コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 兄Xアイドル
- 日時: 2012/08/02 05:51
- 名前: 水人 (ID: sFi8OMZI)
「話がある。」
「なんだよ、急に、あらたまって」
めずらしく今日は兄さんがいる。
兄さんは今大学二年生だ、いつもは、サークルやらバイトやらでほとんど家にはいない。
居ても部屋で寝てるから最近は話す事もほとんど無い。
「あのさぁ、えっと」
冷蔵庫から飲み物を探しながら兄はなにか言いずらそうに話し始めた。
「なんだよ、こわいな」
窓辺のソファーに腰かけて兄の様子に違和感を感じる。
少し開けた窓から六月の少し暖かい風が入ってくる。
兄がこんな時は決まって何か突飛なことを考えているときだ。
小学生のときの”カメレオンを飼いたい”(結局、許されたのはカメだったが)から始まって”冒険家になりたい”(リュックを背負って歩き回ったあげく隣町にて発見される)まだまだあるが・・・
両親は知らないが兄さんはそんな時必ず僕に相談をする。
「○○○だけど、どう思う?」
といった具合だ。
まあなんと答えてもやってしまう人なんだが、
「えっ!ごめん今なんていったの?」
「ちょっ、ちゃんと聞いてくれよ」
「ごめん、でなんて?」
兄さんが僕の横に座る。
「おれオンナになりたいんだけど、どう思う」
「はっ?」
何だろう聞き間違いか?オンナ?違うな。ここで焦ったリアクションをしてはだめだ。
そっと様子を。
「もう耐えられないんだ。」
「兄さん、オンナになりたいって?どういう意味なの?」
聞きたくない聞きたくない、
「オンナ?今おれオンナになりたいっていったか?」
なんだやっぱりいい間違いか、びっくりさせやがって。
「で来週にはタイに行って手術してこようかと思ってて。」
「飛ばしすぎだよ。」
「?」
「?じゃねえよ。まずなんだ、えっと兄さんはオンナが好きじゃないのか?」
「好きじゃない事無いけど。でもおれは」
「よくわからないけど女装とかじゃだめなのかよ?」
「だめなんだなりたいんだおれは」
「何に?」
「アイドル」
「・・・・・・あいどる」
何をいっとるんだ家の長兄は。
あきれた顔をして兄をみていると、
「オトコであることに自信を無くした、ならいっそおれはオンナに!」
「日野レイカか」
「・・・・・・」
「大好きなアイドルが結婚して己の無力さに気づきむしろおれが女になってアイドルになってやるって発想か」
図星か二十歳にもなって。
日野レイカは先日結婚を発表したアイドルである。
好きなのは知っていたがまさかそこまで熱をあげていたとは、
「話はそれだけ?ならおれやることあるから」
立ち上がって部屋に戻ろうとする。
「待ってくれよタケヒサ」
「なに?」
「アイドルは言い過ぎた、でもオトコなんていいことないじゃないか」
「たとえば?」
「振られる、貢がされる、うまくいったとしても最後は保険かけられて殺される」
「どんなだよ」
「十中八九そうだろうが」
「なわけあるか、そんなんだったら日本は今頃死体の山だ。」
「レディースデイ、女子会割引、女性登録無料!!etc・・・」
「不満だらけじゃないか、ここぞとばかりに日頃のカオスを吐き出してるな兄さん」
「男なんて極論イラナイラシイヨ。要らないものでいたってだめだろう?」
首をこちらに寄せながら同意を求めてくる。
「いいよ、分かった兄さん」
兄さんの目を見る。
「タイでもバンコクでも行ってこいよ。自分の体なんだから」
人は弱い、本当にやりたかったら相談なんてしないのである。
止めてほしいからこそオレに相談するんだろ?逆に突き放せばどうせやめるんだろう。
くだらない話はもう終わり。こっちだって暇じゃない。
「ありがとな、わかってくれるのはタケヒサだけだよ」
?どっちだこの反応は?
「実は知り合いのツテで来週行く事は決まってるんだ。その前に一言相談したくて」
そっちぃぃ!?しまったマジか。
とめたほうがいいのかな?まあいいか。いいか?いいのか?
