コメディ・ライト小説(新)

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君との出会いは本屋さん。
日時: 2019/08/16 22:14
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
参照: 2018冬大会金賞有り難うございます!

12/16、第1編完結。
18/04/09より、第2編始動!



こんにちはこんばんは、初めましての方は初めまして、ましゅです。
開いていただきありがとうございます(*ノωノ)



****Episode****


**character…>>1


○第1章○(出会い編)
00.>>4 01.>>5 02.>>6 03.>>7 04.>>8 05.>>10
06.>>11 07.>>13 08.>>18 09.>>23 10.>>26 11.>>29

○第2章○(テスト編)
12.>>30 13.>>34 14.>>37 15.>>39 16.>>42 17.>>45
18.>>46 19.>>47 20.>>48 21.>>52 22.>>54 23.>>57

○第3章○(夏祭り編)
24.>>61 25.>>62 26.>>66 27.>>69 28.>>73 29.>>75 30.>>76 31.>>80 32.>>81 33.>>93 34.>>95 35.>>102 36.>>107 37.>>108 38.>>112 39.>>113 40.>>115 41.>>118 42.>>121 43.>>126

○第4章○(悠夜の過去・佐野編)
44.>>128 45.>>130 46.>>134 47.>>135 48.>>139 49.>>140 50.>>141 51.>>144 52.>>146 53.>>149 54.>>150 55.>>151 56.>>154 57.>>155 58.>>160 59.>>163 60.>>165 61.>>166 62.>>167 63.>>168 64.>>170

○第5章○(誕生日編)
65.>>171 66.>>174 67.>>177 68.>>179 69.>>180 70.>>181 71.>>182 72.>>184 73.>>185 74.>>187
75.>>188 76.>>190 77.>>191 78.>>192

○第6章○(初詣編)
79.>>197 80.>>198 81.>>199 82.>>200 83.>>202 84.>>203 85.>>207 86.>>208

○第7章○(バレンタインデー編)
87.>>213 88.>>214 89.>>215 90.>>216

○第8章○(新学期編)
91.>>217



**番外編1.>>99
沙彩とひかりの陸上部時代の話です。

**番外編2. >>156
夏音と沙彩の出会い・夏音視点。7話と比較して読んでいただけたら…。


**キャラクター1人1人の設定…
沙彩.>>83 夏音.>>85 千春.>>88 ひかり.>>89 悠夜.>>119 俊.>>125 香澄.>>138


***************




**お客様**

*四季様
*フウ様
*てるてる522様
*サイバー様
*群青パセリ様

**********







Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.163 )
日時: 2017/10/21 12:27
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

59.「だけ」じゃない。



「……なんか落ち着いた。ありがと…」
「やけに素直だな」
「………」

 自分でお礼を言ってから気付いた。そういえば何だか素直になっている。
 ……そんな考え事はさておき。

「佐野先生のことが嫌いなんだろ?だったら面と向かって言えば?」
「はぁ!?でも……」
「そんなんじゃいつまで経っても変わらないし。お前割とはっきり言う性格なんだから、そのくらい言えるだろ」

悠夜の言うとおりなのだが、どうしても沙彩にはその勇気がなかった。……大人に歯向かうというか、非常識みたいじゃん、という心が邪魔して。

「そんなの非常識みたいで嫌なのか?」

 沙彩が俯いていると、その心中を察したのか悠夜が問いかけてきた。沙彩は小さく小さく、こくりと頷く。


「……そもそも不登校って時点で常識とは違うんだよ。後先どうなっても良いから自分の意見ぶつけて来いよ。桃瀬とか有川とか、俊だって言ってるぞ?お前と一緒に学校行きたいってな」

 俺もそう思ってるよ、と少し優しい声で悠夜が言った。どこか、香澄と重ねているのだろうか。

「………った」
「?」
「分かった……言ってくる」

 行って、言う。

 自分は確かに、この悠夜と夏音と千春と俊とひかりと……そんな人たちの優しさや、皆の温かさを実感したはずだ。そして、自分が一度学校に来ようという気まで持たせたのだ。
 その人たちの期待や、希望を……何でもかんでも突き放すのは違う。

 沙彩は固く決心して、教室へと戻っていった。



「佐野先生。少しお話良いですか」


○*



 沙彩は佐野を図書室へと呼び出した。そこにもう悠夜の姿はない。それに人の気配もないことから、誰ものぞきとかもしていないはず。
 2人きりにさせてくれたのは感謝するべきことだろう。言いたいことを何も気にせずに言えるのだから。

