コメディ・ライト小説(新)
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- 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~
- 日時: 2017/05/22 18:14
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
■:プロローグの中のプロローグ。
──きっと相手が君じゃない、君に似た他の誰かだったら今みたいな感情は生まれなかったと思う。
いつも僕の横にいて、笑う姿も泣く姿も怒る姿も、珈琲牛乳を飲む姿も……。
全部の君の部分をひっくるめて。
……僕は君が大好きだった。
今ならあの時素直になれずに言えなかった気持ちを伝えることが出来る気がするんだ。
だからもう一度……僕の前に姿を表してくれないか──?
*
「彼女+僕=珈琲牛乳。~bitter&sweet~」
>>1
- Re: 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~ ( No.31 )
- 日時: 2017/12/02 20:34
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
■:第4話 「私という人間(4)」
そんなこんなで、中学受験当日の日がやってきた。
「じゃあ、お母さんは試験が終わる頃にまたここに戻ってくるからね」
自分を信じて、精一杯頑張ってきなさい。……そう言ってお母さんは、私が会場に入るまでずっとこっちを見ていた。
席で筆記用具の準備をしていると、急に話しかけられた。
──見覚えがなかった。誰ですか、そう尋ねようとした時だった。
「久しぶり! たまちゃん」
その笑顔が、私の記憶重なった。……ずっと私の求め続けていたひびちゃんが確かにそこにはいたのだ。
「ひ、久しぶり……」
お母さんと塾の先生以外の誰かと話すのは、すごく久しぶりで声がか細い。
ひびちゃんによると、中学生からはまたこっちで暮らすらしく、せっかくなら受験をと両親に言われて頑張ってきたらしい。
私のように、途中で挫折しかけたと言っていた。
憂鬱だった中学受験も、俄然やる気が出てきた。
「絶対受かって、頑張ろ!」
「うん! 頑張る」
じゃあ、また終わったらねとひびちゃんは私の元を去っていった。
そのあとの試験の手応えとかそういうのは覚えてない。
お母さんに聞かれたけれど、「わからない」の一点張りな私に困ったらしく不安そうな顔をしていた。
でも、確かに私の受験番号が合格発表のところに掲載されていたのだ。
私はすぐに、ひびちゃんの姿を探した。
人を押しのけていった先にひびちゃんはいた。
「どうだった?」
叫んだ。こっちに気づいたひびちゃんは笑顔で力強く頷いた。
私のお母さんとひびちゃんのお母さんも、久しぶりに会ったせいか話に花を咲かせていた。
*
4月──。
少し丈が長めのスカート。 慣れていない格好が気になって何度も裾を触ってしまう。
ひびちゃんと、毎朝登校することになった。
前のように家は近所じゃないからちょうどお互いの家と学校までの距離を考えて駅で待ち合わせになった。そこから歩いて学校まで行く。
「おはよ! ひびちゃん」
「おはよー。 ……環って呼んでみてもいい?」
「うん! 私もじゃあ響姫って呼ぶ」
慣れない呼び捨て。
慣れない環境。
慣れない格好に、慣れない生活。
慣れないことがたくさんある中で、今の私にとっての心の支えは2つとない響姫の存在だった。
……少なくとも、私にとってはそうだったのだ。
**
- Re: 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~ ( No.32 )
- 日時: 2017/12/25 17:31
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
■:第5話「響姫の存在」
クラス発表の紙を確認した。
「あぁ……クラス別々になっちゃったね」
「休み時間とか、隣の響姫のクラス覗きに行ってもいいー?」
「うん! クラス離れても、ずっとずっと一緒に登校しようね!」
私達の約束。──本当に約束だったのかな?
