コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。
- 日時: 2016/11/24 18:12
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
「ボク、おとなになれるのかな__?」
「なれるよ、ふたりでおとなになろ?___」
「うん____!」
甘酸っぱい、幼い頃の記憶。
確かこの日はホタルがたくさん飛んでいて、二人で眺めていたよね。
小指を交えて約束したよね。
ほっぺにぎこちなくキスしあったよね。
だけど今は___会うことさえもできない。
- Re: 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。 ( No.15 )
- 日時: 2016/11/26 14:05
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
一体、これはどういうことなのだろうか。
七瀬一平とは彼の名前だろうが、僕はどんな反応を取ればいいのか。
宜しく?だから何?ん?
この中からだったら、「宜しく」が一番いいか。
僕はそっぽ向いている彼に、
「宜しくお願いいたします」
とバカ丁寧に言い、勉強へと戻った。
この無愛想な彼との出会いも神様に引き合わされたものだと、僕は後に分かる。
翌日、休日の今日。僕は寂しく感じたので、彼女の墓参りに行くことにした。
両親も手を合わせたいと言うので、両親の車で連れて行ってもらった。
僕が最近、同級生の女の子と仲良くしているから、彼女は寂しく感じているかな。
こんなことを考えながら、彼女の苗字が入ったお墓の前までやって来た。
ここに来ると、距離が縮まった歩未の前でもなかった安心感がある。
やっぱり、僕には彼女だけなんだ。
彼女だけがいれば寂しくないし、生きていられる。
なのに彼女は僕の前からいなくなった。
当時は地獄に落ちたような心地だった。
鬼に身ぐるみ剥がされて、三途の川を渡らされて、しまいには変わり果てた彼女の姿を見せられる。
これ以上の地獄はなかった。
彼女は僕自身だった。僕の心臓だった。魂だった。人生だった。
そんな彼女を忘れられるはずがない。
僕は彼女のお墓の前に膝をつき、手を合わせて心で彼女に向けて言った。
「永遠に君のこと忘れないから」
- Re: 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。 ( No.16 )
- 日時: 2016/11/26 22:11
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
僕はしばらく彼女に語りかけた後、ゆっくりと立ち上がり、
「帰ろう」
と両親に言った。
両親も手を合わせ終わっていたのか、首を縦に振った。
車へ戻っている最中、寺で感じたように、背に彼女を感じた。
振り返り彼女のお墓を見るも、やはりいない。
もしかしたら霊の姿で現れてくれるかも、という軽い考えをまたも打ち破られる。
だが僕は目を細めて彼女のお墓の二列後ろをジッと見た。
もしかして……七瀬一平か?
一平らしき人物は一人で来ていて、目をつぶり墓に向かって手を合わせている。
僕は両親に「ちょっとトイレ行ってくる」と言い、その人物の元に行った。
近付くと一平の顔がはっきりと分かった。
手を合わせ終え、目を開けた一平は僕がいることに気付き、
「何でいんの」
と驚いた声で言った。
僕は笑いながら頭を掻き、「たまたまだよ」と返し、一平が手を合わせていた墓を覗き見た。
「陸海家?」
そう言った僕に、一平は頷きで返した。
「陸海一成。俺の親友で、中三の卒業式の日に交通事故で……」
一平はその先を続けなかった。親友がいなくなったという事実を認めたくないのだろう。
僕が黙っていると、一平はこの空気を裂くように「はあ」と溜め息をついた。
「こんなに悲しんでも一成は気付かないんだろうな」
一平は僕が彼女に対して思っていた事をそのまま口にした。
僕が頷くと、二人の間に静寂が流れた。
僕と一平、考えていることはかつての友人だった、「彼女」と「一成」のことだ。
"もう一度会いたい。会いたくて仕方がない。話したい。話したくて仕方がない。"
考え方や性格は真反対の二人だが、この思いだけは共通した思いだった……。
- Re: 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。 ( No.17 )
- 日時: 2016/11/28 22:02
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
一週間後の金曜日。
学校の都合で授業が早く終わったので、僕は家の近くの図書館へと来ていた。
数冊、本を手に取り、左右を本棚に囲まれた窓際の席に座り、スマホをいじり始める。
