コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- とんぐぶ! 【4/9本編更新】
- 日時: 2012/04/15 01:30
- 名前: 紫亜 ◆N4lxHV1tS2 (ID: sHQaGZqh)
どうも、紫亜です。
はじめましての方ははじめまして、いつもお世話になっている方はお世話になっております。
意味の分からない、でも本当にありそうなコメディを目指そうと思います。
ちょっと別板と迷ったので、もしこちらの板向きじゃないと思った場合はこっそり教えてください。
そしたら考慮の末、移動するかしないかしようと思います。
同時運営小説:【この物語は、】
【結局世の中顔でして。】
では、どうぞ。
登場人物【>>2】
本編【>>1】【>>4】【>>6】【>>11】【>>12】【>>13】【>>16】【>>19】【>>20】【>>24】
【>>26】【>>27】
お客様
・さえ
・チビ二世 様
・椎香
・愛河 姫奈様
\ コメント大歓迎! /
[4/9追記]
参照人数200突破感謝!
[4/14追記]
>>28 紫様より感想/アドバイスをいただきました!
ありがとうございました!
- Re: とんぐぶ! ( No.9 )
- 日時: 2011/09/25 09:44
- 名前: 稚香 (ID: pzcqBRyu)
はじめまして<(_ _)>
稚香と申します!
さっそくお気に入りに追加ぁ!
面白いです。更新頑張ってください!!
呼びタメおkですか??
- Re: とんぐぶ! ( No.10 )
- 日時: 2011/09/25 11:21
- 名前: 紫亜 ◆N4lxHV1tS2 (ID: LsxQHR/F)
椎香様
はじめましてっ!!
ええとええと紫亜ですこんにちは!
おおおおお気に入り追加!? ありがとうございます!
面白いと言っていただけて光栄です!
頑張ります!
はい、おkですよ!^^
- 西條視点 ( No.11 )
- 日時: 2012/04/22 20:54
- 名前: 紫亜 ◆N4lxHV1tS2 (ID: CyM14wEi)
「絶対入ってくれよな!」
先輩の言葉に笑顔を向けながら軽く返事をし、 俺は体育館を後にした。 先ほどまで練習に混ざらせてもらっていたバスケ部は、 とても活気がある。 それに加え、 部員や顧問も仲が良さそうだった。
だが、 圧倒的に集中力が無かった。
「おい、 女子が部活見に来てるぞ!」
「可愛いなー、 手でも振っちゃおうかなー」
俺が練習に加わってから五分後にはもう、 その話題でいっぱいだった。 恐らく今日男子バスケ部に見学に来ていた大勢の女の子達は、 ほとんどが俺のギャラリーだ。
その証拠に、 俺が体育館を離れたと同時にこちらに向き直り、 遠くから小さく奇声を発しながら見つめている。 顔を赤らめながら数人ずつの纏まりで固まって、 しばらくそれを続けているのが大多数だ。 その他に、 一部だが俺の後をコソコソと追いかけている。 いや、 コソコソしていると思い込みながらと言うのが正しいだろうか。 正確には甲高い声を聞こえないよう小さく、 だがはっきりと発しながら少し離れたところで追いかけている。 最初は必死に物陰を探しながら一生懸命についてきていたが、 俺が後ろを一切振り返らないことをいいことに、 段々探すのをやめて堂々と歩き出した。 あとの数名はそのまま見学か、 自分も何かの部活を探すかの行動に出ている。
多分、 だが、 これは自惚れではないだろう。
この現象は、 小学五・六年と中学三年のときにはもう既に起こっていたことなのだから。
中学でのその二年間の空白は、 また後日。
俺の髪は明るい。 というか、 綺麗な金髪だ。
これはイギリス人の母から譲り受けたもので、 俺は所謂ハーフというものに当たる。
そして俺はその金髪によく似合う顔立ちをしているらしく、 それによってより一層美しく見えるらしい。 これは父の友人達からの言葉だ。
俺の両親は、 二人ともとても美しい。 これは親贔屓というものではなく、 一般論だ。
父は元大人気モデル、 母はイギリスで大活躍し、 今もなお愛されている元女優。 なんでも、 お互いの一目惚れらしい。
