コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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CLOWN BY STEP
日時: 2015/09/21 21:23
名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)

「君は、ジョーカーになりたくないか?」




ハートのA、クラブの3、ダイアの5。
そして、スペードの11。



彼らの織り成す、青春群像劇。


ちょっと久しぶりに小説カキコに戻ってきましたw

昔書いていたものが未完のままテキストで残っていたので、編集を加えながら更新していきます。


コメントいただけると嬉しいです!

アドバイス等あればぜひ!!!



<目次>


〜序章〜

  >>1


〜第一章 愛一の求める四角形〜

>>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7


〜第二章 A to K〜

>>8 >>9 >>10 >>11 >>12



<お客様>

・SilverLight様

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〜第一章 愛一の求める四角形⑥〜 ( No.7 )
日時: 2015/09/18 21:47
名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)

■□■□■□HEART



 わたしたちは創士の家の近くの駅まで迎えに行くけれど、見送りをするのはこっちの駅まで。
 創士が、駅まででいいと言っているけど、三葉が押し切って迎えにだけは向こうまでいくことこうなっている。

 創士が少し前を歩き、商五はポケットに手を突っ込んだまま一歩後ろを行き、わたしと三葉は並んで歩く。

 サッカーでいうダイアモンドの陣形。創士がトップ下、商五がボランチ、わたしと三葉が両サイドハーフかな。
 ——こんなこといっても誰も分からないかな。残念、わたしは弟がサッカーやってるからサッカーには少し精しかったりする。
 まあ分からない人は、野球のベースだと思ってくれれば十分です。

 でも、こんなダイアモンド、こんな四角形が、わたしは好きだったりする。


 あと百メートル、あと五十メートルと、だんだん駅は近づいてくる。見慣れた景色がさぁっと流れるように、わたしたちとすれ違っていった。
 少し汚れた古い駅。緑色で書かれた駅の名前は、色あせているけれど、ゴミは落ちていないし、掃除は行き届いている。


 急がなければならないことを知り、創士は階段を駆け上がる。
「商五!」
 上りながら、顔だけをこちらに向けて、商五の名を呼ぶ。

 商五が首を傾け、聞いていることを合図する。
 見えなくなる丁度手前で、創士は口を開く。

 その瞬間、少し遠くの線路が急に眩しくなる。大きな音が、その言葉に蓋をする。
 
「商五! 君は…………!」

 巻き起こった風が、全身に伝わってくる。


「何? 聞こえない! もう一回!」
 そして商五には、届かない。
「何でもないよ! じゃあね!」
 創士はさらにスピードを上げて、すっと姿を消した。

 商五は、今日一日の創士は様子がおかしい、とか呟きながら、足を帰路へと向ける。
 商五は聞こえなかったみたいだけれど、わたしにははっきりと、何と言ったのかわかった。


「商五、君は、ジョーカーになりたくないか?」

 いつも通り、三人の分かれ道を過ぎ去った。

〜第二章 A to K〜 ( No.8 )
日時: 2015/09/19 19:34
名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)

五月十五日 天気[くもり]

◎今日のカード占い スペードの5…[堕落、廃止、損失]

五月十五日か。Jリーグが開幕した日だ。

Wikipediaの<今日は何の日>に書いてあっただけであって、決して、サッカー好きの愛一に影響されたわけじゃない。
そんくらい書くことがないってだけだ。

強いて言うなら、三葉のケータイが水没した。「修理に多くの資金がかかり、それは長きにわたる」だと。
ホントにお疲れさん。



 おっと、そういえば宿題が残ってたんだった。まあいいか、寝よう。

〜第二章 A to K②〜 ( No.9 )
日時: 2015/09/20 19:31
名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)





■□■□■□DIAMOND





 突然、俺は飛び跳ねるようにその目を覚ました。
 呼吸は荒く、頭も痛い。何か悪い夢を見たのかもしれないが、全く覚えていない。
 綺麗に目が覚めてしまったので、もう一回寝ることはできそうにない。
 朝の五時二十分。いつもよりも一時間半くらい早い。


 することもなく、床に寝っ転がった。
「あぁ……瞬きすると一瞬だけ暗くなるんだなあ」
 長閑な世界。

 暇を持て余した俺の視線が、部屋中を駆ける。

 窓の向こうの曇り空、本棚に入ったお気に入りの漫画。漫画でも読もうかと思ったら、壁に張ったカレンダーが目に入った。

 のっそりと立ち上がってから、近寄って見てみれば、既に切られた先月分のカレンダーが、留め具の間に少し挟まっている。

 雲と富士山の絶景の下に、ずらりと数字が立ち並ぶ。


 五月は本当に何にも無いな。ゴールデンウィーク以外はパッとしない。しかも今年はゴールデンウィークが二つの三連休に分かれている。
 次のページをめくると、六月のカレンダーが載っている。雨と紫陽花。紫の上で転がる滴がとても綺麗だ。


 六月。体育祭と、あとは三葉の誕生日か……。

 ちなみに俺は八月五日です!

