コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 君の青春に××してる【完結】
- 日時: 2015/03/19 12:43
- 名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: OgnYhGeD)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=38207
初めましてor(知っている人がいましたら)お久しぶりです。
はるたと申します。
本作でもう六作目となります。
今回のテーマは「彼と彼女の一週間」ということで、一週間限定小説となっています。
一応もう全話書き終わっているので、一日に一話ペースで更新して一週間で完結できたらと思っています。でも、最近はPCの調子が悪いので、危ういかもしれません……(汗
今回は完全なラブコメとなっておりますので、お時間があればどうぞ。
【お願い】
・中傷、荒らし等は、来たことがないのでよく分かりませんが控えてください。
・コメントは大歓迎です。
・更新は気まぐれです。気長にお待ちください。
【登場人物】
*沢渡 柚菜(サワタリ ユナ)
本作の主人公で、有馬に恋をする純粋な少女。
クラスではそんなに目立たない、いわゆるモブ。
何事にも一生懸命で、有馬に少しでも気に入られようと奮闘中。
*有馬 千歳 (アリマ チトセ)
柚菜が想いを寄せる少年。
クラスではクールな性格で人気があり、友達が多い。
鈍感で天然なため、いつも柚菜を困らせる。
【お客様】
*錦歌赤兎様
*美奈様
*ゴマ猫様
*ひよこ様
*朔良様
*蒼様
*占部流句様
*キャンパスノート様
*独楽林檎様
読んでくださる皆様、コメントをくださる皆様、ありがとうございます。
一週間だけおつきあいください。
【はるたの作品集】
*ゆかり荘日和(完結)
*なりふりかまってられないのです。(完結)
*生徒会にヒーローとおもちゃ!
*白い夏とか青春だとか(更新停止中)
*I live with ヴぁんぱいあ。(URL↑)
- Re: 君の青春に××してる ( No.10 )
- 日時: 2015/03/07 22:59
- 名前: はるた (ID: G1aoRKsm)
普通に風邪をひいてしまいました(笑)
PCの調子よりも自分の調子が悪くなるなんて……。体弱いって本当嫌ですよね、はい。現在形でフラフラ状態なので、更新は明日になります。一気に3話更新します。
*ひよこさん
お久しぶりです、来てくださって嬉しいです。
はい、そうですね。7日小説は珍しいとはるたも思います。新しいジャンルへの挑戦、ということで頑張らせてもらおうと思います。
有馬は多分ひよこさんが思っているような人物です(笑)
多分想像通りの少年です。一回格好いいのに残念な男子を書いてみたかったので、ヒーローをこういう性格にしました。
柚菜がこの先有馬のことを好きでいられるか。そこはこの小説の一番のポイントとなっています。
水曜日に更新予定の最終話で柚菜は決断します。
完結までもうしばらくお付き合いください。
コメント、 ありがとうございました。
*朔良さん
お久しぶりです、きてくれて嬉しいです、朔良ちゃん!
そうですね、7日限定の小説は珍しいですね。はるたはいつか短編を書けるように、という思いでこの作品を書き上げました。制作時間は1ヶ月という短い時間でしたが、少しでも朔良ちゃんや読んでくださる皆様の心に残る作品になればいいなと思います。
はい有馬氏は朔良ちゃんの思っているような「お」から始まるアレです(笑)
多分もうすぐきちんと解るかと……。そんな有馬でも大丈夫ですか?
