コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

兄Xアイドル
日時: 2012/08/02 05:51
名前: 水人 (ID: sFi8OMZI)

「話がある。」
「なんだよ、急に、あらたまって」
 めずらしく今日は兄さんがいる。
兄さんは今大学二年生だ、いつもは、サークルやらバイトやらでほとんど家にはいない。
居ても部屋で寝てるから最近は話す事もほとんど無い。
「あのさぁ、えっと」
 冷蔵庫から飲み物を探しながら兄はなにか言いずらそうに話し始めた。
「なんだよ、こわいな」
 窓辺のソファーに腰かけて兄の様子に違和感を感じる。
少し開けた窓から六月の少し暖かい風が入ってくる。
兄がこんな時は決まって何か突飛なことを考えているときだ。
小学生のときの”カメレオンを飼いたい”(結局、許されたのはカメだったが)から始まって”冒険家になりたい”(リュックを背負って歩き回ったあげく隣町にて発見される)まだまだあるが・・・
両親は知らないが兄さんはそんな時必ず僕に相談をする。
「○○○だけど、どう思う?」
 といった具合だ。
まあなんと答えてもやってしまう人なんだが、
「えっ!ごめん今なんていったの?」
「ちょっ、ちゃんと聞いてくれよ」
「ごめん、でなんて?」
 兄さんが僕の横に座る。
「おれオンナになりたいんだけど、どう思う」
「はっ?」
 何だろう聞き間違いか?オンナ?違うな。ここで焦ったリアクションをしてはだめだ。
そっと様子を。
「もう耐えられないんだ。」
「兄さん、オンナになりたいって?どういう意味なの?」
 聞きたくない聞きたくない、
「オンナ?今おれオンナになりたいっていったか?」
 なんだやっぱりいい間違いか、びっくりさせやがって。
「で来週にはタイに行って手術してこようかと思ってて。」
「飛ばしすぎだよ。」
「?」
「?じゃねえよ。まずなんだ、えっと兄さんはオンナが好きじゃないのか?」
「好きじゃない事無いけど。でもおれは」
「よくわからないけど女装とかじゃだめなのかよ?」
「だめなんだなりたいんだおれは」
「何に?」
「アイドル」
「・・・・・・あいどる」
 何をいっとるんだ家の長兄は。
あきれた顔をして兄をみていると、
「オトコであることに自信を無くした、ならいっそおれはオンナに!」
「日野レイカか」
「・・・・・・」
「大好きなアイドルが結婚して己の無力さに気づきむしろおれが女になってアイドルになってやるって発想か」
 図星か二十歳にもなって。
日野レイカは先日結婚を発表したアイドルである。
好きなのは知っていたがまさかそこまで熱をあげていたとは、
「話はそれだけ?ならおれやることあるから」
 立ち上がって部屋に戻ろうとする。
「待ってくれよタケヒサ」
「なに?」
「アイドルは言い過ぎた、でもオトコなんていいことないじゃないか」
「たとえば?」
「振られる、貢がされる、うまくいったとしても最後は保険かけられて殺される」
「どんなだよ」
「十中八九そうだろうが」
「なわけあるか、そんなんだったら日本は今頃死体の山だ。」
「レディースデイ、女子会割引、女性登録無料!!etc・・・」
「不満だらけじゃないか、ここぞとばかりに日頃のカオスを吐き出してるな兄さん」
「男なんて極論イラナイラシイヨ。要らないものでいたってだめだろう?」
 首をこちらに寄せながら同意を求めてくる。
「いいよ、分かった兄さん」
 兄さんの目を見る。
「タイでもバンコクでも行ってこいよ。自分の体なんだから」
 人は弱い、本当にやりたかったら相談なんてしないのである。
止めてほしいからこそオレに相談するんだろ?逆に突き放せばどうせやめるんだろう。
くだらない話はもう終わり。こっちだって暇じゃない。
「ありがとな、わかってくれるのはタケヒサだけだよ」
 ?どっちだこの反応は?
「実は知り合いのツテで来週行く事は決まってるんだ。その前に一言相談したくて」
 そっちぃぃ!?しまったマジか。
とめたほうがいいのかな?まあいいか。いいか?いいのか?
「母さん知ってるの?」
「いや、話せるわけないだろ、父さんオトコとデキて蒸発したのに」
 そう父さんは、オレが十歳になったころ居なくなった。
母は何も言わなっかたがうわさ好きの親戚のおばさんから言われてなんとなく事情は知っていた。
「母さん父さんの居場所知ってるみたいだよ」
「えっ!」
「会いには行かないみたいだけど、ニューハーフバーにいるらしい」
「そう・・・か」
 兄さんはそれきり何も言わなかった。