「母さん知ってるの?」
「いや、話せるわけないだろ、父さんオトコとデキて蒸発したのに」
そう父さんは、オレが十歳になったころ居なくなった。
母は何も言わなっかたがうわさ好きの親戚のおばさんから言われてなんとなく事情は知っていた。
「母さん父さんの居場所知ってるみたいだよ」
「えっ!」
「会いには行かないみたいだけど、ニューハーフバーにいるらしい」
「そう・・・か」
兄さんはそれきり何も言わなかった。
それから一ヶ月が経った・・・
兄さんは女になった。
- Re: 兄のはなし ( No.2 )
- 日時: 2011/07/24 06:17
- 名前: 水人 (ID: BvZBUYdW)
それはこっちのセリフである、なぜこんなところにマミがいる?
マミは最近付き合い始めた、同級生の女の子だ。
「マミ・・・どうした今日は友達と映画じゃないのか?」
「観てたわよ、あんたがこそこそ知らない女と会ってなければね!」
「はっ?何を言って」
目の前には知ってる男(兄貴)しかいないが、
「そんなことないって信じてた、マリコが怪しいってあの感じ女を待ってるよって言うから見てたの」
じっとにらみつける。だって兄貴が姉貴になって会いに来るんだよ?ソワソワスルデショウ。
「案の定女だった、でも少し年上みたいだからお姉さんかなっておもってた」
そうだよ、正確にはお兄さんだけどね!
「そしたらなあに、相手の胸なんか触っていやらしい、不潔!死んじゃえ!」
周りはなんか面白い事やってるぞと野次馬根性まるだしで見ている。
「なあにが母さんいるけど家来る?よ。まだあたしだっていったことないのに、それにいるけどっていなかったら何をしてったお前は!!」
はあはあと肩で息をするマミ、友達になだめられている。
「言ってくれればよかったのに・・・年上が好きなら何で私と付き合ったの?」
うって変わって涙をうかべている。
後ろでマリコとかいう友達が
”サイテーいーよこんな奴、行こっマミ”
と教科書どうりのうながし方でマミを連れて行こうとする。
・・・オレ的にはお前のせいでこうもややこしくなったといいたいところなんだが。
「ありがとう」
嫌な所から思いもしない言葉が出てきた。
「マミちゃんっていった?ありがとう」
頼む頼むから兄さん、ややこしい事態だけど改善するとは思えない役柄なんだから理解しようよ
あんたのポジション!
「何よ、少し胸が大きくて背も高いくらいで偉そうに!いいわよこんな男あんたにくれてやるから」
ついに兄弟にあげられちゃったよ!オレ。
血ぃつながってるって、小さい頃から一緒に育ってるって!戸籍謄本もってこようか、ねぇ!
「マミちゃん聞いて私とタケヒサは姉弟(きょうだい)なの」
字がちがーーーう!!まあいいか。
「そんな戯言、誰が姉弟におっぱい触らせるのよ」
「違うのよ、実は恥ずかしいんだけど」
こそっとマミに耳打ちする。
「ええっ!そ、そんな」
何を言った!まさか実は男で先月女になったって・・・耳打ちひとつで言い終わる内容かこれ?
しかしマミはすごく驚いた様子である、何かを聞いたのは間違いない。
「ほ、本当なのタケヒサ」
「な何が?」
怖い聞きたくない聞きたくない。ヤメテー
こそっとオレに耳打ちした、
「お姉さん、手術したの?」
終わった、明日からオレはオネエの弟だ。文化祭でドンダケェーってやらされるんだ・・・
まあ、遅かれ早かれそうなったんだからしょうがない。
兄さんとの誤解が解けただけましである。
「二人が姉弟なのはわかった、なんとなく似てるし。」
ほっと胸をなでおろすオレ。
兄さんがニコニコしてるのは女に見られてうれしいからだろう、まったく。
「でも、女性のおっぱい触りたがるなんてサイテー!タックンのスケベ!!」
ぷんっと店を出て行くマミ。
ぷんって、誤解は解けたんじゃないのか?男の胸を触っただけでスケベなのか?
「・・・兄さん」
ぷいっとする兄。
「ハル姉!」
「なあに?」
面倒くせっ!
