コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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言い訳なんていらないから。[完結**]
日時: 2012/11/21 09:01
名前: さくら (ID: Gg/cy2.F)

『すべての物事に理由と言う物がついている。たとえそれがまだ分からない理由でも。
それなのに、どうしてこの気持ちの理由が見つからないんだろう。どうして、言い訳が出来ないこの気持ちに気がついてしまったんだろう。
答えは分かってるようで分からない。きっとこの気持ちもそうなのかもしれないな。』

その日の日記にそう書き残して眠りについた自分を思い出して、
「今も分からないよ…。」
とつぶやいた。手の中の携帯は震えて、私への着信を伝えた。それでも怖くて画面を見ようとしない自分に腹が立って顔をベットにうずくめた。

———空野佳奈芽、今日告白しました。



#1
事の始まりは月曜日。雪が降ってて、とても良い日とはいえない天気だった。
そんな日の放課後、幼なじみの雄馬に彼女ができた。
隣のクラスの日野原果凛ちゃん。
かなりモテるらしく、彼氏候補がいっぱいいた…はずなのにあの子は雄馬を選んだ。
雄馬はあの子の事がもともとあの子の事が好きで、一度だけ告白していた。それをOKした理由は知らないけど、果凛ちゃんも雄馬の事が気に入ったみたいで付き合う事になった。その瞬間、私の失恋決定。…私も雄馬の事が大好きだったのに。

「お前、好きな人いないの?」

中1の時に一回だけ雄馬に聞かれた事がある。もしかしてって思った事もあったけど、やっぱり『雄馬の事が好き』なんて言えなくて、

「いないし。」

とそっけなく答えてた。

今思えばどうして言えなかったのか分かんなくて、果凛ちゃんと雄馬が付き合う事を知ってたらなぁと思った。その日の夜はいっぱい泣いて、目がぱんぱんになったのを友達に笑われた。友達の七海は
「あきらめちゃいなよ、雄馬くんのことなんか。」
といったけど、やっぱり諦めるなんて出来なくてただ雄馬と会いたくないと言ったっけ。
なんで、諦められないのか分かんなくて『幼なじみ依存性』なのかな?と思ったくらいだ。
でも理由はとっくに分かってる。


好きになったのが雄馬だからに決まってるじゃん。

理由なんて。

雄馬以外が好きになれない理由なんて。

理由なんて….




月曜日の放課後、部活にも行く気分じゃなくて教室に残ってた。
誰もいない教室。
黒板を照らすピンクとオレンジの夕焼けが目の中に焼き付いた。

私の席からは金木犀の木が見える。別になんて事ない風景だけど今はただ立っているだけの金木犀が羨ましく見えた。



「佳奈芽?」



大好きだけど今一番聞きたくない声。
————雄馬。

ジャージ姿の雄馬が教室に入って来た。え、待って。
今は来ないで。泣いてるの?って聞かれたらどうしよう。
そんな事を頭の中が言い出した。


「何?今、部活中なんでしょ?」

目から出る物に気がつかれたくなくて、きつい口調で言った。
….可愛くないなぁ、私。



「忘れもん。」

雄馬はそういって私みたいに自分の席に着いた。

「忘れ物なんじゃないの?」

「お前のまねっこ。」

雄馬がにやって笑う。いつもの笑い方。———でも、雄馬の笑顔はもう私の物じゃない。


そう思うとまた泣けて来て、机に顔をうずくめた。


「お前、泣いてんの?」

雄馬が席を立って、近づいて来た。

やっば、泣いてんのばれる。

「泣いてない。」

いじっぱりな私。

「泣いてる。」

すっごく優しい雄馬。

「泣いてないってば!!」
上半身をガバッと起こして言った。
——しまった!!

「ほらな、泣いてる。」

真っ赤な目があいつの目に映る。
雄馬の目には私はどう映ってるのかなぁ。

「無理すんな。」

そういって私の頭に手を置く。
小さいときからのおまじないだった。
小さい時に大好きな犬のコウタだ死んじゃったときも、雄馬はこのおまじないをした。
『コウタも見てんぞ、泣いてるお前なんて見たくないってよ。』
そういってたっけ。



「無理してないし。ただ…。」

「ただ?」

「…ちょっと色々あってね。」
言えない、泣いてるのはあんたに彼女が出来たから、なんて。

「….ばーか。色々あったぐらいで泣くな。」

雄馬が笑いかける。

笑いかけないで、また好きになっちゃうじゃん。
その笑顔、反則なんだよ。

「….やっべ!!俺、部活中じゃん。行かなきゃいけねぇんだった!!」

「….うん。」
早く行って。早く行かないと、また好きになる。
でも、行かないでほしい。もっとしゃべりたいのに。

「んじゃ、俺行くな。…笑ってないと怒るぞ、俺。」

「ん。」

雄馬は、あいつの最上級の笑顔を見せて教室を出た。

涙がいつの間にか乾いていた。



もう手遅れ。
また好きになっちゃったじゃん。あんなに笑いかけて、あんなに優しくして。反則なんだもん。それは私がただ単に幼なじみだから?
今頃気がついても遅いけど、雄馬。あんたの事が好きなんだよ?だから、だから…


私はどうすればいいんですか?

