コメディ・ライト小説(新)

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俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】
日時: 2022/08/04 16:50
名前: 美奈 ◆5RRtZawAKg (ID: lCrzzWFh)

美奈です。

「俺の恋敵は憎たらしい式神だった」、ざざっと略して「俺式」の新スレッドとなります。
気合を入れ直してリセットしたくなり、新しく作成した次第です。
旧「俺式」の黒歴史を知る←
皆様も笑、初めて「俺式」を読んで下さる方々も!
初心者の私をどうか見捨てないで下さい←懇願です
まだ右往左往してるピヨピヨな初心者なのです……笑

コメント等々もお待ちしております。
よろしくお願いします(^^)

p.s.色々ありすぎて投稿、中断繰り返しています。。でもやっぱりこの作品はどれだけかかっても仕上げてみたいので、もしまだ私のこと覚えてたら、また初めてだけどなんか興味あったら見ていただけると嬉しいです。究極マイペースでやらせていただきます。今後ともよろしくお願いします。
2020.9.13 「小説カキコ小説大会2020・夏」において、コメディ・ライト板で金賞頂きました。どうもありがとうございます!
2021.9.1「小説カキコ小説大会2021・夏」において、コメディ・ライト板で銀賞頂きました。どうもありがとうございます!
2022.1.11「小説カキコ小説大会2021・冬」において、管理人・副管理人賞頂きました。どうもありがとうございます!

ーprecious guestsー
昇我ツヅル様・blueI様・ラビット様・ジャニーズwest&様・MINA様・せいや様・いろはうた様・はるた様・てるてる522様・朱雀様・真朱様・雪林檎様・むう様・skyA/スカイア様・りゅ様

【目次】

<Season1 俺はブレザーに身を包む>

主要人物紹介 >>1

第1章 9月
第1話〜第5話 >>2 >>9 >>12-14  第6話〜第10話 >>17-21
第11話〜第15話 >>22-24 >>27-28  第16話〜第18話 >>29-30 >>33

第2章 10月
第19話〜第20話 >>35 >>39
第21話〜第25話 >>40 >>43-44 >>48-49  第26話〜第30話 >>50-51 >>55 >>61-62
第31話〜第35話 >>63-64 >>66-67 >>69  第36話〜第40話 >>77-78 >>83-85
第41話〜第44話 >>88-91

第3章 11月
第45話〜第50話 >>92 >>94 >>97-100
第51話〜第55話 >>101-105  第56話〜第60話 >>106-110
第61話〜第65話 >>111-115  第66話〜第70話 >>116-120
第71話〜第75話 >>123-127  第76話〜第80話 >>128 >>133-136
第81話〜第85話 >>137-139 >>141-142  第86話〜第90話 >>143-147
第91話〜第93話 >>148-150

第4章 後日譚
第94話〜第95話 >>151 >>154  第96話〜第100話 >>159-163
第101話〜第105話 >>164-168  第106話〜第110話 >>169-171 >>175-176

番外編
#1〜#3 >>57-59 #4〜#5 >>79-80
受賞御礼の番外編 >>153 新年のご挨拶 >>178

<Season2 俺はブレザーを脱ぎ捨てる>
第1章 あれから俺達は
第1話 〜第5話>>179-183

第2章 ピッカピカの春学期
第6話〜第10話 >>184-188 第11話〜第15話 >>193-197
第16話〜第20話 >>198-202

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Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.198 )
日時: 2022/04/12 17:18
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第16話
 1週間なんてのは、本当に光の速さで過ぎていく。

 頭の弱そうな教授率いる必修基礎教養15のクラスは、もう2回目を迎えていた。今日は渡されたテキストの輪読。つまりまぁ、ただの朗読会。小学校の国語の授業かな。俺の中の大学の概念が、結構な速さでガラガラと崩壊している。もっとこう、さ、アカデミックというか、テキスト読んで資料にまとめて発表する、くらいはさ、すると思ってたんだよ。
 授業後に俺がこうした率直な感想をボソリと呟くと、大貴が切れ長の目を丸くして聞いてきた。