有馬はあんまり気に入られそうなキャラじゃないと思っていたので、そう言っていただけて嬉しいです。
同じく二人の恋の行方を見守っていただけると思います。
コメントありがとうございました。
***
来週以降、皆様の小説に訪問に行こうと思います。
- Re: 君の青春に××してる ( No.11 )
- 日時: 2015/03/08 10:06
- 名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: l.IjPRNe)
2日目「君にメールをしてみました」
好きな人と一緒に入れるなんて、どんなに幸せなことなんだろう。
キーンコーンカーンコーンとチャイムの音が鳴って、授業が終わる。私は鞄を持って、席を立った。それと同時に、有馬君も席を立つ。
彼はゆっくりと私のもとにやってきて、口を開いた。
「今日はさ、家出ゲームやる予定だったから、一緒に帰れない。ごめんね」
私は有馬君の言葉に少し戸惑って、すぐに「うん」と頷いた。
そして思う。私はゲームに劣っているのか、と。
付き合い始めて二日目。いまだ、有馬君のことがよく分からない。
昨日一緒に本屋に行ったけれど、何だか嫌な予感しかしない。
「それでさ、沢渡さんって携帯持ってる?」
「……え、あぁ、うん。持ってるけど」
「俺のアドレス、このメモに書いておいたから。何かあったら連絡ください」
彼はそういうなり私に一枚の小さなメモを渡してきた。そこには小さな字でメールアドレスと携帯番号が書かれていた。
何かなきゃメールしちゃ駄目なのか?と思ったが、私はぐっと口をつぐみ「ありがとう」とお礼を言った。
「じゃぁ、また明日」
「うん、また明日っ」
好きな人がこんなにそばにいて、私と話をしてくれる。
それだけでも幸せなことなのに、私の彼氏(仮)になってくれるなんて。やっぱり私はおこがましいのだろうか。小さな溜息をつきながら、私はメモを見ながら携帯に彼の番号を入れた。
「あ」行だから、彼の名前は一番最初。そんなことに私はドキドキしていた。
***
「どうしようか、メールしてみようかな」
家に帰るなり私は自分の部屋に直行。そして、ベッドにダイブ。
枕をぎゅっと抱きしめながら、携帯をちらりとのぞく。
何かあったら連絡して、という彼の言葉に私はまた息をついた。何もないけど、有馬君と話がしたいよ。でも、有馬君にとってはそんなの邪魔なんだろうなぁ。
余計な事ばかり考えて、私はまたぎゅっと枕を抱きしめた。
『有馬君、こんばんは。
沢渡柚菜です。何かあったわけではないんだけど、少し有馬君と少し話がしてみたいと思ってメールしました。
ゲームは楽しいですか?私はあまりゲームとかはしないんだけど、どういうジャンルのゲームが有馬君は好きなのかな?』
文面を何十回も確認して、私は有馬君に送信した。
届いただろうか。私は心配になりながら、じーっと携帯を見つめる。そんなに早く帰ってくるわけもないのに、気になって気になって仕方がない。
そのままあっという間に時間は過ぎた。
それから、三時間後。
夜ご飯も食べて、お風呂も入って、丁度私が本を開いた時だった。
携帯から可愛らしい音がして、私ははっとした。もしかしたら彼から返事が返ってきたのかも。すぐさまペンを置き、ベッドに放置された携帯に飛びつく。
『沢渡さん、こんばんは。
有馬です。
なんだか沢渡さんの文面は丁寧だね。ちょっと知らない人からのメールかと思った(笑)
ゲームはとても楽しい。結構好きなんだ、しかも今日やってたのは出たばっかの新作で、今日届いたばかりのやつ。
今度うちに来て一緒にやろう』
読み終えた途端、私は口元に手を当てた。
何だか涙が出そうだった。返事が返ってきたうえに、今度一緒にやろうなんて恐れ多いことを言ってくれている。有馬君はやっぱり優しい。
ぎゅっと胸が引きちぎられそうになるのを嬉しく感じた金曜日。
「有馬君。大好きだよ」
だって、君は私の初恋なんだもん。
初めてあなたに会ったとき、胸がドキドキして仕方がなかったんだ。
いわゆる一目惚れっていうやつなのかもしれない。
例えそうでも、そこらにいる女子には負けるつもりはないんだ。だって、有馬君のことを一番好きなのは私だって思ってるから。
彼にどう思われているのか私はまだ分からないけど、それでも私は君のことを好きでい続ける。
さて、そろそろ君の秘密を知るときなのかもしれない。
- Re: 君の青春に××してる ( No.12 )
- 日時: 2015/03/08 11:52
- 名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: Uj9lR0Ik)
3日目「君のバイト姿を見てみました」
