆星の子☆     最新話うp! ( No.554 )
日時: 2013/02/14 20:14
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
参照: 最新話107話の前にお読み下さい。

「あのね、私妹が居たの。私は昔から運動とか大好きでよく外駆け回っていたんだけど、妹は打って変わって大人しくて。それこそ読書とかが大好きな妹だったんだ。……あ、名前はユラって言うの。そのユラが、よく学校行きたい、って言っていた事を思い出して。」
「あの、こんな事を聞くのは何ですが……他界されたのですか?」
「うん……もう七年くらい前の話かな。妹とは、趣味こそ違ったけれどとっても仲良しだったから、その時は何日も食事が喉を通らないくらい、ショックだったわ……。」

 その頃を思い出し、楽しかった記憶とこの世に絶望した日々が入り混ざって走馬灯のように私の脳内を駆け巡った。
 すると次は目尻が熱くなり視界が歪んできたので、私は目をしばたかす。泣き顔は、見られたくなかった。

「……死因は?」

 ハクが聞き辛そうに問う。
 思い出す。
 あの血塗られた日の事を。目の前で音も無く消滅した大切な家族を。政府に強い憎悪の感情を抱いた事を。また、一瞬だけ見えた、妹を殺した奴の後ろ姿を。そして……
 その仇を討つため、反乱軍に入隊する事を決意した、忘れられない満月の夜を。
 様々な感情が込み上げてきたが、私は一言簡潔に言う。

「政府の人間に殺されたわ。」

 ハクが隣で息を呑んだ。
 私は続ける。

「私の目の前で、喉を掻っ切られた……確か短剣だったと思うんだけど、肝心な敵の顔を見てないの。」
「もしかして反乱軍に入った理由も……。」
「うん、そいつにこの手で復讐するため。
 ————ってこんな暗い話はもうやめよ!」

 これ以上話すと自分を見失いそうで怖い。
 私は無理に笑顔を作り、明るく言った。ハクはまだ何か聞きたげだったが、諦めたように口を噤み寂しく微笑んだ。
 私は再びハクの手にある本に目を止める。
 何故だか先程からハクは、その本を隠すように後ろに手を回していた。

「ところでさ……さっき話逸らされたけど、その本なぁに?」
「え、えっと、これは……」

 ハクが目を逸らした。苦笑いを浮かべながら、さりげなく本を私の目に見えない位置へと遠ざける。
 ……怪しい!
 私は不敵な笑みを浮かべ、本へ手を伸ばした。ハクが素早く避ける。

「逃がさないわよっ!」

 そう言って私はそれを掴みにかかった。
 ハクは必死に逃げるが、私の方が身体能力は上。結果、数秒後にはその本は私の手にあった。
 私は獲物を狩るような目つきでその表紙をさっと確認する。
 驚いて声が漏れた。

「————心理学?」
「あまり見ないで下さい……。」

 ハクが珍しく頬を赤らめる。
 しかし私は可笑しさに笑いを堪えながらも、ぱらぱらとページを捲った。
 と、何やら本の右端に折り目がついているページを発見する。
 どれどれ……。
 私は一番端にある、大きなフォント文字で書かれた題目を読み上げた。

「えーっと……『人は笑顔に騙される!? 良い人を演じたいなら笑顔は必須!』……
 あはは、何これ! まるでハクじゃない!!」

 ついに我慢が限界を超えた私はお腹をかかえ笑い転げた。笑ってしまうと止まらないもので、涙まで溢れてくる。
 一方ハクはと言うと、私の言葉に一瞬身を硬くした。そして少し不自然な笑いを浮かべ「ご冗談はよしてください」と力なく言う。後になって考えると、あの時のハクはいつもより大分おかしかったが、私は私で笑い続けていたので別段気にならなかった。
 それからしばらく経ってようやく落ち着きを取り戻した私は、少しハクに申し訳なくなり本を返した。
 ソファに腰を下ろす
 そんな私達を、不意に満月が顔を覗き明るい月光で照らした。窓から差し込む幻想的な月明かりを眺め、私は先程の会話を思い出す。
 無意識のうちに、私は言葉を紡いでいた。