二人は世間中から美男美女夫婦として、 入籍当時から持て囃されていたと聞く。 その時の二人が載っている新聞の記事を見せてもらったこともあるが、 それには本当に驚いた。 確かに二人とも、 見事なまでに美形だった。
時が経ち、 薄汚れてしまってはいるが、 そんなものは一切忘れてしまうほどに見入ってしまう。 そんな美しさだ。
そして、 俺もその美形を受け継いだのである。
金髪だから格好いい、 という、 日本人ならではの先入観のせいもあるのかもしれないが。
とにかく周りのミーハーさのお陰で、 俺は一見するとただのナルシストへと成り下がってしまったのである。
校門へと近付いてきたところで、 今までいたギャラリーも大分減った。 いや、 残るは後ろを追ってくる三人のみと言った方が正しいだろう。
この三人と俺は、 まるで話したことがない。 存在くらいなら知っているが。
というのもこの三人は先輩達も少し恐れているという噂がある。 入学して三日目でそんな話が広まるとは、 何をしたんだろうか。 と、 噂を耳にした当初は思っていた。
だがこの三人、 一度見たときに一瞬で分かった。 確かに強そうだ。 強そうなギャルだ。 それこそ、 喧嘩でも吹っかけたら彼氏にでも頼んでそういう集団を連れてきそうな感じの。
それも初めて見たときには、 普通に席について新たに出来た友達と話していた俺を狙って睨みつけていたらしい。 怖いからあまりジロジロとは見なかったが、 違うところから見ていた友人曰く確実に俺を狙っていたと。 確かに何度も目は合ったし、 目が合うと作り物の笑顔でにっこりと微笑まれた。
彼女らには猛獣のオーラが立ち込めていて、 正直怖い。
「ねえねえ、 声かける? かけちゃう?」
「えー、 でもー! やっぱり恥ずかしいよー!」
「でもチャンスじゃない!? 今周りうちらしかいないよ!」
後ろから聞こえてきた声は次第に大きくなってくる。 恐らく、 全て聞かせているのだろう。
かけるならかけるで、 早くしたらいいのに。 俺はもうすぐ校門から出て行くぞ。
「ねえ! 西條くん!」
ついに来たか、 猛獣三人組。 勝手に命名してしまったが、 その豹柄のカチューシャやライオンを連想させるキーホルダーがいかにもって感じだし、 いいよな別に。
俺は話しかけてきたうちの一番強そうな、 真ん中に立っている子に精一杯の笑顔を向けて返事した。
「なに? えっと…………」
「あっ! あたし茜っていうの! “あかね” って呼んでね?」
別に呼ぶ気はない。 一切。
「あかね、 ちゃんね。 覚えておくよ。 で、 僕に何か用?」
覚えられるかな……。 あれ、 何だっけ、 名前。
あかり、 だっけ。 あいこ、 だっけ。
まあいいや。
「えっとね、 今ぁ、 カノジョとかいたりするのかなぁ〜って! この子が!」
「えっ! ちょっとぉ〜! やめてよね〜!」
「彼女かぁ……いないけど、 君達みたいな可愛い子が彼女だと、 嬉しいかなあ」
ちょっと待って、 頭痛くなってきた。 この三人香水臭いな。 何狙ってるんだろう、 一体。
ところで、 さっきから俺の口調や一人称、 言っていることと考えていることの違いなど、 多くの矛盾が目立ったと思う。 さっきから表に出しているのは、 全て俺の建前だ。 そしてこの態度が建前だと気付いた人間は、 今までで誰一人として居ない。
それもそのはず。 最初のうちは勿論演じていたが、 最近では演じているのではなく、 自然と心も体もシフトチェンジしてしまうのだ。 歯の浮くようなクサイ台詞も、 綺麗にあがる口角や下がる目尻も。 全てに置いて、 今では全て自然体として出来る。 勿論、 本物の笑顔かと言うとNOだが。
所詮は、 誰もが俺の顔にしか目が行っていないということだ。
この “建前” の顔、 いわばもう一人の俺を作ったのは、 そっちだというのに。
猛獣に適当な返事を返しながら、 俺は猛獣の群れから脱出することに成功した。 無駄に引き下がるものだから、 折角早めに帰れそうだったのにもう夕暮れ時だ。
紅、 蒼のグラデーションが美しい、 この半田舎の空。 首都圏の喧騒とはまた違った騒がしさのあるこの地で、 俺は “俺” のことを分かってくれる人に出会えるだろうか。
中学入学前から抱いていた小さな夢を思いながら、 俺はようやく校門から出た。
すると、 ふと視界の端に何かが映る。
自分の着ている制服と同じ色。 …………人がいる! しかも校門のすぐそばで寝ている!?