私の学校は一年のうち二は部活に入っていなきゃ駄目という校則があるが、二年からは自由だ。
そのため、私は勉強に精を出そうと二年で部活動をやめた。
そのため休日、特に土曜日は暇だ。友達と遊びに行く事はあるが、友達はもちろん部活に入っているし、今度大会があるようで、私に構っている暇はなさそうだ。
「柚菜、今日出かけないの?」
「……お母さん、どうしたの?いつもは部屋に引きこもってるのに」
少女漫画家の私の母がノックもせずに私の部屋に入ってきた。手に持っているのは、お母さんの相棒の掃除機、吸いトールくんだ。
お母さんは何故か満面の笑みで私の出かけることを勧めてくる。
そんなに勧められても、一緒に遊ぶ友達もいないのに……。
「今日は、掃除をしようと思ってね!」
「お母さん、ネタに詰まっても掃除で何でも解決できないよ。編集さん困らせないようにね、ていうかまたどっかのホテルで缶詰めにならないでね。じゃなくて、別にそれでもいいけどちゃんとご飯作っていってね」
「お母さん、悲しい……」
掃除機をぎゅうっと抱きしめながら、お母さんは嘘なきでもするかのように、涙ぐむ。
私は息をつきながら、パーカーに身を包んだ。ゆっくりと鞄を手に持ち、部屋から出る前に
「行ってきます」
と言うと、にっこり笑顔でお母さんは「行ってらっしゃい」と言ってくれた。
さて、どこに行こうか。急に家を追い出されたものだから、悩むな。
私はバスで隣町までいって、お気に入りのCD屋さんに向かった。
辺りはカップルであふれていて、私はついついため息をついてしまう。 しばらくすると、何故か頭の中で有馬君が浮かんだ。
明日会う約束をしているのに、今日まで会いたいなんて本当おこがましい。どうしよう、こんなに有馬君のことばかり考えちゃうなんて、重症だよ。そんなことを考えては溜息がでる。
CD屋さんにつくと、私はずっと欲しかったCDを探してみた。十分ぐらいすると、お目当てのものが見つかって、私はほっと一息。
「よかった、あったぁ」
探したかいがあったな、うん。
ひとりでに頷きながら、私はそのCDを持って会計に向かった。数人並んでいて、私はその最後尾に並ぶ。
「次の人、どうぞー」
店員の声が聞こえて、私は顔をあげた。
瞬間的にびっくりする。なぜならそこに、私のよく知っている人がいたから……。
「……って、え!? 沢渡さん。どうしたの、こんなところで」
「えぇ、いや。こっちのセリフだよ。私はただの買い物で……って、うちの学校バイト禁止じゃなかったっけ? ちゃんと申請してる?」
「……」
そこには深緑のエプロンをした少年。私の好きな人の有馬君がいた。少しダサそうなエプロンなのに、有馬君なら何でも似合ってしまうのだろう。やっぱり格好いい。
私の質問に有馬君は黙り込んでしまった。
ということは内緒でバイトか……。確かにわざわざ隣町でバイトしていることから、そんなことは明確だ。
私からそっと目を逸らしていく有馬君に私は何とか話を変えようと
「大丈夫!! 言わないから。絶対学校に言わないから」
と、言ってみたものの有馬君は焦った表情のまま。
私の買ったCDを袋に入れると同時に、私にぽつりと言葉を漏らした。
「バイトもうすぐ休憩だから、ちょっとそこで待ってて」
「……え、あぁ。うん」
有馬君にそんなこと言われるなんて考えもしなかったから、私は吃驚してしまって声が変になってしまった。
有馬君の言う通り、私がしばらく店の前で待っていると、すぐに有馬君は私のもとに来てくれた。
「ごめん、あの……」
「どうしてバイトしてるの?」
聞いてみると、案の定、有馬君は言いにくいことなのか顔を伏せた。
「別に言いたくないならいいよ。それでも私は構わない」
私がそう言って笑ってみせると、有馬君はゆっくりと口を開いた。
「俺、欲しいものがあって、でも最近金欠酷くてさ。バイトが手っ取り早く稼げるかと思って」
「……じゃぁ、先生に申請しなかったのは?」
「面倒くさかったから」
「あー、そうなんだ」
面倒くさい。確かにバイト申請はいろいろな書類を書かなきゃいけないから、面倒くさいというのは確かだ。有馬君が真顔で言うものだから、私はつい言葉が棒読みになってしまう。
「俺、そろそろ戻らなきゃ」
「うん。バイト頑張ってね」
「あぁ、あと明日さ。沢渡さん駅前で待ち合わせしたいんだけど、大丈夫?」
「うん。もちろん」
そんな会話を交わしながら、有馬君はバイトに戻っていった。なんだか凛々しいような有馬君の背中に、私はやっぱりときめいてしまう。
「あと」
急に有馬君が私の方を振り返って声をあげた。何だろう?
私は頭にハテナを出しながら、有馬君を見つめた。
「私服、なんだか意外だったけど……似合ってますね」
…………へ?