新しい環境で知ってる人なんていなくて。 話しかけにいけなくて私は仕方なく机に座って待っていた。
何となく机に座っていると「この子たちのグループは、そのうちクラスの中心グループになるのかな」とか「あの子とあの子は絶対部活も同じになるんだろうなぁ」、「あのグループだったら、お昼とか一緒に食べようって声かけようかな」とか。
自分のクラスの状況が何となくわかる。
──けど、私は自分から行こうとしなかった。 そして誰も私の元には来なかった。
*
昼休み、隣のクラスを覗いて響姫の姿を探すと早くも響姫の机の周りにはたくさんの女の子がいて一緒に笑っている姿があった。
もちろん響姫に悪気があるわけないって分かっていたけど許せないなぁって思ってる自分もいて。
「あっ! たま……」
響姫の様子を私が伺っていることに気づいたのか、響姫が私の名前を呼んで駆け寄ってきたのは分かったけれど。 私はそのままその場から逃げ出してしまった。
裏切られたとか。
……響姫もきっと私と同じで、クラスで友達なんか作んないだろう、作れないだろうって勝手に仲間にしてもしかしたら少し見下してた。
──最低だ。
そう思ったら、響姫に合わせる顔がなくなってしまった。
**
- Re: 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~ ( No.33 )
- 日時: 2018/01/06 21:24
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
■:第6話 「自分の中での異変」
朝──。
目が覚めて、体をゆっくりと起こすと首の辺りがズキズキと痛んだ。
……昨日枕から首が落っこちて、寝違えたかなぁと思いつつ首を摩った。
摩ったところで何となく痛みが和らいだような感覚に陥るだけで本当は和らいでなんかいない。
こうしていても仕方がないので、制服に腕を通した。
今日も朝の待ち合わせ場所で響姫と会うのは嫌だなぁ……すごく憂鬱だ。
会いたくない。話したくない。ずるい。……──羨ましい。
様々な思いが、私の中に走った。
*
「あっ! 環、昨日なんで昼休みどっか行っちゃったのー? 私に会いに来てくれたんでしょー?」
いつも──というか、今まで気にならなかった、響姫の1つ1つの言葉。
今も「……来てくれた」という言い方がすごく腹が立った。
「……別に。勘違いやめてよ」
こんな言い方したら、私から遠い存在になりつつある響姫がもっともっと私の上を行ってしまう。そう思うのに、キツい言い方になってしまった。
「ごめん」
ほら、響姫は私の言葉を素直に受け取ってすごい申し訳なさそうに俯いている。
本当に酷いことをしてしまったんだ、私は。
ぎこちない距離感が生まれる。
「あっ、響姫ー! おはよー」
「おはよ」
私達の後ろから、2人の子がそう押しかけてきた。
もしかして昨日の昼休み、響姫の机にいた子達の一部かな。
「行こ!」
響姫はその子達にグイグイと腕を引っ張られていく。
──後ろをちらちらと振り返る響姫から私は目を背けて、歩いた。
……この日から私は、響姫の教室に行くことをやめてしまった。
そして響姫も私の教室に来ることはなかった。
──「朝、別々に行こっか」
そう響姫へ私からメッセージを送るのも時間があまり経たないうちだった。
どうして?とか、なんで?とか聞かれた時のために私も言い訳をあれこれ考えていたけど、それは必要もなく『わかった』と一言、響姫から返ってきた時は自分でも驚くくらい私は悲しくなんてなかった。
ただ、ズキズキとたまに首が痛む。
それどころか手首も痛む。 急に痛みが走るからついていけない。
家だろうが授業中だろうがお構いなしに……痛みは唐突にやってくるのだ。
傍から見たら、友達なしの私は惨めだろうか。
そう考えると人と目を合わせることが怖くなった。
──居場所がなくなっていった。
**
- Re: 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~ ( No.34 )
- 日時: 2020/12/31 09:31
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
■:第7話「心にまで及ぼす影響」
「……ちょっと、環このテストの結果何なのよ?」
お母さんが私のテスト結果を見て、かなり怒っている。
まさか中学に入学早々、こんなことになるとは……。 私だって、びっくりだ。
「別に。 そのままじゃん」
携帯をいじりながら、私はお母さんにそう言った。
「ちょっと何よそれ。私は環を思って……」
「もうそういうのうんざりなの! そうやって、何でもかんでも自分勝手な思いを私とかお父さんに押しつけるから……耐えられなくなって、お父さんはうちを出ていったんじゃないの?」
