コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- Last Days
- 日時: 2015/08/28 23:43
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: O0NjrVt8)
ずっと、ずっと伝えられなかった思い
このまま卒業するんだってそう思ってた
だけど、変化は嵐のように訪れて
——高校生活最後の年、それは私達にとって忘れられない日々の記憶となって未来へと続く
*
『目次』
《主要人物紹介》>>1
episode1【型破りな転校生】>>2 >>3 >>4 >>5
episode2【すれ違う思い】>>6 >>7 >>8 >>9
#2015/8/27【執筆開始】
*挨拶
どもです久遠と申します
この度は LastDaysを閲覧頂き有難うございますっ
皆様に少しでも楽しんで頂ける様、コチラも書いていこうと思います
感想などいつでも歓迎してますので、ちょっとした事でもコメント頂ければ嬉しいです
それでは、いってらっしゃいませ!
- Re: Last Days ( No.9 )
- 日時: 2015/08/28 23:42
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: O0NjrVt8)
栞side
二人が去った後の保健室で私は体を震わせた。
「榊くんはやっぱり……」
分かってた、分かってたけど違うって思いたくて、それで目を背けたのに。
聞いてしまった、いけないと思いながらも眠ったままの振りをして二人の会話を。
「……胸が苦しいよっ」
掠れた声に、震える体。
私は失恋したんだと認めるしかなくて、ベットの中で涙を殺して蹲った。
*
それから程なくして保健室のドアがガラリと開く音が聞こえた。
大分落ち着いた私はベットから体を起こして、仕切りのカーテンを開けた。
先生が来たと思って開けた先にいたのは——栗山さんだった。
「あ、えっと……」
目が合うと困った様に言い淀む栗山さんに私の方から歩み寄る。
「どうかしましたか?」
平成を装って声を掛けると、栗山さんはホッとした様に笑顔を浮かべて。
「あの、天海さんですか? 私、生徒会でお世話になる事になったので挨拶に来たんです」
「そうだったんですか……よろしくお願いしますね」
あくまで淡々と普通に、それを意識して言葉を紡いで。
だけど心は荒れたままで、栗山さんの姿を見たとき、どうして貴女なのって思ってしまった。
少し前までは、あんなに仲良くなりたいって思っていたのに。
今はこんな気持ちになるなんて、どうして私はこんなに勝手なんだろう。
「はい! あの、顔色悪いですけど平気ですか?」
言いながら栗山さんは私の額に手を当てて、
「熱はないみたい。でも気分悪そうだし、うーん」
真剣に心配してくれていた。
たったそれだけだったけど、栗山さんが優しい人なのが伝わってきて。
こんな身勝手な気持ちのまま接してるのが辛くて。
「っ、めんなさい……ごめんなさい」
「え!? 天海さんどうしたの? やっぱり馴れ馴れしかったかな!?」
突然泣き出した私に栗山さんは、ずっと付き添ってくれて泣き止むまで待ってくれた。
「どう? 落ち着いた……?」
「はい、あの驚かせてすみません」
「全然大丈夫だよ! 栞が落ち着いたみたいでよかった〜」
「!」
今、名前で呼んでくれた?
「あ、嫌だった?」
「嫌、じゃないです。あの、私も優月ちゃん……と呼んでもいいですか?」
「もちろん! 大歓迎だよっ」
思い切って告げた言葉に、優月ちゃんは太陽のような笑顔を見せてくれて。
私までつられる様に笑顔になれた。
話してみて分かった気がする、榊くんが優月ちゃんを好きになったのも。
桂くんが優月ちゃんに惹かれるのも。
だから決めたんだ、私は自分の気持ちを抑えて見守ろうって。
それがきっと一番いいんだって……そう思えたから。
- Re: Last Days ( No.10 )
- 日時: 2015/08/29 00:51
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: Prfa052C)
飛鳥side
伊織に優月が好きだと宣言してから、僕は毎日しつこいくらいに優月の傍に張り付いてる。
もちろん好意から何かじゃなくて、伊織と二人にさせない為だ。
「もー! 何で私につきまとうの?! せっかく生徒会に入ったのに伊織くんと全然話せないし」
「なんでって、優月が好きだから」
「っ」
「あれ? 本気にした?」
「もう知らない!」
何度目になるか分からないやり取り。
だって言うのに、いちいち間に受ける優月が可笑しくてついからかってしまう。
ま、そのせいか二人きりにならない様には出来てるけど。
……気になることもある。
陸上大会の日以来、伊織は大人しくて気味が悪い。
意図的に優月から距離を取ってるっていうか……ま、それならそれで良いんだけど。
それともう一つ、気になるのは——
「天海さん、重そうだね? 持とうか」
