コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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わんだーらんど いん わらび
日時: 2016/10/31 01:45
名前: 燐曇 ◆qPaH7fagTg (ID: IoxwuTQj)

完走できるかどうかは本当に分からない(不穏)


はいどーも燐曇りんどんです。漢字変換はクソ面倒だと思うので好きに呼んでください。漢字間違えられるのもちょっと嫌なので……ね(

長ったらしい事話すのはアレなので、手短に注意事項をして本編へ行ってしまいましょう。


※注意事項※
・不定期更新(失踪はなるべくしないように頑張ります)
・乱文
・描写がヘッタクソ
・シリアスが瞬く間にシリアルになる
・能力もの
・突然何かする
・色々な作品の世界観などを参考にしています


うんまあ他にも色々とありますが……頑張って続けます。頑張って。何とかオチは考え付いたので、ハイ。



*目次的なもの。
〜1章っぽいところ〜
#0(???視点) >>1
#1 >>2
#2 >>3
#3 >>5
#4 >>6
#5 >>8
#6 >>9
#7 >>11
#8 >>15


*住民とか。
1 >>4
2 >>10
3 >>14

*しなくても何とかなるかと思ったが無理だったので簡易的用語解説。
>>7


*ここでやることじゃない簡易的世界観解説。
日本のどこかに存在するかもしれない、小さく見えて広い、自然豊かで時代遅れな世界。人間、能力者、魔術師、妖怪、妖精、亡霊、悪魔、その他様々な種族が集うこの世界は、一応日本です。もう一度言います。日本です。西の方には洋名もいますが和名が一般的です。イエスジャパニーズ。
村や里、集落などが多く存在し、電気は勿論、ガスも水道も通っていません。のどかなところです。ただし、”役場”という場所を除いて。

これは、そんな役場を中心に回るかもしれない、とある少年少女達の夏のお話。


2016年10月31日
#8更新。


*謝罪
一部、キャラの設定を変更しました。

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Re: わんだーらんど いん わらび ( No.4 )
日時: 2016/10/31 01:40
名前: 燐曇 ◆qPaH7fagTg (ID: IoxwuTQj)

*簡易的な人物紹介。(あいうえお順)

市沢希望 / イチザワ ノゾミ 女
役職:心理担当
カウンセラー。出張することもしばしば。
能力:読心リーディング
対象の心を読む能力。表面上のものだけでなく、その奥底も見ることができる。彼女に隠し事は不可能である。
ただし、過去を改竄したり、心を操ったりなどはできない。あくまでも読めるだけである。彼女の能力を使えば一発で事の真相がわかってしまうのだが、それはそれで面白くない、と仲間内からどうでもいいクレームが来たため、現在は事件に関わることすら少なくなっている。
好きなアイス:抹茶味のカップアイス

役場に勤めている者の中では、現在最高齢。しかしその容姿は非常に幼く、何も言わなければ最年少だと偽れてしまうだろう。だが彼女は別に猫を被りたいほど年齢を気にしているわけではないので、BBAとか言っても特に何も言わない。ちなみに実年齢は不明。役場内でも年上だからといって特に敬われたりはしていない。それなりにゲスい人。
役職のせいか、「先生」と呼ばれている。


因幡夏恋 / イナバ カレン 女
役職:情報担当
愛用のパソコンを駆使して、今日も今日とてハッキング三昧。
能力:侵入ハッキング
対象の精神を乗っ取り、思いのままに操ることができる能力。対象は人に限らず、犬や猫、はては無機物までと幅広い。
ただし、机に乗り移って空中バックスピンなどはできない。さらに、操っている最中の本体はがら空きになるため、注意が必要。パソコンに乗り移って二次元の嫁に会いに行こうとしたが、嫁が決められたセリフしか話せないことに気づき泣き寝入りをした経緯を持っているかもしれない。
好きなアイス:チョコレート味のサンデー

立方体を拾った少女。役場に勤めている人間の中ではかなり若い方。いわゆるハッカーであり、また、それらしい能力を持っているが、悪用したところであまり意味を成さない事を知っているため、特に問題を起こしたりはしない。普段は明るく友好的であるが、まあまあゲスい部分もある。敬語を使う相手は選んでいる。香の義理の妹。
#1から出演しているが、彼女が主役というわけではない。