「ん? 京汰ってガチ勢なの?」
「違う違う大貴違うって」

 大貴は同じ学部出身の兄貴を見ているから、「大学ってこんなもん」というイメージが掴めているらしかった。「大学生って、思ったより大人じゃねぇぞ」と、大貴は軽ーく先輩風を吹かせながら俺に言う。まぁ、こいつの言い方は全然嫌味っぽくないから、「へぇ」って感じで普通に参考になるんだけどな。


 次の授業がない俺と大貴と元会長こと瑠衣と華音、それから悠馬は、授業が終わると誰からともなく学食へと歩いていく。近くの店でもいいんだけど、学食だと気兼ねなく長居できるんだよね。ってことをこの7日間で既に学んだ。

 ちなみに今朝は、きちんと起きることができまして。ちゃんとご飯を食べてから家を出られたので、先週のようにガッツリカツカレーではなく、今はシュークリームを頬張っている。輪読だけでも小腹は空くのよ。瑠衣は菓子パン、華音はフルーツゼリーをチョイス。悠馬は俺のシュークリームと華音のフルーツゼリーを、指を咥えながら見つめている気配を強く醸し出している。まぁ悠馬が我が家にいる時みたいに食ってたら、大貴や瑠衣から見たら食べ物が浮いてるように見えちゃうからな。華音は悠馬の“気”がある方をチラチラ見ながら、申し訳なさそうに食べていた。いやいや華音様、こんなバケモンごときにそこまで気を遣わなくていいってば。

 みんなでしばらくもぐもぐした後、大貴が口を開いた。こいつが食べてたエクレアも美味しそうだったなぁ。

「なぁ、気になってたんだけど、なんで元会長って見た目チャラいの?」
「それ、私も気になってた。元会長って、会長だった時はきっと真面目だったんだよね?」
「生徒会長やってた奴って、今チャラいとダメなのか?……まぁ色々あったんだってば」

 てかさ、元会長元会長って長くない? 瑠衣って呼んだ方が早くない? それかせめて会長で良くない? 元ってわざわざいらなくない? とブツブツ言いながら、瑠衣は学生証をテーブルに出した。
 ……わーお。黒髪。七三。底の厚そうなメガネ。きっと制服だって、着崩したことなんかないんだろうな。鞄だって俺みたいにボロボロに使い古す的なことしてこなかったんだろうな。高校時代に彼を見つけ、仲良くしようとは正直、思わなかったかもしれない。ここまでの見事なガリ勉ルックスには近寄れねえわ。
 大貴が学生証を食い入るように見つめ、今の瑠衣と交互に見やる。華音もちょっと覗き込んで、目を丸くしていた。うっわぁ、至近距離の華音ちゃん可愛い。

「絵に描いたような真面目くんじゃないか……絵に描いたようなビフォーアフターじゃないか……180度違うじゃないか……」
「俺ね、父親も祖父も伯父も東大なの。だからママに東大行け行けってめっちゃ言われてて、生徒会長もママにやりなさいって言われたから立候補して。ママのルールなんて校則より厳しくてさ。外見もガリ勉スタイル強制されて。でも本当の俺はこうなわけ」

 こう、と明るいオレンジのシャツを着た自身を瑠衣は指差す。
 東大、という言葉が俺の胸にちくん、と刺さる。元カノの莉央ちゃん今元気かしら。莉央みたいに東大受験に超前向きな子もいれば、きっと実力はありそうなのに超後ろ向きな、瑠衣みたいな奴もいるらしい。瑠衣は続ける。

「んで、勉強して東大入ったら入ったで、ママはきっと弁護士か検事になれって言いそうだからさ。さすがにそこまで指図されたくなかったし、だったら大学受験の時点で反抗すればいいじゃん、って気づいて。だから模試ではママを安心させるために良い結果出してたけど、東大の本番は問題解いてないんだよね。併願なんてママはめっちゃ嫌がったけど、無理やりここ併願にして。センターの結果使えるからさ。センターは本気出したから、ここの合格をいただけたわけですよ」