「さっきあいつになんていったんだよ」
「うーん、うまくごまかせたとおもったんだけど最近の子にしては潔癖なのね」
「姉さん」
「私はただ豊胸の手術をしたっていったの、そしたらタケヒサが触らせろっていうから仕方なく」
「触らせたって?それじゃ変態な弟じゃないか」
「そう取る?」
「あいつは、あれで男経験あんまないからな」
「ごめん、タケヒサ」
「いいよ、大丈夫あれでオレと付き合い長いからああいってたけどそんな怒ってないと思う」
多分ね。
「かわいい、彼女じゃんか大事にしろよ」
「ああ、ありがとう、にい・・姉さん」
僕と兄さんはいざ母の待つ家へ向かうのである
- Re: 兄のはなし ( No.3 )
- 日時: 2011/07/24 06:18
- 名前: 水人 (ID: BvZBUYdW)
実家。
僕と兄さんは元々は小さな一軒家の家で育った。
だけど例の父親の件でそこには住んでいられなくなり近くのマンションに引っ越したのである。
「ただいま」
ガチャンと玄関をあける。
「お帰りー、遅かったのね?」
キッチンの方から母の声がする。
「あらー一人じゃないの?お友達ー?」
キッチンから玄関は見えない、気配で感じたらしい。
「いらっしゃい、ゆっくりしていってね」
キッチンから出た、母が兄さんにそういう。
「タケヒサが女の子連れてくるなんてめずらしいわね、なあに彼女?」
男があんまり言われたくないことを教科書どうりいうものだなあ、しかしこの子はあなたがおなかを痛めて生んだ息子ですよー。
「いや、驚かないでね」
じっと兄さんを見つめる母。
「ちょっと、待って」
じんわり、状況を飲み込む母。
「エッ本当なの?は、ハルト?」
母がたじろいでいる、無理もない。
息子が娘になって帰ってきたのである。意味わかんね。
「お母さん頭痛くなってきた」
といって母はソファーに座り込んでしまった。
「大丈夫?母さん」
「だめ。立ち直れないわ」
相当ショックだったらしい目の上に手首をのせて動かない。
「それでタケヒサは知ってたの?」
「オレは」
「母さん、タケヒサは知らないよ。オレ勝手にこんなことしたんだ」
初めて口を開く兄さん、
「相談すればよかったんだろうけど、どうにもならなくて」
「そうね、ちゃんと言ってほしかったわ」
「いつからなの?」
日野レイカが結婚発表してからだから、四ヶ月前からだろうか。
とするとスピード改造だな。
「子供の頃からずっと」
- Re: 兄のはなし ( No.4 )
- 日時: 2011/07/24 06:22
- 名前: 水人 (ID: BvZBUYdW)
えーーーーー!そうなの?マジで?
「男っぷりのいい子だったのに、本当?全然気づかなかった」
「親父がいなくなってお袋に迷惑かけたくないし、ずっと抑えてきたんだ」
「そう、つらかったでしょう?」
やさしい言葉に涙ぐみながら兄さんは続けた・・・しかしそれにしても器のでかい母である。
「アイドルが好きだった、でもそれは同じ女として憧れだった」
日野レイカはきっかけにすぎなかったのか、むしろチャンスと思ってそのポジションに収まろうとしているのかもしれない。おもわず身震いをする僕。
「ごめん、親不孝で」
「いいのよ、そんなの関係ないわよ。あなたは私の子供そのことに変わりないでしょう?」
涙する兄。僕はその場にいることしか出来ない。
「ハルトその胸って本物?」
「うん、入ってる」
「下も・・・・?」
「体から女になりたかったから」
はあーーとため息をつく母。
男としての機能を失いかといって女として子を宿らせられる事もできない。
それでも兄は女になることを選択した。
相当な覚悟だったろう、そんな兄を誰が攻められよう?