香李夜 / カオリ リヨ 女
役職:情報担当
主任代理。毎日各地を行ったり来たりしている。
能力:機密シークレット
自身に関するあらゆる情報を非公開にする能力。足取り、痕跡、指紋等々、一切が非公開になり、あらゆる能力の干渉を受け付けない。知りたければ彼女から直接聞くしかない。
ちなみにこれは常時発動しているもので、彼女の意思でON/OFFが切り替えられるのだが、それをするにはとある条件があるとかなんとか。それがまた面倒であるため、彼女は放置している。そんなことより仕事しようぜ!
好きなアイス:イチゴ味のかき氷

立方体を拾った少女・因幡の義理の姉。妹と仕事を溺愛しており、時折変態的な言動を見せる知識人。というか変態。さらに言うなら変態。盗撮と盗聴とストーキングが趣味だが、それがある意味仕事に役立つのだからこの人まさか狙ってやってるんじゃないだろうか。しかし初見では一番まともそうに見える謎。しかし胡散臭い。ある意味チート。
実は記憶喪失なんだとか。


姫島秘香 / ヒメジマ ヒメカ 女
役職:現場担当
直接現場へ赴き、調査する役割。しかし、現在この役職は彼女を除いて一人しかいない。現場担当主任代理。
能力:死欲デストルドー
欲を力に変える能力。力というのは主に戦闘力であるが、他にも速度や知能、集中力といったものに変換することも可能。
任意で解除可能。欲に制限は無く、生理的欲求から社会的欲求まで、ありとあらゆる欲を力に変えることができる。欲というのは際限が無く、一歩間違えば破滅を招きかねないため、長時間の発動は危険とされている。雑誌を投げつけたりするためだけに発動するなんてとんでもない!
好きなアイス:バニラ味のアイスバー

因幡に雑誌を投げつけた少女。趣味はコスプレらしく、よくゲームやアニメのキャラクターのコスプレをしているが、この世界ではゲームやアニメはあまり普及していないため、気付く者はあまりいなかったり。そして彼女の真の姿は未だに不明。市沢、因幡、香にも負けず劣らずのゲスい考えを持っているとかいないとか。後輩である因幡をこき使っており、よく口喧嘩をすることもあるが、それなりに仲は良いのだろう、か。
双子の姉妹が居るらしく、互いに嫌悪しているとか。

Re: わんだーらんど いん わらび ( No.5 )
日時: 2016/06/20 02:10
名前: 燐曇 ◆qPaH7fagTg (ID: OfqjeFpF)

#3

「そういえば夏恋ちゃん。あの真っ黒な箱はなんです〜か?」

ほぼ水と化したイチゴ味のかき氷を飲み込むと、香は因幡に尋ねた。「ああ、」と因幡が思い出したように立方体の方へ向き直ると、姫島と市沢もそちらへ注目する。
窓から差し込む日の光に照らされた立方体は、黒く輝いて、ただそこに存在している。それは異様でもあったし、普通でもあった。

「なんか……落ちてきたから拾った」
「何じゃそりゃ」
「まーた因幡さんが幻覚見てますよ」
「黙れ脳に虫でも湧いてんのか」

チッ、と因幡は小さく舌打ちをすると、立方体を手に取り、軽く宙へ放り投げては、それを受け止めた。何度かそれを繰り返した後、今度はまじまじと立方体を見つめだす。
黒く光る立方体は、拾った時から何も変わっていない。しいて言うならば、拾った時の冷たさが無くなっているということだろうか。

「ん〜、得体のしれないものって怖いで〜すね」
「でも箱っていうことは、中に何か入ってるんじゃないの?」

市沢はそう呟くと、興味がなさそうに手元の書類に視線を移した。

「いやでも、蓋とかどこにもないんだよ先生」

ほら、と因幡が立方体を見せつけるように市沢の方へ突き出すも、彼女はすっかり興味を失ってしまったようで、視線をそちらへ移すこともせずにただ「あーそう」と、簡易的な返事をした。その様に、因幡は半ば不服そうに顔をしかめるも、また立方体を見つめだした。

そんな二人の様子を見ながら、姫島は因幡の隣に移動して、同じように立方体を見つめだした。
姫島に気付くと、彼女の様子に因幡は訝しげな顔を見せる。

「……何すか先輩」
「いや、蓋が無いなら壊してみるっていうのはどうかと」
「(脳筋かこいつは……)」

すると香が「ああ、いいで〜すね」と姫島に賛同の意を見せた。確かに、それ以外に手がないのは事実だけれど、壊した後のことをこの人達は考えているんだろうか、と因幡は二人を呆れたような目で見ていた。しかし二人はそんなことに気付いているのかいないのか、それは定かではないが、やる気満々といった様子で立ち上がる。
はあ、とため息を漏らすと、ついていかないというわけにも行かず、因幡も立ち上がり、三人は役場の外へと向かっていった。


