コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 少年(仮)真白と怪物騎士団【イラスト公開】
- 日時: 2015/04/07 23:40
- 名前: 妖狐 (ID: ET0e/DSO)
※参照500記念 予定企画『真白&イケメン様のイラスト描きます!』
■あらすじ
決して目立つことのない地味系女子高生、真白(ましろ)は、ある日、何者かによって池に落とされてしまう。
そこで死を覚悟したが、なんと池の奥は妖怪の住む世界へと繋がっていた!
しかもなんとそこは『女人禁制である怪物騎士団』の領地だった。
女だとバレれば即、首をはねられてしまう真白は男と偽るが……!?
甘く残酷な世界で、嘘から始まる異形たちとのドキドキライフ!
■目次
【序章】
>>01
【第一章】
1/妖怪はすぐ隣に>>02 2/暴君なイケメン>>03 3/抑えきれない恐怖>>09
4/異色なる生物 >>16 5/甘く残酷な王様>>19 6/命を賭けた試合 >>20
7/強くなりたい >>21 8/目覚める力 >>22
【第二章】
【その他】
4/7 参照500突破 イラスト公開>>27
■主な登場人物
真白(ましろ)/平凡な女子高生
名前不明/暴君のイケメン
ケケ/気の良いの妖怪
明(めい)/騎士団の団長
鈴蘭/明が大好きな青年のお付き
その他/河童や天狗、妖怪の類。
■作者紹介
はじめまして、あるいはまたお会いしました。妖狐と申します。
今作で九作品目となります!
異形が大好きです。よければ一度くらい見てみたいなとは思いつつも、本当に見てしまったら恐ろしいかもしれないとへっぴり腰でございます。
よければ気ままにお付き合いください(^◇^)
■読者様(コメントをくださった方)
ひよこ様
黒山羊様
朔良様
錦歌赤兎様
スミレ様
■執筆作品
銀の星細工師
【短編集】今夜はデザート日和
救世主はマフィア様!?
吸血鬼だって恋に落ちるらしい
ラスト・ファンタジア
神様による合縁奇縁な恋結び!?
僕等の宝物の日々〜君が隣にいるから〜
笑ってよ サンタさん!
それでは本編へレッツゴー!
- Re: 少年(仮)真白と怪物騎士団 ( No.1 )
- 日時: 2015/01/02 00:05
- 名前: 妖狐 (ID: W2jlL.74)
——すべて夢の中の、そのまた夢の事だと思っていた。
摩訶不思議で突拍子もない異形の住む世界、すべて——
■序章
鮮やかな血が飛び散った。足があっという間に赤く染まっていき、体が重心を崩して傾く。
私、死ぬのかな。
唸りを上げる獣の咆哮(ほうこう)を聞きながら、私は呆然とその場に座り込んだ。足は使い物にならず、正面には赤い血を塗りたくったような大きな口が迫ってくる。今すぐにも獣の牙が私の身体を切り裂こうとしていた。
「——真白、死ぬな!」
突然、闇を切り裂く閃光のような鋭い声音に叱責され、放心していた意識が急激に上昇した。
ましろ、私の名前が力を持って体内で弾ける。そうだ、私は真白。何にも染まることのない真っ白な色の強き自分を持てと、両親から授けられた名前を持つのが私。
辺りは炎で包まれ寸伝の所まで口が近づいてきていた。けれど次の瞬間、流星のように目の前へ駆け抜けた彼は、大きな剣を獣めがけて振り下ろした。ギャーと耳障りな奇声を発しながら獣の肢体が二つに割れる。それでも尚、血肉を削がれながら襲い掛かろうとする獣を彼は見やり、私の体を担ぐように持ち上げた。
「勝手に死のうとするな、真白。俺はお前が死ぬのを許した覚えはない。あとで恐怖に震え、この地を涙の淵に沈めるほど落涙(らくるい)して良いから、今は歯、食いしばれ」