「頭が混乱しちゃうわね」
「ごめん本当に」
「いいの、いいのよそれは」
「?お袋」
「ただねぇ・・お父さんになんていおうか」
「!あんなひどい父親どうだっていいじゃないか」
「コラ!タケヒサ父親を悪く言うもんじゃないよ」
はじめて声を荒げる母、兄さんの事を聞いても怒鳴りもしなかったのに。
「そうだね、二人にとっちゃいい父親じゃなかったろうよ、まあ私がうまく父親のことを言えなかったのが悪いんだけどねぇ・・」
と母は前置きをして初めて聞く父の話をしはじめた。
「あの頃は二人とも小さかったから話せなっかったし、知らないままの方がいい事だってあるから。でもハルトは私と向き合ってくれた、だから言うね。お母さんの秘密・・・」
ふぅと一息つく母、
「お母さんは女の人しか愛せないの」
何!!おいおいまじめな顔して何を言い出すんだ母さん、この家の良心。
やばい、兄さん母さん僕のほうがもう立ち上がれないかも・・・
「でも、父さんは男でしょ?」
「うん、でもお父さんは特別。女の人に近い男だったから」
「・・・知ってたんだ母さん。でもオトコつくって逃げたって」
「おばさんねそんな事いったのは、違うのよそれは。もともと彼にはパートナーがいたの」
「結婚したんでしょ?」
「私が頼んだの、もちろん彼が好きだったし彼もそのパートナーと上手くいってなかったから。なにより私が、子供を望んだから」
「子供・・」
「どうしても欲しかったから、彼も頷いてくれたし一緒に育てて行けるとおもってた。でもだめだった、
ケンカも増えたし彼が家を空けるのも多くなってきてこのままじゃ私にとっても子供達、ハルトとタケヒサにとっても、なにより彼にとってもよくないなって思ったから離婚したのよ」
「どうしていってくれなかったのさ」
僕は一方的に父を恨んでいた。
「ごめんね、私自身頭が整理できなかったしなにより生活の事でいっぱいだったから」
「タケヒサお袋を攻めちゃいけない」
「攻めてなんかない、でもオレは父さんにだって会いたかったし話だってしたかった」
「そうよね、でも彼のほうにも事情があったしなによりこんな父親知らない方がいいだろうって、子供達にももう会わない方が為だろうって彼自身が決めた事だったから」
「それでもオレはいままで母さんを捨てたひどい父親だからその人に会いたいなんていったら母さんが悲しむと思ったから・・・」
「タケヒサ・・。そんなふうに思ってたなんて思いもしなかった、ごめんなさい、あなたたちのこと全然わかってあげられてなかった・・だめな母親ね、私」
「だめなわけないだろう、オレ達が一番感謝してるのはお袋に決まってる。ただうちの家族は似たもの同士なんだろうな。本当のことを隠して無理しちゃうんだ、相手を思いやるばっかりに」
「ハルト・・」
「まあ、隠し切れずにこんなことになっちゃったオレがいえる事じゃないけど」
「・・・昔からそう、ハルトは母さんにすごく優しい」
「当たり前だろ、そんな事」
照れたようにそっぽを向く兄、
「それに・・なんとなく知ってたし父さんの事母さん嫌いじゃないって」
「えっそうなの、にい、姉さん?」
「なにそれ、姉さんって呼ぶの?面白い」
うふふと母は笑った。
「お袋に一回聞いたんだ、親父のこと」
「そんなことあったかしら」
「毎日忙しそうに働いてたお袋に父さんいればいいのにねって、そしたらお袋・・・そうねでも好きだから側にいない方がいいこともあるのよって意味はわからなかったけど、少なくとも親父の事憎んでるんじゃないってわかったから・・嫌いだったらあんな顔しないでしょ」
「ハル兄は父さんに会いたくないのかよ」
「ハル姉だ・・・まあいいか。会いたいよ?でもオレだってタケヒサと一緒さ。いくら嫌いじゃなくったって会いに行ったらお袋悲しむって思ってたし。そんならいいかってそこまでして会いたくないし」
ふっ切れた様子でオレを見つめる兄、
「オレは会いたい。」
「そうか・・・」
兄は頭をかきながらふっと息を吐いた、
「それだけじゃない・・きっとオレと親父は似てる、親父の本当の気持ちなんてわからないけどもしオレだったらこんな親父みせたくない。こんなオレがいうのもなんだけどきっと普通に育って欲しかったんだろうよ。そんな気持ちオレわかる気がするから・・・」
「ハルト、それは」
母が言いかける言葉をオレはさえぎった。
「会いに行こうよ兄貴、姉貴でもいい。やっと理解しあえたんじゃんか、普通なんてないよ!今更、そんな事言ったらオレだってふつうじゃないし」
ぎょっと二人がオレを見る。
「そういう意味じゃないからね(何だその目線は)、父さんの考えはそうかもしれないし歓迎されないかもしれないでも親子なんだ。もう一度くらい会ったっていいはずだろう?オトコだオンナだそれがなんだよ、関係ないだろ母さんも言った!会いに行こう兄さん、いいでしょ?母さん」
