コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 人を幸せにすることができるものは、人を不幸にすることができる
- 日時: 2011/01/15 08:41
- 名前: 阿部大希 (ID: tBL3A24S)
「ポワ、ポワワー」
いつもと同じ下校路を普通どうり帰っていた時、不意にそんな音が空から聞こえてきた。飛行機・・・にしては少し奇妙な音だった。
(ヘリコプター・・・か、)
などと俺は勝手に決め付けた。そうゆうのは珍しくもないし、頻繁に飛んでいるわけでもない、何より全く興味がなかった。
しかし、俺は空を見上げてしまった・・・・・・。
義務教育最後の年、つまり受験の年だ。別にエリート階道を進んでいるわけでもない、普通に町内の県立小・中学校と進んだ俺にとっては初めての受験だ。ほとんどのやつがそうだろう、それが普通だ。実感はない。しかし危機感は人並みもっているし、勉強もしている。一応進学してそこそこ良い大学にも行くつもりだしな。
中学三年生で夢持って進もうとしているやつのほうが珍しいだろう、無論俺はそんなもの持っていない。つまり普通、もっと言えば‘中の上’そんな人生を送りたい。送ったほうがいい。そう思っている。そう・・・思っている。
一、二年生の時は好きな教科、得意な教科もあったであろう。嫌いな教科だらけの嫌な時間割の日は、自分で楽しみを見つけたり、友人と多く会話したりして気をまぎらわしていた。しかし今、受験まで二ヶ月とない,もう受験のやつもいる、一月現在。学校に行ったって、これといって面白い授業なんてなかった。クラスメート達も、先生達もみな真剣だった。当たり前なのだが、つまらないのに変わりはない。ただただ(家に帰りたい。)そんなことしか考えてなかった、そんなある日の下校中だった。
UFOというのは誰しも一度は聞いたことがあるだろうし、イメージもわくだろう。興味を持つやつなんかも少なくない。だが、当たり前過ぎてすぐ覚めてしまう。
UFOなんて存在しない、信じない...そんな答えにしかたどりつかない。目撃談なんかもあるだろう。クラスのやつ,あるいは肉親に。だが、追っかけまわしたり,信じ続けるのなんてごく一部。本当に稀だ。もちろん俺は、そんなことしないし,十五年間見たこともない。信じてなど断じていない。だが、信じる信じないもない。それはあったのだ。
雪国ではないが一月下旬そりゃ雪が降る日もある。しかし、今は違う。快晴...とはお世辞にもいえないにしろ、太陽は見える。まぁ普通の天気だ。だがそこに、普通ではない物がある。あきらかにイレギュラー。この町に,世界に考えられない物。
「U・・・FO?」
としか言いようがない。人間が勝手に想像したイメージまんま。子ども向けの絵本に出てくるような、鉄のボールものを半分に切った上部,下部には円盤がついていて赤い球体が三つ出ている、大きさ軽自動車一台分ほど・・・まさしくUFOだ!!。その距離約十メートル。
さてキャトルミューティレーション,と言う言葉は聞いたことがあるだろう、俺も知っている。簡単に言えば、UFOにさらわれて改造される,なんて一体どこの誰が考えたか全国ネットで広がっている言葉だ。しかしそんなこと...というより何も考えられなかった。ただ呆然と立ち尽くし,唖然と口をあけ,比喩ではなく目が点になっていた。
と不意に、
「プシュー」
「!!」UFOのハッチ(?)が開かれた音で俺は我に帰った。
とにかく走った。体が危険を察知したようで、自分の足がこんなに速かったか疑った。五十メートルほどはなれたところで振り返った。家に帰る,警察に駆け込むのもありだろうそれが一番安全だ。いや、どこに逃げても安全地帯なんてないだろう。それより、見てみたかった。何年,何十年,何百年、人類が夢みたであろう宇宙人とやらの正体を。(おがんでやろうかチキショー)きちんと思考もできるようになってきた。だがそれは、すぐまたなくなった。
視力は悪くもなければ、ずば抜けて良いわけでもない。まぁ五十メートルほど離れていても、そこそこ顔は見える。出てきたのはこれまた想像してたどうり、得体の知れない生物......ではなく人間味あふれていた。だが、決して普通ではなかった、格好も,顔立ちも。
宇宙服にも見える,戦隊ヒーローのような白い服装で全身覆っている格好。しかし、それより目立っている...いやそんなもの吹き飛ばしている、腰まである長くて真っ直ぐな青い髪,とても整った顔立ち。年はそんなに離れていないだろう。
えらい美人がそこにいた。
家に帰っても勉強なんて手につかなかった。
宇宙人,はたまたきちんとした人間なのか、どっちにしてもUFOは本物だ。あの美少女は捕らわれていた人間ではないか、俺は見られていないか、もし見られていたら間違いなく殺されるだろうな。