「あの……大丈夫ですか?」
- 西條視点 ( No.12 )
- 日時: 2012/04/22 20:55
- 名前: 紫亜 ◆N4lxHV1tS2 (ID: CyM14wEi)
- 参照: 今のところ毎回2000字を目指しているが、そろそろ疲れた
「あのー……。 ……どうしたんですかー?」
「………」
「…………」
返事がない、 ただの屍のようだ。
なんて少し古い気のするネタを、 心の中で呟いてみる。 勿論相手に聞こえるはずもなく、 それ故くすり、 と笑ってくれることもない。
ところで、 誰だこの人は。 制服の真新しさ、 まだ着慣れていないらしいその姿、 そして自分と同じ色の青いネクタイ。 ネクタイの色は学年ごとに統一されているので、 彼と俺は同じ学年だと断定できた。
何だろう、 この人。 入学してからまだ一週間も経っていないというのに、 どうしていきなり校門の前で寝ることが出来たんだろう。 否、 どうしてそんな選択肢が出てきてしまったんだろう。 彼の頭のGOサインよ、 もっとちゃんと働いてやってくれ。
こんなところでしゃがみ込んで……いや、 立っていたのだが、 途中で疲れて座ってしまったのだろう。 背中がピタリと壁に密着しているところや、 壁に沿ってしゃがみ込んだときに出来る特有の皺があるところを見る限り、 きっとこれは断定できる。 ……気がする。
何の夢を見ているのだろうか。 まあ、 恐らく何か嫌な夢を見ているのだろう。 何か、 彼の癪に障るような夢。 なあ、 そうだろう? その皺の寄り過ぎた眉根よ。
と、 俺は目の前で熟睡している新入生に対し、 突っ込みつつ適当に理論をこじつけてみた。
あくまで “こじつけてみた” だけであって、 真偽は知らない。
ところで今俺の居る状況のビジュアルだが、 どうやら今俺は、 下校途中に友人が急に具合が悪くなり、 一先ず壁にもたれさせて様子を見ている優しい新入生に見えているらしい。
周りから聞こえる声は俺を賞賛する声と、 彼の身を (健康的な意味で) 案ずるもののみだ。 あとは、 俺の美貌にのみ目が行っているミーハーどもの外見に関する感想。
いや、 正確には俺 “ら” と言うべきだろうか。
彼、 ずっと眉根の皺にしか目が行かなかったが、 なかなかの美人だ。
鼻筋も通っているし、 目の位置も形もいい。 薄い唇は淡い桃色で、 変態が見たら欲情するだろう。 残念ながら俺にそういった趣味は無いが。
睫毛も長いし、 ニキビひとつない肌に荒れている様子はない。 眉毛の形も整っている。 黒く艶のある髪はサラサラした真っ直ぐなストレートで、 癖毛どころか枝毛すら見当たらない。 細く柔らかい髪質であるのに癖がないのは相当珍しいのではないか。 恐らく全て原産……手を加えた部分は、 肌を除けば殆どないだろう。
尤も、 肌に関しても毎日顔を洗っているだけで、 もともと綺麗なのだろうけど。
このことに関しては理屈はあえて付けないでおこう。
髪型も似合っているし、 制服の着こなし方も同じくだ。
変にキッチリ着ているわけでもない。 だがだらしないわけでもない。 恐らく、 彼自身この学校の制服が似合っているのだろう。 多少着慣れていない感じはするものの、 さほど違和感はない。
彼、 みてくれだけ言うと文句の付けようがない。
これは女性が見惚れても仕方ない。 いや、 正直俺より彼の方が美しい顔立ちをしていると思う。 女性陣よ、 何故気付かない?