 こうやって誕生日アピールでもしておかないと、あいつら三人以外の友人は気が付かない。別にこれは祝ってほしいとかそういうアレじゃない。勘違いしないでいただきたい。

 次々にカレンダーをめくる。七月、八月、九月、十月、十一月、十二月。あとこれだけしかない紙を引きちぎるだけで、受験が来ちまうのか。

 じゃあもうカレンダーなんか六月でキープしてやんよ。そしたら暦の上では受験は来ない。俺神。最高。

 そういうやつが「私はいつまでも二十歳」とかのたまうんだろうな。哀れに過ぎるぜ。 どう足掻いても一たす一は二だし、二十たす一は二十一。これは揺るがない。
 下らないことを考えていたら眠気がしてきた。二度寝状態に入れそうだ。よし、二度寝するか。


 人の人生、八十年。

 そのうち睡眠時間は、合計で二十七年分とさえ言われている。
 二十七年も寝るのであれば、一、二時間追加したところで、まさに微々たる変化であり、ごく小さな分数は0とみなしても良いという論理によって、俺の潔白は証明される。

 さようなら、睡魔という名の妖怪よ。

 お前は束の間の暗闇のうちに消去されるのだ。
 そして眠らぬ苦労の民に、新たな根城を築くがいい。
 良い旅を。
 無意識のうちに、お祈りしています。お達者で。
 そう言っていつも、俺は目を閉じる。



Re: CLOWN BY STEP ( No.10 )
日時: 2015/09/20 19:39
名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)





■□■□■□HEART




「ふわああ」
 気の抜けた欠伸で目を覚ましたわたしは、文字通りの暗中模索、といった感じで、壁を頼りに洗面所に向かう。

「ひょわぁぇっ!」
 無意識のうちに、顔を洗おうと顔に被った冷水のおかげて、ばっちりと目が覚めた。

髪を梳かして身なりを整えてから、鏡の中の自分に向かって話しかける。


「君は、ジョーカーになりたくないか?」


 呟いてみるけれど、意味は全然わからない。創士は何を伝えたかったの?

 二人は何を話していたんだろう。恋バナかな、恋バナかな。
 でもだとしたら、ジョーカーなんて言葉はでてこないよね。

 ところでジョーカーになるってどういうこと? もしかして、俗にいう中二病ってやつ? 商五、創士、信じていたのに!

「愛一、朝御飯よ」
 一人で楽しそうにしているところに、お母さんの声が聞こえてくる。
「はぁい」
 最後に鏡に向かってスマイルを向けてから、洗面所を後にした。スマイルください!
 あれ、返って来た……。

 弟は、朝練でもう学校に行っているらしく、姿は見当たらない。
「あ、ごはん少なめでお願いしまーす」
「自分でよそいなさい」
「えぇ……」

 文字通り、少なめの朝ごはんでおなかを満たしてから、洗面所で歯を磨き、鞄を持って出発した。


 ドアを開けて階段をおりる。
 騒ぎながら私を追い越していく小学——四、五年生くらいだろうか、昔の自分たちを見ているようで微笑ましかった。


 三葉と商五との待ち合わせ場所まで歩いていくと、三葉が一人で立っていた。
「おはよう、商五は?」
「二度寝したら寝坊したから先に行け、だってさ」
「相変わらず睡眠大好きだね……。じゃ、行こっか」