それから一ヶ月が経った・・・







兄さんは女になった。

Page:1 2 3 4



Re: 兄のはなし ( No.7 )
日時: 2011/07/25 01:54
名前: 水人 (ID: g5yX4cMd)

 僕の初めての”父親の職場”見学♪
きょうは、おとーさんのはたらいている”ばー”にきました。
おんなのひとじゃないひとがたくさんいるおみせだそうです。
おもしろいことがたくさんできるこのよのらくえん まだむじょりーん・・・・
「おいっ、ちょっとしっかりしてよタケヒサ!なに、ぼーっとしてるの?」
 兄さんに体を小突かれてはっと僕は我に帰った。
「あら、かわいい男の子じゃない?ホントにシンディーちゃんのお子さんなの〜?」
 強めのライトでよく顔がわからないが、強めの香水と厚手の化粧・・・・・間違いない♪オカマだ。(失礼だろ)
新種の生物を眺めるような目で周りを見てしまう。
まだ時間も早かったのでお客はほとんど居なくて、その店のママが一番奥のソファーに通してくれたようだ。
「カネヨシ・・・イナザワカネヨシはこちらにいるんですね?」
「ええ、、まあその名前を知ってるのはわたしくらいでしょうけどね」
「きょ、今日はいないんですか?」
「ん〜?来ると思うけど、な〜にあんたたちお父さんに会いに来たの〜、まあ若いこらがこんなとここないか・・シンディー・・・あんた達のお父さんね・・・・・・・」
 ママさんはちょっとためらう風に言葉をきった、
「今ね、ちょっと時期が悪いかもね〜」
 時期?時期ってなんだ、父親ってもんは、魚みたいに”いい時期と悪い時期”があるんですか!?
父親・・・・・それはまるで太平洋を泳ぎまくるクロマグロのごとき・・・・
「時期って・・・もしかして親父、なんかあったんですか」
 兄貴とママさんは話を続ける、
「あんたさぁ、もしかして・・・お仲間?女の子にしちゃ言葉遣いがアレだけどさ」
 えー気付いてなかったのかよ!まあ僕も初対面じゃ見破れないだろうけど、こうして兄さんの横顔を見ながらみとれてる自分がいるし・・・・・いや?違うよ、僕は違うよ?理想はアンジェリーナジョリーだから!しかし協会の方々の目を欺くとはやるなっ!兄貴!弟として鼻が高い・・・・・・・か?
「・・・・わかりますか・・・でも私は女の子ですから」
「いいのよ、そんなのここでは当たり前のことなんだから、みんな一緒よ?大丈夫そんな顔しないで」
 少し涙ぐむ兄さん、コンプレックスは誰にでもある、でもそれを直接的に指摘されていい気持ちのするやつはいない。ママの言葉には愛情がこもっている、同じような体験をしてきた深みが兄さんの心を少し揉み解したのだろう。
「シンディーは結構古参の子だから、色々私も面倒みてるんだけどね・・・あの子最近ずっと付き合ってきた男と別れちゃってね、なんか荒れてるのよ」
 父親のことを”あの子”と呼ばれるのは奇妙な気分だ、父さんの別れたっていうのは例の男なのだろうか。
いずれにせよ、会って見なけりゃなんともいえない、それは兄さんも同じ気持ちだろう。
「わかった、でもこれからお店もあるから、そんなに時間はないわよ?じゃあ、ここじゃ邪魔になるから裏で待っててね」
 ママさんにバックに連れて行かれる。
まあ、当然だが広くは無い、着替えるところやちょっとした調理場があった。
何人か控えの”おんなのひとじゃないひと”がいたけど、鏡に向かって一心不乱に何かを顔に塗りたぐっている。(失礼だから)
「ここで待ってて頂戴、来たら連れてくるから」
 しばらく兄さんと座って待っている。
「タケヒサ、お姉ちゃんばっかしゃべってたけど、ちょっとは話しなさいよね」
「いやあ、専門家に任せておいた方がいいかと」
「怒るわよ」
「ごめん、でも姉ちゃんも男言葉でてたよ?」
「なんか、こう・・・・思いつめちゃってたから」
 いざ、父親に会うとなるとなにを話せばいいのかわからない。
「兄さん、逃げる?」
「なにいってんのよ、今更、男でしょ?ついてんでしょ?ったく・・・・・・後お、ね、え、さ、ん!」
「はい・・・・」
 逆に取ったほうが肝が据わるものものらしい。

