コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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〜玲瓏の奏でる音の色〜
日時: 2010/12/17 19:57
名前: ルリ♪ (ID: JLxwojUk)

皆さん初めまして!ルリ♪と申します。
え〜……題名は、玲瓏れいろうの奏でる音の色と読みます。よろしくお願いします。

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Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.9 )
日時: 2011/01/04 00:08
名前: ルリ♪ (ID: Y8UB0pqT)







第二話 大切な思い出
「随分と動揺しているようだねあの娘は……」
「無理もありません。血を分けた実の妹なんですから……」
「ああ……かなりショックだったようだ…」
別室では時雨桜、星蘭、光凛の三人で話し込んでいた。
「私達もとても驚きましたが……一体どうして……」
「………霧桜……」
星蘭と光凛も天桜ほどではないにしても、ずっと落ち込んでいた。二人は昔、天桜と霧桜をずっと見守ってきたため、あの娘たちにとっては姉と兄のような存在でもあったのだ。
しかし、このままだと敵に「瑠璃の玉」をいとも簡単に奪われてしまう。一刻も速く天桜の気を立たせなければ……
しかし、天桜がすぐに立ち直れるとは思わない。
そう考えた時雨桜は真剣なおもざしで話を切り出した。
「あの娘の……霧桜との思い出全ての記憶を封印しようと思う。」
「…………!?」
これには二人とも驚きを隠せず絶句した。
それでも、時雨桜は話を続ける。
「仕方ないさ……あの娘がそう簡単に立ち直れるとは思えない。……記憶を封印できるのは星蘭……あなたしかいない。」
「ですが………」
「時雨桜様!それはあまりにも残酷です……!」
さすがに声をあらげる光凛だが、時雨桜はその抗議を平然と受ける。
「仕方のないことです。それが、一番いい方法なのです。いいですか、光凛……私達の任は「瑠璃の玉」を守ること。それをたがえてはいけません。」
そう言われた光凛は悔しそうに顔を歪め、部屋から無言で立ち去った。
そこで星蘭は、こらえきれず、頬に一粒の涙をつたわせた。
彼女達は、あの娘がどんなに妹を大切にしていたかよく知っている。そのため、あの娘の幸せな時間を……思い出を封印することはとてもつらいことだった。
しかし、決心したように顔をあげた星蘭は言った。
「私が、あの娘の記憶を封印します…」
そう震えた声で紡いだ言葉はとても小さいものだったが、心にずしりと重くのしかかった。
それを察した時雨桜は一つ頷いて泣いている星蘭を優しく抱きしめた。
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「天桜……少しいいかしら?」
「は、はい……」
星蘭の声に慌てて返事をしてぐいぐいと涙をぬぐった天桜は扉を開け、無理やり笑った。
「どうしました?…何か……」
すると、いきなり星蘭が懐からなにやら数珠のようなものを出した。
「天桜…ごめんなさい……!」
「えっ?………!」
その瞬間、星蘭の指が天桜の額を突いた。
そして、まばゆい光を放つ。
「また……さんにんで……」
頭の中に、いつの日か発した言葉が淡くはじけた。
「………っ……」
なすすべもなくその場に崩れ落ちた天桜を見て、星蘭はへなへなと座りこんだ。

                   

Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.10 )
日時: 2011/01/04 01:03
名前: ルリ♪ (ID: Y8UB0pqT)

「ほぅ……あちらも随分と大胆な真似をしてくれるじゃないか……」
「ええ……まさか記憶を封印するとは……背に腹はかえられない…といったところでしょうか……」
暗闇の中、ある二つの影が対峙していた。
一方は女性、もう一方は青年のようだ。二人の前にはぼうっと青白い光が薄く照らしている。
「しかし、いつよ……あの天桜とかいう奴の力…お前も感じただろう?」
「ええ。あの霧桜にあれほどの深手を負わせるとは……少々驚きました。どうします?影夜えいよ…」
「あぁ…案ずることはない。この俺が必ず……」
「影夜様!乙姫様!」
いきなり名を呼ばれ、二人が振り返るとそこには霧桜が立っていた。
「このたびはご心配をおかけしました……」
ぺこりと頭を下げる霧桜に乙姫はほのかに微笑む。
「腕はもういいのですか?」
「はい。申し訳ありませんでした。」
すると、二人のやりとりを見て影夜が口を開く。
「霧桜……久しいな。随分と苦戦しているようではないか…」
「は、はい…すみません……」
しゅんと落ち込む霧桜を見て彼は一瞬目を見張ると霧桜の頭をポンポンと軽く叩いた。
そこへ奥の部屋からか細い女性の声が響いく。
「霧桜、乙、影夜?そこにいるのですか?」
この声には三人ともぎょっとして慌てて部屋に駆けつけた。
「いけません藍羅様!まだお休みになっていなくては!」
声をあらげる霧桜にびくっと肩を震わせた藍羅は視線をさまよわせた。
彼女は盲目もうもくだ。見開かれた目は決して霧桜達を見ることは出来ない。
「ごめんなさい……でも私は……」
「いけませんよ藍羅様…きちんと横になってください。」
今度は静かな声で横になるようにうながした霧桜は一つため息をついた。
「影夜様……あとは……」
「ああ。俺がついていよう。」
そう言うと彼は立ち上がり藍羅の手を優しく握った。
「ここは彼に任せて……行きますよ、霧桜…」
「はい……」
そして二人は部屋を後にした。

Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.11 )
日時: 2011/01/05 00:38
名前: ルリ♪ (ID: Y8UB0pqT)


