コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 兄Xアイドル
- 日時: 2012/08/02 05:51
- 名前: 水人 (ID: sFi8OMZI)
「話がある。」
「なんだよ、急に、あらたまって」
めずらしく今日は兄さんがいる。
兄さんは今大学二年生だ、いつもは、サークルやらバイトやらでほとんど家にはいない。
居ても部屋で寝てるから最近は話す事もほとんど無い。
「あのさぁ、えっと」
冷蔵庫から飲み物を探しながら兄はなにか言いずらそうに話し始めた。
「なんだよ、こわいな」
窓辺のソファーに腰かけて兄の様子に違和感を感じる。
少し開けた窓から六月の少し暖かい風が入ってくる。
兄がこんな時は決まって何か突飛なことを考えているときだ。
小学生のときの”カメレオンを飼いたい”(結局、許されたのはカメだったが)から始まって”冒険家になりたい”(リュックを背負って歩き回ったあげく隣町にて発見される)まだまだあるが・・・
両親は知らないが兄さんはそんな時必ず僕に相談をする。
「○○○だけど、どう思う?」
といった具合だ。
まあなんと答えてもやってしまう人なんだが、
「えっ!ごめん今なんていったの?」
「ちょっ、ちゃんと聞いてくれよ」
「ごめん、でなんて?」
兄さんが僕の横に座る。
「おれオンナになりたいんだけど、どう思う」
「はっ?」
何だろう聞き間違いか?オンナ?違うな。ここで焦ったリアクションをしてはだめだ。
そっと様子を。
「もう耐えられないんだ。」
「兄さん、オンナになりたいって?どういう意味なの?」
聞きたくない聞きたくない、
「オンナ?今おれオンナになりたいっていったか?」
なんだやっぱりいい間違いか、びっくりさせやがって。
「で来週にはタイに行って手術してこようかと思ってて。」
「飛ばしすぎだよ。」
「?」
「?じゃねえよ。まずなんだ、えっと兄さんはオンナが好きじゃないのか?」
「好きじゃない事無いけど。でもおれは」
「よくわからないけど女装とかじゃだめなのかよ?」
「だめなんだなりたいんだおれは」
「何に?」
「アイドル」
「・・・・・・あいどる」
何をいっとるんだ家の長兄は。
あきれた顔をして兄をみていると、
「オトコであることに自信を無くした、ならいっそおれはオンナに!」
「日野レイカか」
「・・・・・・」
「大好きなアイドルが結婚して己の無力さに気づきむしろおれが女になってアイドルになってやるって発想か」
図星か二十歳にもなって。
日野レイカは先日結婚を発表したアイドルである。
好きなのは知っていたがまさかそこまで熱をあげていたとは、
「話はそれだけ?ならおれやることあるから」
立ち上がって部屋に戻ろうとする。
「待ってくれよタケヒサ」
「なに?」
「アイドルは言い過ぎた、でもオトコなんていいことないじゃないか」
「たとえば?」
「振られる、貢がされる、うまくいったとしても最後は保険かけられて殺される」
「どんなだよ」
「十中八九そうだろうが」
「なわけあるか、そんなんだったら日本は今頃死体の山だ。」
「レディースデイ、女子会割引、女性登録無料!!etc・・・」
「不満だらけじゃないか、ここぞとばかりに日頃のカオスを吐き出してるな兄さん」
「男なんて極論イラナイラシイヨ。要らないものでいたってだめだろう?」
首をこちらに寄せながら同意を求めてくる。
「いいよ、分かった兄さん」
兄さんの目を見る。
「タイでもバンコクでも行ってこいよ。自分の体なんだから」
人は弱い、本当にやりたかったら相談なんてしないのである。
止めてほしいからこそオレに相談するんだろ?逆に突き放せばどうせやめるんだろう。
くだらない話はもう終わり。こっちだって暇じゃない。
「ありがとな、わかってくれるのはタケヒサだけだよ」
?どっちだこの反応は?
