コメディ・ライト小説(新)
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- 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】
- 日時: 2022/08/04 16:50
- 名前: 美奈 ◆5RRtZawAKg (ID: lCrzzWFh)
美奈です。
「俺の恋敵は憎たらしい式神だった」、ざざっと略して「俺式」の新スレッドとなります。
気合を入れ直してリセットしたくなり、新しく作成した次第です。
旧「俺式」の黒歴史を知る←
皆様も笑、初めて「俺式」を読んで下さる方々も!
初心者の私をどうか見捨てないで下さい←懇願です
まだ右往左往してるピヨピヨな初心者なのです……笑
コメント等々もお待ちしております。
よろしくお願いします(^^)
p.s.色々ありすぎて投稿、中断繰り返しています。。でもやっぱりこの作品はどれだけかかっても仕上げてみたいので、もしまだ私のこと覚えてたら、また初めてだけどなんか興味あったら見ていただけると嬉しいです。究極マイペースでやらせていただきます。今後ともよろしくお願いします。
2020.9.13 「小説カキコ小説大会2020・夏」において、コメディ・ライト板で金賞頂きました。どうもありがとうございます!
2021.9.1「小説カキコ小説大会2021・夏」において、コメディ・ライト板で銀賞頂きました。どうもありがとうございます!
2022.1.11「小説カキコ小説大会2021・冬」において、管理人・副管理人賞頂きました。どうもありがとうございます!
ーprecious guestsー
昇我ツヅル様・blueI様・ラビット様・ジャニーズwest&様・MINA様・せいや様・いろはうた様・はるた様・てるてる522様・朱雀様・真朱様・雪林檎様・むう様・skyA/スカイア様・りゅ様
【目次】
<Season1 俺はブレザーに身を包む>
主要人物紹介 >>1
第1章 9月
第1話〜第5話 >>2 >>9 >>12-14 第6話〜第10話 >>17-21
第11話〜第15話 >>22-24 >>27-28 第16話〜第18話 >>29-30 >>33
第2章 10月
第19話〜第20話 >>35 >>39
第21話〜第25話 >>40 >>43-44 >>48-49 第26話〜第30話 >>50-51 >>55 >>61-62
第31話〜第35話 >>63-64 >>66-67 >>69 第36話〜第40話 >>77-78 >>83-85
第41話〜第44話 >>88-91
第3章 11月
第45話〜第50話 >>92 >>94 >>97-100
第51話〜第55話 >>101-105 第56話〜第60話 >>106-110
第61話〜第65話 >>111-115 第66話〜第70話 >>116-120
第71話〜第75話 >>123-127 第76話〜第80話 >>128 >>133-136
第81話〜第85話 >>137-139 >>141-142 第86話〜第90話 >>143-147
第91話〜第93話 >>148-150
第4章 後日譚
第94話〜第95話 >>151 >>154 第96話〜第100話 >>159-163
第101話〜第105話 >>164-168 第106話〜第110話 >>169-171 >>175-176
番外編
#1〜#3 >>57-59 #4〜#5 >>79-80
受賞御礼の番外編 >>153 新年のご挨拶 >>178
<Season2 俺はブレザーを脱ぎ捨てる>
第1章 あれから俺達は
第1話 〜第5話>>179-183
第2章 ピッカピカの春学期
第6話〜第10話 >>184-188 第11話〜第15話 >>193-197
第16話〜第20話 >>198-202
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.200 )
- 日時: 2022/07/04 21:51
- 名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)
第18話
「あ、あのさっ、なんで玲香ちゃんは先週お休みだったの?」