 さっきから“ママ”の連呼が気になって仕方ないけれど、彼なりに一生懸命反旗を翻したらしい。今、俺の脳内にはレ・ミゼラブルの世界観が広がっている。会長にそんな過去があったとは。

「まぁ、東大落っこってママは悲鳴あげてたけどね。でも当の父親達は俺が落ちたことなんてさほど気にしてなくて、元々俺より賢い弟に期待してるっぽい。てなわけで俺は今、やっと自由にさせてもらってるわけですよ」

 大学受験を機に、親に反旗を翻して見事革命を成功させ、ありのままを表現し始めた元会長。いや、工藤瑠衣……。
 え、何このサクセスストーリー。カッコ良くない?!

「か、会長……よく頑張ったな……!」

 瑠衣の注文通り“元”を外してちゃんと呼び始めた大貴は、ちゃっかり瑠衣の肩を抱いている。瑠衣の顔は嬉しそうだ。良かったな、本当に。
 俺も泣きそうだよ。感動した。1時間枠の番組にしていいんじゃないかこれ。華音も、「大変だったんだね」と労っている。「うん、実は大変だった。何か、今言えてスッキリしたわ。ありがとな」と瑠衣。

 と、その時。

<かっ、会長……っ! そんな過去を抱えていたなんて……! ヒック>

 俺は突如聞こえた嗚咽にギョッとする。
 え。待って、お前ももらい泣き?!
 ……感受性豊かな式神だよなぁ、ほんと。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.199 )
日時: 2022/05/02 17:41
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第17話
 しばしの間、俺達は瑠衣のドキュメンタリーに感動しっぱなしだった。悠馬に至ってはハンカチ必須みたいな雰囲気出してるけど、この場で俺はどうしてやることもできないので放置しておく。

 すると。

「おお大貴じゃーん!」と、場にそぐわぬ明るい声が。今しんみりしてるシーンなんだってば。誰じゃ一体。

「巧じゃん! どしたん」
「5限あるんだけど、今空きコマで暇で、何となーく腹減って、学食を歩いていたら……大貴がいたからさ」

 てか女子1人ってどんなメンツだーい、と言いながら、ちゃっかりと大貴の隣に腰掛ける男子。だから、誰やこいつは。
 今までこの場を覆い尽くしていた感動を、この男の登場によって数秒で持ってかれた会長の顔がすごいことになっている。……ドンマイ。

 と、ここで俺達の「誰やこいつ」感をやっと悟ったようで、大貴が口を開く。

「あ、俺と同じ文化祭実行委員会の同期の……「峰さんじゃん!」」

「あ?」と、出鼻を挫かれた大貴。
「ん?」と、俺。
「え?……あっ」と、華音。

 ちなみにすごい顔をキープしたままの会長は沈黙《サイレント》である。

 待って、今なんか人増えてなかった?

「え、てかこのメンツ、もしかして、ってかもしかしなくても、私と同じ基礎教養のクラスの顔ぶれだ……ねぇねぇ私も混ぜて!……てか女子1人ってどんなメンツぅ?!」

 誰か分からない人①(♂)と同じセリフを言いながら、ちゃっかりと華音の隣に腰掛ける、誰か分からない人②(♀)。あ、ってかこの人今同じクラスって言ってたな。……でも名前が出てこない。こんだけキャピキャピしてる女子が自己紹介してたら、きっと記憶に残ってるはずなんだけどな。
 俺達の「ますます誰やこいつ」感を悟ったようで、誰か分からない人②(♀)が口を開く。さすがのコミュニケーションお化けこと大貴も、今は開いた口が塞がらないようだ。

「あ、私、曽根《そね》玲香《れいか》って言いまーす! なんか先週、もう自己紹介しちゃったんだって? 私先週休んでたからみんなの顔と名前一致してなくて。……あ、でも華音ちゃんは覚えた! さっき話しかけてくれたから♡」
「そ、そうだったね! 玲香ちゃん、よろしくね」
「うんっ♡」
「お、俺は永山大貴っていうんだけど、なんで、その……曽根さんは、巧のこと知ってるん?」
「え、全然玲香で良いから。てか、え、峰さんのことタメで呼んでるの? じゃあ私もそう呼ぼうかな」
「ちょ、人の話聞いてる?! なんで知ってるのって聞いたんだけど?!」