「実は知り合いのツテで来週行く事は決まってるんだ。その前に一言相談したくて」
そっちぃぃ!?しまったマジか。
とめたほうがいいのかな?まあいいか。いいか?いいのか?
「母さん知ってるの?」
「いや、話せるわけないだろ、父さんオトコとデキて蒸発したのに」
そう父さんは、オレが十歳になったころ居なくなった。
母は何も言わなっかたがうわさ好きの親戚のおばさんから言われてなんとなく事情は知っていた。
「母さん父さんの居場所知ってるみたいだよ」
「えっ!」
「会いには行かないみたいだけど、ニューハーフバーにいるらしい」
「そう・・・か」
兄さんはそれきり何も言わなかった。
それから一ヶ月が経った・・・
兄さんは女になった。
- Re: 兄のはなし ( No.12 )
- 日時: 2011/07/26 01:07
- 名前: 水人 (ID: ixsLSGyl)
「マミ、」
寝転んでいるマミの両肩を掴み、マミの顔を上から見つめる僕、顔を赤らめるマミに僕はそっと口付けを与えたという妄想を抱く・・・・・・・すいません
「あっそうだ、アルバムみる?私写真が趣味だからいろいろあるんだよ♪」
思い出したように起き上がると、本棚から色々引っ張り出してくる。
「ほら、これは、スイスにいったとき」
ああ、やっぱヨーロッパは景色が綺麗だよな〜、もしかしたらマミの水着の写真とかあったりして・・・・・?
「この・・・・・・おっさんは誰?」
かわいいマミの写真が見たいのに、写ってるのは筋骨りゅうりゅうなおっさんばかりだ。
おっさん、おっさん、山、山、ヤギ、おっさん、犬、空、おっさん・・・・・・・
「マミの写真はないの?」
「えっ、だってマミは撮る専門だし、これマミのパパだよカッコいいんだから」
「へ〜そうなんだ・・・ヒゲがワイルドだね」
あれ、女の子の部屋でアルバムみるのってこんなにテンション下がるイベントでしたっけ?
「みてみてーこの写真なんかかわいいでしょ」
おっさんが派手なトランクスをはいてピースしてやがる、その無邪気な笑顔に憎しみを覚える。
スイスの景色にパンイチのおっさんまるっきり”変態”じゃねえか、へんたい・・・・・・・はっ!もしかしてマミが僕を好きになったのは・・・・・・・逆にありがとう”変態父さん”まあこの言葉は色々語弊があるよね、我家は特に・・・・・
「オレ、マミの写真が見たいな」
「・・・・えっ、私のあんまないよ、お父さんが私の写真とりまくってるからたくさんあるはずなんだけどね、私にはあんまりみせてくれないからさあ」
えっ、お父さんは”本職”の人なんですか?海洋研究所でそんな研究してるんですか?僕ですか、僕はまだまだお父さんの域には達しませんよ・・・・・
「なんか、変なこと考えてるでしょ、違うからね、タックンとは違うから、ちょっと行き過ぎた愛情の持ち主なだけだから、親ばかをこじらせただけなんだからね」
いやいやいやいや、よっぽどひどいこといってるから!!お父さん傷つくから!