一応言っておくが、 謙遜ではない。 決して違う。
と、 そろそろ本題に戻ろうか。 というか彼を起こそうか。
「あのー……風邪引きますよ?」
だが建前の俺が強く言えるはずもなく。
優しげに彼の肩を揺するのが限界だった。
「あのっ……ここ、 学校ですよー……!」
だが俺の良心が、 ここで引き下がってはいけないと言う。 これだから常識っていうのは、 つくづく怠け心をぐら付かせて困る。
俺は目の前で何ともマイペースに自分の時間 (もとい何だか嫌そうな夢) に浸り続けている名前も知らない同級生に、 声を掛け続けた。 だが一向に目を覚ましてくれない。
と、 そんなとき、 学校の時計台から鐘の音が聞こえた。 五時を告げるチャイムだ。
ああ、 今日は疲れたから早く帰りたかったのに——そう考えていた矢先。
「ッッッ…………!!」
彼はもの凄い形相で飛び起きた。
何だ、 俺の声じゃ起きなかったくせに。 アラーム選別機能でも付いているのか、 アンタの耳と頭には。
と、 まずは一通り思ったことを脳内で呟く。
そして俺は 『自分が何度も起こしてやっていた』 と遠回しに彼へ主張した。
すると彼、 何故だかキョトンとした顔でこちらを見つめてくる。 何なんだ、 一体。 俺の顔に何かついているか? 青海苔とか、 そういう類のものが。
彼はしばらく俺と見つめあった後、 我に帰ったように
「あ……。 …………すいません、 有難うございます。 もう平気です」
俯いてそう言った。
先ほどまでは目を閉じていてよく分からなかったが、 彼の瞳は大分濁っているように見える。
何だろうか、 ずっと見ていると、 この世の終点が見えてしまいそうな——
——想像するだけでも何だか恐ろしかったので、 俺はそこで考えるのをやめた。
そして俺は彼に軽く笑いかけ、 生返事をした。
最後に名前を聞いて、 別れを告げて立ち上がる。 そして愛想笑いを振りまいて、 歩き出した。
そのまま走り出そうとしたが、 それは彼の言葉で遮られてしまう。
「ねえ……」
ふいに後ろから声がした。 何だか無性に驚いて、 弾かれるように振り向いた。
その時の彼の目は、 何か嫌なものを見るように荒んでいた。
「それ、 君の本当の笑顔?」
————初めてだった。
——建前の俺のことを “汚らしく見る” 人も、
——俺の笑顔に “本物か” と聞いてくる人も。
だからだろうか。
俺はその時、 少しだけ彼に気を許した気がする。
「…………さあね。 今じゃあ、 どれが本物なのか分からないよ」
「……そう。 僕、 君はいくらか開き直ってて好きだ」
「……光栄です。 じゃあ、 また明日ね。 バイバイ、 橘くん」
もう一度笑顔を向け、 俺はその場を去った。
橘くんも立ち上がり、 俺とは逆の方向へと歩いていった。
- 橘視点 ( No.13 )
- 日時: 2012/04/22 20:57
- 名前: 紫亜 ◆N4lxHV1tS2 (ID: CyM14wEi)
- 参照: 今のところ毎回2000字を目指しているが、そろそろ疲れた
「あっ、 橘くん!」
何だか今日は色々な人に話しかけられる。 とは言っても、 まだ三人目だけど。
僕に近寄ってきた男子生徒、 顔は見たことある気がするけど、 名前は思い出せない。 かろうじて彼の茶色く綺麗な髪に見覚えがある。 確か彼の髪、 初めて見たときに感動を覚えたのを憶えてる。
あの金髪の……何ていうんだっけ、 西條か、 西條くんと別れてから少し歩いたところで、 彼に声を掛けられた。
ここは大通り。 駅へ行くには、 この通りを通らなければならない。 銀行、 郵便局、 書店、 幼稚園や服屋の並ぶこの道は、 帰宅ラッシュが始まりちょうど人が大勢出歩いている。 この喧騒の中で、 立ち止まる僕ら学生二人が通行人にとってどれほど邪魔な存在なのか。 その疑問は、 今のところ考えるに値しない。 まだ人の通りは少ないほうだから。
「何? えっと……」
「あっ、 ボクの名前覚えてない? ……まあ、 そっか、 そうだよねー……」
日が落ち、 大分暗くなった街中。
彼は男性とは思えない可愛らしい顔をしかめさせ、 考えるような素振りを見せた。
「ねえ、 クラスの子の名前 どれくらい覚えてる?」
と思いながら見ていると、 僕に質問を投げかけてくる。
上目で見てくるので、 余計女性的だと思ったのは黙っていたほうが正しいのだろうか。
「クラスの…… えっと、 前の席の人の名前なら……」
「そっか、 イスに張ってあるもんね、 名札!」
「う、 うん……」
「じゃあさじゃあさ! 他には他には? クラスの子以外では?!」
ま、 まだ何かあるのか!