 大貴をも困惑させるニューヒロインのご登場。無敵かよ。そもそも新入生で初回授業休むってとこからして、無敵臭がプンプンしてる。

「もー待ってよ、答えるってば! 峰さんとは予備校一緒だったの。自習室でよく会うから割と話す間柄になって。同じ学部なのは知ってたけど、入学して初めて会ったぁ〜!」

 玲香の紹介を受けて、峰さんと呼ばれた誰か分からない人①(♂)は、やっと素性を明かした。

「峰《みね》巧《たくみ》って言います、よろしく! 玲香久しぶりじゃーん、すごいよな現役合格なんて」

 自己紹介して峰さんの元に集中したみんなの目線が、ちょっと強さを増す。なるほど、だから“さん”付けだったのね。峰さんもその視線をすぐにキャッチしたようだ。

「あ、俺浪人生コース出身なの! 一浪だけどね! もしかして、みんな現役?」

 明るくハキハキと、大きな声で浪人を早速カミングアウトした峰さん以外の全員がこくりと頷く。大貴は「え、年上だったの?」と1人驚いていた。「全然年齢とか、大学入ったら関係ねぇから。今まで通りタメでな!……あ、玲香以外は巧で全然大丈夫っすよ」と峰さん……じゃなくて、巧。

「ちょ、なんで私はダメなんですか!」
「だって、玲香に巧とか呼ばれるの、すっげぇ変な感じすんじゃん」
「しないから! ねっ、巧」
「サラッと呼ぶなぁ〜!……うわ、ほら、鳥肌立ったよ、見て見て」
「酷すぎませんか?!」

 なんか、巧と玲香は2人の世界に入っちゃってるし。最初からいた俺達の方が取り残されてるって、マジでどういう状況なのよ。
 俺達は新キャラに圧倒されすぎて、まともに声も出せない状況に陥っていた。しかし、そんな俺らをチラリと見ても、巧の明るさは変わらない。こいつ空気って概念を感じねえのか?
 その時、巧の目が再び俺達をきちんと捉えた。

「ってかさ、現役合格とか、めっちゃ頭いいじゃんみんな!……でもまぁ俺の方が人生経験豊富だけど!」

 よく意味の分からない浪人マウントを取ってきた巧は、「改めて、みんなよろしくな〜」とすんなり俺らの輪に入ってきた。

 あゝ、コミュ力お化けが何匹もここで爆誕している。今の所、永山大貴と峰巧っていうオスが2匹と、曽根玲香っていうメスが1匹。

 この学食はコミュ力お化けの繁殖地なのでしょうか。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.200 )
日時: 2022/07/04 21:51
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第18話

「あ、あのさっ、なんで玲香ちゃんは先週お休みだったの?」

 コミュ力お化け(メス♀)にもきちんと“ちゃん”付けで尋ねる華音ちゃん。そういう所、本当に偉いと思うの。俺は心から尊敬してる。今俺が心の中で玲香のことをメスなんて呼んでいると知ったら、華音はどんな反応をしてしまうだろうか。「なんてひどい呼び方なの! 京汰くんのこと見損なった、もう嫌い!」なんて言われたらどうしよう(好き嫌いの次元に俺がいるかはこの際議題にはしない)。怖くて見られたもんじゃない。

 玲香でいいよ〜私も華音って呼ぶし! と言いながら、よくぞ聞いてくれましたみたいな顔をして、彼女はあっけらかんと答える。

「あー、あのね……実は、新学期が今日からだと思ってた」
「え?! じゃあ……先週の授業、全部休んだの?」と驚く華音。
「まぁそういうことになるよね。ここが現実世界ならそういうことになる」
「そ、そっかぁ……」とやや引く華音。

