コメディ・ライト小説(新)

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【オリキャラ募集中】砂の英雄【3-5更新】
日時: 2018/03/27 01:57
名前: 塩糖 (ID: D.48ZWS.)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=1040

 彼は、凡人である。彼は英雄ではない。
だが彼は、英雄を名乗ることとなった。
 そう名乗りたくなるほどに、世界は愛おしくなった。
たとえそれが、一時の――



*****
 はじめましての方、久しぶりという方、どうもこんにちわ。
塩糖えんとうという者です。今作品は、私が以前小説カキコで書いていた作品のキャラのリメイクです。故に、見覚えがあるかもしれませんね。
普段は複雑ファジーで書いていますが、たまには別の板でと思いこちらにさせて頂きました。
感想をもらえると有頂天になります。

世界観は、異能力学園ものです。基本一人称の小説となっております。
更新頻度は、こちらは不定期更新とさせていただきます。
 嘘です、実は途中から三人称になります。

2/13:まだ生きてます、腰は死んでる

*****
目次
・一話「その日彼は一般人であった」 -1 >>1 -2 >>2 -3 >>3 -4 >>4 -5 >>5
・二話「鉄をも呑む砂」 -1 >>6 -2 >>8 -3 >>11 -4 >>13 -5 >>14 -6 >>15 -7 >>16 -8 >>17
・三話「異能と能無し」-1 >>18 -2>>21 -3>>22 -4>>23 -5>>24

 まとめ読み用
・一話「その日彼は一般人であった」 >>1-5
・二話「鉄をも呑む砂」 >>6,>>8,>>11,>>13-17

*****
 お客様、感想返し
・四季様 >>7
   返 >>9
・流沢藍蓮様 >>10
     返 >>12
・織原姫奈様  >>19
     返 >>20

*****

【告知】
 現在、リク板にて砂の英雄オリキャラ募集をさせていただいております。
 もし投稿したいなーって方おりましたら是非。URLより飛べます。

Re: 砂の英雄【2-6更新 11/07】 ( No.15 )
日時: 2017/12/04 22:12
名前: 塩糖 (ID: quLGBrBH)
参照: http://ぎっくり腰は滅べ

「鉄をも呑む砂」-6



 質問はもはや必要ない、なにも返さぬその様子、立ちぶるまいが全てを自白しているのだから。
 だからこそ、佐藤は瞬き一つせずに彼女の一挙一動から目を離すことができない。片手で握りしめられた携帯からは佐藤を呼ぶ声が何度も響いている。

『――もしもし、佐藤雄太さん? あれ、おかしいな……』
「……ふふ、やっぱり医療関係ってのはブラックですね? 帰った人をわざわざ真似たってのに」 

 女医が、いや女医とは呼べぬ何かかがそこにいる。
 白衣はぐじゅぐじゅと音を立てて、その形を消し、また別の何かを成していく。白衣だけではない、髪は、皮膚は、骨格さえも変わっていく。
 佐藤はそこまでいってようやく、塩崎の言ったことを思い出し吐き気を催した。
 襲ってきたのは、こいつだ。
 あまりに恐ろしくなって、かけていた毛布を彼女に投げ被せることで視界から化け物を消した。

「逃げ、なきゃ」

 毛布の下でうめき声をあげているそれから少しでも離れたくて、ベッドから転びながら病室の扉に手を伸ばす。
 だが扉はいくら引いても開くことはない、鍵の捻りが潰されていた。
 
「逃がさないけど?」
「ッ!」

 毛布の塊から幾多もの刃が生えた。
 そして、ただの布切れとなった毛布は床へと零れ落ち隠していたものをさらけ出す。
 それが、人間であったのは救いと言っていいだろうか。あるいは見るも絶えない化け物が出てきてくれた方が佐藤にとってはうれしかったかもしれない。
 とはいえ、体中から鎌や包丁を生やしたものが人間と言っていいのかはわからないが。
 あまりの恐怖に、腰を抜かし情けない声を出す。その無様な姿を見て、彼女はひどく愉快そうに口角を吊り上げた。

「ふふふ……やっぱり君はいい顔してくれる。どうします、昨日の奴は来やしませんよ」
「あっ、あ……」
「――ほら、利き腕はどっちだったっけ?」
「…………あ?」

 女が片手をぶっきらぼうに上げ手のひらをこちらに向けた。
 そこから何か、黒いものが伸びて佐藤の肩に突き刺さる。それが彼女の背中から生えていた刃物、そう気が付くのは引き抜かれると同時に血が
噴き出してからであった。

