コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 透明度五十パーセントの非日常。 【完結】
- 日時: 2011/06/18 15:08
- 名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
初めまして。
ファジーの方でひっそりと書かせてもらっています、風琳碧羅と申します。
何故か明るい小説を無性に書きたくなったので立てさせてもらいました。
初心者なので下手ですが温かい目で見てもらえれば嬉しいです。
*注意
自己満足です、八割方。
基本的になんでもありで書いていくので不快に思う場面があるかもしれません。その時はすぐにバックしてください。
−目次−
兄弟の絆。【完結】 >>7
透明度五十パーセントの非日常。【完結】 >>22
兄弟の絆完結 2011.05.27
透明度五十パーセントの非日常完結 2011.06.18
since 2011.05.23
until 2011.06.18
- Re: 透明度五十パーセントの非日常。 ( No.8 )
- 日時: 2011/05/28 19:09
- 名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
- 参照: 続編です。
零 不運の絶頂と感じる憂鬱
例えば、自分が途轍もない不運の渦の中にいるとしよう。その時、人はどう思うか知っているか? これ以上不運な事なんてありえない、と。俺だったらきっとそう考えるね。
だが、な。もっと凄まじい不運に襲われた時、人はどうも薄い反応しか出来ないみたいだ。
そして俺は、もう不運に慣れ切ってしまった、そんな哀れな高校生だと自分を紹介する。何か文句があるなら聞いてやろうじゃないか。俺は最早聞く元気がないから、とりあえず俺の兄貴を相手させるぞ。
嗚呼、憂鬱だ。
- Re: 透明度五十パーセントの非日常。 ( No.9 )
- 日時: 2011/05/29 15:26
- 名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
- 参照: おかしい方向に進んでいます(
一 壊れて行く非日常
「歩ぅー。僕の朝ご飯が飛んでったー」
飯が飛ぶわけねーだろ、馬鹿が。自身の兄を一瞥し、自分で作った朝ご飯に手をつける。この兄は馬鹿だが何故かいい大学に進学して、しかも大手企業に就職ときた。おかしいだろ、こんな野郎を採る連中も。一応見た目は中々いい。俺と同じ茶色がかった髪に、焦げ茶色の瞳は普通に人がうらやむ程綺麗で、肌は滅茶苦茶白い。しかも顔は整い過ぎているとしか思えない。スタイルもいいしな。聞いた話では滅茶苦茶モテて、毎日のように告られていたらしい。しかもそれを全て「やだ」の一言で一蹴したんだと。
明日から兄の飯作らないでおこうかと考えている最中、その『馬鹿で愚かな自分と血が繋がっているかどうかすら分からない、たまに変装して気持ち悪い半魚人の姿になっている見た目はいい変人』が話しかけてきた。
「歩。僕は『馬鹿で愚かな自分と血が繋がっているかどうかすら分からない、たまに変装して気持ち悪い半魚人の姿になっている見た目はいい変人』じゃなくて、半魚人ぴょ。それで、僕の朝ご飯がUFOみたいにぐるんぐるーんでびょんって飛んでったんだけどどうすればいいぴょ?」
おお、何で俺の考えが読めたんだ、凄いな兄貴。なんて言うかボケ。しかも地味に自分が半魚人だと認めやがった。というかこんな奴と俺本当に血が繋がってるなんて思いたくないんだが。しかも、何だ。何故語尾に『ぴょ』とかつけてるんだ。
それに擬音語ばっかりで全く意味がわかんねぇ。どうすればいい、って言われても、俺が見たのはお前が皿をぐるぐると回しながら「フリスビーだぞぉー」とか言って投げた所だけだ。結果的にお前が悪い。結論、お前が投げたからだ。証明終わり。
「あ、歩ぅっ!? それはあんまりだよっ! 僕お腹空いて飢え死にしちゃって不良になっちゃうぴょ!」
いやいやいや、明らかおかしいだろ。と心の中で突っ込む。というか朝からこんなエネルギー使ったら今日乗り切れる気がしねぇよ。意味不明だ、特に俺の兄貴。そして俺の兄貴。最後に俺の兄貴。
「僕、其処までおかしい人間だとは思わなかったよ」
そうだよな、お前は半魚人だもんな。
嗚呼、疲れた。さっさと学校行くか。
後から考えると、この時俺は、これ以上日常が壊されていくなど思ってもいなかったんだ。
- Re: 透明度五十パーセントの非日常。 ( No.10 )
- 日時: 2011/05/31 17:55
- 名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
- 参照: 意味不明方向に絶賛進行中。
二 カオス過ぎる再会
自称半魚人の兄から逃れるべく、学校へ行く支度を急いでやっていると、不意に玄関のチャイムが鳴った。兄が「僕出るよー」と言っているのを押さえて、扉の取っ手に手を掛けた。兄を出させるとロクな事がないという事が分かり切っていたからな。これでも一応兄が就職の為に俺の家に来てから一カ月一緒に暮らしてるんだ、この兄の馬鹿さ加減にはもう慣れないといけないんだ。
しかし、こんな朝早い時間に誰だ……?