「静かにやってよね」という市沢の言葉を聞きながら。




【腕が落ちた気がする(死んだ目)】

Re: わんだーらんど いん わらび ( No.6 )
日時: 2016/08/12 07:55
名前: 燐曇 ◆qPaH7fagTg (ID: louOLYa3)

#4

炎天下の中に出た三人は、立方体を囲んで、それを見下ろしていた。直接日の光を受けた立方体は先程よりも眩しく、少し目線をずらせば直視もままならないほどだった。
提案した姫島はといえば、いつの間にやら片手に重たそうな棒状の——バールを手にしている。それをバトンのように手先でくるくると弄び、やる気満々といった様子で鼻歌を歌っているものだから、その様に因幡は顔をしかめた。

——暴力団のリーダー格かなんかですか、この人は。

「さぁーて、では誰から行きます?」
「私はパスです〜かね。生憎攻撃タイプではないので」

そう言って片手をひらひらと振りながら笑っている香だが、その笑顔には面倒事を回避したい、というかのような思惑もあるように思える。
この箱を壊したことによって持ち主、あるいは箱の中にいる”何か”の逆鱗にでも触れたとなれば、その矛先は当然壊した張本人へと向けられる。姫島がそれに気づいているのかいないのかは不明だが、かといって気付かせるのも面倒臭い。というか、こいつは一度痛い目を見とくべきだとすら、彼女は思っている。

「因幡さんはどうしますー?」
「……やめとく。私もそれ専門じゃないし」
「はーしょうがないですねえ。ではこの秘香ちゃんが華麗にこの箱を破壊し、財宝を手にしてみせましょう!」

ふふん、と無い胸を張って得意げに笑う姫島は、余程この立方体を壊せる自信があるのだろう。それらしい能力の持ち主で、かつ役場にいる人間の中でも上位に入るほどの戦績をあげているほどの人物ともなれば、これぐらいの自信が湧くのも当然だろうか。
そんな姫島の様子を見ながら、因幡は”やっぱり財宝目当てかい”とツッコみたい思いを抑え、ただひたすら、目の前のバールを構える上司に呆れていた。

「(やっぱり一回痛い目見てしまえ)」
「よーし、じゃあいっきますよー。姫島いっきまーす!」
「きゃー姫島先輩さんカッコイイ〜」

そう言うや否や、姫島はバールを思いきり振り上げた。誰も彼女を制止しない。むしろ約一名は、彼女の行動に声援を送っている。

刹那、姫島の周囲に旋風が起こった。


「せぇいやっ!!」

——ドゴォッッ!!!


バールが立方体に向かって振り下ろされると同時に、重い衝撃音が周囲に響き渡る。その衝撃があまりにも強かったせいか、辺りには砂埃が舞い上がり、数秒ほど視覚が奪われる。

「————ゲッホ、ゲホッ……!」
「あらら〜夏恋ちゃん大丈夫です?」

舞い上がる砂埃に因幡がむせ返ると、香が心配そうに声をかける。
”大丈夫”と返そうと因幡が薄く目を開けると、その視線の先には——


「……おおう、こいつは……」


地中へわずかにめり込んだ、無傷の立方体があった。


————————……


「うーん、どうします〜か?まさか姫島先輩さんが能力を使っても破壊できないなんて、これじゃあ誰にも破壊できないと言っているようなものじゃないです〜か」

いつも通りののんびりとした口調で、香は言った。

あれから三人は、作戦を立てようということで再び役場内へと戻っていた。市沢はいつの間にやら姿を消していたが、大方、食堂にでも行ったのだろう。
姫島は余程自信があったようで、少なからずショックを受けたようだ。若干砂まみれになっただけの立方体を睨み付けては、先程から一言も発そうとしない。

彼女の能力——死欲デストルドーは、彼女が持つ欲をあらゆる力に変える能力だ。人一倍強欲である彼女がこの能力を使って破壊できなかったものは、この立方体が初めてだった。
”財宝を手にする”という欲だけでなく、他の欲も使うべきだったか、と姫島は考える。