 三葉と二人だと、女の子らしい話が弾む。
 こういう服がどうだとか、クラスの人間関係だとか。
 たまに愚痴をいったり、時に意見が分かれたり。

 盛り上がっているうちに、いつの間にか門を通り過ぎていた。
 がやがやと、皆が創りだす音響は、小さく、また時に大きく、窓というスピーカーを多様に振動させる。


 ところが、ふいにそれが鳴りやんで、静かになった。

 その原因は、教室に向かって、息を切らしながらダッシュしてきた一人の男子生徒にある。
 廊下と上靴の擦れる音が、甲高く鳴り響く。

 その男子生徒とは、わたしと三葉の良く知る、某Sくんだった。


「創士のイニシャルもSだよね」

 本当にあった怖い話に投稿してもいいんじゃないかな……。

「ねぇ、ホントに恐いよ三葉。どんだけ心読むの?」
「愛一が単純なだけよ」
 笑ってそう言う。本当にわたしが単純なだけみたいだ。

「で、その某S君。遅刻しそうになって全力疾走した感想は? 大好きな風とお友達になれた?」

「風とは百年来の……長い……ハァ……付き合いだ……ハァ……から」

「冗談すら言えてない……。痛々しいからせいぜい落ち着きなさい」


 朝のSHRは、やけに暇を持て余した。
 先生は中だるみがどうだとか、なんだとか話していたけど、斜め後ろからの「それを言う前にアンタのたるんだ腹を直せよ」っていう某Sくんからのつぶやきで、クスクスと笑うにすぎなかった。



〜第二章 A to K③〜 ( No.11 )
日時: 2015/09/21 21:03
名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)




 先生の忠告通り、授業は活気がなくて暇だった。あたしってもしかして暇人なのかな。

 そう呟いたら、商五に暇人かつ肥満児って言われた。

「もう、商五ほんとに最低!」

 ちゃんと運動してるから太ってなんかないのに。
 うわぁほんとに商五最低だなと思いつつ、口元の小さな笑みを隠して、わたしはそっぽを向いた。


 商五はほとんど話を聞かずに絵を描いているし、隣の席の男子も似たようなものだ。
 もはや先生と三葉の、一対一の授業だった。
 一対一か。やる気スイッチ、オフ。
 三葉も先生も変な用語ばっかり使うから、何を言っているのか分からない。

 その間、わたしは『ジョーカー』について考える。頭の中で、創士の台詞を反芻する。

 前に商五が言っていた気がする。

 むにゃむにゃ言っていたけど、とどのつまりジョーカーっていうのはつまりピエロとかクラウンとかジェスターとか、大道芸人のことで、人を楽しませたり笑わせたりする人のことなんだとか。

 あとジョーカーは法律に関係なく行動できるとか、いろいろと姿を変化させるとか。


 あと弟が言ってたけど、仮面ライダーだ、ダブリュー………に出てくるとかなんとか。

 数羽並んだ小鳥たちが、かわいらしく騒いでいる。
 ああ、あの中に混ざって飛んでいきたい。
 でもそんなことを言ったら、どうせ商五に、頭は鳥レベルだから、いい感じに混ざれるんじゃねーの、とか言ってからかわれるんだろうな……。
 まぁ、それでも別に良いんだけどね。


 たくさん思い浮かべてみたけど、全然分からなかった。


 じゃあこれはもう、商五に聞くしかないか。

「ねぇ商五」
「おう、機嫌直ったか」

 頬杖をついたまま少し顔を上げる。
「もう……。なんでそんなにデリカシー無いの?」
「大丈夫、愛一にしかこんなデリカシーないこと言ってないから」

 商五はあくまで適当に、わたしの言葉を受け流す。
「なんであたしだけイジめんの」
「だって、本気で怒らないし」

 怒ると雰囲気が悪くなるから気を付けなさいっていうおばあちゃんの言いつけをちゃんと守ってるだけなのに。それが仇になっているなんて……。

「じゃあ本気で怒るよ?」
「おう、面白そうだな」

 やっぱり顔をあげない。
「じゃあホントにキレるからね」
「知ってるか、そうやって顔のしわは増えていくんだぜ。顔のしわとしわを合わせて不幸せだ」

「うわぁ……やっぱり最低……で、そんなことはどうでもよくて」
「どうでもよくはねぇだろ。まぁいいか」

 ここから本題に入る。
「ねぇ、ジョーカーになりたくないか、ってどういうこと?」



「……病院紹介するよ」

「…そうじゃなくて、創士が言ったの。ほら、商五は聞こえていなかったでしょ?」

 ずっとノートをとりながら相づちを打っていた三葉の肩が、ぴくっと反応する。

「創士は、そうやって言ってたのか」
 商五の眼の色が変わる。
「うん。間違いないと思う」

 そして三葉は尋ねる。
「で、どういう意味なのよ、それ」



 何秒かの沈黙。それから商五はまた視線をノートに戻して、また絵を描きはじめた。



「商五?」
「悪い。俺にもわかんねぇや」

 商五は鉛筆を動かし続けながら、適当に言い放った。
「そう……」
 三葉もそれ以上追及することはせずに、また板書を写し始めた。





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