コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

〜玲瓏の奏でる音の色〜
日時: 2010/12/17 19:57
名前: ルリ♪ (ID: JLxwojUk)

皆さん初めまして!ルリ♪と申します。
え〜……題名は、玲瓏れいろうの奏でる音の色と読みます。よろしくお願いします。

Page:1 2 3 4



Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.4 )
日時: 2011/01/04 01:27
名前: ルリ♪ (ID: Y8UB0pqT)

第一話  再開

時は平安。この家では毎日とても忙しい日々をおくっていた。
「鈴音……鈴音!鈴音ってば!そろそろ起きて!」
ゆさゆさと体を揺さぶって声をかける。すると、やっと彼女は目を覚ました。いつも鈴音は寝起きが悪い。
「ん……何?」
うっすらと目を開けて上体を起こした鈴音は一度大きなあくびをして、親友に体を向ける。
「何……じゃないわよ!もうこんな時間よ?開店しないと…」
「あ〜………ごめん…なつ…」
「それじゃあ、速く着替えきてね!」
そう言うと彼女はお店のほうに戻っていった。
ここは、都。十七歳の鈴音が営んでいるのは、着物の仕立て屋で、まだ若いにも関わらず丁寧な仕事をしていて都でも評判だ。
そして、この仕事を手伝っているのが同じ歳の小野田 夏。手際よく、何でもこなすなかなか優秀な娘で、こちらも評判だ。そして、なにより彼女は大切な「親友」であり、共に暮らしている「家族」だ。
だが、その大切な存在である彼女にも話せない秘密が鈴音にはある。
鈴音の秘密……それは、私が神に仕える巫女であること。この姿は仮の姿であり、徒人には使えない術が使える、ということ。私の母は昔、ある事件によって亡くなっていて、実の妹も、その事件に巻き込まれて行方知らずとなっている。生き残った私をここまで育ててくれたのが、祖母である「時雨桜」だ。彼女は厳しくも、周りからとても慕われている人で、この店で仮の姿のまま働くようにと言われていた。
私の故郷はここの世界にはない。「瑠璃の里」という里で小さい頃は暮らしていた。母と、妹と共に。
普通、巫女と呼ばれる者は毎日、祈りを捧げていなくてはならない。なぜ、私がここにいなくてはならないのか、一度祖母に問うたが、教えてはくれなかった。

Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.5 )
日時: 2010/12/27 14:45
名前: ルリ♪ (ID: JLxwojUk)

「お疲れ様……鈴音」
「はぁ……今日も疲れたね…それじゃあお休み♪」
「お休み〜♪」
仕事も一段落終わった頃、時刻はすでに就寝時間になっていたので、鈴音は自室に戻った。
「あ〜……眠い……」
もそもそと布団に入って目を閉じる。そのとき、部屋の片隅に置いてある丸い鏡が淡く光った。
「あ………」
それに気づいた鈴音は鏡の前に座る。すると、若い女性の声が響いた。
「天桜〜!……久しぶりね♪元気だった?」
「星蘭様!…あの……今は鈴音ですよ?……というか、どうしたんです?こんな時間に…」
「あのね〜…時雨桜様からお呼び出しがあったのよ〜!こっちに帰ってきて〜!」
「え………おばあ様が…」
ふむ……と考えこんだ鈴音は眉間にしわをよせる。
「まぁ〜とりあえず、こっち来て!」
「あ…分かりました……」
すると、鏡の光が消えた。
「………やっぱり行かないとだめか…」
しぶしぶ手で空中に印を描く。
「千代、衣代…」
すると、目の前に二つの影が舞い降りた。
「はい。天桜様……如何いかがいたしました?」
「私を里に送って頂戴!」
「承りました。」
すると、ふわりと風が巻き起こる。
その風は、三人を乗せ飛翔していく。                      〜瑠璃の里〜

