コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ヒーロー
日時: 2015/10/11 10:56
名前: lucky man (ID: T1OugAgl)

ヒーロー。
その言葉を聞いたとき、
貴方は誰を想像しますか?

Page:1 2 3



Re: ヒーロー ( No.10 )
日時: 2015/10/10 21:36
名前: lucky man (ID: T1OugAgl)

少年野球チームに入部してすぐ。
同じ1年生のチームメイトに
こんなことを言われた。

「蒼空ちゃんには野球出来ないよ。」

私は聞き返した。

「なんで?」

少年は自信満々に答えた。

「だって蒼空ちゃん女だもん。」



悔しくて悔しくて、
泣きながら家に帰った。

その日、兄さんに幼い私は訊ねた。

「雅兄、蒼空は野球出来ないの?」
「ん?なんで?」

「蒼空が女だから。
 友くんに言われたもん。」



兄さんは微笑んで私の頭を撫でた。

「蒼空、少年野球の間は
 体力的にもそんなに
 男女で差は無いから、
 きっと大丈夫。」

「ほんと?」

体力的とか男女とか
言われてもよく理解できなかった。
でも「きっと大丈夫」と兄さんが
言った時に心が軽くなった。

「うん。練習頑張ったら
 絶対上手くなるよ。」

「分かった、蒼空頑張る!」




こうして今、雨宮蒼空は
この中学校の野球部で
1年生にしてエースの座に
君臨している。

Re: ヒーロー ( No.11 )
日時: 2015/10/11 10:29
名前: lucky man (ID: T1OugAgl)

「兄さん、見ててよ。」

家を出て、一人呟いた。

今日の試合は
あの日と同じ大会。



兄さんも中学3年生の時、
この大会にチームで出場した。

試合前日、練習が終わってからも
家の前で黙々とバットを振る
兄さんの姿はいつ見ても格好良かった。



そして、あの日。
1試合目の6回表、
ツーアウト1・2塁。
ツーストライク、ワンボール。
カウントまで覚えてるよ。

マウンドの上の兄さんが
胸を押さえ、苦しみ始めた。

突然のことで、何が起きているのか
分からなかった。


「なんで雅樹があと5ヶ月しか
 生きられないのよ?
 昨日まで元気だったじゃない!」

「静かにしろ。蒼空が起きるだろ。」

「ごめんなさい。・・・でも、雅樹が、
 あり得ないわ、何かの間違いよ。」

「・・・医者が言ってたんだぞ?
 きっと嘘は付かないだろ。
 誰も悪くない。俺だって悔しい。」

父さんと母さんが話すこの声が
私にはどこか別の国の言葉のように
聞こえてならなかった。



マウンドで倒れた兄さんは
救急車で運ばれて
近くの大きな病院に連れていかれた。

父さんと母さんは私を病院に
なかなか連れていってくれなかった。

だから1度、私は学校が終わってから
野球の練習を無断で休んで
一人で病院に行った。

当時小学2年生だった私には
少し長い道のりだったけど、
会う人会う人道を訊きながら
どうにかたどり着いた。

「雅兄・・・?」

「そ、蒼空!?なんで居るの?」

ベッドに横たわる兄さんは
とても元気がないように見えて
悲しくなったのを覚えている。

「蒼空、練習は?」
「今日は行かない。
 雅兄に会いに来た。」

「駄目だろ?練習休んだら。」

頑張ってここまで来た妹は
きつい言葉だった。

「だって、雅兄が、病院、
 一人で寂しいかな、って蒼空、
 思ったから、・・・ごめんなさい。」

「蒼空、野球楽しい?」

「うん。」

「じゃあ、それで良い。
 頑張れよ。・・・よし、
 この部屋を出て廊下を
 ずーっと行ったところに
 自動販売機がある。お金あげるから
 好きなジュース買って飲みな。」

「ありがとう、雅兄!」


自動販売機の前でジュース飲んでたら
母さんが迎えに来た。

怒っては無かったけど、
悲しい顔してた。


3か月後、兄さんは
静かに息を引き取った。
とても安らかな顔してた。


私は野球の練習に1ヶ月行かなかった。
母さんは毎日泣いてる。
父さんは毎日遅くまで酒飲んでる。
そんな状況で、学校に行くのがやっと。
周りとも距離をとって
常に静かにしていた。

そんな時だった。
学校からの帰り道で
中学校の先生に会った。

「雨宮蒼空ちゃんだね?」
「はい、そうです・・・。」

「これね、お兄さんが
 蒼空ちゃんに、って。
 はい、どうぞ。」

「雅兄から!?」

「そうだよ。
 先生ね、お兄さんに野球教えてた。
 いつもお兄さん言ってたよ、
 妹は本当に野球が上手だって。
 先生も蒼空ちゃんが中学校に来るの
 楽しみにしてるね。」

「・・・ありがとう、中学校の先生!」

私は走って帰った。
自分の部屋に入って
もらった青い小さな封筒を開けた。

同じく青い便箋が入っていて、
きれいに整った字で書いた
長い文が綴られていた。

——蒼空へ
  やきゅう がんばってますか?
  このてがみが とどくころには
  まさにい は いないとおもいます。
  まさにいは びょうきに まけたけど
  蒼空が がんばるすがたは
  きちんとみてるからね。
  がんばれ、蒼空。  まさにいより

Re: ヒーロー ( No.12 )
日時: 2015/10/11 10:41
名前: lucky man (ID: T1OugAgl)

次の日から練習に参加した。
兄さんも頑張った。
だから私も頑張ろうって。




私はもう一度空を見上げて呟いた。

「兄さん、見ててよ。
 野球、頑張ってるからさ。」

そして帽子をかぶり、
前を強く見据えた。

太陽、土、ユニフォーム、
これらの匂いが私を今日も
奮い立たせる。

兄さん。
貴方は今も私を見てるんでしょう?
兄さんはね、私に野球を教え、
命の大切さを教えてくれたんだよ。
私も兄さんみたいに立派な人になる。

私、頑張れてるかな、兄さん。

「プレイボール!!」


私のヒーローは


病気に負けちゃった。


でもね、強い。
物凄く強くて、妹思いの優しい




      「兄さん」





               —終—

Re: ヒーロー ( No.13 )
日時: 2015/10/11 23:00
名前: lucky man (ID: T1OugAgl)

第1話目、終わりです。

いかがでしたか?

・・・はい、その通り、
ありきたりなストーリー。
しかも駄文。

それでも読んでくださる方々は
続きをどうぞ。


次は寡黙な星香のお話。

Re: ヒーロー ( No.14 )
日時: 2015/10/11 23:14
名前: lucky man (ID: T1OugAgl)

この春、私は中学1年生になった。

新入生テストの次の日。
今は自己紹介の時間。

みんな一人ひとりが
1年間の抱負も合わせて、
多様な挨拶をしている。

ということで、
当然私の番も回ってきた。

「櫻場星香です。
 よろしく。」

先生が困惑した顔で訊いてくる。

「星香、それだけか?」
「はい。」



自分で言うのはおこがましいが、
私はこの学年1の成績を有する。

それはもう
新入生テストで実証ずみ。

塾なんて行く人の
気持ちが分からない。

それに運動もそれなりにできる。
手先もかなり器用な方だと思う。


で、そんな私に母は




「社交性が足りない」と言う。


Page:1 2 3



この掲示板は過去ログ化されています。