コミュ力お化け(メス♀)にもきちんと“ちゃん”付けで尋ねる華音ちゃん。そういう所、本当に偉いと思うの。俺は心から尊敬してる。今俺が心の中で玲香のことをメスなんて呼んでいると知ったら、華音はどんな反応をしてしまうだろうか。「なんてひどい呼び方なの! 京汰くんのこと見損なった、もう嫌い!」なんて言われたらどうしよう(好き嫌いの次元に俺がいるかはこの際議題にはしない)。怖くて見られたもんじゃない。
玲香でいいよ〜私も華音って呼ぶし! と言いながら、よくぞ聞いてくれましたみたいな顔をして、彼女はあっけらかんと答える。
「あー、あのね……実は、新学期が今日からだと思ってた」
「え?! じゃあ……先週の授業、全部休んだの?」と驚く華音。
「まぁそういうことになるよね。ここが現実世界ならそういうことになる」
「そ、そっかぁ……」とやや引く華音。
と、ここでまた丁寧に「少なくとも異世界ではないわな」と突っ込む会長。感動の雰囲気を巧にぶっ壊されたことで落ち込んだ気分は、復調してきたようだ。
揃って騒々しい新キャラを前にして、ただポカーンとしていた俺達だが、やっと言葉を喋れる程度まで復活してきた。この空気に慣れちまった、ってことでもあるが。
まぁ初回くらい、ね? と玲香はにっこりするけれど、授業評価をするのは俺達ではない。にっこりすると、少々大人っぽい顔立ちがくしゃっとして、普通に可愛い部類に入る顔立ちだ。しかし媚びを売る相手をミスってる。それにしても、なんて面白い人材ばかりなんだい。
<なんかさ、背脂いっぱいの豚骨スープみたいなメンツだね>
(うわっ、悠馬じゃん。……あぁ、異常に濃い)
<あの巧って子の登場で、僕の涙が引っ込んじゃったよ。会長のエピソード素晴らしかったのに。もうっ>
(俺に怒ったってしゃあねぇだろ)
それから少しの間、悠馬と時折意思疎通をしつつ、新入りのコミュ力お化け2匹の話を聞いていると、「あれ、華音だ!」と女子っぽい声が。
嘘だろ。また闖入者《ちんにゅうしゃ》?!
「カレン! もしかして、今空きコマなの?」
「そうなの〜! なんかこの集まり楽しそうだね、サークル?」
「ううん、基本的には基礎教養の集まりだよ」
そうなんだ、座ってもいい? いいよ! じゃあ失礼しまーす! と、新たなメスのコミュ力お化けが俺の隣に腰掛けた。なんてこった。普通さ、自分と関係なさそうなコミュニティの席だったら、自分から座るって行動には出なくない? 積極的すぎん? もしかして彼女もコミュ力お化け……?
……てか、なかなかエキゾチックな美人ではないか。前髪のないおでこには、くっきりと力強い眉。そしてこれまたくっきりとした二重に、パキッと赤い唇。めっちゃはっきりした顔立ち。メイク濃くないのに、舞台化粧みたいなオーラを醸し出している。周辺のテーブルについていた他の学生も、一瞬振り返るような美人だ。
「あ、諸星カレンちゃん。スペ語で同じクラスなんだ」
俺の「マジで誰やこいつ」感をいち早く察知したのか、華音が俺に説明してくれる。スペ語とはスペイン語選択の略称だ。英語以外に1つ外国語を必修で取らないといけない俺達は、複数の選択肢から各自希望したものを履修することになっている。華音とカレンはスペイン語だということだ。ちなみに俺はチャイ語こと中国語。漢字なら覚えられそうと思ってたんだけど、発音がムズいことを考慮してなかった。早速詰みそうだよ。
「へぇ、カレンちゃんっていうんだ! あ、俺は永山大貴ね。てかめっちゃ美人だね、もしかしてハーフ? なの?」
どう見ても日本人離れした顔立ちのカレンは、「ありがと〜パパがスペイン人なの」とさらりと言った。「やっぱり!」と大貴は1人納得しているが、初対面で直接「美人だね」なんてナンパ紛いの言葉をぶち込めるメンタルはやはり、コミュ力お化けとしか言いようがない。
えーと、諸星カレンはパパがスペイン人で、必修の外国語はスペイン語選択。……何だそれ。無双じゃねえか。
あ、家でも日本語だからスペイン語全然私話せないんだよ〜純ジャパだし〜なんて隣の美人は早速予防線を張るけど、俺は信じないぞ。てか基本の文法はもう満点確実だろ。
そうこうして、カレンも瞬く間にこの場の主役級キャストとなった。なんなんだこのお化け達は。コミュ力お化けのオスが陽キャな大貴と、浪人マウント取る巧。メスが初回授業全欠席の玲香と、スペインハーフのカレン。こいつら出会って5分足らずで、前から仲間です的な空気醸し出してる……。