 と、ここでまた丁寧に「少なくとも異世界ではないわな」と突っ込む会長。感動の雰囲気を巧にぶっ壊されたことで落ち込んだ気分は、復調してきたようだ。

 揃って騒々しい新キャラを前にして、ただポカーンとしていた俺達だが、やっと言葉を喋れる程度まで復活してきた。この空気に慣れちまった、ってことでもあるが。
 まぁ初回くらい、ね? と玲香はにっこりするけれど、授業評価をするのは俺達ではない。にっこりすると、少々大人っぽい顔立ちがくしゃっとして、普通に可愛い部類に入る顔立ちだ。しかし媚びを売る相手をミスってる。それにしても、なんて面白い人材ばかりなんだい。

<なんかさ、背脂いっぱいの豚骨スープみたいなメンツだね>
(うわっ、悠馬じゃん。……あぁ、異常に濃い)
<あの巧って子の登場で、僕の涙が引っ込んじゃったよ。会長のエピソード素晴らしかったのに。もうっ>
(俺に怒ったってしゃあねぇだろ)

 それから少しの間、悠馬と時折意思疎通をしつつ、新入りのコミュ力お化け2匹の話を聞いていると、「あれ、華音だ!」と女子っぽい声が。

 嘘だろ。また闖入者《ちんにゅうしゃ》?!

「カレン! もしかして、今空きコマなの?」
「そうなの〜! なんかこの集まり楽しそうだね、サークル?」
「ううん、基本的には基礎教養の集まりだよ」

 そうなんだ、座ってもいい? いいよ! じゃあ失礼しまーす! と、新たなメスのコミュ力お化けが俺の隣に腰掛けた。なんてこった。普通さ、自分と関係なさそうなコミュニティの席だったら、自分から座るって行動には出なくない? 積極的すぎん? もしかして彼女もコミュ力お化け……?
 ……てか、なかなかエキゾチックな美人ではないか。前髪のないおでこには、くっきりと力強い眉。そしてこれまたくっきりとした二重に、パキッと赤い唇。めっちゃはっきりした顔立ち。メイク濃くないのに、舞台化粧みたいなオーラを醸し出している。周辺のテーブルについていた他の学生も、一瞬振り返るような美人だ。

「あ、諸星カレンちゃん。スペ語で同じクラスなんだ」

 俺の「マジで誰やこいつ」感をいち早く察知したのか、華音が俺に説明してくれる。スペ語とはスペイン語選択の略称だ。英語以外に1つ外国語を必修で取らないといけない俺達は、複数の選択肢から各自希望したものを履修することになっている。華音とカレンはスペイン語だということだ。ちなみに俺はチャイ語こと中国語。漢字なら覚えられそうと思ってたんだけど、発音がムズいことを考慮してなかった。早速詰みそうだよ。

「へぇ、カレンちゃんっていうんだ! あ、俺は永山大貴ね。てかめっちゃ美人だね、もしかしてハーフ? なの?」

 どう見ても日本人離れした顔立ちのカレンは、「ありがと〜パパがスペイン人なの」とさらりと言った。「やっぱり!」と大貴は1人納得しているが、初対面で直接「美人だね」なんてナンパ紛いの言葉をぶち込めるメンタルはやはり、コミュ力お化けとしか言いようがない。
 えーと、諸星カレンはパパがスペイン人で、必修の外国語はスペイン語選択。……何だそれ。無双じゃねえか。
 あ、家でも日本語だからスペイン語全然私話せないんだよ〜純ジャパだし〜なんて隣の美人は早速予防線を張るけど、俺は信じないぞ。てか基本の文法はもう満点確実だろ。


 そうこうして、カレンも瞬く間にこの場の主役級キャストとなった。なんなんだこのお化け達は。コミュ力お化けのオスが陽キャな大貴と、浪人マウント取る巧。メスが初回授業全欠席の玲香と、スペインハーフのカレン。こいつら出会って5分足らずで、前から仲間です的な空気醸し出してる……。
 そこに高校の元マドンナである華音と、過去の闇を乗り越えた会長こと瑠衣と、隠れ陰陽師の俺と、リアルお化けの悠馬。