高圧的な態度で、だけどとびきりの甘い微笑を浮かべる意地悪な人。彼の言葉に否を唱えることはできないんだ。
瑠璃色の長髪をなびかせ長衣が翻(ひるがえ)る。彼は絶体絶命の危機的状況に置かれながらも生き生きと輝いていた。彼の存在を感じて静止した心臓が息を吹き返すように鼓動する。なんて、大胆で強引な人なんだろうか。
「俺がお前の怪我をした足代わりになってやる。だからあの化け物に止めを刺せ」
風のように駆ける彼の視界の先には暴れ狂う獣の姿があった。巨大な姿に総毛だつようだったが、高飛車な彼と一緒ならもう何も怖くなかった。
「……分かりました。私が仕留めます」
決意を固めて左手に持った剣を強く握りしめる。光を放ち始めた刃先に彼は色っぽい笑みを浮かべた。
「そうだ真白、後で反省文、三百枚書けよ。勝手に死のうとしたおしおきだからな」
「さ、三百枚!? 無理です。私を不眠症にでもするつもりですか!」
獣を目の前にしながらの緩い会話に、緊迫していた空気が一変してほどける。
ああ、もうなんて暴君様なのだろうか。私はこの人に振り回されてばかりだ。抗議の眼を向けるが、面白がるように彼は私を見返す。
うう、この顔はずるい。目元に神秘的な赤い刺青を入れ、優雅に微笑む彼は世に言う絶世の美丈夫だ。怒っていることも忘れ、私は彼の腕の強さと抱かれているんだという現状に鼓動が高鳴ってしまう。
「なんだ、俺に見惚れているのか? 戦闘中に呑気な奴だな」
「あなたに言われたくないです!」
意地悪な笑い声を聞きながら私は雑念を払って剣先を獣へと定めた。一気に彼は私を持ったまま加速する。手のひらがじりじりと焼けるような熱さを保ちながら、眩しいくらい光を放つ剣を大きく振り上げた。
彼が私に死ぬなと言ったんだ。だから、だめだめ、私はこんなところで死ねない。
だったらまずは激しい炎を突き抜け、荒れ狂う悪しき獣を倒してみせようか。
- Re: 少年(仮)真白と怪物騎士団 ( No.2 )
- 日時: 2014/12/04 21:02
- 名前: 妖狐 (ID: W2jlL.74)
■第一章 妖怪はすぐ隣に
「ごめん、君はちょっと地味すぎて無理かな。ていうかその恰好なに? ウケ狙い?」
人生初であり、自分の命を懸ける覚悟でした一世一代の告白の返事が、これだ。
目の前にいるそこそこ美少年だがナルシストで有名な相手は悪気もなさそうに笑っていた。
「えーっと、名前なんだっけ? 白っぽい名前で……ああ、真白ちゃんだ」
髪の毛をくるくる指に巻きつけながら流し目をよこす。今まで大好きだったはずの彼が心底阿呆に見えた。
「ってなわけで、悪いんだけど他あたってね? 僕は地味専じゃないからさ」
最悪だ。
私は彼の無礼な言葉に怒るよりも鈍器で頭を殴られたような衝撃を受け、その場を走り去った。けれど走っても走ってもなかなか相手との距離が離れない。それはショックで体に力が入らないためか、単に自分の運動神経が鈍すぎるためなのか。なんでこんな時まで自分は駄目な奴なのだろう。
「もう、やだっ!」
溢れる涙と共に息を切らせてやっと学校の敷地から出た。相手が付いてきていないのを確認して糸が切れたようにその場へ倒れ込む。
地味。
それはまさに私を表すにふさわしい言葉だった。その一言で私という人間がいかに目立たず長所がなく十人並みの顔を持っているかが分かる。
「やっぱり無理なんだ……」
いくら自分が凡庸だとしても他の人のように恋ができると思っていた。けれど現実はそんなの無理だよ、と淡い期待を吹き飛ばす。
昔から何をやってもダメだった。運動をしても上達するより前に怪我をしまくり、勉強に精を出してもまったく知恵熱を出す。加えて、自分の容姿がどこかの妖怪大図鑑に出てきそうなほど無気味であった。
