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三千回目の『はじめまして』を君に。
日時: 2012/12/16 19:42
名前: にゅるあ ◆6YRzs3gfaA (ID: au7rBPzb)

「はじめまして」

君は、笑顔で私にそう言った。

私も、笑顔で同じ言葉を返す。



いつからだろう。

『はじめまして』

その言葉に、悲しさしか感じなくなってしまったのは。



さあ 今


三千回目の『はじめまして』を君に。


———————

登場人物

椎名唯香 (転生少女) 
時間を繰り返す少女

神崎透
時間に流される少年

朝比奈紫苑 (不老不死)
時間が止まった少女

峰岸樹 (記憶少年)
時間を取り戻す少年



第一話 必然的なこの出会いを >>3 >>4
第二話 転生少女       >>5 >>6 >>11 >>12
第三話 時を動かす少年少女  >>15 >>16 >>19 >>20 >>31
第四話 消えかけの記憶    >>33 >>35 >>36 >>47
第五話 不老不死と記憶少年  >>49



やってしまいました・・。
ついに、ついに、掛け持ちをっ!!

「モノクロストリート」を書いている、にゅるあと申します!

書きたい衝動に負け、ついに書いてしまったのがこの話。
コメントされると、気持ち悪い程度に喜びます。


転生を繰り返す少女と少女に何度でも恋する少年

これは、そんな二人の、長い時間のお話です。

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第四話 消えかけの記憶 ( No.33 )
日時: 2012/11/24 12:28
名前: にゅるあ ◆6YRzs3gfaA (ID: uepMa0k9)


第四話 消えかけの記憶

はあ、と一つ呼吸して、紫苑は樹の家のインターホンを鳴らす。
少しして扉が開き、紫苑はいつもの調子で挨拶する。

「樹様、おはようございます。紫苑です」
「はいはい、おはよ」

出てきた樹の笑顔はいつも通りで、それだけ見ればどこにでもいるただの子供にさえ見える。

「昨夜は、何かあったのでしょうか」

そう言うと、少しだけ驚いたようで、樹の表情がきょとんとしたものに変わる。

「わかりますよ。貴方の態度や雰囲気から」

「……へえ、すごいね」
「それで、何があったのですか」
樹のような記憶少年ではないため、そこまではわからない。

「透君。……転生少女と恋仲にある子が、昨日病院に運ばれてね。まあ、それだけなんだけど」
そこまで言えば、樹の銀色の目が紫苑から逸らされて。

「記憶を取り込んだのではないのですか」
「えー……そこまでわかっちゃうのかな」
「長い付き合い、ですし」

視線を逸らすのは、樹が嘘をつくときの癖だった。
何故、言うことを避けようとしたのかと。紫苑は少しだけ苛立ちを覚える。

「ん、取り込んだっていうか、こっちからの転送をその子にしたんだよ」

「……転送をですか。成功しましたか?」
「してないんじゃないかなあ、結構頑張って力使ったんだけどね」
いつも通りに笑われて。

「……、ぜですか」
「?」

「何故、私に言ってくれないのです? 唯香様には伝えてあるのでしょう?」

「え、紫苑?」

「私に伝えたら都合の悪いことでも……っ、あるのですか?」
言い終わったところで、はっ、として。
どうしよう、と紫苑は、自分がどんな顔をしているかもわからないほどに焦っていて。

「えーっと、紫苑、それってあの」
「……?」

「焼き餅?」
「……っ!?」

「ち、が……! 違います、自意識過剰です!」

「お、感情的になる紫苑、久しぶりに見た」
羞恥に顔が火照って、自分とは思えないくらい焦っていて。

「そのような醜い感情ではありません。ただ、隠そうとする貴方に苛立ちを感じただけです」
「それ焼き餅って言うんじゃないの?」

面白いもの見た、というような顔で、楽しげに話す記憶少年。

(……適わない)
思わずそう感じてしまうことが、悔しかった。

Re: 三千回目の『はじめまして』を君に。 ( No.34 )
日時: 2012/11/24 15:06
名前: にゅるあ ◆6YRzs3gfaA (ID: uepMa0k9)

透子さん

また来てくれてありがとうございます!

見てくれてる人がいるんだと思うと感動……。
そして恥ずかしい。

久しぶりの更新なので、一旦前の更新を読み直してみたのですが。
自分の書いた作品読み直すって、すっごく恥ずかしくないですか……。
こんなもんネット上に後悔してんのか私は!?
ってなって消したくなるるるるる。

はい、更新頑張らせていただきますーっ!