 総勢8名(人外1名含む)。

 …………濃すぎる。濃厚すぎる。
 チーズ何種類も使ったカルボナーラ並みに濃い。規定の半分しかお湯入れずに作ったカップスープ並みに濃い。

<水欲しいくらいだね。このメンツはなかなかヤバい>

 さすがは俺の同志。よく分かってる。


 まぁ、バケモンのお前が最もヤバいんだけどな。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.201 )
日時: 2022/07/04 21:53
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第19話
 学食の様子を見ていただいただけでお分かりのように、俺の新たなキャンパスライフは、彼女いないけど充実しまくっていた。
 もはや困った。充実しすぎなくらいに充実している。これにサークルなんて入ってたら、キャパオーバーだったかもしれない。


 総勢8名の学食メンツはあれで固定化したようで(あれ以上増えたらカオス極まって管理人必要になりそう)、基礎教養の4回目の授業が行われる頃にはLINEグループができていた。グループ名は“よじかんめ”。大学の時間割でいう4時間目がフリーの人間の集まりだから、“よじかんめ”。平仮名ってとこが程よくアホ感を醸し出していて、俺的に好みである。玲香も「それめっちゃ最高じゃん」と大絶賛。この名前を考えた会長は、なかなかセンスある。ますます会長が好きになるぜ。
 そうそう、これを機に、すっごく久しぶりに華音のSNSアカウントをゲット出来たんだよね。もう絶対に、スマホを水ポチャさせねーぞって誓いました。


 魔法学校としか思えなかったバイトは、週3回入るようになった。週15時間バイトしていれば、さすがにオーダー取る時の専門用語が呪文ではなく、ちゃんと日本語として耳に入ってくるようになった。一卵性双生児の教育係、カイさんリュウさん兄弟は相変わらずの漫才を繰り広げ、たまーに店主に怒られている。彼ら曰く、漫才ではなく喧嘩だというけれど、どう見ても息ぴったりの漫才だ。台本あるんじゃないかと疑うレベル。ぴったりすぎて正直、ちょっと羨ましい。俺と悠馬じゃ、ここまでのシンクロ率は出せないもんなぁ。
 今日も店主が謎の力を発動して寝こけていた常連客をテーブルから引き剥がし、無事に営業を終えた。あれだけは俺にとって未だに魔法である。多分、店主は魔法使いだ。俺の隣には常に悠馬という式神がいるからこそ、俺は店主=魔法使い説を半ば本気で信じている。
 片付けも任せられるようになった俺が皿洗いに徹していると、カイさんが声をかけてきた。一応説明を加えると、顎にホクロがないお兄ちゃんの方である。

「きょーちゃん、大学はどんな感じなの?」

 2回目のシフトの時から、この漫才双子兄弟は申し合わせたように俺を“きょーちゃん”と呼ぶ。このあだ名は多分、小学1年生以来。久々すぎて、今頃きょーちゃんは小っ恥ずかしい。

「だから京汰でいいですよカイさん、恥ずかしいから」
「いいじゃん、きょーちゃんの方が可愛くて親しみ湧くし! なあリュウ」
「今回はオレもカイに賛成!」

 おいおい、反論しないんかいっ。そこは「京汰がいいだろ」って喧嘩にならないんかいっ。
 俺は諦めて、カイさんの問いかけに答える。

「大学……メンツは正直、濃いっすね」
「え、こい?……恋?! えーっ! だれだれ?!」
「誰って、知らないと思いますよ?」
「いいからいいから。言ってみないとそんなんわかんないでしょ、きょーちゃん」
「えーっ。……まぁ、6人いるんすけど」

 華音と会長と大貴と巧と玲香とカレンのことな。一応、ここでは悠馬は除きます。
 すると、カイさんリュウさんが顔を見合わせた。彼らは黙って目をパチクリさせている。
 何この沈黙。
 すると、カイさんが途端に素っ頓狂な声をあげる。

「ろ、ろろろ、6人?!」
「まぁ、ちょっと多めなんですけどね」
「ちょっとどころじゃないよ、きょーちゃんあんたすげぇな。どうやって出会ったん?」
「いや、普通に必修クラスとか、友達の友達とか……」

 今度はリュウさんが「ぐえっ?!」と、異物を飲み込んだかのような素っ頓狂な声をあげた。口元に手を当て、顎のホクロが隠れている。

「きょーちゃん…………必修で手ぇ出したん??!! 早くない?!」

 ……ん? 手を出す? は?