「私が不登校になって1年ですね」

 最初は他愛もない話で始める。なるべくここに感情は出さないようにしたのだが、思わず怒ったような感じが出てしまった。……まあ実際怒っているのだし、仕方ないと思い沙彩は佐野の目を真っ直ぐと見た。


「貴女はどうして私に学校に来い学校に来いとしつこく言うんですか?」


 精一杯の怒りを込めて佐野に放つ。

「そ、それは……貴女に学校に来て欲しいからで……」
「嘘よ!貴女は私の両親が亡くなったって言う事情を知りながら一人にさせてくれなかったでしょ!?1週間も休んだのは悪いと思ってるけど、それでも中1があんな辛い思いをしてすぐに立ち直れると思ってんの!!?」

 沙彩は滅多に出さない金切り声を上げた。その声には半分涙が混ざっている。
 佐野はその声に驚愕していた。普段そんな声なんて出さないから。彼女がそんなに思い詰めていたなんて知らなかったから――。

「待ってください、私にも話させてください」
「………っ」

 佐野が珍しく真剣に言ったから、沙彩は睨み付けながらも一旦口を閉じる。

「そのことは本当にごめんなさい……。今更謝っても許されないでしょうが、私も一時の感情でひどいことを言ってしまったことを申し訳なく思っ――」
「そうね、今更許されないわ」

 佐野の言葉にかぶせて沙彩が突き放すように言う。何だか不思議だ、こんなに言葉が出てくるなんて。

「別に私は多少は嫌ですがそこまで学校のことは嫌いじゃないですし、夏音や千春のことは本当に良い友達だと思っています。でも……!貴女が居るから学校に行きたくないんですよっ!」

 いつもは静かな図書室に沙彩の悲痛な叫びが響いた。もう休み時間に入っていたのだろうか、佐野と沙彩の動向が気になった夏音が遠くから見ていることに沙彩が気付く。

「……夏音…」

 ぽつりと呟く。知り合いの居る前では何だか感情を出しにくいのだが、夏音なら事情を知っているのだから良いだろう。

「……もう嫌……私だけこんな思い…………」

 その時、沙彩はふとさっきのことを思い出す。
 
 何か辛い思いをしているのは、自分だけじゃないこと――悠夜だって同じ思いをしていて、ひかりにも父親が居ないんだ。香澄だって自殺しようと思うほど追い詰められたことがあって。


 ――私「だけ」じゃないんだ。


「………あ……」

 さっきまで頑張って止めていた涙が、目から一粒こぼれる。

 突然沙彩に変化が起き、佐野はただただ戸惑っていた。

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.164 )
日時: 2017/10/21 12:29
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

久しぶりの更新でした。58話が大変短かったのに2週間3週間と空いてしまい申し訳ないです<(_ _)>
今回はその分長めです。

……もうなんか終盤が近づいてきた気がしますね…笑

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.165 )
日時: 2017/10/29 10:41
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

60.謝罪の言葉。



「……月島さん…?」

 今まで必死に堪えていた涙が次々とこぼれてくる。しばらくして佐野が問いかける声を聞いて、やっと何度拭っても止まらなかった涙が止まった。
 
「沙彩ちゃん!」

 沙彩が突然泣き出したのを見て夏音も耐えきれなくなったのか、思わず図書室に飛び込んでくる。

「……私は……今でも貴女のことが憎くてたまりません」

 声を絞り出すように沙彩が言う。佐野は今までの話から本当に憎いと思っていることを読み取っているのか、辛そうに目を伏せた。
 どうせ、今更許せない――とでも言うんだろうと思って。

 だが、沙彩の言葉は違っていた。

「…けど、すみませんでした」

 え、と。その場にいる佐野、夏音が目を見開く。急に出た謝罪発言に2人は戸惑いを隠せなかった。

「……私が不登校になったときから貴女が私に対して申し訳ない気持ちを持っていたかは知りませんが……。全く気にしてないと思っていたから……少しくらいは考えて居るんだって……だから、良かった」
「月島さん……」

 悠夜にも言われたが、沙彩は今日はやけに自分に素直だ。思ったことをはっきり言えるのは、いったい誰のおかげなんだろうか。

「貴女のことは嫌いですが、それでも私は…そんな貴女が居る学校にも来ようって……思えるようになったから……今、決めました」
「き、嫌い……」

 ズバッと言われて思わず佐野は復唱してしまうが、沙彩が言いたいことをまとめている様子を見て真剣な顔になる。


「これから数日間学校に行きます」
 

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.166 )
日時: 2017/11/09 19:33
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