「じゃあ、オレもマミのこと撮りたい」
「いいけど、脱がないからね」
「ばっか、なにいってんの、このカメラ借りるよ」
残念ー、すっごい残念だーえー、脱がないのかよーちょっとぐらいいいじゃん、活字なんだし〜○メドリ(コラッ)させろっていってるわけじゃないのによ〜(サイテー)
だまって、マミを撮りはじめる、フレームの中の彼女はいつもより魅力的にみえた。
カシャッカャッ写真を撮りはじめると、もっともっとと気持ちが乗ってくる、好きな彼女だということもあるだろうがころころを表情を変える女の子がかわいくてしょうがない。
「えーまだ撮るの?」
「もうちょっとだけ」
まんざらでもない様子でしぶしぶ受入れるマミ、いやあ、このままゴリ押しすれば脱ぐんじゃねえかって(最低)
「ちょっとその肩に紐かけてさ」
「ちょ、見えちゃうでしょ、スケベ」
「ちがうよ、その方がずっとかわいいからさ」
どこのエロ雑誌の記者なんだ(笑)いいね、いいね、と少しはだけさせた状態で写真を撮る。よく考えればすっごい嫌われてもしょうがないような状況だけど、マミはマミでそんなに嫌な顔をしない。
むしろ、撮られる事がうれしいように挑発的なポーズでこっちを向いた。
調子に乗った僕は、マミに覆いかぶさるようになって、照れた彼女の表情を写した。
ガチャッ
- Re: 兄のはなし ( No.13 )
- 日時: 2011/07/26 01:09
- 名前: 水人 (ID: ixsLSGyl)
「あれ〜ごはんできたけど」
ビクッ、まずくないかこの体勢、いや体位?(うるさい)部屋の明かりを消してイヤホンをしながらボーっとアレを見ていたときに酔っ払った母親に部屋に入ってこられてソレを目撃されたのをフラッシュバックしていた。(なんの話だ)
「おじゃまだった〜」
わざとおどけた様子でいう母親、
「ちょ、ママなにかんぐってんのよ、ちょっと写真撮ってもらってただけよ」
「あら、そう?まあそうよね、パパのときなんてもっとすごいカッコしてるものね」
えええええ、お父さんいや、師匠!!なんてうらやましい、もとい娘になんてことを・・・・・・・・・・写真くんねえかな、マジで。
「じゃあ、いらっしゃいな、できたわよ〜、ママ特製のスペシャルディナー」
「は〜い」
総合的に考えるとこの話でまともなのは僕だけですよね〜?えっ?絶対違う?
「じゃあ、かわいいマミの誕生日と、かっこいいいボーイフレンドにカンパ〜イ♪」
カシャンとコップで乾杯する。
料理はなかなかに凝ったものが多い、鶏のから揚げエスニックソース、スパイスの効いた魚の揚げ煮、野菜ときのこのバーニャカウダー風ドレッシングがけ、特製紅茶のシフォンケーキにたっぷり生クリームをかけて・・・・・・・・・・・・・・・・太るわっ!!
「すごい、料理上手なんですねえ」
「そお、うれしい!でも私もワシントンで一人だからなかなか手料理もふるえないのよね〜」
「マミは普段自炊してるんだっけ?」
「ううん、今、温泉行っちゃっていないけどいつもおばあちゃんいるから、和食かな〜」
そうなんだ、お母さん帰ってもおばあちゃん家にいるんだ・・・・・やっぱ、家に呼ぶしか・・・・
「NASAって、どんな仕事してるんですか?」
「まあ、NASAなんていったらロケットあげたり、宇宙のイメージがあると思うけど、私は主に環境破壊の予防とかエネルギー削減、水資源の確保に直結する計画・・・・まあ平たく言えば国家的規模の自然復旧計画を担当してるの」
「ああ、なるほど」
やばい、あれほど触れないっていってたのに、気が緩んでパンドラに近づいているきがする。
これ以上はだめだ、”国家的規模”とかこのはなしに必要の無いワードだから!!
「でも、おどろいた、マミが男の子と付き合ってるなんて、この子ったら男の子嫌いだから全然メイクだってしなかったし」
「昔の話でしょ?私だって成長してるんですよ」
「そうね、なんか、かわいくなっちゃって、女の子は少し見ないと驚いちゃうわね」
「マミはずっと日本だよな?オレ両親が二人とも海外だって知らなかったし」
「パパはもともと中学生の時まで日本の研究支局にいたから、ママは物心ついた頃にはずっと海外だもんね」
「ごめんね〜マミを一人にして〜」
マミを抱き寄せるようにハグするマミママ、
「いいよ、お母さんのこと、かっこいいから大好きだし、パパも転勤の時本気で私を連れて行こうとしてくれたけど」
うん、それは目に浮かぶ〜・・・・・基本ですよね師匠!!