「あのーすんませんリュウさん、何の話してます?」
「いやだから、きょーちゃんが大学入学早々恋して、6人の女の子に手を出したって話」

 あーなるほど。俺の「《《濃い》》」を2人は「恋」と勘違いしたのね。同音異義語って難しいね。

 ……って。

「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっっっっっ!!」
「「ひぃぃぃぃぃっっっ??!!」」

<今華音ちゃん一筋だし、そもそも同時に6人手出せるほど器用じゃないもんね>
(悠馬、なんかちょっとディスってない??!!)
<京汰とカイさんリュウさんのすれ違い漫才、非常に面白いです>
(あんたの立場は何??!!)

 1つ年上の双子兄弟に初めて全力で突っ込み、隣で隠形している式神にも同時並行で声を出さずに突っ込む。
 新入りに思いっきり突っ込まれた2人はと言えば、やや萎縮した後、「いやぁびっくりしたよ、“濃い”ね! 濃厚な方ね! 安心したな、リュウ!」「うん、きょーちゃんが健全で良かったよ!」としきりに安心し合っている。あんたらは俺の親戚か。近所のおばちゃんか。どんな勘違いしてんのマジで。
 彼らが年上に見えないのは、俺だけではない気がする。


 こうして俺はバ先で、別に望んでいないのだが、ツッコミ役としての地位を確立することになった。バイトを始めてもうすぐ3ヶ月。卒業するまで俺はツッコミ役に徹することになるんだろうか。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.202 )
日時: 2022/08/04 16:49
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第20話
・・・・・・・・・
 まさか、大学で京汰くんと再会するなんて。


 今までの人生で1番びっくりした。


 本当に、冗談抜きでびっくり。
 同じ大学、学部っていうのはあり得たかもしれないけど、あれだけ大きな大学で、必修のクラスまで同じなんて。奇跡に近いと思ったの。


 高2になって、京汰くんと急に連絡取れなくなったから気にはなってたんだけど、彼曰く、高校のトイレにスマホを水没させた挙げ句、女子が怖くて私の連絡先を聞き出せなかったみたい。よく男子が「女子怖い」っていうけど、そうかなぁ? そんなにビビることかなぁ? とは思ってる。
 結局、その水没事件のせいで、私達は大学で再会するまで、互いの近況を全く知らなかった。京汰くんは帰宅部で部活繋がりなどがなく、周囲も早い人は受験モードに切り替えてたりしていたから、他の友達から彼の様子を伝え聞く、ってこともなくて。

 もし大学で出会わなかったら、いつか同窓会でも開かれるまで会えなかったんだろうな、と思うと、この奇跡的な再会があって本当に良かった、と思う。


 大学生の京汰くん、高校の時ほどのおバカキャラはまだ開花してないけど、やっぱり人の輪の中心にいる所は変わらない。“よじかんめ”のメンバーはみんな個性的で、でもそれをなんとなくまとめてるのが京汰くん、みたいな? 程良い所でなかなか冴えたツッコミ入れるし、一緒にいてすごく楽しい。彼曰く、まだ始めたばかりのバイト先で、相当ツッコミスキルが鍛えられたみたい。それだけでも、面白そうなバイト先だな〜って思う。