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Re: 言い訳なんていらないから。[ただいま6話目**] ( No.16 )
日時: 2012/11/13 17:44
名前: さくら (ID: CsX7ElZd)

#7
〜佳奈芽side〜
「ん?」

雄馬が笑って顔をかしげる。
あぁもう、好き。

小さいときから一緒にいたのに、

どうして今まで何も感じなかったんだろう。

私たちが大人になったから?


————…そっか、もう高校生も今年で最後なんだ。

来年はもう大学生なんだ。

「雄馬、私ね。」

「うん。」

周りの音なんて聞こえなかった。



「私、雄馬の事好きなんだよ。」



窓の開いた部屋は寒いはずなのに寒くなかった。


「それって…幼なじみとして?」

雄馬の顔は確実に赤かった。

「ううん、違う。好きって言うのはLOVEの好きだよ。」


「お前が、俺の事が…す、き?」

「うん。好き。———…大好き。」

「でも、俺には果凛が———…。」

「分かってる。これ見て。」

さっきもらった果凛からの手紙を手渡す。

薄い黄色の蝶みたいだった。



たまに聞こえる紙をめくる音。

雄馬、あなたはそれを読んでどういう風に感じるの?


「—−————…っ。」

「…。」

「俺、佳奈芽のこと大好きだよ。けど果凛も大切なんだ。なんつーか、二人ともとても、とても大切なんだよ。だから…。」

「分かってる。私も果凛が大切だから今まで言ってこなかった。雄馬が好きって。」


ふと思い出した。

前に私、神様に言ったっけ。


『大切な物を選ぶ運命なんか、授けないでよ。』


って。今私は雄馬にその運命を投げかけた。

もしかしたら人間ってみんなそうなの?神様。


あなたはみんなに大事なものを選ぶ使命を与えてるの?


ねぇ、神様。

あなたってすごく残酷。


私たちが苦しんでるのを見て楽しんでるの?




私たちは矛盾だらけの地球に生きてて、

あなたの言いなりになってる。


それをあなたは笑って見ているの?





「雄馬、私は————…。」

言いかけた言葉がのどに突っかかる。

言いたくない。

けど言わなきゃいけないんだ。

でも————…

果凛がくれたチャンス、無駄にしたくない。



「何でもない。」


そういうことしか出来なかった。




「佳奈芽。」

「ん。」

「俺、決めた。」

「ん。」

「もうちょい待ってくれない?」

「…」

「どうしても、どうしても選べない。佳奈芽か、果凛かなんて選べない。」


雄馬はほんとに申し訳なさそうに顔を下げる。


それってみんなそうなんだよ。雄馬。

私も選ぶのに時間がかかったから。



だからいいよ。


待ってるから。





「ん。分かった。だから…。」

「だから?」

「今まで通り、めっちゃ仲いい幼なじみでいてくれる?」

「———…あたりめーだよ。逆にそうじゃなかったら俺怒るからな。」

「———…ははは、ばーか。」

「ばーか。」


心から笑う。


そんな事がすごく新鮮で、

思いっきり笑えるほど笑った。



「雄馬。」

「ん。」

「明日からまた学校いくから。」

「おし、絶対来いよ。————…あと。」

「?」



「俺を、好きになってくれてありがとう。」








神様、やっぱさっき言ったこと撤回するね。


あなたは確かに残酷です。

だけど、必ず人を笑顔にさせられる。



どんなに辛くても、

あなたの残酷な『ゲーム』に付き合った人にはご褒美をくれる。



だってほら、



今私、言い訳なしに笑ってるから。

Re: 言い訳なんていらないから。[ただいま7話目**] ( No.17 )
日時: 2012/11/13 17:51
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)

……う、

うわああああああああああああああああああああああん!!

なんだコレ…ヤバイ、涙が止まんない……(涙

果凛ちゃん、貴女のきもちすっごく判るよ!!
この行動は正しい、悔いはないって思いたくても、やっぱり何処か迷いがある感じは!!

そして佳奈芽ちゃん……アンタは偉い。
理不尽でも、矛盾だらけと感じても、それでも受け入れて笑えるアンタは偉い!!