そこに高校の元マドンナである華音と、過去の闇を乗り越えた会長こと瑠衣と、隠れ陰陽師の俺と、リアルお化けの悠馬。
総勢8名(人外1名含む)。
…………濃すぎる。濃厚すぎる。
チーズ何種類も使ったカルボナーラ並みに濃い。規定の半分しかお湯入れずに作ったカップスープ並みに濃い。
<水欲しいくらいだね。このメンツはなかなかヤバい>
さすがは俺の同志。よく分かってる。
まぁ、バケモンのお前が最もヤバいんだけどな。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.201 )
- 日時: 2022/07/04 21:53
- 名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)
第19話
学食の様子を見ていただいただけでお分かりのように、俺の新たなキャンパスライフは、彼女いないけど充実しまくっていた。
もはや困った。充実しすぎなくらいに充実している。これにサークルなんて入ってたら、キャパオーバーだったかもしれない。
総勢8名の学食メンツはあれで固定化したようで(あれ以上増えたらカオス極まって管理人必要になりそう)、基礎教養の4回目の授業が行われる頃にはLINEグループができていた。グループ名は“よじかんめ”。大学の時間割でいう4時間目がフリーの人間の集まりだから、“よじかんめ”。平仮名ってとこが程よくアホ感を醸し出していて、俺的に好みである。玲香も「それめっちゃ最高じゃん」と大絶賛。この名前を考えた会長は、なかなかセンスある。ますます会長が好きになるぜ。
そうそう、これを機に、すっごく久しぶりに華音のSNSアカウントをゲット出来たんだよね。もう絶対に、スマホを水ポチャさせねーぞって誓いました。
魔法学校としか思えなかったバイトは、週3回入るようになった。週15時間バイトしていれば、さすがにオーダー取る時の専門用語が呪文ではなく、ちゃんと日本語として耳に入ってくるようになった。一卵性双生児の教育係、カイさんリュウさん兄弟は相変わらずの漫才を繰り広げ、たまーに店主に怒られている。彼ら曰く、漫才ではなく喧嘩だというけれど、どう見ても息ぴったりの漫才だ。台本あるんじゃないかと疑うレベル。ぴったりすぎて正直、ちょっと羨ましい。俺と悠馬じゃ、ここまでのシンクロ率は出せないもんなぁ。
今日も店主が謎の力を発動して寝こけていた常連客をテーブルから引き剥がし、無事に営業を終えた。あれだけは俺にとって未だに魔法である。多分、店主は魔法使いだ。俺の隣には常に悠馬という式神がいるからこそ、俺は店主=魔法使い説を半ば本気で信じている。
片付けも任せられるようになった俺が皿洗いに徹していると、カイさんが声をかけてきた。一応説明を加えると、顎にホクロがないお兄ちゃんの方である。
「きょーちゃん、大学はどんな感じなの?」
2回目のシフトの時から、この漫才双子兄弟は申し合わせたように俺を“きょーちゃん”と呼ぶ。このあだ名は多分、小学1年生以来。久々すぎて、今頃きょーちゃんは小っ恥ずかしい。
「だから京汰でいいですよカイさん、恥ずかしいから」
「いいじゃん、きょーちゃんの方が可愛くて親しみ湧くし! なあリュウ」
「今回はオレもカイに賛成!」
おいおい、反論しないんかいっ。そこは「京汰がいいだろ」って喧嘩にならないんかいっ。
俺は諦めて、カイさんの問いかけに答える。
「大学……メンツは正直、濃いっすね」
「え、こい?……恋?! えーっ! だれだれ?!」
「誰って、知らないと思いますよ?」
「いいからいいから。言ってみないとそんなんわかんないでしょ、きょーちゃん」
「えーっ。……まぁ、6人いるんすけど」
華音と会長と大貴と巧と玲香とカレンのことな。一応、ここでは悠馬は除きます。
すると、カイさんリュウさんが顔を見合わせた。彼らは黙って目をパチクリさせている。
何この沈黙。
すると、カイさんが途端に素っ頓狂な声をあげる。
「ろ、ろろろ、6人?!」
「まぁ、ちょっと多めなんですけどね」
「ちょっとどころじゃないよ、きょーちゃんあんたすげぇな。どうやって出会ったん?」
「いや、普通に必修クラスとか、友達の友達とか……」
今度はリュウさんが「ぐえっ?!」と、異物を飲み込んだかのような素っ頓狂な声をあげた。口元に手を当て、顎のホクロが隠れている。
「きょーちゃん…………必修で手ぇ出したん??!! 早くない?!」
……ん? 手を出す? は?