「おまたせ」
 ママさんが僕達の方に顔をだした。
来たわよ?子供が来てるっていったら驚いちゃって・・・・会いたくないって言われちゃったわよ」
「えっ、いま、今どこにいますか」
「うん?いや、そこにいるけどさ、自分は子供を捨てたようなものだから会う資格がないし見せたくないのよ・・・裏口から帰してって頼まれちゃった」
「そんな」
 せっかくきたのに、でも向こうが会いたくないっていってるならどうしようもない。
「会わせてください、ママさんごめんなさい、面倒に巻き込んで・・・これは私たち姉弟と父の話なのに、私たちはなにがあっても父に会うために覚悟してきました・・・会えないなら会えないで父の口からそれを聞くまで帰れません」
 兄貴〜!僕は普段はまったく見せない兄の顔に、驚くと同時にすごく見直していた。
なんだよ、姉貴になったらかっちょいいじゃんか。
「よし!わかった、気に入った!シンディー呼んでやる、親子が会えない道理なんて無いね」
 ガラッ、突然扉が開いて人がはいって来る、
ママさんが振り返った、

「シンディー、聞いていたかい?」
 
 お、おやじ?

Re: 兄のはなし ( No.8 )
日時: 2011/07/25 19:04
名前: 水人 (ID: ixsLSGyl)

僕と兄さんは言葉を失った・・・・・久しぶりの再会だから?違う、想像していた父親とあまりにかけ離れた姿だったから?そうじゃない・・・・・
そこにいたのはどうみても若い、僕ともそんなに変わらない年齢の人間だった。
てか誰だよっ!!
「ママさん?この人がシンディー・・・・さんなんですか」
「えっ違うわよ?この子はカールスモーキー酒井ちゃん、カーリーね、あれ?シンディーは?」
「えっ、知らない、私はそこにあるおしぼり取りに来ただけだし〜」
 その子はお目当ての物を見つけるとさっさと出て行ってしまった。
「・・・・・・・・・」
 長い沈黙の後に、
「あの〜ママさん、父は・・・・・・」
「ああ、そうだったわね、ちょっと待ってて」

 ママさんがバタバタと外へ出て行く、
「ちょ〜と、シンディーどこ行ったの?」
 遠くでママさんの声が聞こえる。
「びっくりした、父さんかと思った」
 兄さんに話しかける僕、
「いや、そんなわけないでしょ、でもどんな顔してんだろうね、この店で働いてるってことは、きっとメイクバリバリでなんか・・・・”真っ黒”なんでしょうね」
「怖いね、ビジュアル的に・・・・・・」
 なんだかんだいってるとママさんが入ってくる。
「ちょっと」
 ママさんが手を使って僕達を招き寄せる。
「シンディー・・お店出てっちゃったみたいなのよ」
「えっそんな・・・・」
「大丈夫、今電話したげる、もう子供を追い返したから大丈夫って・・・・で、はちあわせさせてドッキリ成功!みたいな〜うふふふ」
 楽しんでやがるな、このババア・・・もといジジイ・・・・
「お願いします、ママさん」
 兄さんがそういうと、にこっと笑って電話をかけに行ってくれた。

「聞いたわよ、あなた達シンディーさんの子供なの?」
「えっ、ええまあ」
 さっきから、ひっきりなしに僕たちのことをお姉さま方が見に来ます。
まあ、他人の事情ってのはえてして興味を引くものだから。
でなければあんなでたらめばかりの週刊誌どもが毎週のように発売されるわけがない。
「大きいね?高校生?」
「は、はい」
 僕はうつむいてしまう。
なんか今日ここから無事に帰れないような気がしてきた・・・・・
「えー、そうなの先月?へーいいわね〜私まだよ〜」
 兄さんはいつのまにかお姉さま方と意気投合してらっしゃる・・・・・さすがです、お兄様についていけば間違いないです。
「来たわよ!シンディーいいわねみんなっ!シーだからね」
 いつのまにかお店ぐるみのドッキリ企画のようになった親子の再会!わざとらしく口元に人差し指を当てて静かにするようにみんなにうながすお姉さま、どうでもいいけどあなたたちはなぜそんなにいちいちアクションが大きいんですか!?

