コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- Believe 1
- 日時: 2017/03/07 22:39
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
ここは、ノーウェスト少年少女養護施設。親が死んだり、捨てられたりして家族を失った10人の子供たちがここで生活しています。このお話の主人公のフラビア・リアラスもその一人です。
ある真夜中のこと、フラビアはティッピーという、小さな少年のうなされる声で
目が覚めました。
「どうしたんだい?落ち着いて。」
「またあの夢を見たんだ。お化けがうじゃうじゃいる暗い部屋の中に鍵をかけて閉じ込められるんだ。」
フラビアが泣きそうなティッピーの肩を優しくトントンと叩いていると、寝ていた他の子たちも目を覚ましました。
「うるさいなぁ。眠れないじゃないか。」
「いっつもメソメソしてさ、まるで赤ん坊だぜ。」
「あんたの涙で、あたしたちのベッドまで汚れちゃったじゃないの。」
「そんなのウソだ!」
ジェイク、レオナルド、イザベラの3人に冷たく言われてカッとなるティッピーを落ち着かせようとするフラビア。
「気にするなよ。ティッピー。」
「そうさ。こいつのような間抜けは相手にしちゃ駄目だぜ。」
「オレは間抜けじゃない!」
- Re: Believe 1 ( No.8 )
- 日時: 2016/08/17 13:37
- 名前: ノッチ (ID: o12S0lxa)
朝食の後の予定は、学校がある日かない日かでだいぶ違います。
学校がある日は、子供たちはヒスとシェリフに連れられて、第三公立学校に向かいます。学校は四時までで、ヒスとシェリフが迎えに来て、養護施設まで連れて帰ることになっているのです。
一方、学校がない日は、朝食を食べ終えると、すぐさま地下の作業部屋に行かなくてはなりません。作業部屋にはミシンがずらりと並び、全員その前に座って、小さな子供用の服を縫います。作業の日はいつも、八時間ぬいっぱないしで、間に昼休みがニ十分入るだけでした。(昼食はまたスキムミルクと、脂っぽいハムか、ボローニャソーセージのサンドイッチでした。)その日の終わりまでに、一人に少なくとも一着縫い上げなければなりません。出来なかった場合は、ミスター・ジョンにムチで叩かれます。
孤児たちが縫うのは、立派な蝶ネクタイが付いたタキシードや、シフォンのフリル付きパーティドレスで、エメラルドグリーンやブルー、カナリヤ色や赤紫色の鮮やかな服は、孤児たちの着ている、つぎのあたったくすんだ茶色のおさがりとは大違いでした。
- Re: Believe 1 ( No.9 )
- 日時: 2017/02/14 13:44
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
毎夕六時になると、孤児たちは並んで食堂に行き、夕食を食べました。
メニューはたいてい、ゆでた手羽先と、ゆでたねずみ色のジャガイモと、ゆですぎてくたくたになったキャベツかほうれん草でした。
スポンジみたいな白パンとマーガリンも出て、何とかお腹を満たすことは出来ましたが、デザートがあるのは感謝祭やクリスマスのような特別な日だけで、ねとねとしたライスプディングが一人につき一皿もらえました。
夕食の後は二階の寮に行かされ、寝る時間まで勉強し、消灯は九時。
こうして、養護施設での一日は終わるのでした。
日曜日は、孤児たちにとって唯一の休みの日でした。けれど、ある意味では一番嫌な日でもありました。
毎週日曜日の朝八時、少年少女たちはミスター・ジョン達に連れられてバワリー地区のセントマークス教会へ行きます。そして、かび臭い教会の中で一時間以上座って、神父の長ったらしいお説教を聞かなくてはなりません。しかも、その話というのが、罪を犯した者はみな、永遠の地獄の業火に焼かれる運命だというものでした。
ミスター・ジョンの説明によれば、もちろん孤児は全員、生まれつき罪人です。そうでないなら、父親と母親が死んだり、捨てられるはずがないだろう?そう言われて、罪の意識と、怖いという気持ちと、退屈とがまじりあった思いを抱えたまま、孤児たちはまた、ぞろぞろと養護施設へ帰っていきました。
養護施設についた後も、さらにお祈りしたり、その週に犯した罪を反省して過ごさなくてはなりませんでした。
「罪を悔いて、けがれた魂をきれいにし、犯した罪の許しを神に祈れ!」
怯え切った孤児たちに向かって、ミスター・ジョンは大声で言いました。
おしゃべりも禁止、読書も禁止。風通しの悪い食堂のテーブルに黙って座り、頭を垂れ、手を組んで、いつまでもいつまでも祈り続ける。