長い黒髪に顔を埋め尽くす前髪、そして生まれつきの悪すぎる視力を補う厚い眼鏡。幼い頃は気にしなかったが、今は鏡を見る事すら嫌いだ。けれど好きで妖怪じみた容姿をしている訳じゃない。理由があるんだ。
止まらない涙を無理やり制服の袖でぬぐったその時、突然何かが思いっきりぶつかってきた。
「ぎゃっ!」
一体何が起きたの!? 慌てて吹き飛ばされそうになった眼鏡を押さえてそちらを見る。
「うわ! なんでこんな所にうずくまってるんだ、馬鹿野郎!」
野太い声の罵倒が近くで降り注いだ。相手がこちらへぶつかってきたのになんて言い様だ。けれど幹のように太った体を持つ男性を目の前にして言い返せるわけもなく、私は貧弱な心をすぼませて謝った。
「す、すいません。こんな道の真ん中で失恋して自分の長所も見つけられず、うずくまっててすいません……」
「そ、そうか、お前も大変だったんだな。いや、こっちも悪かった」
あれ、意外と優しい。どこかのヤクザのような面持ちだが根っこは良心を持っている彼に好印象が生まれる。だが彼の身なりに私は眉を潜めた。
全身真っ黒だ。加えて顔を覆うマスクをつけていて、眼と口と鼻しか見えていない。まるで刑事ドラマに出てくる強盗そのものじゃないか。
え? ちょっと待って。まさか彼って……。
「こらー、止まれ! 無駄な逃亡はやめろ。これ以上逃げ続けると銀行強盗による強盗罪と公務執行妨害罪で逮捕するぞ。大人しくしろ!」
謙遜とたくさんの足音が近づいてくる。私は眼を限界まで開いて男を凝視した。
「あなた、銀行強盗したんですか……?」
弱弱しい声で尋ねる。お願いだから違うって言って! なにかの間違いか、大掛かりなドラマの撮影だって。けれど現実はやっぱり私をあっけなくつき離す。
「……だったらなんだ」
男の背中から殺気が揺らいだ。先ほどまでは優しい人だなんて思ったが今は恐怖で喉が引きつる。いつの間にか腰が抜けていて、彼のぎらつく視線から逃げることはできなかった。男はゆっくりと懐から大きな刃物を取り出す。研ぎ澄まされた刃物はこの場に不釣り合いなほど綺麗だった。
「い、いや……やめて!」
声が震え、視界が涙の幕でゆがむ。こんなことはありえないんだ。私はその辺に転がっている凡庸な女子高生で、明日も明後日も同じ日々を繰り返すんだって思ってた。けれどこんな簡単に悲劇は襲い掛かってくるものなの?
恐れが心臓を飲み込み、がくがくと足が小刻みに動いていた。もう逃げられないと悟る。
「ごめんな」
「え?」
一瞬、彼の瞳が懺悔で細められた。けれどすぐさま殺気を漲らせて強引に私の腕を引く。抵抗することもできず、私は弾むように彼の腕の中へ納まってしまった。
——ひやり、と首元へ刃物があてがわれる。
「おい、お前ら止まれ! じゃないとこいつがどうなってもいいんだな!?」
やっと追いついた警察たちが驚くように私を見た。一般市民である私が人質になってしまった今、彼らは安易に手が出せない。
いやだ、いやだ。私はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ。今日だって今までずっと見続けてきたアニメが夕方から放送される。前回、主人公が敵にやられてしまって絶体絶命のピンチなんだ。主人公がどうなったのか見届けるまで死ねない!
私は決死の思いで体を激しく動かした。腕からどうにかして逃げようともがく。
「お、おい! 止めろ‼ お前それ以上動くと本当にこれで切りつけるぞ! 死にてえのか!?」
ふふん、私だってやるときはやるんだからね! 今日のアニメは録画してないんだから見逃せないの!