Re: 兄のはなし ( No.9 )
日時: 2011/07/25 17:21
名前: 水人 (ID: ixsLSGyl)

「ママ、ママ?ホントにあの子達帰ったんでしょうね、だめよ、私だめなの会えないから、絶対」
「も〜う、信用しなさいよ〜、早く来なさいよっ!男でしょ?」
「違うもん、女の子だもん」
 ヤメテー、もしこの声が父親のものだったら・・・・・・・想像以上に”くる”ものあるから!
ドキドキとイライラが交錯する僕の心、まるでそれはどうしても進めない脱衣ゲームの難易度がおかしくて見たいのに全然クリアできないことのごとくっ!!・・・・・すいません、
「ちょっ!・・・・・・・ハルト・・・タケヒサ・・・・?」
 僕たちと目があうシンディーこと我らが父、
「いるじゃ〜ん、まじ無理っていったじゃ〜ん、ちょ、ホント!?ママのうそつき〜」
 体をくねらせてそんなことを吐く父親、
「大成功だし!みんなせ〜の”大成功”!!」
「おめでと〜」
 わ〜わ〜騒ぐお姉さま方、ちらほらいたお客さんまで何の事だがわからないがお祝いらしいと拍手をしている・・・・・なんだこれ・・・・・・不幸ですよね?ちがう?
「ちょっと、あんたたちっ、さ、わ、ぎ、す、ぎっ、二人が目をまるくしてるわよ?久しぶりの親子再会なんだから、静かにしなさい?」
 ママさんに諭されて”は〜い”とそれぞれの持ち場に帰っていくお姉さま方、いやママさん原因はほぼ百パーセントはあんたのせいだ。
「さ、あそこつかっていいから、積もる話もあるでしょ」
 僕たちは先ほど兄さんと父を待っていた部屋にもどった。
「ひ、久しぶりだな・・・・・・元気か」
 先ほどまでのハイテンションは成りをひそめ父親っぽいトーンで話しかけられる。
あれをみたあとで父親っぽいもなにもないものだが、それでもそう勤めるようにしてくれているんだろう。
「いいよ、父さん、無理しなくて」
 兄さんが父にやさしい眼差しをむけた。
「えっ、何がだ?父さんどこもむりしてないぞ」
「いや、ガーターベルトにピンクのスカートに金色のウィッグまでつけてそんな神妙な声だされても笑っちゃうから・・・・・普通にしてよ、別にもうわかってるから・・・・・」
「・・・・・・・ちょー複雑よ、かわいい息子にこんなかっこうしてるとこ見られた上に理解を示されるなんて・・・・・てかハルト・・あんたいつから」
「先月、手術したわ」
「・・・・お母さんは知ってるの?」
「うん、この前話した・・・・・泣いてたけどお父さんのことも話してくれた・・だから一度会いに行こうってタケヒサも会いたがってたから」
 なんだろう、この状況は父と息子なのか、母と娘なのか・・・・どうでもいい感傷が僕の心に渦巻いていた。
「そっか、最近私も男と別れてね、なんか荒れてて・・・二人に当たっちゃうかもっておもったの・・・・サイテーの父親ね・・・・ごめんなさい」
「父さん、僕たちはもう子供じゃないから。大人だって人間だって、わかってるから」
「タケヒサ・・・・・」 
 突然ぎゅっとされる僕、あまりに力強いので死を覚悟したよね・・・・・
「あんたたちいつのまにか大人になっちゃって・・・・・もうびっくりだわ、お母さんのおかげね」
 ちょっと、涙ぐんでいるようにみえた。
その後、僕たちは色々な話をした、会う前は不安がたくさんあったけど、会ってしまえばそこは親子である。これまでのこと、とるにたらない話、たくさんの会話の中でお互いの絆を確かめ合っていたのかもしれない。
「今日は、ありがとう・・・ここ連絡先と住所かいてあるから、なにかあったら訪ねてらっしゃい」
 父はそういって、紙を兄さんに渡した、
「・・・・・こんな父親だけどホントにあなたちは立派だと思う、私のほうがしっかりしなきゃっておもっちゃったわよ」
「父さん、ごめんね、仕事場しか知らなかったから・・・・・」
「いいのよ、もういいの・・・」
 母と娘の感動の抱擁・・・・・覗き込んでいたお姉さま方も涙ぐんでハンカチで鼻水をかんでいる。

でも、こんな父親でも会えてよかったと思う、ちょっと変だけどでも僕たちのことを想ってくれていたのがきちんとわかったから。
僕たちは長年のわだかまりから解放されたのを感じながら家路についた。