「んー……この手の専門家といえば、誰だろう。姫島先輩が破壊できないってことはごり押しは無理……普通に情報収集するしかないかな……」
「そうです〜ね。可能性としてはかなり強力な術が施された魔術道具マジックアイテムか、もしくは私達がまだ知りえない物質でできているか……この辺りが妥当なところですか〜ね」
「その様子だと姉さんも分からないみたいだね」
「私だって知らない事はありますよ夏恋ちゃん」

香はニッコリと、嬉しそうに笑う。
前者の魔術道具マジックアイテムというのは、この世界では珍しいが存在しない事もない。それを専門に取り扱う店もわずかではあるが存在するし、魔女、魔術師といった存在も、表に出てこないだけで少なからず存在する。
このように、ある程度現実に存在が確認されている前者ならば、まだ何らかの対処ができるかもしれない。だが問題は後者だった場合。
この場合、協力を仰ぐことのできる人物は、この世界には二、三名程しか存在しないといっても過言ではない。そのうちの一人が香なのだが、香が知らないとなれば、他方へ尋ねるほかない。

だが、その他方というのが、若干厄介な存在だった。

「……読書家に、頼む?」
「え〜、申請が面倒です〜よ。”閉鎖された森林”でしょう?」

”閉鎖された森林”という場所に、その他方の一人————読書家は、幽閉されていた。




【次回、用語解説(今更)】

Re: わんだーらんど いん わらび ( No.7 )
日時: 2016/07/10 15:23
名前: 燐曇 ◆qPaH7fagTg (ID: A6DUXQK.)

*今更すぎる用語解説。(あいうえお順)

能力 ノウリョク
この世界に存在する約三分の一の人間が生まれ持つ力。妖怪や妖精は必ず持っているとかいないとか。ただしそういった存在は少ないため、何とも言えないのが現状。魔術との違いは「使用の際、魔術道具マジックアイテムを必要としないこと」「先天性のものであり、誰にでも使えるわけではないこと」等が挙げられ、現在も研究を続けている学者が少なからずいる。力は個人に依存する。

能力者 ノウリョクシャ
能力を持つ人間の総称。この世界では無能力者の方が多いのだが、小説に出てくるのは能力者ばかりです(大事)。時に崇められ、時に迫害され、時に何もなかったりと、場所と能力によって扱いが異なる。個人によって能力は異なり、血縁でもない限り同じ能力を持つ事はほぼ無い。そもそも血縁でも稀。ただし似たような能力を持つことはよくあるケースなんだとか(「無効化する能力」でも、対象が異なったり等)。
能力を使用する際、周りに旋風が巻き起こったり、目が光ったりなど、何らかの予兆がある。

閉鎖された森林 ヘイササレタシンリン
昼夜を問わず暗く、一度迷い込むと二度と抜け出せないといわれている森。森全体に特殊な結界(魔術?)が施されており、戻ってこられないのはこのせいだろうと言われているが、真偽は不明。この森には多くの危険な妖怪、魔術師が住んでいると言われ、近付こうとする者は誰もいない。それでも入るには、役場での申請が必要。読書家と呼ばれる者が幽閉されているらしいが……?

魔術道具 マジックアイテム
魔術を使用する際に媒介とされる、魔力が込められた道具の総称。これがあれば、魔力を増強することができる。形状は様々であり、一般的なものは杖、魔導書など。生粋の魔術師ならば、自身に合わせたオリジナルの道具を作り出す事も可能。魔術道具を専門に扱った店も存在するとかしないとか。ただし魔術を使いすぎると消滅するため、ご利用は計画的に。

魔術 マジュツ
魔法、妖術とも。能力とは違い、しっかりと勉強すれば誰にでも使うことができるようになる力。魔力は先天的に量が決まっているが、魔術道具を使うことで増強することが可能。魔術を自在に扱う存在を”魔術師”と呼び、女性の場合は”魔女”と呼ぶ。存在する魔術は様々であるが、魔力を十分に持っていれば火を起こしたり、水流を操ったり、怪我を治療することも可能。

魔術師 マジュツシ(ウィザー、ソーサラー)
魔術を扱うことに長けた者の総称。女性でなく、男性をさすことも。その数はあまり多くはない。大抵は森の奥などの、あまり人目につかない場所に住んでいると言われている。年に数回ほど夜宴サバトを開いているらしいが、実態はほぼ知られていない。長寿である場合が多い。
生まれながらにして魔術師であることは稀であり、その場合は極めて強い魔力を秘めているとかいないとか。