 一方の悠馬くんは、「こんなに学生がいたら、1人か2人くらいは僕のことえちゃいそうだから」と言って、大学で姿を見せたことは一度もない。隠形おんぎょうって術を使って、姿を隠しているみたい。この説明、実は何回聞いてもあまりよく分からないんだけどね。雰囲気だけの人と話すって不思議な感覚。……あれ、人じゃないか。でも私にとっては式神も人も一緒。悠馬くんは私の大事な友達。
 大学で、久しぶりに彼の“気”を感じた時は、すっごく嬉しかった。あぁ、また悠馬くんと話せるんだ! って。京汰くんと悠馬くんの掛け合い、好きなんだよね。また見られると思うと、ワクワクするの。


 私自身は、高校でずっとバスケをやっていたから(アメリカでもやってたんだ)、大学でもバスケを続けることに決めて。でも陸ほど本格的ではないから、体育会系の部活じゃなくてサークルに入った。
 あ、陸っていうのは遠恋の彼氏の名前! 水上みずかみりくっていうの。陸上部にいそうな名前だけど、水泳部。本人は「水も陸も両方入ってるから俺は両生類」って言ってたのが面白かったんだよね。……なんか、京汰くんみたいな面白さを感じちゃって。そこから好きになった感じ。私には両生類の彼氏がいるんです。

 大学のバスケサークルは週2であって、ゆるーくバスケした後ご飯食べに行くっていう何ともアットホームなサークルで。正直にいうと、今は1人暮らしだから、先輩にご飯連れてってもらうと食費が浮いてラッキーなんだよね。その分来年が恐ろしいけど……。
 両親は仕事の関係で帰国するメドが経ってなくて、私だけマンションの1部屋を借りて1人暮らし中。サークルでは、1つ年上の岩田杏南あんな先輩に良くしてもらってる。170cmを超える長身で、ストレートのロングヘアも相まってクールビューティーな感じなんだけど、話してみたらすごく気さくな人で!
 初めて話したのは、入会金を渡す時。
 高校時代の癖で「岩田先輩」と呼んだら、「ここサークルだからもっとリラックスしていいんだよ! 杏南で大丈夫!」と言ってくれて、そこから杏南さんって呼んだら、私のことは「のんちゃん」って呼んでくれた。初めてのあだ名でちょっぴり、いやかなり嬉しい。ふふっ。


 そんなこんなで、おかげでキャンパスライフは楽しく過ごせてる。


 一方、恋愛の方は——


 実はまだ、大学に入ってから陸とは会えてない。そろそろゴールデンウィークも終わるんだけどね。連休中は、陸の大学の水泳部で、新歓合宿があったみたいで。電話とかの連絡は取り合ってるんだけど。でもまだ会う日程のメドも立ってなくて。

 のろけるわけではないんだけど、ってまぁのろけちゃうんだけど、陸のことは好き。周りを一気に明るくしてくれて、でも感情表現もちゃんとしてくれて、思いやりのある人で、追加でイケメン。
 陸は塩顔爽やか男子。転校生でなじむのが難しかった私にたくさん話しかけてくれて、クラスに溶け込むきっかけを作ってくれた人。嫌な時は嫌だって言ってくれる人。
 私、恋愛において束縛を全くしないタイプで、もはや軽く放置しちゃう所があって。実は連絡不精なとこもあるし。それが陸は気に入らなかったみたいで、受験期直前に喧嘩したの。意外でしょ? 私、恋したらめっちゃ束縛して、彼しか考えられない! みたいな人に見えるらしいの。でも今は陸の影響で私もだいぶ変わって、1日3回くらいはLINEして、週1で電話するようになった。

 ただ、私はそれで満足してしまっている。恋愛はあれば幸せ、つまり人生のオプション、っていうのが私のスタンスだから……。
 でもきっと、陸は不満なんだろうな。新歓合宿が終われば、会いたいという連絡がまた来そう。
 会いたくないわけじゃないし、会えば楽しいし好きなんだけど、何て言えばいいんだろう……。陸からの好意に対して、「嬉しい、でもちょっと待って!」みたいな感覚がどうにも抜けない。



 好きって、なんなんだろう。



 価値観って、なんなんだろう。



 恋とは? 愛とは?

 幸せ、とは?



 恋愛すると、どうしてもこういう哲学的な考えが頭をよぎってしまって。



 私は今日も、うまく眠れない。


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