などと考えることが多すぎて,危険すぎて、何もできなくなってしまった。テレビのニュースなんかを見ていてもそれらしきものは、やってないし,インターネットを見ても解決策はなにもなかった。当然っちゃ当然だ。・・・(くそ五臓六腑が逆流しそうだ。)
とにかく勉強はしないと、「UFOを見て」なんて通用しないし,時間は待ってくれない。
まぁ死ぬときは、それはそれだ。開き直って勉強しよう。そうだ、あれは俺の夢だったのかも...なんてどんどん現実逃避がひどくなっていった。わかってはいる,わかってはいるがそう思うしかなかった。
結局、全然勉強できなかった。一応自主学習一ページは提出のためやったが、内容は先生から「受験生としての自覚がない!!」と赤ペンで注意書きされるだろうなぁ。と思いながらいつもと全く違う,なるべく人が多い道を選んで学校に向かった。本当は休みたかったが、親に話しても信じてもらえないだろう。それに俺もあれは(夢だろう)と信じていた。一晩寝て、なんだかその思いは強くなっていた。不思議なことだ。
しかし、それは確実に現実だと知らさせるのは、そう後のことではなかった。
俺の登校時間は、速くもなければ,遅くもない、八時前後だ。しかし、今日は登校路が違ったため少し遅かった。と言っても余裕で始業チャイムには間に合ったのだが、いつもより友人達が多くたむろっていた。
「おはよー」
「...おはよう」
俺はなるべく普通どうりを心がけたが、そうはいかなかったらしい。かなり気にされた。さらに自分はきちんと寝たつもりだったが、クマがすごかった。友人からは
「徹夜で勉強したのか?」などとチャカされたが
それだったらどれほど良かったことだろう。俺はカラ返事を返して、朝のHRまでずっと机に突っ伏していた。
- Re: 人を幸せにすることができるものは、人を不幸にすることができる ( No.10 )
- 日時: 2011/01/16 19:37
- 名前: 阿部大希 (ID: tBL3A24S)
とりあえず、俺は人気のないところに行った。
朝だからな屋上なんて誰もいないだろう。だが屋上に入る必要はない。扉の前で話すことにした。朝のHRまで約十分簡潔に!
「えっと、渡部さん」
「あーそれ、偽名。‘渡部’ってここ〔日本〕で一番ポピュラーなんでしょ。だから」
ずいぶん勝手なことができるんだな。
「じゃあ、ルカさん」
「‘さん’付けしなくていいわよ」
わかった、呼び方なんて今どーでもいい! 頼むよ、教室ではつか学校では‘天使’やらなんやらの話をしないでくれ。
「あんた昨日『明日学校で』って言ったじゃない」
それは放課後にってことだよ!宇宙人ってのは、融通が利かないのがお約束なのか
「何それ、全っ然わかんない!ていうか私からしたら、あんた達が宇宙人よ」
わけわからんキレかたするな!時間がないんだ。
「とにかく...もっと‘周りの目’ってやつを気にしてくれ」
「なんで私がそんなもの気にしないといけないの。そもそもなんであんたは、そんなに気にしてるの」
だから、俺は普通がいいんだ。目立たずそれでいて,抑えることもない‘中の上’が俺のスタンスなんだって。前も言ったろ。
「あんたは、‘天使’なんだって。もう十分普通じゃないの」
それはお前の中だけだ。今まで普通に過ごせたんだから、これからもつーか一生普通で過ごす!
「ふっフン♪」
なんだかとても上機嫌になっている。まるでー俺を使いにできたような笑顔でー
「昨日‘天使’について色々調べてみたんだけど。あんた、まだ・・・・・・」
キーン,コーン,カーン,コーン。ベルが高々と鳴った。つまり、始業の合図だ。
「やっべっ」
もう今度は、こいつをほって、俺だけ階段を駆け降りた。
「あっ、ちょっと、どこに・・・」
教室に戻るに決まってんだろ!また普通から遠ざかってしまった。
「放課後にちゃんと聞くから」
「まちなさーーーい!!」
ーあいつは、何て言おうとしていたんだろう。とても気になったー
- Re: 人を幸せにすることができるものは、人を不幸にすることができる ( No.11 )
- 日時: 2011/01/16 20:04
- 名前: 阿部大希 (ID: tBL3A24S)
もう、このクラスで俺は普通ではいれなかった。
二通りの考えがある。残り二ヶ月足らずの中学校生活だ。今まで普通を保ってきた、この伝説を保ち続ける。という考えと、残り二ヶ月だし高校に行けばリセット。という考えだ。俺は絶対前者だ。なのにクラスの大半は俺と、関わらないようになるし、先生からは『あんまり変な趣味にうつつをむかすなよ』と、哀れむような目で見られた。俺が何したって言うんだ!