「え、えっ、待て」

 反射的にそれから体を遠ざけようとして、体の一部だと思い出す。慌てて無事な方の手で傷口をふさごうとする。
 だが、左手が血濡れになるだけで、勢いは止まることを知らない。どんどんと彼の衣服を血で汚していく。
 血が流れればどうなるか、多分死ぬんだろう。なら止めなくちゃ。
 まとまらない考えでいくら動いても状況はよくならない、当たり前だ。
 そんなことばかりして、ついには血が抜けた影響か、意識がふらついてきた。
 
(駄目だ、死ぬのか、嫌だ、いやだ……けどどうしたらしいい?)
--菫コ縺ォ莉サ縺帙↑縲√♀蜑阪?蟇昴※繧九□縺代〒縺?>

 またあのノイズが佐藤の脳に響く、今までより一番大きく、一番雑音を含んでいて……不思議と受け入れることができた。
 それは、佐藤が簡単に意識を手放すことを望んでいる。何故かそれが最善かの様に思えて、しょうがない。

(あれ.....は)

 力なく倒れた佐藤は見る、自分のベッドの下に隠しておいたあの仮面を。
 ペストマスクもまた、レンズを怪し気に光らせ彼を見ていた。

--縺倥c縺ゅ?∵怙蛻昴〒譛?蠕後?螟芽コォ縺?

 次のノイズが響くと同時に、佐藤の体はまた重くなる。固い床に沈み込むような感覚だ。
 つられて瞼も重くなり、佐藤は意識を手放した……



――が、彼の体は起き上がった。
 肩から出る血も気にせず、うつむきながらも立ち上がった。
 続いて、彼の体の至る所から砂が噴き出す。腕から、目から、口から、砂が出ては床に零れ落ちる。

「……あ?」

 その光景を見て、女はひどく不愉快だと眉を吊り上げた。昨日の邪魔ものがいない、得物を存分に楽しめるステージだったというのに。
 大好きなケーキにハエが止まったような感覚、本当に憎たらしい。
 砂は一定量、佐藤の足元にたまると増加をやめた。そして砂が意思を持っているかのように動き始め、彼の体に纏わりつき形を成していく。
 背丈こそ変わらない、しかし佐藤の黒髪は色をすっかり抜かれつつもみるみると伸び、地についてしまいそうなほど垂れ下がってそれは彼の背中を覆い隠すには十分すぎる。
 変化の中で特筆すべきはもう一つ、
 
「なんだ、そこにいたんですか、というか何なんですかアナタ」
「……縺翫l縺?」

 そいつは、敵を目の前にして悠々とベッドの下にあった仮面をつけ、ようやくしゃべった。人と、獣が混じったような汚い声だが、理性自体は感じられる喋り方だった。
 だからこそ、耳と頭で無駄に捉えようとしてしまい不快感を増す要素となっていた。
 見るもの全てが醜悪だと断言するであろう、彼は――

「縺溘□縺ョ縲√°縺??縺、縺?」

 名前もない、怪物であった。

*****
前話 >>14
次話 >>16

Re: 砂の英雄【2-6更新 12/04】 ( No.16 )
日時: 2018/04/18 20:56
名前: 塩糖 (ID: dDbzX.2k)
参照: http://ぎっくり腰は滅べ

「鉄をも呑む砂」-7
 

 その怪物に対して彼女は、今すぐにでも串刺しにし、窓にでも放り投げてやりたい衝動にかられた。
 だが彼女はそれをグッと我慢し、彼の行動を許した。
 彼がマスクを拾い顔を隠す、そのためならば致し方ない。その理由は単純で、余りにもその顔が酷く、見るに堪えられなかったからだ。

「にしても、汚い顔ですね。眼はぽっかり空いてて耳もない、口なんて糸で縫った方がまだマシなほどズタボロ」
「縺ゥ縺?○髫?縺吶?∝ソ?ヲ√↑縺」
「おまけに声も駄目、好みから随分と離れてくれちゃいました」