「お父さんはお母さんの考えを分かってくれなかったから……。私は環のために──」
「私のためとか、嘘ばっか言わないでよ!」
むしゃくしゃしていた私は、ソファにあったリモコンを思いきり叩きつけて家をでた。
お母さんが何か喚いていたように聞こえたけど、そんなの無視した。
我慢はもうこりごりだ──。
どうやら、むしゃくしゃしていたり普段以上に感情的になっていると周りが全く見えなくなるというのは本当の話らしく、普段なら必ず左右確認をしてから渡る場所をそのまま通ってしまった。
そうしたらもう……横から来ているトラックに気づけず、私はそのまま轢かれた。
……気がついたら、見慣れない妙に白い天井が目に入って、右側に顔をぐちゃぐちゃにしたお母さんがいた。
交通事故で命は大丈夫だったものの、怪我をした私はしばらく学校を休むことになった。
行きづらい、と感じていた私にとっては好都合でもあり、ただ身の回りのことをやってくれているお母さんがどうしようもなく目障りで、邪魔だった。
それでも尚、偶然というのは度重なる。
──たった1つの偶然が複数の偶然を呼び寄せて、偶然ではなくなってしまうこと。
気まぐれで、松葉杖をつきながら病院内を歩いていたら、自動販売機を見つけた。
フルーツ牛乳はイチゴオレもあった中で私は珈琲牛乳をチョイスした。
そこから完全に虜だ。
もしあの時事故にあってなかったら、珈琲牛乳に出会うことってなかったかもしれない。
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- Re: 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~ ( No.35 )
- 日時: 2018/01/26 18:58
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
■:第8話 「私にとっての珈琲牛乳」
珈琲牛乳との出会いは事故があってから、私への唯一の幸せだったかもしれない。
じんわり広がるうっとうしくない甘さの中に潜むかのようにほろ苦さがあとを追う。
口の中で起こる、そのかけ合いが面白いのだ。
退院してから、私はしばらく学校へは行かなくなった──所謂不登校だ。
中3になってから久しぶりに行った学校は、クラスも変わっていていつの間にか1年生の頃に担任だった先生は移動で別の学校になっていた。
響姫とはまた別のクラスだった。……けれど今の私にとっては都合がよかった。
友達は響姫だけかもしれないけれど、顔も合わせたくなかったから。
学校から家への帰り道。
私はコンビニで珈琲牛乳を買うようになった。
自分だけが知っている、珈琲牛乳の美味しさ──誰かと、響姫と一緒だったらもっと美味しく感じるのかもしれない。でも現状で満足している。だから、試す必要はない。
その夜、 私はお母さんに「最後のわがまま」と言って新しく別の場所の高校を受験すると言った。
全部自力で。
──誰も知り合いのいない環境で、新しく学校生活を送ろうと決意した。
新しく通う高校が決まった時、お母さんも仕事が忙しくなり家に帰ってくる日数が減った。
代わりに、おじいちゃんとおばあちゃんが私の面倒を見てくれることになった。
……中3の春休み、私は関節の痛みに耐えられずおばあちゃんと一緒に病院へ行ったところ、言いづらいという表情を浮かべながら医師が私に「入院の手続きを」と言った。
私は何もその時の記憶がない。
ただ横に座ってたおばあちゃんが、慌ててお母さんに電話をしていたということだけ覚えている。
私が入院し始めてから、1週間くらい経ったある日お母さんは来た。
「またすぐ、別のところに行かなくちゃいけないから」
とお母さんは軽く私に笑ってから、病室を出ていった。
この頃からお母さんは完全に私へ目を向けなくなった。
こんな面倒くさい娘なんて、いらないと思ったのか……それとも実はどこかで悩んでいたのか。
この先、いつ会えるだろう。
もし会った時は退院した時だろうか……──そんな私の気持ちを読みとったのか、それ以降私とお母さんが顔を合わせることはなくなった。
誰もいない病室で、電気も消えて真っ暗の中私は1人で泣いた。
……泣いたって一言で言うとすごく軽く聞こえる。
自分の泣き顔、私は嫌いだ。
だから見なくて済むように暗いところで……誰も来ないこの時間に、私はほぼ日課状態で泣いた。
──結局描いていた高校生活は、一歩出遅れたことで全てが狂った。
教室に行くことさえ、もう嫌になった。
気がつけば、自然と誰もいない屋上で珈琲牛乳を飲む毎日を送っていた。
1人だった私のところに、君が来たときは驚きすぎて心臓を吐きそうになった。
……もちろん、そんなのが伝わらないように平然を装っていたけれど。
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