私ははっと気づいて自分の姿を見てみる。有馬君と会うなんて予想もせずにこの場所に来た。
そのためそこまでオシャレなんてしていない。じみめなパーカーを羽織ったくらい。
自分の格好を確認して私は顔が真っ赤になってしまった。
こんな地味な女が有馬君の彼女なんて、有馬君が可哀想だ……。
そんなことを考えてまたもやため息をつく土曜日。
- Re: 君の青春に××してる ( No.13 )
- 日時: 2015/03/08 11:54
- 名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: Uj9lR0Ik)
4日目「君とライブに行ってみました」
午前九時。私は大きな奇声を発していた。
落ちつこう、落ち着こう……。
何度も唱え、私はベッドに放り投げた服どもをじーっとにらみつけた。クローゼットをガバっと開け、箪笥のものを全てひっくり返すように散らかす。
今日は有馬君とのデートの日だ。一緒にライブに行こうと誘ってくれたのはいいのだが、出かけるということは私服を見られるということ。
まぁ、昨日ダサい服を見られてしまったが……。それは気にせず、これから頑張ろう、うん。
と、ひとりでに納得して私は服が転がっているベッドにダイブ。
「何でうちにはこんなに服無いのぉ……!!」
有馬君はどんな服が好きなのだろう。そんなことを考えながら、大きな鏡の前に立って服を体に合わせてみて、溜息をつく。どんな服を着たとしても所詮私だし、馬子にも衣裳っていうやつなのかもしれない。
そんなうちに軽く三十分も時間がたち、私は時計を見るなり本日二度目の奇声を上げた。
このままなら遅刻をしてしまう。
私は目をぎゅっと目をつむり、手さぐりに服を引き当てた。
何でもいい、早く着替えないと。そんなバカげた意識が心の中で占領されていた。
***
「……あ、こんにちは。沢渡さん」
「……っ!! ごめんね、待った? 有馬君」
待ち合わせの時間ピッタリに待ち合わせ場所についた私は、いつから待っていたのか分からない有馬君を見つけ、すぐに駆け寄った。
涼しい顔の彼は、私が待たせてしまったという罪悪感に襲われているのを知らない。
「今日は昨日と服、違う感じだね」
「……えっ!?」
有馬君に指摘されて、ハッとする。
目をつむり適当に合わせた服は、ピンクのキャミソールに黒いパンツ。薄めの小麦色のカーディガンを羽織っている。
確かに昨日はパーカーで適当な格好だったけれど、そりゃデートの時くらい可愛くしたいと思うのは当然だよね。
「似合ってる。可愛い……」
有馬君が小さく笑いながら、そう言うものだから私は顔を赤らめてしまう。似合ってると褒められたのは何時ぶりだろう。ドクンドクンと心拍数がおかしくなる。
「ありがとう」
私も自然とつられて笑顔になった。
彼の歩幅は私に合わせてくれているのか、やけにゆっくりだった。
***
初めてのライブだったのものだから、私はライブというのはこういうモノなんだなぁと吃驚しながら席に着いた。
最初に出てきたのはきれいな女の人と男の人。印象は声が少し変な感じってこと。変というのは可笑しいか、そう、綺麗なのだ。透き通るように響く声。
「えっと、これ何のライブ?」
「あぁ、俺の好きなアニメのファンライブ。で、今司会しているのがこの作品の主役とヒロインの声優さん」
「……へぇ」
声がきれいなのは声優さんだからなのか。……じゃなくて、どうしてアニメのライブに私はきているのだ?