 もはや興味なし、目の前の化け物は彼女の嗜虐心くすぐるものではなくなった。ならばこのやり取りにすら意味もなし。
彼に己の獲物が利かないのは彼女自身がよく知っていた、が獲物を横取りされて黙っているほど大人ではなかった。
 
「昨夜はどうも、不意打ちが得意な化け物さん」
「……縺?■縺ォ縺。縺ァ縺壹>縺カ繧薙≧縺セ縺上↑縺」縺溘↑」
「耳障りです、まずは彼の体から引きはがすとしましょう」

 そう言って、佐藤の肩を刺した時と同じようにもう一度刃を伸ばす。
 女は昨夜の出来事をよく覚えている、砂の体である彼に包丁は何も斬ることはなくただその体に飲み込まれていったことを。
 混乱する中一度だけ加えられた打撃を参考に、強固な腕を作り上げたがその隙を突かれ昏倒したことを。
 ……と言っても、砂の体を吹き飛ばし再生成する時間を稼ぐ程度だったが。

 今は違う。昨夜とは違い、化け物は佐藤の体を取り込んだ。
 その化け物への攻撃はともかく、核となっている佐藤は別、のはず。

「……? なんで」
「辟。鬧?□縺ェ縲∵里縺ォ陞阪¢縺……」
「っ、まさかアナタ!」

 心の臓、頭、いくら急所を狙っても何かを捉えたという感覚がない。それに対して女は首を傾げた。
 しばらくして、化け物は試しにとばかり自分の腕をもいでみせた。断面からはただ砂が零れ落ちるのみで、どこにも佐藤の体は見当たらない。
 その光景を見て察した女の体はたじろぎ、距離をとった。
 明らかに、そこは彼の砂に覆われていた腕が存在する場所でなにもない。つまりは、
 
「砂に、取り込んだもの全てを砂にするっていうの……!?」
「縺励g縺代>縺ョ縺倥°繧薙□」

 化け物は女性にゆっくりと近づき始めた。
 その手はきっと、友愛も情けも持たない。




 その光景をずっと佐藤は見ていた、見ていることしかできなかった。
 死体ばかりが積み重なり荒れ果てた荒野。
 そこに幾多の鎖で串刺しにされ、身動き一つ取れず空に流れる映像……視点の持ち主は病室の片隅に女性を追い詰めていた。

「――なあ、いい提案だとは思わないか?」

 化け物は死体の山に腰を下ろしてこちらに笑いかけていた。と言っても、鳥の顔のような仮面をしているのだから表情なんて読めないが。
 笑っているような声だが、佐藤には嗤っているようにも感じた。

「あぁ、そっか今は口も雁字搦めか。悪い悪い、けれどこの世界じゃ思うだけで喋れる。そうじゃなきゃ俺も喋れないしな」
「……こうか」
「そうそ、さてしっかりコミュニケーションがとれるようになった所でもう一度、契約の見直しと行こうか」

 ぱっと降り立ち、煽るように彼の周りをゆっくりと歩く化け物。
 その間も映像の中の女性の顔は恐怖に染まっていく。

「まず俺の正体だが──まあ気にしなくていい。
単に路頭に迷った大バカ者、年だけ食って擦れたもの。それでもお前の道を正してやるだけの力はある。
──これから碌な人生を歩まないはずな、お前を」

 鎖が一本、新たに佐藤の足に巻き付き軋む。
 歯を食いしばり、苦痛に耐える。

「お前にいい人生を歩ませてやる。その代わり俺たちはこれから多重人格、荒事は全部俺が担当する」

 そう言って映像を軽く叩いた。そこには反撃しようとして何度も殴打される女性の姿がある。
 どう見ても一方的、勝負にすらなっていない。
 言葉が投げかけられる度、鎖が出ては地面に縛り付けていく。

「そしてこの2日間、見たものは忘れるんだ。仮に変な奴らが接触してきても、お前が意識を失っているうちに俺が始末する」
「……始末?」
「殺す」

 ただそれだけ、何でもないようにしてまた死体の山に腰を下ろした。
 映像の中の視点主の手が女性の顔を掴み、取り込み始めた。掴んでいた手が流動する砂に戻り、顔を埋めていく。