こんなにも僕に話しかけてくる人は初めてだった。
いや、 さっきの西條くんとやらも、 初めてと言っては初めてだった。 他人とあれだけ長く喋ったことは、 “強制” されない限りは一度も無かった。
でも、 あれは流れ上仕方なかったことだ。 僕が校門で寝ていて、 それを起こしたのが彼。 挨拶を交わし、 少し喋るのが普通だろう。
いや、 まず校門で寝てしまったところから全然普通じゃないことくらい分かっているが。
話を戻そう。
僕は今まで、 何もなしに自分に話しかけてくる人に出会ったことがなかった。
クラスの誰とも接しようと思わない僕を気遣って、 無理に話しかけてくる人なら数人いたが。 それはいつでも僕の 「別に」 という一言で終わってしまっていた。
そこから先、 何か話しかけてくれたら普通に話したのだろうが、 誰も皆 「別に」 というその答え一つ聞いただけで諦めてしまった。 だから、 五言会話して終了が最高記録であり、 同時に日常でもあった。
「前の席の人も含めると……三人」
それが、 今はこれで九だ。
さっきの西條くんでも六。 恐らく人生最多だ。
「よかった、 じゃあボクの影が薄いわけじゃないんだ」
安堵する点を大幅に間違えてるよこの人。
「ボク、 日向! 日向拓斗! 橘くんと同じクラスだけど、 思いだせる?」
「日向……? うーん……。…………ああ、 ポイッの人?」
「そうそうそうそう! そんな細かいところ憶えてくれてたんだ! ボクですらもその言葉の前後思い出せないよ!」
僕は憶えている。
なぜならとても印象的だったから。
……残念ながら顔と名前を一致させるくらいまでではなかったけど。
「『日向拓斗です。 趣味はサッカーと昼寝、 野球やバレーボール、 バスケとかも好きです! でも一番すきなのは昼寝なので、 スポーツうんぬんの情報はポイッしちゃっていいです! よろしくお願いします!』」
だったかな。
……ん?
「た、 た、 た……橘くんっ! ボクのこと、 そんなに好きだったんだね! なんで全部言えるのっ!?」
え!? 声に出てた!?
「え、 え、 いや……なんだか印象的だったから憶えてただけで……」
「そんなに変なこと言ったんだっけ僕っ! ∑(´д`;) 」
「あっ、 いやそんなことは全然なくて! ∑(゜д゜;)!! 」
時刻は七時。
帰宅ラッシュが本格的に開始する頃。
車や自転車、 学生や社会人、 老人など、 多くの人が通るこの道。
こんなところで僕ら男子高校生二人、 立ち止まって向かい合って話しているのは、 少し異色な光景だろうか。
学校が近いとはいえ大分離れてもいるし、 そこらの高校生とは違いボディタッチなるものは一切していない。一緒に歩いているわけでもなく、 ただ向かい合って話しているのだ。 それも、 名前のことや自己紹介のことを、 余所余所しく。
だがそんなことは一切興味がないとでも言うように、 日向くんは周りを見ずに僕とのお喋りに興じていた。 いや、 興じているというよりは、 集中しているという表現の方が正しいのだろうか。
「ところで、 どうして日向くんは僕に話しかけてきたの?」
「えっ? うーん……なんて言えばいいのかなあ〜……」
「?」
日向くんは、 またも女性のような顔をしかめさせ、 考える素振りを見せた。
そして、 ある意味で僕の度肝を抜く発言をした。
「橘くんに、 部活のお誘いをしに来ました!」
話の流れが掴めなくて、 僕はフリーズした。
「ん……? 部活?」
部活。 そういえば僕の学校は、 部活に強制的に入らされるんだっけ。
まだ考えていなかった。 否、 考えるのを拒否したとも言える。
「ボクね、なんでか分かんないけど……本能的にかな。
初めて見たときから、橘くんと仲良くなるべきだって感じたんだ。
そんなことを言われたのは、生まれて初めてだった。
こんなこと、なかなか言われることはないんじゃないか。
セピア色の視界に飛び込んだ、 一人の茶色い髪の人。
彼はこれから僕の運命を大きく変えてしまうのだが、 それはまた後の話。
そんな高校入学三日目の放課後の話。
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