こうして、永遠に続くように思える養護施設の日曜の午後は過ぎていくのでした。
- Re: Believe 1 ( No.10 )
- 日時: 2017/02/14 13:39
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
フラビアは、ミシンの前で過ごす日よりも学校のある日の方が好きでした。
楽しいとまでは言えないけれど、少なくとも学校なら本を読むことができました。フラビアは読書が大好きで、毎年、何十冊もの本を夢中で読みました。
一番好きなのは、五人のペッパー兄弟シリーズのような、貧しいけれど幸せな子供たちの出て来る明るい家族の物語です。南太平洋諸島のような遠い遠いロマンティックな場所を舞台にした冒険物語も、お気に入りでした。
勉強は、すべての科目でいい点をとり、クラスでもトップに近い成績でした。けれども、フラビアのような孤児たちは他の生徒たちにしょっちゅういじめられたり、馬鹿にされたりしました。
服がぼろぼろだとか、お母さんやお父さんがいないとか、自分の家がないとか、そんな理由からです。ヒスとシェリフに連れられて学校から帰る時も、子供たちは自分たちの作った下手くそな歌を歌って、フラビアたちをからかいました。
「みなしご、みなしご、やーい、やーい ママもいなけりゃ、パパもいない みなしご、みなしご、バーカ、バーカ 汚い服着て豚みたい!」
冬になると、子供たちは、何人の孤児に雪玉を当てられるかを競いました。
でも孤児たちはヒスとシェリフに禁止されていたから、列からはみ出て雪玉を投げ返すことも出来ずに、二列になったまま、歯を食いしばり、前だけを見て、ぬかるんだ歩道をひたすら歩き続けました。
その両側に子供たちはずらりと並び、意地悪い笑い声をあげながら雪玉を投げるのでした。
- Re: Believe ( No.11 )
- 日時: 2017/03/10 14:56
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
第三公立学校の先生たちも、孤児たちにやさしく接してはくれませんでした。
クラスでは、孤児たちは後ろの特別席に座らされ、本当は学校に来るべきではない厄介者のような扱いを受けました。
フラビアは、三年生の時に担任だったメラニー先生が別の先生に話しているのを聞いてしまったことがあります。
「バカな養護施設の子たちのせいで、クラスがまとまらなくなっちゃって。あの子たちがいなければ、楽なのに。」
メラニー先生は文句を言っていました。
昼食の時間は、恐ろしい病気を移されたら困るとでもいうように、孤児たちは食堂の隅の席に座らされました。そして、ニューヨーク市の教育委員会が貧しい生徒たちに無料で用意しているべちゃべちゃしたマカロニチーズを食べました。
ほかの子たちは、ピカピカの金属のお弁当箱を持ってきて、お母さんの作ってくれたお弁当を食べていました。
ピーナツバターとジャムのサンドイッチや、バナナマフィンや、チョコレートブラウニー、魔法瓶から注がれるココアなど、不思議で素晴らしい食べ物の数々に、どんな味がするんだろうと、孤児たちは憧れのまなざしをむけるのでした。
- Re: Believe ( No.12 )
- 日時: 2017/03/08 23:26
- 名前: ノッチ (ID: 9YApmA.n)
午前と午後の三十分休みも、仲間外れになった孤児たちは、学校裏のフェンスに囲まれたコンクリートの遊び場に集まり、自分たちだけで遊びました。
いじめっ子から身を守るためでもありました。
時々ふと、孤児を殴ったら面白いかもしれないと思いつくようないじめっ子相手に、孤児たちはフラビアとジェイクを先頭にした連合戦線で対抗しました。
「おれたちのだれか一人にでも触れたら最後、全員で飛びかかってやるからな!」
フラビアがすこんで言うのです。
養護施設では、しょっちゅう喧嘩したり言い争ったりしている孤児たちも、学校では一致団結しました。
第三公立学校のいじめっ子たちはすぐに、孤児たちとけんかするのは割に合わないということを学びました。
目の周りに黒いあざを作りたいなら、別ですが。
特に、フラビアとの喧嘩だけには巻き込まれないようにしなければなりません。そうでないと、体が大きくていかにも強そうなティーンエイジャーですら、一発で叩きのめされる羽目になりました。
なので、しばらくたつと、だれも手を出してこなくなり、孤児たちは三十分休みの間、自分たちだけで綱引きやけんけん遊びができるようになりました。
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