「まだ来ないのかね、あの娘は……」
「まぁまぁ……時雨桜様…先ほど呼んだばかりなのですから……」
そこには、齡60歳くらいの女性と20歳くらいの若い女性が話しこんでいた。
そこに、軽やかな風をまとった三人が現れる。
「天桜、只今帰りました。」
「…………」
無言のまま鈴音の前まで足を進めた時雨桜は低い声で話しかけた。
「天桜……その出で立ち…着替えてこなかったのですか?」
「……あ……」
自分の姿を見下ろすと急いで出てきたために、薄い衣を羽織っているだけだ。
「天桜………」
「はっ…はい!……」
一段と低い声色で発せられた言葉は、それはもう迫力満点だ。
「今すぐ着替えてきなさいっ!!!!」
「はっ…はぃぃぃ!!!」
慌てて廊下を走り抜ける天桜の後ろ姿を見て彼女は深くため息をついた。
「まったく……あの娘は進歩しませんね…」
「時雨桜様……あれがあのような出で立ちなのは私が……」
「いいえ、星蘭……あなたのせいではありません。あの娘の失態ですよ。」
「はぁ……」
星蘭は苦笑を浮かべた。どうもこのお方はあの娘に厳しい。
すると、天桜がパタパタと走って戻ってきた。
「はぁ…はぁ…」
時雨桜は、いささか息を切らして戻ってきた我が孫を一瞥し、また深いため息をついた。そこに、一人の青年が駆けてくる。
「遅れて申し訳ない!」
こちらも多少息を切らして肩を上下させている。
「光凛……遅刻ですよ!」
「すまん、星蘭……天桜…久しぶりだな!」
「はぁ…お久しぶりです光凛様…」
「さて!みんな揃ったね!……これから大事な話がある。しっかり聞きなさい。」
真剣な表情で話す時雨桜に全員固唾かたずを飲む。
「この地に封印されている瑠璃の玉のことなんだが……何者かに狙われている。」
「!!」
これには皆、驚きを隠せない。それでも、時雨桜は淡々と話し続ける。
「先日、その何者かが術を使って結界を破った。辛うじて封印は守ったが凄まじい霊力だった。」
「それは……どんな…」
「ああ……年は…顔もよく分からなかったが……15か、16くらいだったな……たった一人で忍び込んできたんだ。」
ふと、天桜によぎる人物があった。
あの娘が生きていればそのくらいの年だった。もう、10年以上も前のことだが……
「おばあ様……それで私はどうすれば……」
「……それについては………!!」
刹那、外で凄まじい爆発が起こった。
鼓膜をつんざくような轟音が響き渡り、風が巻き起こる。
「これは……!?」
「天桜、光凛、星蘭!!」
「「「承知っ!」」」
時雨桜の掛け声にすぐ応答して、飛翔する。
「………くっ…あれは!」
前方に体を黒い布で覆った者がいる。
「貴様、何者だ……!」
光凛が問いただすと、謎の黒布の術者が振り返る。
「あら……もう来てしまったの…」
顔は布に隠れて見えないが、うっそりと笑ったように感じる。
「私は、我が主の命により、瑠璃の玉をいただきに来たのだけど………さすがに骨が折れそうね……」
そう言うと、女は手を上に掲げる。
「風斬!!」
凛とした声で叫ぶと、凄絶な霊力が刃となって放たれる。
「くっ!!」
もろに攻撃を食らった天桜は顔を歪めた。








Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.6 )
日時: 2010/12/28 00:16
名前: ルリ♪ (ID: JLxwojUk)