疑問を隠せずに私は隣の席でワクワクしているように見える有馬君を見つめる。そんな私の視線に気づかず、有馬君はステージに夢中。
やっとピースがそろったのかもしれない。
「俺のことすぐに好きじゃなくなる」
その言葉が今脳裏に浮かぶ。
有馬君はきっと、いわゆる「オタク」という部類なんだろう。一緒に本屋に行ったとき、たくさんの本を買っていた中にそういう本も交じっていたし、彼女よりゲームを優先していたし、昨日だってバイトしていたのはきっと……。
私は多分、なんとなくだが勘付いていたんだろう。それでも否定し続けたんだ、有馬君はオタクじゃないって。
「有馬君……」
「どうしたの?」
「えっと、ううん。なんでもない」
私はどう言葉をかけていいのか分からなかった。有馬君のことは好きだ、例えオタクさんだったとしても、それは変わることは無いだろう。
でも、今どうすればいいのか分からない。
声優たちのトークが終わった後に、そのアニメのOPやEDを歌うシンガーが出てきて、爆音で演奏し始めた。
有馬君はそんな光景を見ながら小さく目を細めていた。
その表情は、私が今までいつども見たことのない笑顔で、少しだけ悔しかった。教室でも見せない、私にも見せたことのない表情。
ずるい……。
有馬君の心を簡単に奪っていくアニメや漫画に嫉妬を覚えながら、私はボーっとライブを見ていた。
「終わったね、どうだった?」
「……えっ、あぁ。すごかったね」
「……ごめんね、あんまり興味ないジャンルだったよね」
「え、あぁ、そうじゃなくて」
ライブが終わった後、有馬君は少し申し訳なさそうにそういった。別に楽しくなかったわけじゃない。どちらかと言えば、私もすごくワクワクした気持ちになってとても楽しかった。有馬君がライブに来たかったことも分かる。でも……
有馬君をとられたみたいで悔しい。
そんなこと言えるわけないのに。
私は無理矢理笑顔を作って、有馬君に相槌を打つ。ゆっくりと彼は表情を緩め、笑う。でも、さっきみたいな本当に笑った顔じゃない。私と同じ、作った笑顔。
「ううん、何でもないよ。有馬君、とっても楽しかった。一緒に行ってくれてありがとう!!」
私は今度はきちんと心から笑えた気がする。
有馬君も嬉しそうにうなずき「じゃぁ、帰ろうか」と声をかけてくれた。「うん」と元気良くうなずいた私は、有馬君の隣に並んで夕方の通りを歩いた。
人も多いが、そんな中で有馬君だけが光って見えた。キラキラしているとかいうそういう非現実的なことじゃなくて、ただどんなところにいても彼がどこにいるか分かると思ったのだ。理屈じゃない、きっと。
初めての恋だったから、私はこの現象が何なのかまだよく分からない。
そんな君の秘密を知った、不思議な日曜日。
- Re: 君の青春に××してる ( No.14 )
- 日時: 2015/03/09 20:47
- 名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: OgnYhGeD)
5日目「君と相合傘をしてみました」
ざぁざぁ……耳障りな雨の音が聞こえる。
今日の天気予報では降水確率は20%だったのに、こんなに滝みたいに雨が降るとは……。外の景色を見るなり、私は大きくため息をついた。
良かったことに私の鞄の中には、もしものために入れておいた折り畳み傘があり、ほっと安心する。
「帰る準備出来た?」
「え、あぁ……うんっ」
有馬君が私の席にやってきてそう言った。鞄を持ち私はすぐさま立ち上がる。
有馬君は「そんなに急がなくてもいいよ」と笑うけれど、そんなわけにはいかない。
席を立つときに、足を机の角にぶつけ私は小さな悲鳴を漏らす。痛い、痛すぎるよ。
「あのさ、今日傘持ってる?」
有馬君の質問に私は何だかいい予感がした。
「ごめんね、沢渡さん。今日雨降らないと思っていたんだけどさ」
「えっ……っ!? ぜ、全然構わないっ」
ザーザー降る雨の音は全く耳に入ってこない。
有馬君がいつも以上に近くにいるということで頭がいっぱいで大騒動だ。胸がキュンキュンして大変だ。
いわゆる相合傘というやつ。
傘持ってきてよかったよ。神様、ありがとうっ!! 私は今まで信じたことなんてあんまりなかった神様にお礼を言いながらぎゅっと傘の柄を握った。
「やっぱ、持とうか?」
「……へ」
「いや、身長差あるから大変そうだなぁって思って」
有馬君はどうやら私が有馬君に雨がかからないようにして高めに傘をあげていることを気にしたようだ。持とうか、なんて言われると思っていなかったから私は吃驚する。
急に有馬君の手が私の手に重なる。傘を持つのを代ってくれようとしたのだ。心臓が何だか喧しい。
足が止まってしまったせいで、少しだけ有馬君がぬれ、その上「どうしたの?」と私を心配して声をかけさせてしまった。
ただ、ドキドキして足が止まっただけ。そんなの有馬君に言えないよ。
有馬君は私を家まで送ってくれた後、私が傘を貸してあげて彼もまた家に帰っていった。
「明日、傘返すね」