「あのーすんませんリュウさん、何の話してます?」
「いやだから、きょーちゃんが大学入学早々恋して、6人の女の子に手を出したって話」
あーなるほど。俺の「《《濃い》》」を2人は「恋」と勘違いしたのね。同音異義語って難しいね。
……って。
「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっっっっっ!!」
「「ひぃぃぃぃぃっっっ??!!」」
<今華音ちゃん一筋だし、そもそも同時に6人手出せるほど器用じゃないもんね>
(悠馬、なんかちょっとディスってない??!!)
<京汰とカイさんリュウさんのすれ違い漫才、非常に面白いです>
(あんたの立場は何??!!)
1つ年上の双子兄弟に初めて全力で突っ込み、隣で隠形している式神にも同時並行で声を出さずに突っ込む。
新入りに思いっきり突っ込まれた2人はと言えば、やや萎縮した後、「いやぁびっくりしたよ、“濃い”ね! 濃厚な方ね! 安心したな、リュウ!」「うん、きょーちゃんが健全で良かったよ!」としきりに安心し合っている。あんたらは俺の親戚か。近所のおばちゃんか。どんな勘違いしてんのマジで。
彼らが年上に見えないのは、俺だけではない気がする。
こうして俺はバ先で、別に望んでいないのだが、ツッコミ役としての地位を確立することになった。バイトを始めてもうすぐ3ヶ月。卒業するまで俺はツッコミ役に徹することになるんだろうか。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.202 )
- 日時: 2022/08/04 16:49
- 名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)
第20話
・・・・・・・・・
まさか、大学で京汰くんと再会するなんて。
今までの人生で1番びっくりした。
本当に、冗談抜きでびっくり。
同じ大学、学部っていうのはあり得たかもしれないけど、あれだけ大きな大学で、必修のクラスまで同じなんて。奇跡に近いと思ったの。
高2になって、京汰くんと急に連絡取れなくなったから気にはなってたんだけど、彼曰く、高校のトイレにスマホを水没させた挙げ句、女子が怖くて私の連絡先を聞き出せなかったみたい。よく男子が「女子怖い」っていうけど、そうかなぁ? そんなにビビることかなぁ? とは思ってる。
結局、その水没事件のせいで、私達は大学で再会するまで、互いの近況を全く知らなかった。京汰くんは帰宅部で部活繋がりなどがなく、周囲も早い人は受験モードに切り替えてたりしていたから、他の友達から彼の様子を伝え聞く、ってこともなくて。
もし大学で出会わなかったら、いつか同窓会でも開かれるまで会えなかったんだろうな、と思うと、この奇跡的な再会があって本当に良かった、と思う。
大学生の京汰くん、高校の時ほどのおバカキャラはまだ開花してないけど、やっぱり人の輪の中心にいる所は変わらない。“よじかんめ”のメンバーはみんな個性的で、でもそれをなんとなくまとめてるのが京汰くん、みたいな? 程良い所でなかなか冴えたツッコミ入れるし、一緒にいてすごく楽しい。彼曰く、まだ始めたばかりのバイト先で、相当ツッコミスキルが鍛えられたみたい。それだけでも、面白そうなバイト先だな〜って思う。
一方の悠馬くんは、「こんなに学生がいたら、1人か2人くらいは僕のこと視えちゃいそうだから」と言って、大学で姿を見せたことは一度もない。隠形って術を使って、姿を隠しているみたい。この説明、実は何回聞いてもあまりよく分からないんだけどね。雰囲気だけの人と話すって不思議な感覚。……あれ、人じゃないか。でも私にとっては式神も人も一緒。悠馬くんは私の大事な友達。
大学で、久しぶりに彼の“気”を感じた時は、すっごく嬉しかった。あぁ、また悠馬くんと話せるんだ! って。京汰くんと悠馬くんの掛け合い、好きなんだよね。また見られると思うと、ワクワクするの。
私自身は、高校でずっとバスケをやっていたから(アメリカでもやってたんだ)、大学でもバスケを続けることに決めて。でも陸ほど本格的ではないから、体育会系の部活じゃなくてサークルに入った。
あ、陸っていうのは遠恋の彼氏の名前! 水上陸っていうの。陸上部にいそうな名前だけど、水泳部。本人は「水も陸も両方入ってるから俺は両生類」って言ってたのが面白かったんだよね。……なんか、京汰くんみたいな面白さを感じちゃって。そこから好きになった感じ。私には両生類の彼氏がいるんです。
大学のバスケサークルは週2であって、ゆるーくバスケした後ご飯食べに行くっていう何ともアットホームなサークルで。正直にいうと、今は1人暮らしだから、先輩にご飯連れてってもらうと食費が浮いてラッキーなんだよね。その分来年が恐ろしいけど……。
両親は仕事の関係で帰国するメドが経ってなくて、私だけマンションの1部屋を借りて1人暮らし中。サークルでは、1つ年上の岩田杏南先輩に良くしてもらってる。170cmを超える長身で、ストレートのロングヘアも相まってクールビューティーな感じなんだけど、話してみたらすごく気さくな人で!