魔女 マジョ(ウィッチ、ソルシエール)
魔術師の女性を指す言葉。近年では魔女の方が多いらしい。

役場 ヤクバ
主に主人公サイドの組織(主人公がいるとは言ってない)。どの村や里からも最低1kmは離れているという悪立地な拠点を構えており、そのためかここに来る者はあまりいない。というかここに来るほど困ることが無い。何でも屋のような仕事をしており、絵本の朗読から同伴デート、隕石撃墜等、様々な依頼を受ける。裏手には食堂があり、古びた木造建築という外見に対して、中は意外と広い。ここに勤めている者の大半は能力を持っているが、持たない者も少なからず存在するとかしないとか。


【随時更新予定。わかりにくければコメントにて教えてくだされば幸いです。】

Re: わんだーらんど いん わらび ( No.8 )
日時: 2016/08/12 08:19
名前: 燐曇 ◆qPaH7fagTg (ID: louOLYa3)

#5

「待った」

因幡と香の結論が読書家に決まろうとしていた時、立方体を睨み付けていた姫島が口を開いた。

「わざわざ敵だった人に聞きに行くよりも、近くにいる人を使ったらどうなんですか。うちにはそれ相応の馬鹿げた能力者がわんさかいるというのに」
「……と、言いますと?」

香は興味深そうに、姫島に尋ねる。その表情はどこか挑発的で、けれどこの状況を楽しんでいるようにも見える笑み。
それを見た姫島は、ふふん、と、先程まで立方体を睨み付けていたという事実を忘れさせるように、得意げな表情を返した。自信家でもある彼女を象徴するかのような表情だ。ただし、因幡はそれを見るたびにいつも面倒くさそうに顔をしかめる。どこからこんな自信が出るんだ、と。

「まあ少々面倒な手法ですけれども」

そう切り出すと、んんっ、と咳払いを一つ。

「魔術道具なら私の能力が通用しないはずがありません。そもそもヒビが入らないほどの魔力を帯びさせることができる魔法使いなんていないんですよ、過去の事例を踏まえて。これらのことから、魔術道具である可能性を捨てるとします。
ですが、魔術道具ではない、だが何らかの術が施されている、とすればですよ。これならば無効化できるかもしれない人が何人かいるじゃないですか」
「……あー、その可能性ね……なるほどね……」
「なるほどー、盲点でしたねー」

因幡はどこか虚脱したような様子で返事をした。香も思い出したように、かといってどこかわざとらしそうに両手を合わせる。
”何らかの術が施されている=魔力を帯びている=魔術道具”と考えることが、彼女達にとって自然であり、普通であったからだ。ただ棒読みで答えた香は、姫島の言ったことに気付いていたのかもしれないが。

「でも要は、”面倒くさいから手短に済ませろ”ってことなんでしょ」
「はい」
「ちょっとは否定しろ」


こうして、三人は”役場内で立方体を破壊できそうな人”を探し回ることにしたのだった。


————————……


役場に勤めるその少女の日課は、役場の裏手にある散花食堂チバナショクドウで餡蜜を食べることだった。それが少女の大きな幸せであり、不変的な日常。
今日もまた、少女はそれを実行しようとしていた。餡蜜が運ばれてくるのを今か今かと、恋人か友人を待つようにそわそわとしながら、けれど平然としているようにも見える姿勢で待ち構えていた。

そんな様子を見た、少女の隣に座る少年は思った。

「——ねえ、一個聞いてもいいかな」
「なんデしょうか、先輩」
「今、何杯目?」

——この子の胃袋は宇宙か何かですか、と。

頬杖をついた緑髪の少年が、薄い桃色の髪の少女に問いかける。少女は少し考えた後、首をかしげながら、いつものようにゆっくりとした口調で答えた。

「次で七杯、め……デス……?」

その時丁度、七杯目の餡蜜が運ばれてきた。少女は目を輝かせて、少年から餡蜜へと視線を移す。もはや彼のことなど眼中にないのだろう。
その様を、彼は苦虫を噛み潰したような、言いようのない苦笑いを浮かべて見ていた。




————食堂の扉が開かれたのは、少年が冷たい麦茶を飲みほした時、そして、少女が十五杯目の餡蜜を平らげようとしていた時だった。


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