速く帰りたい...けど放課後は来てほしくない。
なんて世界の物理法則が捻じ曲がらないか、願っていると
「お前、渡部さんと付き合ってんのか?」
前の席のやつから、話しかけられた。こんな俺にも話しかけてくれるのは、長年の近所付き合いのたわものだ。
つか、やっぱりクラスのやつにはそう見えんのか。
「そうにしか見えん。にしても、いいよなぁ。あんな美人さんと。やっぱり最初はインパクトが強いほうがいいのか。うらやましいぜ」
そんな思考になれるお前のほうが、うらやましいぜ!
「谷沼。お前、UFOから出てきたやつ〔宇宙人〕を好きになれるか?」
「お前、宇宙人って本気で言ってたのか?・・・まっ、俺はたとえ宇宙人だろうが、地底人だろうが、美人さんなら大歓迎だ」
そうか。とことんうらやましいやつだ。俺は、到底そんな思考になれん。...こいつも、実際遭遇したらわかるだろう。俺の境地。
まぁ、こいつに共感されても何にも変わらない・・・がな・・・。
〜どっちにしても、放課後はやってくる〜
- Re: 人を幸せにすることができるものは、人を不幸にすることができる ( No.12 )
- 日時: 2011/01/16 20:38
- 名前: 阿部大希 (ID: tBL3A24S)
誰もいない教室で女子と二人っきりでお話。......なんてのは実に学生青春ドラマ的で、俺だってそういうのを夢見なかった、といえば嘘になる。今、現在俺はその夢を実現しているんだが...なぜだろう?ちっとも、うれしくない。
「何、ブツブツ言ってんの」
普通どうり自分の席に座っていると、俺のまん前にいるルカが言った。「放課後まで待ってあげたのよ」と言わんばかりに不機嫌でいやがる。
「いや、何も」
全く興味はないし,聞きたくもないんだが、約束を破ったら何されるかわかったもんじゃないからな。一応聞いている。
「〜神はその星に幸せをもたらした〜逆に言えば、幸せをもたらせば‘神’になれるのよっ」
なぜ学校で話しているかというと、立ち話するのもなんだし,学校にいれば完全下校時刻になって、自動的に帰れるからな。
「そうか。じゃあ幸せにしてくれ。目の前にいる俺を」
「あんたのこと幸せにしても、何にもなんないわよ」
どっちなんだよ!
「だったら、ボランティア団体にでもなんでも入れよ」
「そんな小規模な事やっても意味ないの!私はこの星の‘神’になりたいのよ!」
この星って地球のかよ!何千年かかるんだ。それ。
「別に世界中の人全員幸せにする。ってわけじゃいわ。それに‘幸せ’なんてその人の価値観だし、ただ『神様のおかげ』と思ってくれる人が、多くなればいいのよ」
なんだそりゃ、アバウトすぎだろ。そんなの本当に思ってんのか答え合わせもできゃしねぇ。
不思議な事だった。俺はいままで、こいつの色んな顔を見てきたが、こんなに・・・こんなに悲しんでいる顔、初めて見た。
「完璧な‘答え’なんてないわよ...」
この時なんでこいつが、真剣になったのか...今の俺には、全くわからなかった。
- Re: 人を幸せにすることができるものは、人を不幸にすることができる ( No.13 )
- 日時: 2011/01/16 20:43
- 名前: 阿部大希 (ID: tBL3A24S)
更新遅れてしまって、すいません。
しかし、おかげで3話連続で書き上げれました。
これからもよろしくお願いします。
ー本名は、レメディオス・ルカ・ジブリアーノー
- Re: 人を幸せにすることができるものは、人を不幸にすることができる ( No.14 )
- 日時: 2011/01/18 23:05
- 名前: 阿部大希 (ID: oHTfE6H6)
「完璧な‘答え’なんてない」
この〜神はその星に幸せをもたらした〜には、実際‘神’になる方法なんて書かれてないらしい。自分で読んで、自分で考え、自分で答えを導き、自分で実行する。俺達が持っている教科書なんかとは、天と地ほどの差がある。
俺がこの本を読もうとしたら、なんでも「直接脳に、文字が送られてきてオーバーヒートしてしまうからダメ」だと言われた。とことんまで魔道書だな。
(こんな国語辞書みたいな分厚い本、一回読むだけでも一ヶ月はかかるだろう。それをこいつは、何回も何回も読んで答えを出したんだな...題名なんかより深い内容で)
キーン,コーン,カーン,コーン。
また高々とチャイムが鳴り響いた。完全下校の合図だ。おそらく、もうじき先生方が、見回りに来るだろう。俺達も見つかったらややこしいことになる。それは、ルカも察したらしく、チャイムが鳴り終わる前に、さっそうと教室から出て行った。
俺は、チャイムのおかげで重たい空気から逃れられた。
でもちょっと後悔した・・・
ー何も言えなかったー
そんなことを思いながらゆっくりと家路についた。
この掲示板は過去ログ化されています。