「——ハクは……反乱軍に入った理由、あるの?」
「僕、ですか。」

 ハクは予想すらしなかった質問に、一瞬言葉を詰まらせる。
しかし次に妖艶な笑みを浮かべ、私に優しく囁いた。

「また機会があったら、教えますよ。——二人きりの時に、ね。」

 その瞬間私の心臓が騒がしく鐘を打ち鳴らした。鼓動がうるさい。心臓が破裂しそうだった。
 頬を紅潮させ口をパクパクしていると、そんな私を見かねたようにハクが忍び笑いを漏らした。腰を曲げ、クツクツと楽しそうに笑っている。
 「ひ、酷い! からかったのね!」と言うと「先程のお返しですよ」と返された。確かにその通りだから文句も言えない。
 そしてしばらく膨れっ面をしていた私は、「でも——」と声色を明るくする。

「戦争が終わったら、ちゃんと話してね。約束よ。」

 そう言って私は右手の小指を、ハクの前に差し出した。
 ハクは複雑な表情をして一瞬戸惑う。が、諦めたようにふっと笑い、自分の小指を私の小指に絡めた。
 胸の辺りが温かくなり、私は幸せな気分になる。
 すると私は思い出したようにまた、「あっ、それと……」と付け加え、少し強く言った。

「戦争に勝ったら、一緒にまた普通の、幸せな生活を送ろうね。これも絶対よ!」

 それを聞いたハクは、いつもの微笑とは違う反応を示した。勿論笑みなのだが、泣き笑いのような……それでいて何処か寂寥感の漂う、そんな笑み。
 何だか不安になった私が心配して顔を覗き込むと、ハクは今にも消えそうな優しい笑みを浮かべ頷いた。

「————そうですね。」

 この後、いつの間にかお互い眠ってしまい、起きた時には私の頭はハクの膝の上にあった。
 つまり彼に膝枕されていたのだが……これはまた別の話。

Re: ☆星の子☆     最新話うp! ( No.555 )
日時: 2013/02/14 20:15
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
参照: 番外編を読み終わった後にお読み下さい。

17章     107話「笑みの裏」


南軍 空中 レオ——

 双子の顔が悔しげに歪む。それが落下していくのをしばらく呆然と眺める俺の中で、激しい憎悪の感情が沸き起こってくるのを感じた。
 振り返る。
 目に映るのは、変わらない笑みで俺を見つめる幼い少年だけ。
 拳を振り上げる。
 今の俺には敵か味方かなんて関係なかった。ウルを刺した。戦う理由はこれだけで充分だ。
 地を蹴る。加速する。
 そして俺の拳が仮面のような作った笑みに届く、その寸前。
 まるで無機質のように感情が読み取れない彼の瞳が形を変えた。ただ微笑んでいる奴の目ではない、笑みの中に今まで潜んでいた悪魔が、姿を現した瞬間だった。

「シャドー。」

 何の起伏も感じられない、冷たい声が異様に響く。
 そして唐突に黒い影が俺の前を掠めたかと思うと、何処までも真っ黒な獣が大きく口を開け俺に牙を剥いた。
 咄嗟に体を退け反らし、その一瞬出来た隙に俺は間を取る。
 遅れて心臓が思い出したように早鐘を打ち鳴らし始めた。嫌な汗が額を伝う。
 ——長年の勘で何とか回避したが……今のはヤバかったな。少し遅れていたら、拳ごともげ食われていたところだった。ちょっと冷静さに欠けたか?
 そんな心情を悟られないよう、俺は不敵に笑い歯を見せた。

「はっ、お前の犬だったのか。随分イカした真似してくれるんだな?」
「えぇ、僕の力を具現化して作った、言わば使い魔です。よく出来ているでしょう?」

 ハクは意図の取れない微笑を顔に貼り付けたまま、答える。横で大人しく控えている“シャドー”と呼ばれた漆黒の獣の喉元を優しく撫でるその姿からは、有り余るような余裕を感じ取れた。
 俺は声を低くして問う。