「よ、よせ! 何も殺さなくても……」
「駄目だ、こいつは能力者だし、ほっといたらまた別の奴を狙う、悪だ。
いいかよく聞け佐藤雄太、お前の周りに今後変な奴が現れるかもしれないが、それらは全部いつの間にか消えてしまうんだ。不思議かもしれないが、特に気にせずお前は生きていく。普通に学校に通って、普通に就職して、特に面白みのない人生を送っていくんだ。
……なんとも、素晴らしい人生だろう?」

 既に佐藤の体は鎖だらけ、全てが彼を締め付け苦しめる。それは物質としての重さだけではない、彼の精神をも攻め立てているような気がした。
 ……諦めれば、条件を飲めば、この苦しみはなくなるのだろうか。
 目の前の化け物の素性は不明、自分を襲って来た者を殺すだけと言う彼の言葉……佐藤自身には危害を加えない。それは、メリットこそあれデメリットはあってないようなものではないか。
 
「──んな」

 確かに佐藤雄太の感性、性格は一般人そのものだ。
 人なんて殺せないし、生まれが特別なわけでもない。偶々通り魔に、化け物に目を付けられてしまった、それだけだ。

「……ふざけんな」

 だが化け物は読み違えたことが一つ、忘れてしまっていたことが一つある。
 佐藤雄太は、負けず嫌いであったこと。
 化け物は、演技が下手だったこと。どうしてか、化け物の提案は全て懇願に聞こえていた。

「そうやって如何にも人のことをわかってるふりして、全部自分に向けた言葉なんだろう」

 鎖が一つ、解けて消える。
 佐藤の言葉が、間違いではないことを示していた。

「路頭に迷った大馬鹿だっていったな、そんな奴の言うことを何で聞かなきゃならない。
普通の人生を送らせる、違う。お前が歩きかった人生をやり直したいだけだ。
全部忘れて素敵な人生? 人が殺されるのを見て見ぬふりして……辿り着くのは地獄だけだろ」

 俺みたいにならないでくれ。
 頼むから、普通の人生を送ってくれ。これから起きることには目隠してくれ。

 真っ平、ごめんだった。
 金属を捻じ曲げて、しっかりと自分の足で立つ。

「――俺は、お前じゃない!」

「お前は……いや、いい」

 死体の山に座ったままだった化け物は、何か言おうとしてそれを打ち消した。
 その後、何か思いついたように尋ねる。

「そう言えば、この仮面」

 化け物は、己がつけているペストマスクを指さす。
 何故か、仮面は少し薄汚れているように見えた。佐藤が昨日もらったものよりも古びていて、アンティークとしての価値がありそうだと言われれば納得できるほどに。

「拾ったのか?」
「? いや、先生からもらったんだけど」
「……そう、か」
  
 化け物はペストマスクを撫でて、その言葉をかみしめているように感じた。
 なにか、彼の琴線に触れるようなことでもあったのだろうか。
 しばらく仮面を撫でていた彼は、急に覇気を失い手を力なく垂れ下げる。

「そうか、そういうことか。そうだな、最初から違ったじゃないか」
「……おい?」
「いや、なに。勘違いしてたなって話しだ。確かに、俺はお前じゃないみたいだ……悪かった」

 彼はゆっくりと立ち上がり、頭を下げた。余りの態度の変わりように、佐藤は困惑するのみだ。
 そのうち、体が浮上し始めていることに気が付いた。化け物はそれを見上げて満足げな声を出す。

「悪いがしばらくここに住む、能力は使うが……体の自由は返すよ」
「……は、住む? ふざけんなでて――」

 言い切る前に、意識は覚醒し佐藤は再び現実の世界に戻っていった。
化け物はそれを無事に見届けた後、静かに姿を消した。



*****
前話 >>15
次話 >>17

4/18 修正済み

2-8 ( No.17 )
日時: 2018/05/20 01:29
名前: 塩糖 (ID: 2rTFGput)

「鉄をも呑む砂」-8


 現実世界に戻って佐藤が一番にしたことと言えば、自身の腕に取り込みかけていた女性を解放することであった。
 しかし、砂になっている自分の腕を操作の仕方がわからず、とりあえずぶんぶんと腕を振る荒っぽい方法とってしまう。その勢いで床に崩れ落ちた女、どうやら意識がない。