初めて話したのは、入会金を渡す時。
高校時代の癖で「岩田先輩」と呼んだら、「ここサークルだからもっとリラックスしていいんだよ! 杏南で大丈夫!」と言ってくれて、そこから杏南さんって呼んだら、私のことは「のんちゃん」って呼んでくれた。初めてのあだ名でちょっぴり、いやかなり嬉しい。ふふっ。
そんなこんなで、おかげでキャンパスライフは楽しく過ごせてる。
一方、恋愛の方は——
実はまだ、大学に入ってから陸とは会えてない。そろそろゴールデンウィークも終わるんだけどね。連休中は、陸の大学の水泳部で、新歓合宿があったみたいで。電話とかの連絡は取り合ってるんだけど。でもまだ会う日程のメドも立ってなくて。
のろけるわけではないんだけど、ってまぁのろけちゃうんだけど、陸のことは好き。周りを一気に明るくしてくれて、でも感情表現もちゃんとしてくれて、思いやりのある人で、追加でイケメン。
陸は塩顔爽やか男子。転校生でなじむのが難しかった私にたくさん話しかけてくれて、クラスに溶け込むきっかけを作ってくれた人。嫌な時は嫌だって言ってくれる人。
私、恋愛において束縛を全くしないタイプで、もはや軽く放置しちゃう所があって。実は連絡不精なとこもあるし。それが陸は気に入らなかったみたいで、受験期直前に喧嘩したの。意外でしょ? 私、恋したらめっちゃ束縛して、彼しか考えられない! みたいな人に見えるらしいの。でも今は陸の影響で私もだいぶ変わって、1日3回くらいはLINEして、週1で電話するようになった。
ただ、私はそれで満足してしまっている。恋愛はあれば幸せ、つまり人生のオプション、っていうのが私のスタンスだから……。
でもきっと、陸は不満なんだろうな。新歓合宿が終われば、会いたいという連絡がまた来そう。
会いたくないわけじゃないし、会えば楽しいし好きなんだけど、何て言えばいいんだろう……。陸からの好意に対して、「嬉しい、でもちょっと待って!」みたいな感覚がどうにも抜けない。
好きって、なんなんだろう。
価値観って、なんなんだろう。
恋とは? 愛とは?
幸せ、とは?
恋愛すると、どうしてもこういう哲学的な考えが頭をよぎってしまって。
私は今日も、うまく眠れない。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.203 )
- 日時: 2022/08/21 17:59
- 名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)
第21話
・・・・・・・・・
こっからは“会長”と呼ばれている俺、つまり工藤瑠衣の話をしよう。
あ、ちなみに、瑠衣と呼んでもらうのはもう諦めた。今や巧もカレンも玲香も会長呼びだ。俺自分の名前結構好きだから、そっちで呼んでくれてもいいのになぁ。
でもまぁ、会長ってのも案外気に入っている。そんな自分にちょっと驚いてもいるんだけどね。
さて、俺は今、とある危機を迎えている。
それは、サークル難民危機だ。
自分の好きなことが分からないという、絶望的状況。
高校の部活はママの意向で模擬国連部とかいう興味の欠片もない所に入れられたから、部活と同じこと続けるってのはナシ。習い事に関しても、塾とバイオリンと英会話をママに強制されて、嫌々通っていたから音楽系とか国際交流系もナシ。運動に関しては……もう、苦手の域を超えてるから論外。きっと神様は俺を作る時、運動神経と反射神経を入れ忘れている。そりゃまぁ、何億人も作ってたら多少は失敗作もあるだろう。優しいから大目に見ておくが、普通だったら俺はリコール対象だ。死んであの世に行ったら、必ず文句を言ってやろうと考えている。
とまぁ、そんな状態の中、行き当たりばったりで様々な新歓コンパに参加するけれど、入会金払ってまで入りたい理由も広げたい人脈もなく。この大学を選んでから「東大じゃないなんて」と不満しか言わないママと会う時間を少なくしたくて、ただ夕飯食いにコンパ行ってるだけ。未だに、サークルの必要性を見出せていないのは、“よじかんめ”メンツが想像以上に濃厚な奴らで、俺はこの狭いコミュニティだけで非常に満足してしまったからなのかもしれない。