「桂くん……大丈夫です、私が頼まれたので」
「んー、じゃあ半分こ。これならいいでしょ?」
「あ、有り難うございます……」
「どういたしましてー」
最近、伊織と天海さんがよく一緒にいるような気がする。
それ自体は別に問題もないし、天海さんなら伊織の事情も知ってるから心配ないんだけど。
どうにも面白くないと思ってる僕がいて。
「いいんだ、これで」
そう言い聞かせる事で自分の気持ちを誤魔化した。
*
それから中間テスト期間が終わって、次のイベントの修学旅行が迫って。
「班分けはこれでいいかな」
一泊の小旅行。場所は京都で班は生徒会役員は二班に分かれる。
班を決めるのは会長の僕の役目な訳で。
「修学旅行、楽しみだね」
手元にある班分けを見ながら呟いた。
————————————————————
一班 メンバー
榊飛鳥
天海栞
栗山優月
二班 メンバー
桂伊織
花部薫
————————————————————
- Re: Last Days ( No.11 )
- 日時: 2015/08/29 02:32
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: HDoKOx/N)
episode3【告白】
栞side
保健室で榊くんの優月ちゃんへの思いを聞いてから、もうずっと榊くんと話せていない。
と言うか、私が自分で避けてたし榊くんが優月ちゃんとばかり居たというのもあるけど。
「でも今日からの修学旅行は同じ班なんだ……」
てっきり違う班にされるだろって期待しないでいたけど。
……榊くんが桂くん違う班になるなんて初めて見たかも。
それに優月ちゃんも同じ班。
つまりは、きっと優月ちゃんと一緒にいたかったって事だよね。
私は人数合わせのおまけみたいなもので。
それでも凄く嬉しいのは見守るって決めたのに、何日も榊くんと話せなくて寂しかったからか。
まだ、大好きだから——か。
どちらかなんて言うまでもないけど、取り敢えず今は一泊二日の修学旅行を満喫したいって思う。
「伊織くんと違う班……」
「残念だったね、伊織と違う班で?」
「ぐっ……いいもん、いいもん、栞と一緒だし!」
移動のバスの中、繰り広げられる榊くんと優月ちゃんのバトル。
二人のやり取りを遠目に見ていたんだけど。
いつの間にか近付いていた優月に抱き締められた。
「ゆ、優月ちゃん!?」
「一緒に色々見て回ろうね!」
ズイっと顔を近付け瞳を潤ませて言う姿に私は根負けして……。
「わ、私でよければ!」
と、言ってしまっていた。
目的地についてからは、バスでのやり取り通り優月ちゃんと旅行を満喫して。
*
「疲れたかも……」
結局、榊くんとは話せないままにホテルについて。
今はお風呂上りのロビーで休憩しているところです。
優月ちゃんと行動するのは楽しかったけど……。
けど、私達から少し離れた場所で榊くんが不機嫌そうに見えたのが気になって。
やっぱり余計なことしちゃったのかな。
きっと優月ちゃんと二人で楽しみたかったんだよね。
そこまで考えて気分が落ちてしまって部屋に戻ろうと立ち上がった時。
「何でそこまで伊織に拘るんだ。もう知ってるだろ? 来年には伊織が海外に行くって!」
「っ、知ってるけど、だからって伊織くんの事諦めたくない!」
怒鳴るような声、この声は——優月ちゃんと榊くんの。
「優月、今のほんと?」
「伊織……」
「私はっ……!」
それに桂くんまで。
三人の殺伐とした空気に動けずにいると優月ちゃんが外へ飛び出して。
「ちょっ、優月どこ行く気!?」
「待って!!」
飛び出した優月ちゃんを二人が追い掛けていって。
私は三人を——迷った末に追いかけた。
- Re: Last Days ( No.12 )
- 日時: 2015/08/29 07:57
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: rn3pvd6E)
勢いのままに追いかけたは良かったけど……冷静になったら一つ気づいてしまった。
私の走る速度じゃ、優月ちゃんの全力に追いつく訳ないじゃん。
「見失ったし……」
闇雲に追い掛けてきたから帰り道分からないし、ピンチです。
誰かに道を、そう思って声を掛けたんだけど——よりにも寄って酔っ払いに聞いてしまった私。
「こんな所で若いお嬢さんがどうしたんかね〜」
「迷ったんかえ」
「私らと遊ぶかー?」
腕を掴まれて、何処かに連れてかれそうになって。
やだっ……怖い! 老人とは言え三人に絡まれて泣きそうになる。
その時だった。
「すみません、放してっ! 僕の連れなんで!」
引き寄せられた体。聞こえた声。
助けてくれたのは、榊くんだった。
「会長……」
何でここに、とか、二人はとか。
聞きたいことは沢山あるのに言葉にならない。
「大丈夫? てか何やってるの!? 一人で出歩いて僕がどれだけ心配したかっ」
「ふぇっ……ごめ、んなさ……い」
ぎゅっと抱き締められて、怒られてるのに安心して、子供みたいに泣きじゃくった。
その間、榊くんはずっと髪をなでてくれて。
「無事ならいいよ……落ち着いた?」
「はい……」