「縺翫?√♀縺?縲?襍キ縺阪m窶ヲ窶ヲ縺セ縺輔°豁サ繧薙〒≪お、おい! 起きろ……まさか死んで≫」
--いや、生きてるよ
「縺昴≧縺ェ縺ョ? 窶ヲ窶ヲ縺」縺ヲ縲√%縺ョ螢ー≪そうなの? ……って、この声≫」
--どうも、心の中から語り掛けてる。それと喋れないのは当たり前、なにせ発声器官がぼろぼろに崩れてる

 肩を何度か揺さぶっていると、頭の中に声が響き慌てて辺りを見回す佐藤。しかしどうやら、声の主は先ほどまで会話していた怪物のようである。そう判断すると目つきが少し、悪くなった。
 それと同時に、自分がこの世のものとは思えない声を発していることに気が付き、改めて自分が異形のモノになったことを思い知った。
 その後、確かに女性は呼吸していることを確認し、安堵するとともにベッドに腰かける。
 その間ずっと、仮面をつけているため視界が悪くてしょうがない。
 ……目の辺りも崩れているらしいので、仮面を外したところで改善するかは不明だが。

--まあなんとかなるだろ
「(不便すぎる)縺ァ縲√%繧後°繧峨←縺?☆繧九°窶ヲ窶ヲ≪で、これからどうするか……≫」
--早急に対処しないと、電話が切れて不審に思った両親やあの探偵ボーイもやってくるぞ? 駄目もとで女の体を吸収し証拠隠滅を図ることを提案する
「蜊エ荳銀?ヲ窶ヲ縺昴≧縺?繧医↑縲∽ココ縺梧擂繧九s縺?縺九i莉翫?縺?■縺ォ縺ェ繧薙→縺九@縺ェ縺阪c縲ゅ∴縺医→縲∵オ∫浹縺ォ莠コ荳?莠コ髫?縺吶?縺ッ髮」縺励>縺苓・イ縺」縺ヲ縺阪◆縺薙→縺ッ譏弱°縺吶→縺励※縲∬?蜉帙?髫?縺励※窶ヲ窶ヲ≪却下……そうだよな、人が来るんだから今のうちになんとかしなきゃ。ええと、流石に人一人隠すのは難しいし襲ってきたことは明かすとして、能力は隠して……≫」
--ついでに肩にできた穴も隠さないとな。いや完全に溶かしきる前でよかった、溶かすのをやめて変身前の体に全部戻しておいた。だから今変身を解けば、砂で埋めた所がなくなって元通りに血がドバドバでるぞ♪
「繧薙↑讌ス縺励£縺ォ險?繧上↑縺?〒縺上l繧九°≪そんな楽しげに言わないでくれるか≫」
--あぁそうだ、一々口に出さなくても心で考えれば会話は可能だぞ
(あぁ、こうか?)
--そうそー

 異常事態だというのに考えが回る、それはきっと悪態をつける話し相手がいるからであろうか。不思議とこの人物との会話は進む。
 とりあえず早急に解決すべきなのは、本体の肩からの出血、そしてこの女の処理である。

(じゃあ如何にも相打ちになったかのような倒れ方をしてみよう、皆が来たら変身を解いて……危ないけどここ病院だしなんとかなるだろ、応答は気絶したフリをしてやりすごす)
--いいね、入院中に襲われた中学生が果敢にも戦い、通り魔と相打つ。連日ニュースは大騒ぎだ、きっとお前は今の報道以上に詮索されるだろうさ
(けど、これ以上どうしろって……)
--やるべきことは交渉だ、病院の中に不審者、それも通り魔が入り込んだなんて知られたら一大事だ。お偉いさん呼び出してそれをチラつかせな
(あっちも大事にしたくないから隠せっ、てか)

 とんでもないことを言い出した化け物に思わず、今は融けている目をぎょっとさせる。
 交渉も何も、ただの中学生にそんなことが出来るはずもない。
 だが……そう考えていると佐藤に一つ、あまり使いたくはない手が閃く。

(塩崎、アイツは口の上手さだけはある。あいつを味方に引き込めれば……けど)
--探偵少年はごまかしが嫌いかい?
(いや、それが被害者のためになる、そう受け取ればアイツはそうなるよう行動するはず。だけどそのためには、アイツにだけは真相を教える必要があるだろ)

 全てを知るのは探偵のみ、塩崎が好む状況だ。だが今は最悪が過ぎるというもので、そもそも彼は化け物だのという類は本来信じない気質である。
 そして長年の付き合いである佐藤が言ったとしても「証拠は?」の一言で終わるだろうことを理解している。
 つまり、彼に信じてもらうためには実際に、その目で見てもらうほかない。