ゆっくりと扉を開けてみると、其処に居たのは女性、俺や兄貴と同じようなやや茶色がかった癖のない髪に、大きな焦げ茶色の瞳。整った顔立ちは白く、主観でも客観でもきっと「綺麗」な部類に入るその女性は、俺のよく知る人物だった。即ち——俺の姉。そして一応、明と双子だったりもする。勿論二卵性の。
「歩っ! ああー、会いたかったぁっ!」
開口一番がこれだった。呪われてるのか俺。
だってそうだろ。いきなり抱きよせて来て頬を擦りつけてくるんだぜ、自分の姉が。いかれてるとしか思えないこの行動は、素でやっているから余計にたちが悪い。なんで俺の家族はこんなにも変人ぞろいなんだ。嫌になって来るぜ、本当に。
しかも兄がやってくるしな。誰かが家の前を通りかかったら通報でもされそうだ。
「あ、茜姉さん。お久しぶりです」
「明君も。久しぶりね」
何故か火花が散ると言うね。だってそうとしか言いようのない空気に満ちているじゃないか。所で姉さん、そろそろ学校行きたいんだがな。
「明。あたしの歩に勝手に手を出してどういうつもりなのかしらね」
「茜も。何で歩に抱きついているのかな」
意味が分からない。わっつ? 何でそんな言い争いになっているんだ、誰か説明してくれよ。と言うか何だ。さっきの丁寧口調も喧嘩の前兆ってか。おかしいとは確かに思ったけどよ。
茜姉さん、そろそろ放してくれないと俺は学校に行けない。放してくれないか。なんてこんな空気の中では言えない訳だ、怖すぎるから。この二人は恐らく俺の知る中で一番相手が厄介な人だと記憶する。
試しに「学校に言ってもいいか」と言ってみる。
この先は予想通りだと言っておこう。もう滅茶苦茶読めてたよ、この二人がどんな行動をとるかなんて。
言った瞬間「歩は黙ってなさい」と茜姉さんに却下され、図り合わせたかのように二人は姉の手から逃れた俺を捕まえ、部屋の方へと連れて行く。律儀にドアの鍵を閉めて。
結果的に俺は自分の部屋へと連行され、二人を相手に色々された訳だ。色々……と言うのはちょっとまぁあれだ。言いたくないな。……何しろ俺の男としての未来が掛かっているからだ。
「歩ーっ! あぁーっ」
時折姉さんが意味不明な声を上げたりする。正直、滅茶苦茶不気味。だってな、外ではこの姉さん、なんて呼ばれているか分かるか? 「最強最悪の女」と。まぁ、中学高校時代に色々やらかしたらしい。だから俺からすると、家でこうやって俺だけには一応甘いのがもしかしたら偽善じゃないのかなんて思う訳だ。
こういう訳で、俺は少々この姉に恐怖を覚えたりすることも少なくない訳だ。特に今——俺の手足を何処からか持ってきたロープで縛りつけている時とかな。
「って、ちょ、姉さんっ!? 俺なんで、ちょっ」
「何か問題でも?」
あり過ぎだ、畜生。何普通に返してるんだよ、普通に問題大有りだよ。というかこれで問題ないという姉さんは頭がどうかしているとしか——
「あ、歩。今日はあたしと一緒に寝たいのよね」
——うん、頭がおかしい。確定。俺そんな事ひとっ言も言ってねえし。
しかも兄貴が横から「歩は今日、僕が面倒みてやるの」と意味不明な事を口走ってる。一応言っておくが、今はまだ朝だからな。今日はまだ優に十六時間はあるからな。ちゃんと考えて行動しろよ。
しかも地味に力強いし。俺一応学年でも結構力は強い方だと思ったんだがな。
……俺の兄姉は普通にカオス過ぎだ。
- Re: 透明度五十パーセントの非日常。 ( No.11 )
- 日時: 2011/06/02 16:27
- 名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
- 参照: 恐怖恐怖だよ、この人らには。
三 最強の姉に逆らえない事実
「で、歩。なんであたしが嫌なのかしらね?」
「滅相も御座いません、御姉様。其処まで言うのなら兄上と共に何処かへ行って頂けないでしょうか。僕としてはとても迷惑なのです」
「今丁寧にあたしにどこかへ行けって言ったわよね。しかも、この馬鹿と一緒に」
「何で僕が馬鹿扱いされないといけないのかな、茜」
結局授業の始まる八時半を回っても、解放してくれそうになく、今もう既に十時だ。俺無断欠席になってしまうじゃねえか。というかなったじゃねえか。どうしてくれんだ、馬鹿姉貴とついでに半魚人兄貴。
あの後何故か兄貴も俺以上に拘束され、しかもなんか地味に足を踏まれている。絶対地味に痛い。攻撃が地味過ぎる。幾らなんでもやり過ぎだろうと思う物の、それを言うときっと俺も巻き込まれる。それだけは御免だな。
丁寧に話すのも疲れたし、しかも麻縄が手首に喰い込んでいて痛い。脱出口を探そうにも、今壁と姉貴に挟まれるようにして俺は座らされており、しかも姉貴は俺の顎を掴んでいる。単純にこの状況は監禁以外の何物でもないんじゃないかと今更気付く。最悪だ。
「御姉様。そろそろ放して下さいませんか」
「じゃあ、あたしに二度と逆らわないことね」
そんなこんなで姉に逆らっていはいけないと俺は教えられた。何だかもう最悪だ。
……一応これでも俺、皆勤狙ってたんだぜ?