「私は日本好きだから残ったの、やさしいおばあちゃんもいたし」
「そんなこといって〜好きな男の子でもいたんじゃな〜い?」
「ちがうよ〜」
ああ、ほのぼのしてやがる、なんて自然な母と娘の会話だ・・・・・・
でも最近、家でも似たような会話聞くんですよね〜いや〜息子にブラジャー借りる母親とかどうなんすかね〜あっけっこう母さん胸あるんだ〜じゃねえええええ!!気持ち悪いから・・・・ヤメテ
「お父さんも来ればいいのにね〜」
「仕事なんだからしょうがないよ」
寂しげな表情を見せるマミ、
「でもほとんど毎日ネットで顔みてるけどね〜」
やっぱ、さすが師匠・・・本職なんスね(なにがだ)
「ママはいつも出てくれないけど〜」
「そんなことないわよ〜でも私いつも家には寝に帰る感じだからねぇ、家のパソコンほとんど動かさないしあはは」
「も〜だからこっちからかけんのやめたの、でも寂しくなるとすっごいかけてきてなが〜〜〜いんだからママってほんっとうに勝手なのよ、聞いてる?タックン、しかもほとんど酔ってる状態で」
「も〜恥ずかしいからいわないでよ、だって、ママの事忘れたのかな〜って思って〜」
ホント仲いいな、でも確かにネットあるから離れていてもコミュニケーション取りやすいんだろうな。
まあ、家族っていいよな・・・・どんな形であれ大事だよね。
ゴロゴロゴロ遠くでトランクの音がする、ガチャカシンなんだろう?玄関の方から音がする。
「誰かしらね?怖いわ」
マミママが不安な顔をする、
「おばあちゃんじゃないの?」
「えー、だって温泉ツアーっだって・・・・まあなにかあったのかなあ」
ガチャッ鍵が開く音がする、
- Re: 兄のはなし ( No.14 )
- 日時: 2011/09/01 14:03
- 名前: 水人 (ID: n/BgqmGu)
「おーい、ただいま!!マミ〜ママ〜居ないの〜」
「あっパパだ!!」
「なあに、帰れないっていってたのに、連絡しないで〜」
二人が玄関に小走りで向かっていく、
パパだって!?し、師匠ぉおぉぉおぉぉぉおぉぉぉぉお!!
「えっ、お客さん?なに?マミのボーイフレンド」
たくさんの荷物を持って入ってくるマミパパ、
「やあ、はじめましてマミがお世話になってるね」
握手を求められる僕、
「ああ、すみません、お邪魔してます、タケヒサです」
目が笑ってねええええええ、怖いよ、やられちゃうんじゃないの?顔覚えられたよー、どうしよう。
海洋研究所で飼いならされた巨大なサメの餌にされるんだあああああ!!(やめなさい)
「ちょっと、シャワーだけ浴びてくるね、いやマミの誕生日だからね、ちょっと三日ばかし抜けてきたんだよ。なんだ豪勢な料理だなあ、今日は久しぶりにママお手製のものが食べられそうだ」
「パパのために作ったわけじゃないからね?今日はマミとタケヒサ君のために腕をふるったの」
「厳しいなあ、どうだいタケヒサ君、僕もディナーのお仲間に入れてくれるかい?」
「ええ、もちろん、お会いしたかったんですよ」
「ありがとう、ふふ、話の分かる青年でよかった、じゃあ、ちょっと私はシャワーに・・・」
ええ、お会いして仲良くなって、マミの写真みせてください・・・・・(救えない)
父親がシャワーから出てくる、ラフな肌着とタオルを肩にしている。
まったくスタンダード、ジャパニーズオヤジそのものだった。
でもなんか安心するな・・・・
「よし、飲もう、タケヒサ君!!」
「なにいってんの!未成年に」
「いいじゃないか、もう飲んでんだろ?彼女の父親とは酒を飲んで腹割って話さないとな」
「まったく、ごめんなさいね、娘の彼氏でテンションあがってんのよ、この人」
まあ、師匠もとまどってるんだろうな、酒でも飲まなきゃやってられないみたいな・・・・