--見られたくないのか、怪物としての姿を
(……それも半分、けどもう一つある。お前だって、さっきまでは俺にそうしようとしてたじゃないか)
--あぁ、そういうことか? お優しいことで、探偵が能力者だらけの世界に足を踏み入れさせないように、か
(そうだ、いくらアイツでも流石に危なすぎる。お前みたいな能力を持った奴に憑りつかれたわけでもな……待て? おいおま、アンタ、君……うーん)

 塩崎が能力を知れば、好奇心旺盛な彼のことだ、きっと能力者についても調べ始めるだろう。そうしていくうちに、どうして彼がこの女のような奴に襲われないと言えるのだろうか。
 佐藤は今、砂の体があるからよいとして、塩崎にそんなものはない。佐藤自身、彼がしぶとい人間だというのは知っている。
 知っているが、流石に危険すぎる。
 関わってもいない者を無理やり引きずる訳には、そう考えた佐藤、途中ある疑問が出たので尋ねてみることにした。
 ……が、そもそも彼の名前すら知らなかったことに気が付き、呼び方に四苦八苦する。

(……なぁ、お前の名前はなんていうんだ?)
--そこそこ乱暴な呼び方に落ち着いたな? まぁいい。それで、俺の名前か……そうだな、通りすがりの化け物と自称したことはあったな
(じゃあ化け物って呼ぶぞ)
--流石にそりゃあないだろ。わかったわかった、ペストって呼べ
(今三秒くらいで考えなかったかそれ)

 それは、今着けているマスクが生み出される原因である伝染病だ。到底、人名に使われるものではない。
 こちらも冗談で怪物呼びをしようとしたのに、相手側から提示されると引け目を感じてしまう。
 ついつい、彼が隠したがってる本名の方に気がとられる。呼び名などこの際何でもよいというのに。

--で、わざわざこのペストさんに質問とは一体全体なんなのさ
(結局それでいくのか、ええとまずこの砂の体はお前の能力なのか?)
--ああそうさ、能力名は「イオーガニクス怪物フリーカー」、体全てを砂に溶かすだけじゃなく、何でも吸収していく能力さ。
……今はアンタを取り憑いて、飲み込まないようにしてるからだいぶ制限かかってるが
(いおーが……と、とにかく! じゃあ昨日通り魔を倒したのもお前なんだな? それで、お前が何でか俺に憑りついたのは、これから先変な奴が出てくるかもしれなくて、そのせいで俺が大変な目に合うからだったな?)
--んー、まあ概ねそうだな
(で、なんで変な奴は俺のところに来る可能性が高いんだ)

 化け物改め、ペストのことだ。どうせ碌な意味では無いのだろうと中学1年生は翻訳を放棄した。
 その辺にあったシーツで女をぐるぐる巻きにしながら佐藤は尋ねる。
 その問いに、ペストはしばらく間をおいてから間が抜けた声を出す。そうか、そうであった。まだ面と向かっては伝えていない、むしろ察することができる方がおかしかった。だからこそちゃんと言わねばなるまい。

--……あーそうか? そういうことになるよな、うん。えーとな、驚かずに聞いてくれればいいんだが
(?)
--佐藤雄太、貴方は悲運なことに能力者である
(……は?)
--そして、能力者として目覚めた奴らは惹かれあうようになる。決してこれからの道のりは楽じゃないぞ? 

 呆然としている佐藤を放って、病室の外は少し騒がしくなってきた。
 それに気が付き時間がないことを悟ると、彼はとにかく今はやるしかないと扉に向かうことを選んだ。

--さあこっからが戦いの始まりだ、気合入れなジンジャーボーイ!
(どういう呼び方だそれ……)

 ペストはひどく、楽しそうに叫んだ。


第二話「鉄をも呑む砂」-完

*****
前話 >>16
第三話「異能と能無し」 >>18

Re: 砂の英雄【2-8更新 12/17】 ( No.18 )
日時: 2018/04/18 21:12
名前: 塩糖 (ID: dDbzX.2k)