男はまさか弱腰な私が暴れるなど微塵も思っていなかったのか、驚いたように力を抜いた。その一瞬を見逃さずに腕の拘束を解くと警察側へ向かって一直線に走る。
わたしだって本気になればできるんだ。勝利を確信したとき、頭が引き裂けるよう痛みが襲ってきた。
「逃がすか、この野郎!」
長い髪を捕まれ引き戻されてしまう。あまりの痛みに引っ込んだ涙がぶわっと溢れ出た。絶対何十本も髪の毛が抜けただろうと予測される。けど、私の戦う気力は失われていなかった。
「甘く見ないで!」
叫ぶと普段鞄の中に入れっぱなしのレター用ナイフを取り出す。祖父から外国の土産にもらって一度も使用していないナイフは見事にするどかった。
「な、なにをする気だっ!?」
ひるむ相手に構わず、私は自分の髪をナイフで切り付けた。ふっと頭が軽くなるような感覚と共に身体が自由になる。私はしにものぐるいでその場から駆け出した。
「あ、ちょっと君、こっちへおいで! 保護するから!」
遠くで警察の呼ぶ声が聞こえるが、男から逃げる事しか頭にない私は足を動かすことに精一杯で方角を定める事なんてできなかった。
動け、私の足。
生まれて初めてというほどスピードは加速して、一瞬私は風になったかのように錯覚した。
世界の音や匂いが全て遠くに感じる。ただ、ここから一刻も早く逃げるんだ。そのことしか考えず私は全力疾走した。
◆
「真白、あなたは髪を短くしてはいけないのよ。髪は腰より下に伸ばしなさい。でないと髪で押さえていたあなたの力が外に漏れてしまう」
幼い頃、何度も母に言い聞かされた言葉が甦る。内容はよく分からなかったが自分が髪を切ってはいけない事だけはしっかり理解した。そして生まれて16年間、ずっとその約束を健気に守り続けてきた。
けど、ごめんなさい。私は約束を破ってしまった。
肩で楽しそうに揺れる短くなった髪をそっと触った。胸が罪悪感で痛むのに、どこか清々しい気持ちになる。何か重たい物が背から降りたような感覚だ。
それにしてもここはどこだろう? 私は辺りを見渡して自分の記憶を探った。けれど道を選ばず走ってきたため見当がつかない。強盗からは逃げられたようなので、ほっと息をついた。
「おや、お前さん、ざんばら髪ダネ。まるで戦国時代の落ち武者だ」
唐突にしわがれた声が足元からかけられた。今まで人の気配などなかったのに唐突に現れた人物に、私はそこから飛ぶように後ずさる。すぐ近くに小さなおじいさんが立っていた。
一体いつからそこに居たのだろう。静かに鳥肌が立つ。
「ひゃっひゃひゃ、若いもんは元気だのう。……おやや? お前さんの、そのざんばら髪はもしかして……」
ふいに、じっとおじいさんが小さな眼で見つめてくる。確かにナイフでばっさり切っただけの髪は不ぞろいで綺麗ではないだろう。
「そ、そんなにおかしいですか?」
もしかして前より酷い容姿になってしまったのだろうか。びくびくしながら尋ねるとおじいさんは思いつめた顔をほころばせた。
「いや、大丈夫サ。お前さんの顔はべっぴんだしの。髪型なんて関係ない」
「べ、べっぴん!」
それは世に言う美人を表す言葉だろうか。自分とは違う世界の言葉だと認識していたので、初めて言われた言葉に舞い上がってしまう。
「や、やだおじいさん! そんなに褒めたってなにも出ませんよ、もう」
私は頬を緩ませて言うとおじいさんは優しく笑った。
「本当じゃよ。お前さんはあの方に随分似ておる。気になるならあの池を覗いて、自分の姿を見てみい」
おじいさんの指差した方には小さな池があった。公園におまけ程度に添えられている物だ。さっそく見てみようと足を傾けるが、疑問が湧いて振り返った。
「あの、あの方に似てるっていったい誰に似てるんですか?」
振り向いた瞬間、強い風が体へ押し寄せた。木々が大きく揺れて木の葉の嵐が起きる。思わず目を閉じて腕で顔を覆った。
「そのうち合うだろう」
耳元でそっとおじいさんの声が囁いたように感じた。風が収まってから顔を上げるとおじいさんの姿はもうそこになかった。
「あれ、どこにいったんだろう……」
探すけど見当たらない。仕方なく私は池へ向かって自分の姿を見つめた。
いつもの重たい髪がすっかり無くなっている。私だけど私じゃないみたいだ。うーん、おじいさんに言われた通り実は私ってべっぴんなんじゃ……。いや、そんなわけないな。
人は急に変われないものである。それでも軽い心に微笑んだとき、ぐにゃりと池が歪んだ。ゆっくりと波紋が広がってぽっかりと池に穴が開く。
「なに、これ……!」
黒くて底のない穴だ。私は吸い込まれるように穴を覗き込む。すると後ろから持ち上げるように体を押された。
「ちょ、待って! そんなことしたら落ちるっ」
バランスを取ろうと後ろへ下がるがもう遅かった。転がるように大きな穴へ落ちる。
「い、いやーっ!」
なんて日なのだろう。今日は失恋して、人質にされて、おまけに得体の知らない穴に突き落されるだなんて。きっと今日は悪運に憑かれた日なんだ。
私は黒い穴にすっぽりと飲み込まれていった。
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