「よし!飲みましょう!今日は男同士腹割りましょう!!」
「ママ、ビールビール」
「もう、タケヒサ君まで・・・ちょっとだけよ?」
僕はあまり酒なんて飲んだ事なかったが酒は多分強い、なんせ家の母なんか、何かの打ち上げでその店の焼酎を飲みつくした武勇伝をもっているくらいだし。
案の定飲みはじめたら止まらなくなる、
「おっいける口だねえ」
僕のコップになみなみ注ぐ師匠、
「いただきます」
ごくごくと飲み干す僕、そのまま一時間くらい飲んだ。
なにを言ったかはあまり覚えていないがマミの話だと師匠に大層気に入られたそうだ。
「じゃあ、僕失礼します」
「ちょっと、大丈夫?送るわよ、お家まで、なんなら泊まってったっていいんだから」
「そうだよ?ちょっと、おじさん飲ませすぎたよ、泊まっていきなさい、もちろんマミとは別の部屋でだが」
師匠の目が光る。
「いえ、全然大丈夫ですから、楽しかったです!またお会いできたらうれしいです」
「もちろん、なかなか日本に来られないのだけどまたぜひ一緒にお食事しましょうね。でも今度は娘さんを僕にくださいなんて来たりしてあはは」
「ゴホンッ」
師匠の目が、かすかに赤黒く光る。
「まあ、なんだ、これからもマミをよろしく頼むねタケヒサ君」
「タックン、駅まで送るね」
「ああ、ありがとう、でもいいよ、帰りひとりになっちゃうし暗くて危ないからさ」
それに、師匠の目の光り方が尋常じゃないから。
「そう?近いから大丈夫なのに」
「いや、ホント!ごちそうさまでした、色々話聞けて楽しかったです!マミ、また後でメールするからさ」
逃げるように帰る僕、途中で何度か振り返ったのはいうまでもない。
学校から帰った僕は、いつもと同じように課題のレポートをやり始めた。
兄さんとの関係はあまり変わっていない。
まあ母さんはモデルやらなんやらですごく興奮しているようだが・・・
兄さんは、めったに僕の部屋に来たりしない、お互いにあまり干渉しないのが暗黙のルールだ。
コンコン突然部屋をノックされる。
開けると兄さんが立っていた。
「話がある。」
「なんだよ、急に、あらたまって」
めずらしく今日は兄さんがいる。
・・・・・・・・・デジャヴ?なんかこの会話嫌な予感しかしないんですけどお!!
- Re: 兄のはなし ( No.15 )
- 日時: 2011/09/01 15:27
- 名前: 水人 (ID: n/BgqmGu)
「実は、私・・・ね、今度アイドルのオーディション受けることになったの」
アイドル?正直僕はそんなに驚かなかった、これまでのこの人の言葉のパンチ力の中じゃジャブ程度にもなってないと感じ、でもそんな自分が嫌いになりそう。
「ああ、別にいんじゃない?モデルとか雑誌とか出てんだからさ」
そうだ、世の中的に別にもうめずらしくもないだろうしね、
「ホント?うれしい、応援してくれる?」
「ん?ああ、もちろん・・・兄弟じゃないか」
なんだ、嫌な予感がしないでもないぞ?
「じゃあ、明日の午後なんだけどね、ここだから」
「??????」
僕は、頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになった。
「ちょ、ちょっと、なに?ここだからって」
渡されたプリントアウトされた地図を見ながら兄に問う、
「えっ?会場だけど?オーディションの」
「うん、それはいいんだけど、なんで僕も行くんだい?」
「へっ?私のこと応援してくれるんでしょ?」
「うん、気持ちの上でね、ほんの表面くらいはね・・・なに?一緒にいって応援しろと?」
「違う違う、関係者以外は入れないもん」
「?あの、じゃあ仮に行ったとして僕はなにをすれば・・・」
「やだなあ、タケヒサも出るのよ!オーディション」
なんだってぇぇぇぇぇ!?