「よく言った!!それでこそ母さんの息子だ。ハルト会いに行ってやって?母さんとはどうあれあんた達はまぎれもなく親子だ」
「タケヒサ・・・わかった一緒に行こう。ただ・・・」
「・・・ただ?」
「姉さんだ!」
「うわっ面倒くせっ」
「なんだ?」
「なんでもないです、お姉さま」
「よろしい」
「それより私ずっと気になってたんだけど」
怪しい手つきで兄に近づく母、
「ねえハルちゃん触っていい?」
いうか言わないかで兄さんの胸をわしわしと揉みしだく母。
「すごーい、やわらかいー」
「にゃあああ」
実に楽しそうだ、なんだこの図は・・・・
「後で下も見せてね」
「ひぃ!?絶対、嫌!」
「あー楽しみだわー(聞いちゃいない)、私の若い頃のフリフリ着せたいわー」
蓋を開ければ娘が出来たみたいとはしゃぐ母と戸惑う兄、さっきまでのシリアスな感じを少し返してはくれまいか。
- Re: 兄のはなし ( No.5 )
- 日時: 2011/07/24 06:24
- 名前: 水人 (ID: BvZBUYdW)
数日後
「タックン、ちょっといい?話があるの」
僕はその日、珍しくマミに呼び出された。
マミは普段はおとなしい感じの女の子だ、なにかと誘うのはいつも僕の方だった。
「な、何だよ?話って」
なんだろう、結局あれからなんとか誤解は解けたはずだけど。
マミは言い出しづらそうに、僕の顔を見ている。
「私ね、気付いちゃったの」
?大体女の子がこんな事言い出す時はアレか・・・・・
(私にとってやっぱりあなたの事、友達にしか見られないのっさよなら)的なっ!?
(あなたにとって私は必要な存在だと思えないから・・・さよならっ) ちょっ!?
いやいやいやいや、待て待て世の中気付かなくてもいいこともあるよ?大丈夫な方のアレだよね?ね?
「私に・・・足りないものなんだけど、わかる?」
足りないものだって?騙されないぞ!こんな時なにを言ったところで噛み付かれるのは必死!!
神様!!どうか僕に日本一のジゴロの才能をください・・・・・・
「いや、マミはいまのままで充分だよ」
そうだ、素直にオレの気持ちを伝えればきっと、
「えっ!!」
明らかに顔色の曇るマミ、
「なによ〜その”充分”って言い方!まるでお前にこれ以上は求めてねーよみたいな言い方!!」
えーー!そう取りますか?へー、逆にお前すごいな、すごい。
「いやいやいやいや、そんなわけないし、あっ話し変わるけど、昨日のテレビ見た?ザキヤマってホント適当だよな〜」
「タックンより考えてると思うよ」
やぶへびかーーーー!!たすけてください、たすけてくださいっ!
・・・・現実逃避してる場合じゃなかった・・・・くそ、正解の無い問題なんて問題なんて・・・
「じゃなくて、私キャラが足りないとおもうの」
なんだそんなことか、いちいち気にすんなよ〜、結局足りない奴は出番減らされて読者はもちろん作者からさえ忘れられるだけなんだから・・・・・・・
「ってキャラって何のはなし??」
「だからタックンのお兄ちゃんはオカマでしょ?タックンは変態だし、私はおとなしい女の子じゃやっぱ弱いとおもうのよ、うん」
「いや、要らないって、求めて付くもんじゃないし、もし仮にマミの実家が神社で休みの日は巫女さんやっててちょっと霊的なものが見えるうえその裏で学校で起こる数々の心霊現象・・・・悪霊退治は私にお任せって話が!はなしがあったとしても黙ってて口にしないで?お願いだから、話がごちゃごちゃしてまとまる話もまとまらないから・・・あとオレ変態キャラじゃないから」
マミは納得していないようだ・・・あとオレは変態じゃないから、
「いや、そんなわけ無いじゃない、ただ私の実家はアルセーヌ・リュパンの遠い血縁で両親はある組織によって消されてしまい天涯孤独になった私を現代の怪盗二十面相:遠藤平吉が育ての親になってくれたものの学業のかたわら高価な美術品の窃盗に加担する事への罪の意識からやがてその少女は以前から好意を寄せていた想い人に罪を今まさに告白しようとしているだけ」
「ちょ、だめだから、”組織”とか特に出しちゃだめなワードだから、メンドクサイ設定増やさないで?伏線拾いきれずに消化不良するのは目に見えてるから」
「じゃあ、タックンが組織に怪しげな薬を飲まされて子供になってもらって・・・」
「いや、だめだから怪しげな薬とか組織とか白い怪盗出しちゃだめ」
「わかった、じゃあ普通の女子高生に甘んじるわよ」
「よかった、安心した・・・はなしってそれだけ?」
「うん?いやたいした事じゃないんだけどね、私のお母さん今NASAの宇宙局に勤めてるんだけど、今度休暇で帰ってくるから一緒に食事しないかって、ほらお父さんは海洋研究所勤めでカルフォルニアに住んでて帰れそうにないんだって、娘の誕生日によ?酷くない?」
「いいよ全然いいから・・・」
でも触れないからね、伏線だって何一つ拾ってあげられないからね?