「「天桜!!」」
星蘭と光凛が同時に叫ぶ。
「あらあら……この程度でしたか……では、一気にかたをつけましょう!」
うっそりと笑い、再び手を掲げる。すると、青白い狼達が一斉に躍り出た。
「このっ……」
光凛は大剣を召喚し、星蘭は二本の槍を召喚する。
「こちらは私達が相手をする!天桜はあの術者を!!」
「はいっ!!」
天桜もさやから細い剣を引き抜いた。
そして一気に間合いを詰める。さすがに顔色を変えた術者は術を放った。
「っ……風刃!!」
「破!!」
だが、天桜の術で微塵と化す。そのまま相手の黒布に切りかかる。
「………っ!!」
すると、一気に飛翔した術者は苦笑する。
「………これではもう使い物にならないわね……」
天桜の攻撃で黒布はボロボロになってしまった。
「………貴様っ!!……まさか……」
「お久しぶりですね………お姉様!」
術者は黒布を脱ぎ捨てて、腰に差してある剣に触れる。
「……霧……桜……!?」
天桜は絶句して硬直している。そこに、間合いを詰めた術者が切りかかった。
「天桜っ!!」
光凛が叫ぶ。その声ではっと我に返った天桜は印を組んだ。
「千代、衣代!」
「「はい!」」
主の声に呼応して結界を成す。
「そんなものっ………!?」
結界を砕こうとした直後、術者の動きが止まった。
「霧桜…………退散せよ。」
はっと振り返ると髪の長い漆黒の衣装をまとった女性が現れた。
いつ姫様………」
すると、術者はくっと唇を噛んで刃印を結ぶ。
「今宵はこれにて退散いたします。お姉様、次はこの様にはいきませんよ…」
そう言い残すと、うっすらと微笑みを浮かべて夜の闇に溶け込んでいった。

Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.7 )
日時: 2010/12/28 00:14
名前: ルリ♪ (ID: JLxwojUk)

「お待ち下さい、乙姫様!!」
「なんです?霧桜……」
「先ほど……なぜお止めになったのですか?…あの程度なら、私一人でも………」
「……あなたが、あの者達と戦うには少々、荷が重いように思えたのですが………実際に、その傷……」
はっと霧桜は己の右腕を見つめた。先ほど天桜に負わされた傷は、思っていたより深く、今も血がポタポタと滴っている。
「その傷で本当に勝てたと思っているのですか?……あの者達はあなたが思っている以上に強いのですよ……」
そう言い残すと、彼女は苦笑し、去っていった。
「…………」
霧桜は自分の手を見つめる。
まだ、弱い。もっともっと強くならなければ………私は「あの方」を守れない。

     「あの方」を守る
     
      私はあの時誓った
     
そのために、私は…

「……きりざくら……」
ふいに懐かしい声が響いた。まだ、幼い頃に聞いたあの声。
そう。私はお姉様を慕っていた。大好きだった………それでも………もう、戻れない。

あの時、胸に刻んだ誓いを………

    果たすために。

Re: 〜玲瓏の奏でる音の色〜 ( No.8 )
日時: 2010/12/28 00:57
名前: ルリ♪ (ID: JLxwojUk)

「霧桜……」
生きていてくれて、会うことができて、嬉しかった。嬉しかったはずなのに………
「天桜………」
そっと声をかける星蘭に光凛は首を振る。
「今はそっとしておいてやれ……」
「えぇ………」
あの後、天桜は自室に戻って閉じ込もっていた。無理もないだろう。
ずっと、会いたかった。でも、こんな形では会いたくなかった………
天桜は見た。霧桜の顔に印のようなものがあったのを……あれは、配下の証。千代や衣代にも同じような印が顔にほどこされている。あの印を持つものには主が必ずいて、その主と契約を交わした証となっている。
千代や衣代の主は私だ。では、霧桜は?
あの時、“我が主に命じられて”といっていた。
もう一つ。元々、あの娘の目の色は黒曜石のような黒い色だった。だか、先ほどの霧桜の目は、血のような真っ赤な色だった。何故だかは分からない。分からないが……悲しい色だと思った。
どうすればいい?私には何ができる?
本当は答えが出ている。私達は絶対に「瑠璃の玉」を守らなければならない。
……でも……そのためには、あの娘と……
大事な妹。たった一人の妹と戦う……
嫌だと、ずっと胸の中で叫んでいる。
しかし、その声を聞き入れる者は誰もいない。
      
       私は…………
ねぇ……教えて、お母様
            ………私はどうすればいいのですか?


Page:1 2 3 4



この掲示板は過去ログ化されています。