暫くして私が落ち着くと、榊くんは体を離して。
「じゃ、何でこんな所に居たのか説明してくれるよね?」
とちょっと起こった表情で言われ、私は包み隠さず話した。
……榊くんへの気持ちも全部。
「それで、迷惑だって分かってるんです。会長が優月ちゃんを好きだってことも。だから何度も諦めようって、そう思って、でも会長は優しいからやっぱり大好きで……」
秘めていた思いを一度言葉にしたら止まらなくて、溜め込んでたものを吐き出すみたいに伝えて。
「だから、だから……会長に振ってほしいんです」
きっとこんなの困らせるって分かってるのに。
どうしても我慢出来なくて、気づいたら口走っていた。
「何、それ……そんな勝手、僕が許すと思う?」
怒ってる、そう思って俯いて。
止まったはずの涙がまた溢れそうになって拳をぎゅっと握った。
「振るなんて嫌だ、僕は——栞が好きなのに」
「え……」
今、名前を……うんん、それよりも榊くん今、聞き間違いじゃなければ好きって。
「か、からかわないで下さい。会長は……優月ちゃんが好きって」
嬉しいはずなのに変に疑ってしまうのは、保健室で聞いた言葉が蘇って。
期待したら駄目、きっと私に気を使ってるんだ。
「ソレは……ね、僕の目を見てよ、栞」
榊くんの言葉に恐る恐る顔を上げると、優しく微笑む榊くんとすぐ目が合った。
そして——
「僕はずっと栞が好きだったよ、だから付き合おう?」
「っ」
誰よりも傍にいたいと思った。
榊くんにとって特別になれたらなんて思ったりもした。
でも、告白する勇気が私にはなくて、自分に自信がなくて。
こんな私でもいいんですか。
好きでいていいんですか。
「……返事は?」
「はい!」
私がそういうのと、唇が重なるのとはほぼ同時。
優しく、それでいて全てを貪るような甘い口づけ。
永遠にも思える様な一瞬を得て、私達は向き合う。
「栞、顔真っ赤」
「それはっ、会長が……」
会長が格好良いから、そう言いかけたんだけど、
「飛鳥」
「え……」
「飛鳥って、呼んでほしい……駄目?」
名前で呼んで欲しいと言った榊くんの顔は少し赤くて、それが凄く愛しくて。
「……飛鳥くん」
「!」
「これで、いいですか?」
呟くような声になったけど、名前で呼んで。
聞こえたかな? なんて思ってると……。
「……もう一回、呼んで?」
「ええっ」
赤い顔で飛鳥くんは何度も何度も頼んできて。
私はその度に顔を林檎みたいに真っ赤にしながら大好きな人の名前を呼んだ。
そうして、二人でホテルに戻ると一足先に戻っていた二人と合流して。
二人も両想いになった事を知って。
四人で笑い合った。
- Re: Last Days ( No.13 )
- 日時: 2015/08/30 07:06
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: ZTqYxzs4)
優月side
ホテルを飛び出した後、伊織くんに捕まった私はその胸の内を聞いて、嬉しくて涙が止まらなくて、何度も何度も大好きって繰り返した。
思い通じただけで世界が違って見えて、夢じゃないよって実感するために繰り返し繰り返しキスをして。
息も絶え絶えになったそんな時に飛鳥が合流して。
私達は両思いになった事を伝えた。
飛鳥は反対して、引き離そうとしたけど……伊織くんが言った言葉で目を覚ましたみたいだった。
「ねぇ、飛鳥本当は分かってるんだろ? 優月じゃなくて、天海さんが好きだって」
「何言って、僕は優月が……」
「もういいんだよ、飛鳥。俺は優月が好きだ、だから諦めるなんて出来ない」
「っ、だったら夢は、お前の夢はどうするんだよ!」
「夢も諦めないよ、優月とは話し合ったんだ……来年から海外で活動するって事も」
「……二人はそれで納得してるんだな」
「「うん」」
私達が頷いてみせると、飛鳥は長い溜息を吐き出してから。
「なら、もういいよ。好きにしたら?」
そう言って微笑んでくれた。
その時の飛鳥の顔は私が見たどんな時よりも晴れやかで、肩の荷が降りたかのような、そんな表情だった。
「ありがとっ、それじゃホテルに戻ろっか?」
「うん! あ、でもでもその前に飛鳥が栞を好きだって本当?」
気になって問いかけた私に、飛鳥は分りやすく赤くなって。
「いいだろ、別に僕の事なんて!」
と、否定はしなくて。
そんな時だった、伊織くんが思い出したかのように栞も私達を追って来てた事を話して。
その後は知っての通り飛鳥が栞を見つけ出して——
実は二人が両思いになったとき、すぐ傍にいたんだけど、気を利かせて一足先に帰ったのだ。
「それでホテルに戻った後は、疲れててすぐ寝ちゃったんだよね」
すぐと言っても消灯ギリギリだったんだけど。
色々あったけど楽しかったなぁ、栞とも仲良くなれたし。
「フフッ」
「何笑ってんの不気味だよ?」
「不気味って女の子に言う言葉!?」
思わず顔に出た笑いに飛鳥がすぐ絡んできて。
言い合う私達を困った様に見守る栞がいて、修学旅行最終日も凄く楽しめそうでわくわくした。
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