第三話「異能と能無し」

 崩れ落ちる夢を見た、この身に走る感情はそれが所詮は偽りであったことを示していた。

『新しい仲間が出来ました、皆さん拍手』

 今にして思えば、全てがおかしかったんだろう。なのにあの時の愚かな自分は、その全てを信じた。
 子供でさえ、もう少し疑うだろうに。

『◆◎〇□君、今日は最初のお仕事だけど大丈夫? 相棒として彼を入れておいてあげたから』
 
 そう言って紹介された彼は、完璧な笑顔で手を差し出してきた。握手をしようとしていたのだろう。
 不意に、崩壊を速めるほどの憎悪が走る。

『よろしく、僕の名前は』

 その先は聞きたくない、夢はひび割れて時を止めた。





 相変わらず、最悪の目覚めだ。そんな気持ちで佐藤雄太の朝は始まった。目を擦ってベッドから起きて身支度をする。
 パジャマを脱いで、白いワイシャツと黒いズボン。学ランはもう着る時期ではないので棚の中だ。そのまま学生カバンの中身を確認して、筆箱など大事なものが入っていることを確認する。これでひとまずの支度は完了だ。

--おいおい、仮面を忘れていくなよ?
(……わざと落とし物ボックスに突っ込んでやろうか)
--それは駄目だなぁ、格好良さに引く手数多、大混雑を引き落とすぞ
(その自信はどっからくるんだか)

 頭に響く声が、枕元の近くに置いてあった仮面を持っていくように言う。その声としばしどうでもいい会話をして、ため息一つのあとにしょうがないとペストマスクを巾着袋にいれた。
 勝手に佐藤の心の中に住み着いた謎の存在、ペストはそのマスクをとても大事にしていた。話を聞くに、彼も昔同じようなものを所持していたらしい。そして彼曰く、能力の制御をするために必要だとかなんとか。
 学校にこんなものを持ってきているなんて知られたらなんて思われるか、と考えたが背に腹は代えられない。

--さてさて、本当に学校に行くんだな? 男児に二言はないな?
(……何言ってんだ? お前が行くべきだって言ったんだろ)

 そう、登校。佐藤はあの事件の後、常人では考えられないレベルで回復。無事退院し、今日が学校へと復帰する日であったのだ。
 退院の際、病院側からその回復力の高さが怪しまれてはいたが……院長がかしこい人でよかったとは塩崎探偵の言葉である。
 佐藤は両親と軽い会話をし、朝ご飯を腹に入れるとさっさと家を出た。地味に寝坊気味だったのだ。
 まだ朝だというのに少し暑さを感じ、夏であるということを再確認しながらも歩きながら音無き会話を続ける。

--いや、俺はてっきり転校してって話だと思っててな。予測するに、今のままだとどうでもいいやっかみとか面倒ごとがあるぞ
(そりゃあるかもしれないけどさ、それこそ引っ越ししてもそんな事あるだろうし。酷いかどうかなんて見てから決めればいいだけだろ)
--それはいい考えだ、他人の言葉に流されてそのままってのは嫌か。大事だぞ
(そりゃ、お前の体験からか)
--……まあそうだな、心が弱っているときにかかってくる言葉で信用しちゃいけないのってわかるか?
(ん、信用できない……なんだ?)
--単純、励ましの言葉の振りをした甘やかしの声さ。水よ低きに流れろーってな

 意外だな、と佐藤は思った。自分だって親友が落ち込んでいたりして、そいつがいつも頑張っているような人であれば「たまには休んでも」と甘やかしそうなものなのだが。
 その気持ちを読み取ったのか、ペストは続ける。

--違うのさ、信用できない奴の方の言葉の真意は。少し休めなんてもんじゃない、永遠(……)にへこんでてくれっていう願いが入っている
(はぁ? それって一体どういうことだよ)
--傷心の奴ってのは操りやすい、つまり外側だけ回復させて内側は依然としてボロボロに、ついでに甘やかした自分に依存させてお人形に、それを狙ってるのさ
(……)

 天気がこんなにも良いというのに、曇天のような気持ちになった。
 言い換えれば洗脳、そしてその言葉のトーンから佐藤はペストが何を見たのか、何をされたのか少し想像がついてしまい吐き気すらした。佐藤が何度も見た夢の記憶では彼は明らかに弱っていて、つまりは……