61.心からの、純粋な…。



 いつもと違う服装、いつもと違う空気。沙彩は珍しい感覚に包まれていた。
 ――ここは学校。2-3の教室。

 結局昨日はあの後帰ってしまった。「数日間学校に行く」という約束を交わして。

「1時間目って数学?」

 沙彩は彼女の席に呼んだ夏音に問う。

「そーだよ~」

 なんだか気だるそうに言う彼女の顔はいつもより笑顔で、嬉しそう。……というか、ニヤニヤしている。

「なによ…?」
「いやぁ、沙彩ちゃんが学校に来ているなんて信じられなくてねー」
「これまでの経緯知ってくるくせに。わざとからかうようなこと言わないでよ」

 
 まだ沙彩は佐野を許すつもりはないし今でも苛々することはあるのだが、少しだけ見直した。両親を亡くしたことは本当に悲しかったが、少しでも佐野が申し訳ないという気持ちがあるのならば。もちろん完全に許すに値することではない。あくまでも。
 ……するとその時。

「……あ、月島……来てたんだな」
「うん」

 悠夜が入ってきた。思えば悠夜には助けられたことがたくさんあった。結局連れ戻そうと頑張ってくれたのは彼、悠夜だった。夏音だって手助けは沢山してくれたが、今までなら絶対に「連れ戻そう」とはしなかったはず。千春と知り合ったのも悠夜のおかげ、香澄と知り合えたのも悠夜のおかげ。

 ……思えば助けられてばかりだった。


「あのさ」


 気付くと言葉が出ていた。それに後悔はない。


「ありがと」


 案の定彼は不思議な顔をしていた。感謝されるようなことは何もしていない、と言うような顔で。けれど別に知らなくても良いからと思いそれ以上は何も言わないで居ると、彼は何となく察したのか「どういたしまして」と小声を言っていた。
 正義感の強い彼は気遣いが上手い。その気遣いにもどれだけ助かったことか。

「ねぇ、今日……皆で本屋行こうよ」

 沙彩は少しだけ微笑んで夏音と悠夜に言った。それは心からの、純粋な笑顔だったのかもしれない――。

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.167 )
日時: 2017/11/19 10:30
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

62.沢山の友達に恵まれて。



「こことここの辺の長さが同じになるので、三角形の合同条件は――」

 1時間目は数学――つまり佐野の授業。正直聞いていなくても多少の予習はしているからテストで点は取れるはずなのだが、少しくらい聞いておこう。

「……月島さん、何になるか分かりますか?」

 佐野が沙彩に呼びかけた。クラスの視線が沙彩に刺さる。……今まで学校に来てなかったのにこの内容が分かるのかという心配の目で見てきたけれど、そんなの全く心配しなくて良いのに、とため息混じりに答える。

「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」
「……正解です。では次行きますね」

 沙彩がこの内容を理解していることを分かるとさっさと次の内容に移っていった。わざわざ自分のために時間を割いてくれたのはありがたいけれど今までの数学の点数、忘れたのだろうか。少しくらいはありがたさを感じたが、マイナスに捉えるとやっぱりいらいらもある。

(叔母さんに教えて貰えるから余裕…)

 今のところ、数学は聞かなくても余裕そうだ。


○*


「沙彩ちゃんすごいね!私、ずっと授業聞いてるのに合同条件とか全く覚えてないや」
「千春は千春でやばいこと自覚してる?次の中間でもちゃんと350点は取りなよ」
「うっ……痛いところを……!」

 勉強の会話とか、テストの話題とか。何だか「学校」っぽくて少し嬉しいのは気のせいだろうか。

「沙彩ちゃん学校来んやな。陸上どうすんの?」
「陸上は………もうちょっと待って」
「……中3の大会には出れる?」
「さあね。今の陸上部が楽しいなら出られるんじゃない?」

 ひかりも沙彩が来ているという事実に素直に喜んでいるようだ。早速陸上部の話を持ち込んできた。
 正直あまり分からない。これから学校に来るかどうかがいまいち自分でも予測できない。……楽しければ、どうだっていいのだが。

「月島さん!学校、来てくれたんですね」
「なんか良かった」

 香澄が沙彩の机に寄って来て、俊も笑顔で声を掛ける。


 ……思えば自分にはこれだけの友達が居るんだ。沙彩自身のことを何よりも考えてくれる夏音を初めとして、自分は沢山の人たちと知り合えた。
 不登校で自分の心を閉ざしていたときからは考えられないほど。

「あ、……千春たちには言ってなかったけど今日本屋行く?」
「「行く!」」

 何人かの声が重なる。今日の本屋はいつもより楽しくなりそうだった。


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