今日もいつも通り、もはや何のサークルかもロクに確かめず、ただ先輩らしき人に声をかけられたのがきっかけでサークルのコンパに行って、二次会も無料だというから、そこで先輩が一向に手をつけない唐揚げやポテトを食い漁って。まだ新歓なので「飲めよ」とも言われず、シラフの俺は、酒のせいで獣に成り下がった先輩達を冷めた目で見つめていた。
どうせここも最初で最後だな、と見切りをつけて、二次会終了の合図と同時にひっそり店を出た。本当は駅前の広場で締めの挨拶なるものがあるようだが、店から全員が出てくるのも時間がかかるし、これ以上「是非入会してね!」なんて酔ったテンションで言われたって、面倒なだけだ。
1人で駅まで歩いていると、不意に「もぉ〜だからぁ〜むりぃ〜うぅ〜」という声が聞こえてきた。
「ん?」
声の方を見ると……
獣になりかけた、ケンタウロスみたいな状態の玲香が。
……待って《《玲香》》?!
両隣の男の先輩の肩を借りながら、よろよろと歩く玲香。さっきの声の主は、紛れもなく彼女である。鞄を握る手は頼りなく、ワンピースの胸元は少々乱れていた。無自覚に彼女の禁断領域を見てしまい、思わず目を伏せるが、声だけは耳がはっきりと拾っていた。
「ほーら玲香ちゃん! お家帰れないよね、カラオケか俺の家行かない?」
「とりあえず水飲んで、落ち着いたらまた飲み直そう! 可愛いからほっとけないよ」
やはり、飲ませたのはこいつらか。
曽根玲香は、新学期が始まる日にちを忘れちゃう奴だ。きっとあの男達にいいようにおだてられるとかして、明日も授業だってことを忘れて飲んじゃったんだろうなぁ。まぁでもそもそも、未成年の新入生女子、いわゆる“|1姫《いちひめ》”を潰れるレベルで飲ませる奴らこそ悪いんだけど。
てか「俺の家行かない?」って……。もうそれほぼ確実に危険な香りしかしないだろ。元生徒会長の俺の勘が、赤灯を回し始める。さすがにイツメンのことは、守らねえとな。
気づけば俺は、声を上げていた。
「あ、あのっ」
玲香の両隣にいた男達は、急に表情が険しくなった。
「あ? お前誰?」
俺は玲香の友達です! 新入生潰すなんて最低だ! どこのサークルなんだ! 言ってみろ!
……なーんて威勢の良い言葉が淀みなく出てくるくらいなら、俺はもっと前からママに反抗できていたはずだ。
「え、えっと……」
「何お前、見た目チャラめな癖にビビリだったりする? だっさぁっ!」
確かに外見だけはパリピに近い俺。でも中身はグニャグニャのチキンだ。まずそうなチキン。
自分の情けなさに唇を噛んでいたら、玲香の目が俺を捉えた。
「あ……あれ……? かいちょう……?」
フワフワとした声で俺のあだ名を呼んだ玲香を見て、男達は固まった。
「え……《《会長》》?」
「ど、どどっ、どっかの組織のトップってことだろ」
「え?! あ、あのっ、今回は見逃して下さい! すんませんっ!」
「ほら早く行こうぜっ」
威勢の良かった男達のあまりの豹変ぶりを見て、逆に俺が驚きで固まる珍展開。
え、俺ただの《《元生徒会長》》なんだが。マジでただのどこにでもある、ふっつーの高校の元生徒会長なんだが。
さっきまで姫のように扱われていた玲香は、急に道端にほっぽり出された。俺は慌てて玲香を抱きとめる。
まさか、会長というあだ名がこんな効果を発揮するなんて。ガン飛ばしてた奴らが突然敬語になるんだから、俺は笑いそうになってしまった。
ママに無理矢理やらされた仕事だったけれど、元生徒会長で良かったのかもしれない。
- Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.204 )
- 日時: 2022/08/23 18:49
- 名前: りゅ (ID: B7nGYbP1)
閲覧10000突破!!おめでとうございます!!
執筆頑張って下さい!!
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