(なあ、お前ってもしかして――)
「おはよう佐藤くん、今日もいい天気ですね」
「……おはよう、朝から待ち伏せとはいいご趣味だな塩崎」
「君が提示した対価じゃないか、私はそれを享受してるに過ぎません」
--ははっ、相変わらず強欲な探偵だなこいつは
(一渡したら五を要求する、探偵より犯罪者の方が向いてそうだ)
 
 ペストに質問しようとした瞬間、タイミング悪く角から現れた人物に舌打ちの一つでもかましてやりたくなる気持ちにかられた。佐藤は、幼馴染である塩崎を嫌な顔で迎えた。
 病院とのやり取りの際、彼の「中学生探偵」という知名度を利用させてもらうため、佐藤は腹をくくり「犯人の引き渡し、能力の存在」を対価にした。エセ探偵を能力者たちの世界に居れたくない気持ちは本当だったが、それ以外に上手くやる手段を見つけられなかった佐藤の落ち度である。
 塩崎ははりきって動き院長との交渉、犯人の身柄を警察に引き渡すときの事情の捏造、結果として通り魔は逃走中に塩崎の手によって捕縛、病院に押し入り佐藤を殺そうとした事実の消去、また犯人は精神的に不安定であり証言能力がない、と完璧にやり遂げた。
 警察に引き渡した後、異能力についての騒動が起きないのはあちらが情報封鎖している、とのことらしい。

「そうだ、これはさっき届いた情報なのですが、秘密裏に警察でも異能力用の部署ができるそうです。それ関係の事件があれば積極的に教えてくれと」
--へぇ、随分と速いな。これなら色々と捗りそうだ
「(何の話だよ)……それを教えてもらったところで俺にはどうしようもないんだが」
「うん? いえこれからまた異能力者による犯罪が起きたとき便利じゃないですか。捕縛しても引き渡しが出来なければ意味がありません。
君は私の協力者である、という情報も流しておきましたから君単独でも呼べますよ。ほらここに電話してくださいだそうです」
「は!? おい何勝手に……!」
--いいじゃない、俺が前言ったようにこれからも能力者に会う確率は高いんだからさ

 塩崎が番号が記載されたメモ帳の一部を切り取り佐藤に渡してくる。それを彼は一瞬突き返そうとしたが、ペストの言葉によって我に返り、素直に受け取った。
 佐藤は、塩崎の人となりから実際には協力者、なんてワードではなく助手と紹介したのだろうと考えている――後で彼は確認してみたが、それは正解であった――。
 それはともかく、ペストの言う通り佐藤によってはいいことづくめである。そうであれば言うべきは悪態よりも感謝の言葉である。
 
「……まぁ、ありがとう」
「えぇ、どういたしまして。ところで……ペストさんは今いらっしゃいますか?」
--お、俺をお呼びか

 塩崎に対し、通り魔のことを説明するための証言能力。そのために佐藤は許可を取り、ペストのことも教えた。自分の中に勝手に住み着いた変な奴、能力者について一定の知識があり能力者でもある彼の話を塩崎はすんなりと受け入れた。
 その後も知識欲からか、塩崎は度々ペストに話を聞こうとしてくるのである。

「能力者が全体的に身体能力が高く、治癒能力も高いなども高いことは分かりました。それで今日は、能力者は先天的なものか、あるいは後天的にもあり得るのかを教えてもらおうかと」
(だとさ)
--あーわかった、そんじゃあ今から俺が言うことを伝えてくれ?
――能力者は生まれ落ちて最初から皆才能こそ保持しているが、それを開花せずに一生を終える者もいてだな

 まるで通訳者にでもなったようだ、佐藤はうんざりしながらペストの話す言葉を塩崎に伝える。
 学校にたどり着くまで、それは続いた。
 まるでそれは仲のいい友人との会話で……酷く平和で、酷く退屈な朝に見えた。


*****
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Re: 砂の英雄【3-1更新 2 ( No.19 )
日時: 2018/02/13 22:55
名前: 織原姫奈 (ID: btsyIDbw)

初めまして、同じ板でぼちぼちしてる織原と申します
えぇ...気付いたら全て読んでました
どっぷりはまったと言うか何というか

うまく言葉に出来ないですが魅力溢れる面白さがありました!
気付けば磁石みたいにその世界観に引き寄せられて...
いやはや、読んでてとても楽しめました

更新応援してます
あとえっと...お腰お大事にです

コメライで活動してますので見かけたら是非声かけてください
有頂天どころか宇宙に飛びます


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