「……何かの悪い冗談とかじゃ、無いんだな?」
「全て真実ですよ。」
「……何故寝返った?」
「寝返り? 嫌だなぁ。」

 乾いた笑い声が響いた。少し前まではとても親しみを覚えたその声が、今では聞くだけで不快感を持たずにはいられなかった。

「寝返りなんて一度もしていませんよ。僕は最初から、君達の敵だったんです。いつばれるかヒヤヒヤしましたが、反乱軍の皆さんが鈍いので助かりました。」

 「ね?」と小首を傾げ、俺を嘲笑うかのように笑みを浮かべる。
 その瞳は何処までも深く、暗くて——あぁ、本当にこいつは俺達の仲間じゃないんだな。その真実を痛感させるには充分だった。
 ——じゃあ殴られても文句は言えねえよなぁ?
 沸々と俺の中で燃え上がる怒りを押し込めるように、きつく拳を握り締める。感情に身を任せてはならない。周りを見失ってはならない。
 それでいて、ハクをぶっ飛ばす!!

「おいハク。そいつはもうお前と戦う準備が出来たようだが、俺はどうすれば良い?」

 執事服に身を纏ったジオが少し声を荒げ問う。敵をハクに取られた事が気に食わないのだろうか。
 ハクは「では他の南軍の相手を——」と周りを見回すと、困ったように眉間に皺を寄せた。

「おやおや……貴方以外の戦員は全て、もう戦えないようですよ?」

 言いながら下を見る。つられて俺も視線を落とす。
 そこで数十人の戦員と、少し離れたところで横たわるウルを見つけた。皆が皆重傷を負っていて、他の助けを待っている。しかしそこにいる戦員は、最初の数の半分も満たしていなかった。
 絶えず火の粉が舞い散る夜空を見つめる。心臓が鷲掴みにされたような錯覚を覚えるが、いい加減この感情にも慣れてしまった。

「シャドーには今朝、餌を多めにあげたというのに……使い魔は力の制御が出来ないのが難点ですね。」

 大袈裟に溜息をついては、妙に哀愁を帯びた声色でハクは語る。

「しかし……一匹しか残らなかったのは残念です。烏合の衆も侮ってはいけないようだ。」

 そう言うとハクは、右手を“シャドー”と呼ばれた黒い犬の頭に乗せた。すると漆黒の犬は『影』となり、ハクの右手から彼へと吸い込まれていく。
 刹那、圧倒的な力の奔流が俺を襲った。
 台風かと見間違うほどの、強風。それに紛れ流れ込む、絶対的な力。
 異様な光景だった。
 年端も行かない少年が柔らかい笑みを浮かべ、誰をも畏怖させる異常な威圧感を放っている。俺は一瞬自分の目を疑った。
 俺は推測する。きっとハクは反乱軍に乗り込むにあたって、この異様な力を隠すため三匹の使い魔に自分の力を授けた。その内二匹は南軍の激闘により討伐したので、残った一匹に授けた自分の元の力を、今再び併合したのだろう。
 ——一匹でこの変わり様だ。三匹とも融合していたら……末恐ろしい奴だな。

Re: ☆星の子☆     最新話うp! ( No.556 )
日時: 2013/02/14 20:16
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
参照: 番外編を読み終わった後にお読み下さい。

 そんな彼が、不意に目を止めた。俺を通り過ぎ、遠く後ろを見ているようだ。
 ——何だ?
 後ろを振り向きたい衝動に駆られるが、敵に背を見せてはならない。
 何となく嫌な予感がする俺は、逸る焦燥を抑え言う。

「早く始めようぜ? 俺は今、お前ら二人をぶん殴りたくてうずうずしてんだ!」
「——ジオ、彼は任せます。」
「……あ゛?」
「どうやら僕にお客様のようだ。」

 ハクは笑いかける。
 俺にではない、俺を通り過ぎた、もっと後ろに————
 まさか——!?
 耐え切れず、振り返る。目に映ったのは、今にも泣き出しそうな表情で俺らを見つめる。か細い女。赤髪が風になびき、時折彼女の顔に影を作った。