有馬君はそう言ったが、私からしたらそのままもらってほしいトコロだ。でも、赤い傘だから有馬君にはあんまり似合わないかもしれない。
今度はもっといい傘を持って来よう、うん。
***
さて、問題はこれからだ。
昨日のことからして、間違いなくとはまだ言い切れないが有馬君は高確率で「オタク」ということが分かる。
少し誰かに相談しようと、私の周りの友達を考えてみる。
そんな友達はあんまりいない。
ハッと思い出したのは、いとこの一人の少女だった。部屋に入って携帯で彼女に電話をかけてみると、すぐに彼女は電話に出た。
『もしもーっし、美咲だよ。どうしたの、柚菜ちゃんが私に電話なんて珍しいっ』
電話の主は電話越しでも陽気だということが分かるくらいの明るい声。彼女は、私のいとこで田中美咲という。私より一つ下の女の子、つまり高校一年生なのだが、私の知ってる限り相当なオタクだ。
「もしもし、話があるんだけど今大丈夫?」
『えー、あぁ、今部活でね。もうすぐで終わるから柚菜ちゃんち行くよ?』
「え、あぁ……助かる」
『じゃぁ、あとでっ』
まさか家に来てくれるというとは思っていなかった。私はすぐに切られた電話に多少イラッとしながら、ベットにごろんと転がった。周りに見える家具などが、いつもとは違う感じがした。
「ねぇねぇ、柚菜ちゃん!! ドジっ子メイドとツンデレ幼馴染ってどっちが王道かな!!」
いきなり部屋に入ってくるなり意味不明な言葉を連ねるいとこに驚きながらも、私は一言。
「私はね、美咲がそう言うこと好きでも別にいいの。それは美咲の個性だしね。でも、人の家に来たらまず初めに「久しぶり」とか「お邪魔します」が一般的な第一声だと思うんだよね。だから何を言いたいのかというと、やっぱり私は挨拶くらいはきちんとした方がいいと思うってこと」
私の言葉に「相変わらずだねぇ、柚菜ちゃんは」と笑いながら言う美咲はすとんと私の部屋のピンクの椅子に座り、コホンと咳払いをした。
何か偉そうだな、と思うけど口には出さないでおく。
わざわざ部活上がりに家に来てもらったのだ。感謝しないと……。
「で、どっちが王道!」
「その話まだ続いていたんだね」
私が有馬君がオタクと知って驚かない理由。それの主となっているのはこの子、美咲だろう。一個下だったから他のいとことかより仲良くしていたが、彼女は中学に入ると同時に変な方に進んで行ってしまった。
それがいわゆる二次元というやつだ。
だから昨日行ったライブも本当の本当は美咲から話は聞いたことがあったため、少し興味はあった。
美咲の満面の笑みに私は耐え切れなくなって、適当に「ツンデレ幼馴染」というと、同意見だったのか「だよねー」と言葉を返してきた。
だったら聞くなよ。正直そう思った。
「で、話って?」
美咲が本題に入ろうとその言葉を投げかけてくる。私は戸惑いながらもすべてのことを話した。
有馬君に勢いで告白してしまった水曜日から、今までのこと。
それを聞くなり美咲は「うんうん」と勝手に納得し、私の方をちらりと見た。それから深いため息をつくなり、
「柚菜ちゃん、馬鹿だね……相変わらず」
と私を小馬鹿にして、そのあとまた鼻で笑った。
バカにされるのは仕方がない、でもあまりにも酷すぎないか? 美咲はまたコホンと咳払いをし、右手を机につくなり私の目を見てこう言った。
「まぁ、私が考えなくても分かるように、その有馬っていう男は間違えなく私と同類だね。てか紹介してよ、仲良くなれると思うからっ」
やっぱりオタクなんだ、と思いながら私は納得したように「へぇ」と相槌を打った後
「紹介するのは、嫌」
とはっきり言ってやった。
美咲は静かにしていたらそこそこ可愛い。つまりオタクじゃなかったら、普通にモテる今時の女の子なんだ。真っ白な肌、パッチリ二重。出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。スタイル抜群で正直羨ましい限りだ。そんな可愛い女の子を紹介するなんて私としては自傷行為としか思えない。
「その有馬っていうやつは、本当に柚菜ちゃんのこと好きなの?」
「……へ」
「確かに付き合っている時点で柚菜ちゃんに何らかの興味はあると思うよ。でも、ならどうして一週間なの? それが悩ましいトコロだね。柚菜ちゃんがそいつをオタクと知ってなお好きならば、柚菜ちゃんがその気持ちを伝えればいいと思う。まぁ、柚菜ちゃんは人をそういうところで判断しないからね、だから私は、そんな柚菜ちゃん好きだよ。それに、柚菜ちゃんだって種類は違えど私たちと同類だよ」
美咲の言葉に私は息をのむ。
同類……その単語に私は少しだけ目を逸らしてしまった。一概には言えないが、確かにそうだ。
有馬君は私をどう思っているのだろう。
あと二日。君に答えを聞いてみよう、私は君にとってどんな存在なのか。
君のことを考えて苦しくなった月曜日。
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