「タケヒサー!」
 母の声で僕は目覚めた、今日は学校休みだし第一母は僕を起こした事などないのだが、
「ちょ、起きなさいっ大変!大変なの!!」
「なに、母さん、仕事は?」
「ハルちゃんが!て、テレビでてるの!!」
「ええええええ」

Re: 兄のはなし ( No.10 )
日時: 2011/07/25 18:58
名前: 水人 (ID: ixsLSGyl)

 なんだ!悪い事でもしたのか・・・・・なんだどうした何の話だ!!
寝起きの頭をすっかり混乱させて居間のテレビの前に辿りつく。
”さあ、今日の看板娘は、レベル高いですねえ”
テレビから騒がしいタレントの声が聞こえてくる、ワイドショーの人気企画で街のかわいい看板娘を探して今週の一位を決めるのだそう。
母によるとコーヒーショップかなんかで兄さんが出てきたそうだ。
「てか、仕事は?」
「あ、忘れてた、行こうとしたらテレビにハルちゃんでてきてびっくりしちゃって・・・」
「早く、いきなよ・・・いくら作家だからって怒られるよ、編集の人に」
「うん、じゃあ・・・・・ハルちゃん優勝したら教えてね」
 そういうと、カバンを抱えていそいそと出かけていった。
「ったく、ほんとかよ、看板娘って、第一”娘”じゃねえだろ」
 そんなことをぼそぼそ言いながら画面をみつめる。
冷蔵庫から冷やしたお茶を出してきてコップにそそぐ、
“いやあ、かわいい子ばっかりで、ですが・・・決まったようですね、はい今週の看板娘グランプリは”
 もったいぶった様子でカメラに近づくタレント、
”今日はコーヒーショップ「ランラン」のハルミちゃんに決定!!もう間違いなくかわいい”
ぶっおもわず口に含んだ茶を吹きだしてしまった。
「おにいちゃん、おにいちゃんが看板娘になっちょる・・・・・」
 映っていたのは間違いなく兄だった。
バイト始めたっていってたけど、こんなメイド服みたいな制服着てフリフリ働いてたのか・・・・・
”最近はモデルも少しやってますぅ”
 などと吐くお兄様、モデルってなんだ、びふぉあー、あふたー的なアレだろ?これが、こうみたいな?違うの?なに?きゃんきゃん・・・・・・・・・僕の意識が遠ざかるのを感じた。
・・・・・・・のも〜お〜きょうは〜とことんもり〜あ〜がろう〜どこからか森高千里の気分爽快が聴こえてくる気がする・・・・・・ああ、僕の着メロでした。
「もしもし」
「ねー、お姉さんみたいな人雑誌に乗ってるんだけど」
 マミからだった。
「どんな雑誌だよ」
「えー女の子のだよー、いや多分間違いないとおもうんだけど、お姉さんモデルとかやってんの?」
 いやいや今知ったとこー、てかお前なに受入れてんの?受入れられてない僕が悪いの?
「ちょ、いったって、アイツは男だぜ?」
「そんな考え方古いんじゃないの〜綺麗な人に男も女も無いでしょ?」
「・・・・・・・そうか、でもオレにとっては兄貴は兄貴だから」
「いーじゃない、私一人っ子だから綺麗なお姉さんがいてうらやましいよ」
 いい加減、受入れなきゃならないよな・・・・でもオレ兄さんと育ってきたし一緒にお風呂だって入ってたし、エロ本だって借りた事(勝手に)・・・・・でも兄さんは僕と見る箇所きっと違ったんだね・・・・・?それはどうでもいいか。
「ああ、マミこれから家行ってもいい?なんかどんな顔して兄貴にあっていいかわかんねえ」
「いいけど、普通に接すればいいんじゃないの?」
 そんな兄の話なんてどうでもいいんだけどね、お前の家に行く口実を作ってるだけだけどね。
あれ?今日こそイケんじゃね?てかイケんじゃね?あいつ一人暮らしなはずだし・・・・・・
「ああ、でも丁度いいかも♪昨日ママ帰ってきたから家にいるの、ほら、この前食事の約束したじゃない?よかったら今日にしない?」
「・・・・・・そお?でも誕生日はあさってだろ?」
「いいじゃない、あっプレゼント用意してないんでしょ?いいよ別に来てくれれば期待してないしあはは」
 なにいってんの、ちゃんと用意してるっつーの。
と、引き出しに入っていた、小箱を取り出して眺めてみる。
「じゃあ、行くから・・・・・・・住所教えて」