影夜に藍羅を任せて、部屋をあとにした二人は暗い廊下をずっと沈黙したまま歩いていた。
「……霧桜……?」
乙姫が呼びかけても一向に反応しない霧桜を横目に彼女はそっとため息をついた。
先ほどからずっと考え込むようにうつむいて歩いている霧桜はぐっと手のひらを握り締めていた。おそらく、先日の失態にまだ責任を感じているのだろう。
「霧桜……先ほど影夜と共に水鏡に里を映してみたのだけど……あなたの姉…天桜の記憶を封印していた所が映しだされてね……」
長い沈黙を破るように話を切り出した乙姫は静かな口調で言い聞かせた。
するとばっと顔を上げて彼女の顔を覗き込んだ霧桜は再びうつむいた。
「そうですか……そうですよね。あの状態のまま玉を守ることなんて出来ませんものね……」
震える声で無理に笑顔を作っていた霧桜の頬に一粒の雫が流れ落ちた。
「霧桜………」
「大丈夫です。平気ですよ?相手が誰であろうと、私は必ずあの玉を手に入れてあの方のお役に立ちます。」
心配して声をかけた乙姫にぐいっと涙をぬぐった霧桜は、先ほどほどより強い光を宿した瞳で言葉を返す。
そのとき、乙姫はこの娘の心はとても強いものなのだということを改めて感じた。
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あの事件の後、一度都に戻った天桜は何事もなかったように鈴音として仕事を続けていた。
「鈴音〜!こっち終わったから先にあがるよ〜!」
「お疲れ様!」
ふぅと息を吐いて着物を修繕していた鈴音はふと手を止めた。時刻はすでに丑の刻をまわっていた。
「あ〜……もうこんな時間か…そろそろ私も休もうっと…」
そう呟いて自室に向かおうとした直後、頭の中に知らぬはずの少女の姿が浮かんだ。
「………?……気のせいか…」
一瞬首をかしげた鈴音はふわぁっとあくびをして横になって目を閉じた。

Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.12 )
日時: 2011/01/06 23:41
名前: ルリ♪ (ID: Y8UB0pqT)

暗い。ずっと闇が続いている。
「なんだろ、ここ……」
きょろきょろと視線を巡らせても辺りはずっと闇だ。妙に寒いし、冷たい風がふいている。
鈴音は少しずつ歩きはじめた。すると、あることに気づく。
「あ、あれ?この服……」
今身にまとっているのは薄いうちぎだけ、のはずが天桜でいるときの巫女服を確かに着ている。
全く意味の分からないまま足を進めると、ずっと奥のほうで小さな泣き声が聞こえた。慌ててその声のほうに走る。すると、白い髪で自分と少し似ている少女を見つけた。その子はずっと一人で暗闇の中、膝を抱えて泣いている。
「ちょ、ちょっと!」
急ぎ足でその子に近寄ろうとする。が、いきなり見えない壁のようなものに阻まれた。
「うわっ………何よ、これ……」
ペタペタと壁を確認するように触っていると、ある女の人が現れた。漆黒の髪は長く、地面につくくらいで髪に装飾品が沢山ついた優しい顔の女性だ。
その女性はそっと女の子に目線を合わせるようにして膝をまげてかがむと微笑みながら少女に声をかけた。
しかし、その声はここまで届かない。その様子をじっと見つめていると女性がその少女の頬に手を伸ばす。そして何やら呪文のような言葉をつぐむ。すると、少女の頬や額など、みるみるうちに黒い紋章が浮かび上がった。
天桜にはこの光景に見覚えがあった。そう。千代や衣代を配下に置いたとき、こうやって契約したのだ。
やがて、また薄く微笑んだ女性は少女の手を優しく握り歩いて去っていった。そのときの少女の顔は花がほころんだように笑っていた。まるで、親子のように。
しかし、あの少女………何かが引っかかる。私には何か大切なものがあった。生きる理由であった大切な何かが。欠けている。そう。忘れたくない、忘れてはならない、忘れられない何かが。しかし、思い出せない。何も、何一つ思い出すことができない。
そんな自分になぜか無性に腹がたってぐっと手のひらを握った天桜はしばらくそこに立ちすくんでいた。



Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.13 )
日時: 2011/01/07 00:28
名前: ルリ♪ (ID: Y8UB0pqT)

「藍羅様………」
あれからずっと藍羅の手を握り続けていた影夜は深くため息をついた。
すっかり寝てしまった藍羅を見て薄く笑みを浮かべる影夜の表情はとても優しいものだった。
刹那、いきなり部屋の空気がとげとげしいものに変わり、影夜は手を離して彼女との距離を置いた。すると眠っていたはずの藍羅の目が開き、上半身を起こした。
「影夜よ、瑠璃の玉はまだ手にはいらぬのか?わらわはもうもう待ちくたびれた。この女の体も限界だしな。迅速に片をつけよ。」
「申し訳ありません。しかし、いずれ必ずあなた様のもとへ献上いたします。それまで、いましばらくのご猶予を。」
藍羅のものではない凛とした声で問うた女は次の瞬間、ふんと鼻をならしてスッと消えていった。そして藍羅は前のめりに倒れた。
それを片手で支えた影夜の表情は徐々に険しいものへと変わった。
「影夜様……」
いきなり名を呼ばれ、ゆっくり振り返るとそこには霧桜が立っていた。
「今のは……」
「ああ。我らが主からの命だ。迅速に片をつけよ、と。」
すると、同時に二人の表情が曇った。
「はやく、片をつけないと藍羅様が……あれ以上ひょういされると本当に危ない。」
「ええ。藍羅様のためにも。準備を進めましょう。」
私達はあの方……藍羅様に救われた。手を差し伸べてくださった方を守るために。
ーーーーーだ か らーーーーーー
どんなものでも投げうってでも大切な存在を敵にまわしても………
立ち止まれないから………
そして二人は闇にまぎれて姿を消した。


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