「…………ハク? 本当に、ハクなの……?」

 ほとんど放心状態のようなキラの呟きが、胸に刺さる。
 よりによって、何でキラがここに……!?
 俺自身も動揺していたのかもしれない。掛ける言葉も見つからず、指一本も動かせず、ただその映像を客観的に見ていることしか出来なかった。
 するとハクは、その隙にキラのすぐ目の前に降り立つ。そして彼女の耳に唇を近づかせると、そっと囁いた。

「だから、北軍を離れないでと言ったでしょう……?」
「————っ!」

 少し遅れて、キラは飛び退く。怒りと、悲しみと、けれどどうしようもない愛しさを映す彼女の瞳が歪んだ。

「本当にハクが、ウルを刺したの……?」
「そうです。」

 何の揺るぎも無く、ハクはそう言い放つ。
 それを聞いたキラの瞳が潤んだ。同時に手に持った大鎌を、覚悟を決めたようにしっかりと握り直すのが見える。
 次には赤く燃えるような灼眼に女戦士としての決意を秘め、残忍な笑みを浮かべる幼い少年を強く見据えた。
 「面白そうだしちょっと観戦するか」とジオが後ろでぼやくのが聞こえる。

「私達は、もう味方じゃない……! 手加減はしないわよ。」
「手加減?」

 ハクが首を傾げ可笑しげに笑う。

「駄目ですよ、キラ。そんな生ぬるい事言っちゃ。」

 そう言うと地を蹴って、一瞬の間にハクはキラとの距離を縮めた。キラが息を呑んだ。
 そんな彼女の、丁度心臓の部分に人差し指を置いて、ハクはどこか冷たさのある声色で言う。

「どうせ二人きりになったら、わざと負けて僕を逃がすのでしょう?
 僕には聞こえますよ、貴方の声が。だって一番長い時間、共に居た仲ですからね——」

 我に返ったキラが、乱暴に大鎌を振った。しかし動きが遅すぎるし、動作にムラがある。大きな黒い鎌は、虚しく空(くう)を切るだけだった。

「おっと、危ない。でもそれじゃあまだ足りません。」

 酷く動揺し荒い息を吐くキラと再び間を置いた少年が、妖しげに微笑んだ。
 体中に悪寒が走る。
 やめろ、それ以上何も言うな! 何か、何かが壊れる……!
 そんな俺の願いも虚しく、ハクは口を開く。
 そして次の瞬間、俺は聞いた。
 彼女の何かが、決定的に崩壊する音を————。

「教えましょう。貴方の妹は、僕がこの手で殺しました。
 キラ……貴方の本当の仇は、この僕です。」

Re: ☆星の子☆     最新話うp! ( No.557 )
日時: 2013/02/16 15:41
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)

 こんにちはー^^
 頑張りましたよ、本編&番外編同時更新……流石にきつかったです。もう絶対しない。(笑)
 本編は先週の日曜くらいにあがって、番外編を書き始めて4日……バレンタインの準備もあるしこういう時に試験勉強って重なる物でして(苦笑) 徹夜覚悟で頑張りました。
 だけどこうして14日に無事うpできて、嬉しき事限りなしです。
 ちょっと本気で疲れたので、丸一週間執筆放棄します(`・ω・´)(こらw


 話を変えて、小説の個人感想(?)を言うと……
 キラハクが好きすぎるっ!!><

 この1週間ちょっと、二人を書きすぎて自分の小説キャラ愛が酷い事になっております(笑)
 ハクを裏切り者にしたからこそ、この二人をより一層応援したいのかなぁ〜、なんて(*´ω`*)
 番外編とか、書きながら一人でニヤニヤしていました∀
 そうそう、番外編のページ数が実は凄い事になっていて、番外編用の一サイズ小さいノートがまたあるのですが、そのノートで11ページ半も書いてしまいました∑ 4日間でよくこれ書いたな!(汗) 文字数にすると4000字ちょっとです。誰か自分を褒め称えt(黙れ
 最初に本編書いて、最後にいきなり『キラの妹が殺された設定』を付け加えてしまった物ですから、番外編にそれを食い込ませるのに苦労しました;
 楽しんで読んでくださると嬉しいです!
 楽しく読める内容でもないですがww
 
 頑張ってキラとハクをどうにかします。
 ではーノシ


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119



この掲示板は過去ログ化されています。