Re: 兄のはなし ( No.11 )
日時: 2011/07/26 01:06
名前: 水人 (ID: ixsLSGyl)

知らねーのかよって?駅は知ってるんだよ、よく送っていくし、その近くってことも・・・
その駅に車で迎えに来てくれるそうだ、お母さんと・・・
「ああ、どうしよう、なんか緊張してきた」
 彼女の母親と会うのなんて初めてだな、でも父親よりマシか・・・・な?
駅前で待っている、どんな車でくるんだろうか、NASAに勤めてるってことは金持ちなんだろう(多分知らねえけどさ)。
ベンツかふぉるくすわーげんかな・・・・・車詳しくねえからわかんねーや。
でも普段、外国にいるなら車遊ばせててもったいないなーとかどうでもいいこと考えてると普通の乗用車が近づいてクラクションを軽く鳴らした、
「こんにちわ!あなたがタケヒサ君?私マミのママのアユミで〜す」
 軽い感じで車の窓から顔を出して話しかけてくる女の人がいる。
普通の乗用車だが、左に運転席があるので外国製だとわかったが、高そうな感じじゃ全然ない。
もっと言ってしまえば、ところどころボコボコとへこんでいて傷だらけでボロい。
「こんにちわ、あのマミちゃんは?」
「なんかめかしこんでてね、そしたら彼を待たせてるっていうじゃない!だから顔知らないけど来ちゃった、あはは」
 あははじゃねえよ、無鉄砲にもほどがあるだろ、顔も知らない人間を迎えにいくなんて。
「よくわかりましたね」
「えーわかんなかったから、かたっぱしから男の子に声かけちゃった♪あなたで三人目よ〜」
 軽い、軽すぎる、考えてないのか・・・・・海外で生活しているからなのかこの人が特別なのか。
「・・・・・・えっと、乗っても?」
「もちろん、隣にどうぞ〜♪」
 マミの家はホントに駅から近かった、車で五、六分だろうか。
「マミ〜、帰ったよ〜」
「ちょっと、ママ勝手に迎え行かないでよ!私もすぐ準備できたのにー、せっかちなんだから〜」
 マミはそう母親に噛み付いていたが、マミのようすが普段と少し違うのがおかしく思えた。
誰でも親の前だと子供っぽくなるものなんだろう。
「よっ、びっくりしたよ・・・でも綺麗なお母さんだね」
「ちょっと、ママに変な事されてないでしょうね」
 どういう意味だ・・・・心外だなぁ
「あら、私もすてたものじゃないかしら〜」
 こっちに向けてポーズするマミのママ。
確かに子供がいるとは思えないスレンダーなスタイル、美人とはこういう人のことをいうんだろう。
「やめてよ!タックンはただでさえ年上好きの変態なんだから!!」
 コラー、場面考えようよ、”変態”とか親の前でいうこ言葉じゃなくなくなくない?
「あら〜、そうなの〜、うふふ、じゃあがんばっちゃおうかな」
 なにをだ〜、からかわれているのはわかっているが、少し顔が赤くなる。
「タックン?」
 コワッ!すごい目で見るマミの視線に背筋が寒くなる。
「えっと、まだ早いですよね、夕食には・・・」
 話をそらしてなんとか活路をみいだそうとする僕、
「そらぞらしいわね、タックン・・・・・・ママ夕食できるまで部屋行ってていい?」
「いいわよ、今日は腕によりをかけて作っちゃうから♪」
 意外だった、勝手に外食だと思い込んでいたからだ。
けっこう家庭的なお母さんに好感がもてた、まあ堅苦しい食事には慣れてないからよかったが・・・
「おじゃまします」
 初めて入るマミの部屋、男の部屋と違ってきれいだ。
いい香りがする、兄貴の部屋と同じ・・・・・・・・
「そこ、クッションあるからつかってね」
「ああ、なんか、落ち着かないな」
「なによ、いろんな女の子の部屋いってるくせに」
 挑発的な態度でくるマミ、どこで教わったの?だめでしょ、そんなこといっちゃ、めっ!
「はあ?行ってないよ、女の子の部屋なんて行かないぜ、オレ」
 いつも自分の部屋に呼ぶ派だからね・・・・・・・・
「ふ〜ん、まあいいわ」
 ゴロンとベットに転がるマミ、これは”イイヨ”ってことかなあ?いや、むしろ”ハヤクシロ”ってことだろ、わかったマミ、そこまでいうなら・・・・・


Page:1 2 3 4



この掲示板は過去ログ化されています。