どんな結果だろうと、恐らく今の佳奈芽ちゃんはハッピーエンドだと感じられるんだろうな……そんな人間になりたいですね。思い込むんじゃなくて、素直に「よかった」と思える人間になりたい。

というわけで、どんな風になるか楽しみにしています!w
更新、お疲れの出ませんようw

Re: 言い訳なんていらないから。[ただいま7話目**] ( No.18 )
日時: 2012/11/13 18:09
名前: さくら (ID: CsX7ElZd)

八重ちゃん泣泣、大泣き))

毎回毎回ありがとうー><
大好きやーーーw

とりあえず今回はちょっと長く続く予感がじわじわとしてるので、まだ作者も詳しくどうなるかは考えておりません(((オイ—

いや、なんかね感情的になると佳奈芽も果凛もどっちも幸せになってほしいんだよねー
雄馬を二股OKなやつにするとかw
—————ないね。
それだとこの話は誕生しません笑
佳奈芽と果凛はそういう奴を受け付けてないと思うので))

まじどうしよう^^;

とりあえずコメライに書いてる分、最後に「よかった」って思える結果にしたいと思います。
八重ちゃんの臆病も楽しみにしてるので、更新無理なく頑張って下さいよぉ。

コメありがとう☆

さくら

Re: 言い訳なんていらないから。[ただいま7話目**] ( No.19 )
日時: 2012/11/13 20:25
名前: さくら (ID: CsX7ElZd)

今チロッとカキコみて見たら、

参照100超えてたw

なんやこの「あ、シャンプーなくなりそう」みたいなノリは笑

いやー早いはやい。始まってまだ一週間なんですよ、まだ。

感動してますます。

皆さんのおかげでこの小説は出来ているので、これからも応援お願いします))

最後に一つ、雄馬の事をいまいちかっこいいと思えません笑 
どうしよ汗

さくらでした^^*

Re: 言い訳なんていらないから。[ただいま7話目**] ( No.20 )
日時: 2012/11/14 14:54
名前: さくら (ID: Gg/cy2.F)


#8
〜佳奈芽side〜

学校に来るってこんなにドキドキするもんだっけ?

久しぶりに学校の門の前でそう思った。


前はこの学校に来るのが嫌だったっけ。


今は逆。



めっちゃ仲いい幼なじみがこの学校にいるんだもん。

学校にくればあいつに会える。

————…学校に来なくても会えるけど、それでも学校って特別な場所。


「佳奈芽!!!」


後ろからする声、振り向かなくても分かる。


「果凛!!!」

「久しぶりー、風邪大丈夫?」

「うん、平気平気っ!!」

「もう…無理しないでね。」

「えへへ、うん。」


果凛はいつも通り接するようにしているみたい。

すべての事を洗い流すって訳じゃないけど、


少しでも笑う時間を増やすように考える


そんな果凛の考え方が眩しくて、そんな人になりたいなぁと思った。




「ねぇ、雄馬とどうなった?」

ふいに果凛が聞いて来て少し焦った。

果凛の顔はいつもより晴れ晴れしていて、何かあったのかなぁと感じる。

「あぁ、雄馬ね。雄馬、もうちょっと時間が欲しいって。」

「そっか。でもね、私は————…」


ちょうどのとこでチャイムが鳴って、それぞれのクラスに行かなくちゃ行けなくなった。


「あ、次体育じゃん!!ごめん果凛、先行くね!!」

「———…うん。んじゃ、またいつもの場所でね!!」

「うん!!」


いつもの場所とは、私の教室。

前みたいに放課後に一緒に宿題とか出来るんだ。



前の私からしてみれば、

そんな事はどっちでもいいかもしれない。


友達とか、絆とか、

そんなの重くて嫌いだった。


だから友達とかもあっさりした子ばっかだった。

(例えば七海とか)




果凛はあっさりはしていない。


でも他の子とは違うものを持っている。


一言で言うと、

というか、一言でしか言えないけど



とっても


とっても



大切なんだ。




だから今でさえ、

雄馬か

果凛か


なんて選べない。


でも、それでもいいと思う。



どっちも失いたくないって気持ちはみんな一緒だと思う。



だから私たちは神様が与えた『ゲーム』を精一杯さまよった。


さいっしょっから分かってる。


この『ゲーム』に正確な答えなんてない。


答えに言い訳を突きつけて、正論だと言い張るしか自分がこの『ゲーム』に
勝つ道はない。



でもそんな事したくないもん。



果凛は大切。

雄馬も大切。



だから、ごめん

神様、あなたの『ゲーム』はきっと終わりません。




私、このままがいいって思い始めてる。


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