数分経つと本をペラペラとめくり、舐めるようにジックリと読んでいく。
そんな時、
「あれ、「僕」くん。偶然だね。…何してるの?」
と分厚い本を何冊か抱えた歩未が僕の本を覗いた。
「おおー、英会話勉強してるんだね」
驚いた声を出した歩未は、自分の持っていた本を一冊、僕の前に置いた。
「私は心理学。大学は心理学を専攻したいなって思ってるんだ」
未来を思い描いて微笑んでいる歩未に心を込めて、「頑張って」と言った僕だったが、
「本当に思ってるー?」
と僕は肩を軽く殴られ、二人は図書館にいるにも関わらず、結構な声で笑っていた。
そんな時、仏頂面した一平が現れ、僕らは「常識」についてガッツリと説教をされた。
図書館の帰り道。
僕はさっきの図書館での歩未の言葉をふと思い出した。
「七瀬は将来したいことある?」
僕が聞くと七瀬はウーンと唸り、やがて言った。
「医者…とかは一応候補には入れてる」
「医者かあ。七瀬、頭良いし、優しいし、良いと思うよ。応援する」
「私も応援する!」
僕らがそう言うと、七瀬は自嘲気味の微笑みをし、
「決めたわけじゃなかったが、お前らがそんなになって欲しいならなってやるよ」
と上から目線の悪戯っ子の顔をして、僕らを見た。
僕らは顔を見合わせ、
「何それ!」、「何だそれ!」と久し振りに心から笑い合った…。
- Re: 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。 ( No.18 )
- 日時: 2016/11/28 23:00
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
家に帰った僕は、風呂にも入らずにベッドへと倒れた。
帰り道の途中で二人と別れてから、何故かずっと彼女のことが頭から離れない。
自分でも何故か分からない。
(僕に何か伝えたいことがあるのだろうか)
そう思った時、頭の片隅に忘れ去られていた箱の事を思い出した。
寺の後ろで拾った箱のことだ。
その後、箱の中のモノを出して箱だけを綺麗に洗い、棚の中にしまったのだった。
すっかり忘れていた…。
後悔の念に苛まれながらも、箱を取り出し、机の上で再度開ける。
当たり前だろうが、入っているものは前と変わらずに、「手紙」と「鍵」だ。
この手紙は僕に向けた物なのだろうか、僕は今更心配になった。
だが、あの寺は僕と彼女だけの思い出の場所だ。
心を決めた僕は、ビニール袋に丁寧に入れられていた手紙を取り出し、開いた。
「「僕」くんへ」
彼女の丁寧で筆圧の薄い懐かしい字に、目の奥が熱くなった。
それに続く、「拝啓、桜が舞い散る美しい春が」というふざけ半分の文字が、さらに彼女を思い出させる。
ああ、今、すぐに彼女に会いたい。彼女と話したい。彼女を抱き締めたい。
普通の恋人同士みたいに、四六時中、一緒にいたい。キスもしたい。
ほんの少しでいいから、彼女を感じていたい。
神様は本当に意地が悪い。こんな小さな僕の願いを、一切聞き入れてくれない。
なのに何で…こんな地獄のような人生を与えたのだろう。
もう、嫌だ。毎日のように彼女のことを考えては、会えないとわかって憂鬱になる。
その度に目の奥が熱くなって、涙が溢れてくる。
何で僕だけがこんな思いしなきゃいけないのか。…もう死んじゃおうかな…。
毎回、結局はその答えになる。
僕は手紙を手に、ベッドへと倒れ込んだ。
起きてても、寝てても、頭の中にはいつも彼女がいる。
「…この呪縛から解放されたい」
僕は初めて彼女を邪魔者扱いした。
罪悪感で死にたくなると思ったが、予想に反し、少しだけ心が軽くなったような気がした。
僕は彼女に依存していたのだろうか。
深く考えている内に、急に睡魔が襲ってきた。
まだもう少し起きていたい気持ちはあったが、本能には逆らえなかった。
- Re: 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。 ( No.19 )
- 日時: 2016/12/03 11:44
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
翌日。
風呂に入っていないことに気付き、朝早く起きた僕。
早朝のシャワーを済ませ、床に落ちている手紙を拾った。
そのまま箱に戻そうと思ったが、手が自然と手紙を開いていた。
『「僕」くんへ。』
『拝啓、桜が舞い散る美しい春が、とうとうやって参りました。
「僕」くんは高校一年生になるけど、大丈夫?心配だよ、私。
でも、友達100人作ったら、高校生活楽しいと思うから、頑張ってね!
楽しい青春時代を過ごしてね!バイバイ!』
『「彼女」より』
そう書いてあった。
昨日、十分なくらいに泣いたのに、涙で視界が曇った。
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