「・・・・・アイドルの?」
「そう、アイドルオーディション」
「ごめん、ハルさん(ややこしいので最近はこう呼んでいる)大事なところを訊いてなかった、それは女性?男性?」
いまいち、兄貴の話が理解できない、アイドルったって色々あるはずだし第一、僕を誘う意図が見えてこない、
「あれ?知らないの?これ」
「えっ、何、この記事?」
目指せ!賞金100万円兄弟、姉妹で美女、美男子の方を大募集!!
もちろん、兄と妹、姉と弟でもOKだよ!グランプリの方々には映画の主演が同時に決定!
さあ、このチャンスを逃すな!!!
「・・・・なにこれ?なんで兄弟じゃなきゃいけないのかわかんないし」
「それを主催しているのが安藤啓輔監督なんだけどね、ストーリーは決まっている映画の配役がどうも決まらないらしくて、姉と弟の話らしいけど」
「逆に、そのイメージ通りの人を探しちまおうってか」
「だから、血が繋がってればいいみたいな、姉と弟で限定しないでむしろいい人がいたら脚本変えちゃうようね人らしいからね」
「そんなのになんで出たいのさ」
「・・・・・だって、レイカちゃんでるんだもん」
「日野レイカ?今、女優やってるの」
「レイカちゃんはもともとそっちがメインなの!」
急に怒り出す兄、まだ好きだったのか・・・・憧れなんだろうな
「わかったわかった、でもオレ演技なんか出来ないよ?」
「私だって、でも受けるだけ受けたいの・・・・お願い・・・・」
相談は受けても、頼みごとなんかめったにしない兄たっての願い、無碍にはできない。
なにより、目を潤ませた部屋着の兄貴がかわいくて仕方ない(だめな子)
「任せなさい、伊達に中学時代のあだ名が”信号機”(顔色がすぐ変わるため)じゃないよ」
「うん、なんかまったくだめな気がするけど、ガンバロ!」
- Re: 兄さんがアイドルになるっていうんだが ( No.16 )
- 日時: 2012/08/02 05:41
- 名前: 水人 (ID: sFi8OMZI)
次の日、兄は朝一番に僕を起こしにきた。
メイクもバッチリきめて、相当気合いがはいっとるな。
「さ、行くよ、タケヒサ」
「午後からじゃないの?」
確かチラシにはそう書いてあった気がした。
「だめよ、こういうのはやる気をみせないと」
「いや、時間通りに行った方がいいと思うけど」
どうせ入れんだろ。
「先着順なの、早い番号の方が心象がいいの」
「そうかな?後出の方が有利な気も」
「なに?お姉さんの言う事聞けないの?」
「わかったよ、ちょっと待ってて」
ぱぱっと支度すると早めに会場に向かう事にした。
会場までは、電車で30分くらいだろうか。
電車に乗っている間、兄は終始緊張した様子だった。
駅からほど近い区民会館みたいなところが会場らしい。
まだまだ時間があるというのに人が列をつくっていたのには驚いた。
「けっこういるね」
「うん、すごいね、ドキドキする」
最後尾に並ぶ、受け付けで兄弟を証明するものを確認するので用意をお願いしますと、整理員らしき青年が叫んでいる。
受け付けまで進むと、
「はい、証明書をお願いします」
と女性に言われる。
戸籍謄本をおもむろにだした。
「ええっと、御兄弟ですね、あら?あのご本人がいらしていただかないと・・・」
女性は、兄の顔をまじまじ見て言う。
「兄です」
「はっ?」
「本人です」
「えっと、ハルトさん?」
「はい」
「失礼ですが、男性・・・?」
「戸籍上は」
「・・・」
一瞬裏に引っ込んだ女性はすぐに戻り、お進みください、と通してくれた。
何らかの話し合いがあったようだがよく聞こえなかった。
とりあえずオーディションは受けられるようで僕はほっとしていた。
オーディション会場の中に入ると、小さなプレートを渡された。
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