兄の事なんて知るか。俺は第一これ以上平和な日常を破壊されたくはないからな。さらばだ兄貴。
- Re: 透明度五十パーセントの非日常。 ( No.12 )
- 日時: 2011/06/04 15:29
- 名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
- 参照: けど、少し可愛かったりもする。他人事だから。
四 危険と戦うという裏の事情
そんなこんなで結局、学校に連絡して休みになり、何もする気がなく、かと言って家にいるとまた姉に色々と言われる事があるだろうと思って、ぶらぶら歩いているといつの間にか廃れ切った商店街へと着いていた。
人っ子ひとりいない。閑散としている其処は、最早誰も利用されなくなった場所に違いない。掃除もされていないのか、ごみがそこかしろに落ちている。
そんな汚いとしか表現のしようのない廃れた商店街の中心を一人歩きながら、のんびりと空を眺めてみた。
嗚呼、綺麗だ。
何故だか知らないがそう思った。
「其処のお姉ちゃん。俺等とちょっといいことしないー?」
こんな声が聞こえてくるまでは。
ゆっくりと後ろを向いてみると、それはまぁ……なんというか……。
兄貴とそっくりな奴が居た訳だ、要約すると。
「お姉ちゃん、俺等と一緒にさ——」
俺等、と言う言葉からも分かるように兄貴とそっくりな奴だけではなく、他にも数人程俺の周りに固まっていた。
所で、俺は断じて「お姉ちゃん」なんかではないんだな。ていうか俺普通に男だぜ。物凄くショックだ、もう言葉に出来ないぐらい。
——俺の事を女の子扱いするのが兄姉だけじゃなかった事に。
「ねぇ、聞いてんの?」
リーダー格らしい兄貴に似た奴がじりじりと滲みよって来る。ちなみに、俺の兄の髪はちょっと茶色がかってるだけだが、コイツはもう明るい茶色に染め上げられている。顔はいいが、見るからに不良のような、そんな俺の一番苦手とするようなタイプの男だった。
じわりじわりと後退させられているのが分かった。そしてじわりじわりと囲まれていくのが分かった。今更だが、弱いな俺。こんな、集団でいなければ強がれない奴ら相手に言葉も出せないとは。怯えている訳ではなく、何故か声が出ない。……嗚呼、俺は。姉や兄の事を悪く言い続けて、それでもあの人達は俺をちゃんと危険から遠ざけてくれてたんだって思い知ったよ、だってなぁ。
「僕の歩に何をしているのかな」
「あたしの歩に手を出さないでくれないかしら」
こんなタイミングで、助けるなんて。絶対俺の後をつけていただろう。危険から俺を遠ざける為に。
二人は周りにいた男を全て一瞬で蹴り倒すと、俺の方へ手を伸ばした。
蹴り飛ばされた男たちは、蹴られた所を庇いながらゆっくりと立ち上がり、俺の姉と兄を眺めた。兄も姉も、そんな男たちを一瞥しただけで特に大きな反応は示さなかった。
しかし、リーダー格の男が、気がついたようにはっとなり、後ろへ飛び退った。
「お、お前はっ! 道明寺……。道明寺…………茜……」
絞るように、声を出す。姉は溜息をついて、静かに響き渡るような、よく通る低い声で一言「失せろ」
それを聞いた男たちは、慌ててその場を去って行った。その慌てぶりがとてもおかしくて、つい声に出して笑っていた。それを見て兄貴も笑みを溢した。
「ほら歩。一人でこんな所ほっつき歩いたらだめじゃないか。帰るよ。……ここは、不良のたまり場なんだからさ」
その不良どもを一瞬で片付けてしまった兄姉は、俺の前を歩いて行った。
ゆっくりと空を仰ぎ見た。
嗚呼、空が綺麗だ。
俺は、先を行く兄と姉の後を追った。