第四話 消えかけの記憶 ( No.35 )
日時: 2012/11/24 19:06
名前: にゅるあ ◆6YRzs3gfaA (ID: hDVRZYXV)

「では、本題に入ります」
「今まで本題じゃなかったんだね。あと君、切り替え早くない?」

樹のツッコミも無視する形で、紫苑は話を続ける。

「確か転送が不可能ときは、転送する記憶が既に自分の中にある場合、でしたよね?」

「うん、そうだよ」

「では、透様には既に記憶があるということではないでしょうか」
そう言えば、樹は少し考えるように手を頭に置く。

「いや、転送をするのは今回がはじめてだから。それで上手く入らないだけかもしれない」
唯香にも言った言葉を、紫苑にもう一度繰り返す。
だが、樹は透に転送をしたとき、強い違和感を感じていた。
それは、取り込む際、自分に既に記憶があって取り込めないのと、同じ感覚だった。

「透様には既に記憶があり、それを隠している。という可能制もあるのですね」

「……いや、逆かもしれないよ」
「はい?」

この後、樹が発した言葉は、紫苑が理解するには時間のかかるものだった。

「記憶がないのは、二人ともかもしれない」

————

「ん、唯香……?」
ゆっくり、小さく聞こえたそれ。

「か、神崎君っ! 目が覚めたの?」
「……あれ、俺どうしたんだっけ?」
記憶は戻っていないのだ、という悲しみと。大丈夫そうだ、という安心。
両方を、唯香は感じた。

「もー、心配したよ? 神崎君、急に倒れ」

「お前、誰だよ」
そう言った透の目は、どこまでも冷たくて。
「え、?」

「唯香は、俺のことを神崎君なんて呼ばない」
「…………っ」

これは、『神崎君』ではない。自分がずっと恋してきた、『透』なのだと。
そして、この透が言う『唯香』が自分ではないこと。
理解した瞬間、ひどい頭痛に唯香は襲われる。

途切れるような意識で見た透は、驚きに目を見開いていて。
その光景は、あの時の君と重なった。

忘れられていた、消えかかった記憶の。あの時と。

第四話 消えかけの記憶 ( No.36 )
日時: 2012/11/25 10:42
名前: にゅるあ ◆6YRzs3gfaA (ID: FwQAM/tA)


真っ白な病室で聞こえるのは、少し荒くなった呼吸音。
私に背を向けた君から、それが聞こえて。

ねえ、今泣いているのでしょう?

「透が泣かなくてもいいのに」
「ごめん」

「泣き虫ー」
「ごめん」

「……なんで謝るの」
「ごめん」

「…………」
「……守れなくて、本当にごめん」


私は生まれつき病弱で、15歳まで生きれば良い方だと言われていた。
そんな私の、いつも隣にいてくれた幼馴染。それが透だった。

私がいじめられれば、助けてくれた。
迷子になれば、手を引いてくれた。
涙がでたら、一緒に泣いてくれた。

「私はいつだって、君に守られてたよ」

わかってたはずだった。いつかこんな日が来るって。

16歳のある日、私は入院した。
もう治らないと。死んでしまうと、そう言われた。

一番悲しんだのは、私でもなく、両親でもなく、君だった。

「守れて、ねえよ。結局俺は何も守れてない」

そう言う君が、どんな顔をしていたのかは知らない。
君の背中を見るのをやめて、自分も反対側を向く。涙が見えないように。

「君が好きだよ」
「俺も、お前が好きだ」

こんなにも両思いなのに、報われない。
君が近づいてくるのがわかった。

私の手を握って、私を見つめる。泣きはらした目で、それでいて強い目で。

「このまま、時間が止まったらいいのに」
「俺もそれがいい、ずっと、このままがいい」

「時間が戻って。あの頃みたいに、遊びたいな」
「お前運動神経悪いだろ」
「わ、ひどーい」

こんなに笑い合えて、こんなに幸せ。

「透、約束しようよ」
指を差し出して、きょとんとした君に向けて。

「次会ったら、私に『はじめまして』って言っちゃ駄目」
「……、うん、わかった」

歌を歌う。ほらあの頃みたいに。

「嘘ついたら針千本飲ーます……」

絡めた指も震えだして、目から流れ落ちたものは君の指へ。
君の腕は、そのまま私を抱きしめてくれた。

だからもう大丈夫。
これはお別れじゃないから、怖くないよ。

三千回目の『はじめまして』を君に。 ( No.37 )
日時: 2012/11/25 14:58
名前: LISA (ID: /.uLOIob)

す、すっごいいい話じゃないですかっ!?

読んでるときに泣いてしまいしたよ
(一番最新のやつ)

駄作だなんて、言ったらダメですよ

更新楽しみにしてます。

これからモノクロストリートも見に行きます!!


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