「ああ、そうだオレ今日用事あるから、先帰るわ」
「えーー、一緒に帰ろうよぉ」
「わりぃ、今日は兄貴と約束してて」
「あのお姉さんと?」
「あ?ああ、一緒に、”行方不明だった親父”じゃなくて、”実はオカマだった親父”じゃなくて、”それでもやっぱオレ達の親父”に会いに行こうとおもってて」
「・・・・・・そう、わかった、わかったけどいいな〜なんかみんなキャラたってて〜ちょっとちょうだいよ〜?」
「だめ」
- Re: 兄のはなし ( No.6 )
- 日時: 2011/07/24 07:02
- 名前: 水人 (ID: BvZBUYdW)
あの日、そう親父が蒸発したあの日から僕ら兄弟は親父の事をなんとなく避けて生きてきた。
だからこんな日が来るなんて本当に考えられない事だった。
「あのさ、兄さん」
父が働いているというお店に行くために、兄と駅前で待ち合わせしていた、
「なあに?タケヒサ」
フリッフリのスカートにクルクル巻いた髪の毛、キラキラとしたメイクにかわいらしいアクセサリーの数々、黒と白でまとめられたそのファッションは間違いなく!
・・・・この駅で浮きに浮いていることだろう。
「頭の栓はずれたのかよ、もうちょっと考えようよ・・・今からどこ行くと思ってんの?」
信じられない、十年以上あってない父親に会いに行く格好かよ!?
「えっ、そう・・・だよね、ごめん私も違うかなって思ったんだけど」
「いや、まあ分かってくれれば」
以外に素直じゃないか、しかし兄なのに微妙にかわいいってのは参る、
「靴の色・・・やっぱブラウン系で妥協せずにちゃんと黒色のやつ買ってきてでも合わせたほうがよかったよね?ん〜まじ後悔する〜」
そっち?だめだ、きっと女になると常識まで工事されるんだきっと・・・・・
「まあ、いいや、行こうか兄さ・・・・」
くりくりとした眼差し、微笑む”どう見ても女にしかみえない人”になった我が兄、さすがに僕も兄貴と呼ぶのに違和感を感じてしまった。
「姉さん、でも近かったのは驚いたね・・・父さんの店があるとこ、電車でこっから十五分くらいだってさ」
「それでも母さんも会いには行きずらかったろうからね、でもやっぱ何だかんだ私たちのことを気にかけていたらしいよ、だから連絡先を・・・」
兄さんは電車の切符を二枚買い、一枚を僕にくれた・・・子供の頃切符を買うのがおもしろくてどっちが買うかで兄さんとケンカしたのを思い出した。
「ほら、いくよ」
僕は昔を懐かしんでいたが、前をゆく我が兄はすっかり腰骨が丸くなって、まったく当時の面影を残していない。そんな僕等を父はどう見るのか・・・そんな事を考えてしまう。
「姉さんは父さんの事覚えてる?」
「ああ、少しは、でもなんかうろ覚えでさ・・・会ってもわかるかな?」
父の写真は家にほとんど残ってなかった、母によると父は”思い出は心に残ればそれでいい”と家にカメラを置かなかったそうだ。
「大丈夫、親子なんだから、オレ父親似らしいし」
まあ、父親も”面影”を残してくれてればの話だけどね。
駅前から少し歩きそういうお店が集まる通りに入っていく、兄貴がこの街にすっかり溶け込んできた頃その店の前に着いた。
「入るの?」
兄さんが躊躇した様子をみせる・・・てかあなたに躊躇されても一番ふさわしいっちゃふさわしいからね?メッカ的な?いわゆる聖地だとおもいますが、
「わ、わかった・・入るからそんな目でお姉さんのこと見ないの」
ガランガラン・・・重そうな扉を開きその店に入っていく。
「いらっしゃ〜い、マダムジョリーンへようこそ」
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