コメディ・ライト小説(新)

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俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】
日時: 2022/04/12 17:20
名前: 美奈 ◆5RRtZawAKg (ID: lCrzzWFh)

美奈です。

「俺の恋敵は憎たらしい式神だった」、ざざっと略して「俺式」の新スレッドとなります。
気合を入れ直してリセットしたくなり、新しく作成した次第です。
旧「俺式」の黒歴史を知る←
皆様も笑、初めて「俺式」を読んで下さる方々も!
初心者の私をどうか見捨てないで下さい←懇願です
まだ右往左往してるピヨピヨな初心者なのです……笑

コメント等々もお待ちしております。
よろしくお願いします(^^)

p.s.色々ありすぎて投稿、中断繰り返しています。。でもやっぱりこの作品はどれだけかかっても仕上げてみたいので、もしまだ私のこと覚えてたら、また初めてだけどなんか興味あったら見ていただけると嬉しいです。究極マイペースでやらせていただきます。今後ともよろしくお願いします。
2020.9.13 「小説カキコ小説大会2020・夏」において、コメディ・ライト板で金賞頂きました。どうもありがとうございます!
2021.9.1「小説カキコ小説大会2021・夏」において、コメディ・ライト板で銀賞頂きました。どうもありがとうございます!

ーprecious guestsー
昇我ツヅル様・blueI様・ラビット様・ジャニーズwest&様・MINA様・せいや様・いろはうた様・はるた様・てるてる522様・朱雀様・真朱様・雪林檎様・むう様・skyA/スカイア様・りゅ様

【目次】

<Season1 俺はブレザーに身を包む>

主要人物紹介 >>1

第1章 9月
第1話〜第5話 >>2 >>9 >>12-14  第6話〜第10話 >>17-21
第11話〜第15話 >>22-24 >>27-28  第16話〜第18話 >>29-30 >>33

第2章 10月
第19話〜第20話 >>35 >>39
第21話〜第25話 >>40 >>43-44 >>48-49  第26話〜第30話 >>50-51 >>55 >>61-62
第31話〜第35話 >>63-64 >>66-67 >>69  第36話〜第40話 >>77-78 >>83-85
第41話〜第44話 >>88-91

第3章 11月
第45話〜第50話 >>92 >>94 >>97-100
第51話〜第55話 >>101-105  第56話〜第60話 >>106-110
第61話〜第65話 >>111-115  第66話〜第70話 >>116-120
第71話〜第75話 >>123-127  第76話〜第80話 >>128 >>133-136
第81話〜第85話 >>137-139 >>141-142  第86話〜第90話 >>143-147
第91話〜第93話 >>148-150

第4章 後日譚
第94話〜第95話 >>151 >>154  第96話〜第100話 >>159-163
第101話〜第105話 >>164-168  第106話〜第110話 >>169-171 >>175-176

番外編
#1〜#3 >>57-59 #4〜#5 >>79-80
受賞御礼の番外編 >>153 新年のご挨拶 >>178

<Season2 俺はブレザーを脱ぎ捨てる>
第1章 あれから俺達は
第1話 〜第5話>>179-183

第2章 ピッカピカの春学期
第6話〜第10話 >>184-188 第11話〜第15話 >>193-197
第16話 >>198

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.195 )
日時: 2022/03/10 19:24
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第13話
・・・・・・・・・
「もう入学早々、天国から地獄に突き落とされた気分だわ……何このジェットコースターな1日は……」

 セリフこそ鬱々としているものの、式神お手製春巻きを食べる彼の手はノンストップである。空っぽになった心は食べ物のエネルギーで補うしかない、といった具合だ。……うっそ、10本揚げたのにもうあと1本しか残ってないじゃん。僕の分ないじゃん。あぁぁ第2弾揚げなきゃ……。揚げ物ってめんどくさいのよ、分かってる? そこらへん。
 でも今日は、京汰の好物を作ると自ら言ってしまったのだから仕方ない。僕は悲嘆に暮れる京汰をチラリと見て、声をかけた。

『奇跡的な再会できたと思った矢先に、遠恋の彼氏いるの分かって、僕が視えることまで分かっちゃったんだもんなぁ』
「そうなの。京汰くん可哀想でしょ……ああもうどうやって生きていけば。俺はあの必修の授業にどんなモチベで行けば」
『京汰、そういう時は初心に返ろう。なんでこの大学に入ったんだっけ?』
「えー…………うーん……学歴が欲しかった、から、かな? あと人生楽しみたかったから?」

 この人、AO入試だったら即落ちてただろうな。
 僕は箸で掴んでいた春巻きを油にドボンしそうになった。
 ダメだこりゃ。お話にならない。就活が思いやられるよ。

 しかし。しかし、である。

 今『お話にならんよ』なんて言葉を浴びせて、京汰くんを泣かせるほど、僕はひどい式神ではない。これ以上気分落ち込まれたら、こっちも色々と大変だからね。だから一応、建前だけでも、彼を思いやる。

 知らなかったでしょ。式神だって、結構頭使ってるんだよ?

『と、とりあえず、再会できたんだから良かったじゃん! もし辛いなら、気を紛らわせるしかないよ! ね!』
「え、どうやって? ねえ悠馬、どうやって?」

 え? 何か妙に食いついてきてない?

「ねえ悠馬教えてよ、どうやったら気を紛らわせられるの? 俺は一体どうすればいい? ねえ教えて! 教えて教えてっ!」
『……え』

 思わず振り向いたら、『え』とか『ぎょっ』としか言えないような光景が広がっていた。

 ぎょっ。涙目で春巻き食べる人初めて見た。京汰って空腹極まると千鳥足になって、落ち込むと涙目で春巻き食べるのね。そこそこの付き合いになるけど、今日は新発見がたくさんだ。

 春巻きとご飯なくなっちゃったぁ〜おかわりぃ〜と力なく言う京汰。ダメージは相当なようで、明らかに幼児退行している。僕は第2弾の春巻きを大皿に盛り、京汰の茶碗を受け取りながら一生懸命考える。気を紛らわせてくれるもの……何だろう。口から出任せに言ったもんだから、すぐにこれといったものが出てこなくて、少し焦る。

『えーと……あ! バイトは? 違う環境で良い息抜きになるかもよ』
「バイト…………うーん、バイト…………あ! バイトっ!!!」
『急に何っ?!』

 ただの春巻き吸引機と化していた京汰は、突然人間に戻った。光の速さで切り替わったもんだからびっくりだ。
 ってか、もうこれ以上春巻き食べないでね。僕にもちょうだいね。

「悠馬、いいこと言ってくれたよ! 俺忘れてた、鈴木さんに前お話もらってたんだよ!」

 鈴木さんとは、僕達のお隣さんのこと。未亡人の優しいおばあさんは、おバカ人間……ぐっふん、もとい、京汰を本当の息子のように可愛がってくれる、超貴重な天然記念物的存在である。僕のことは視えないが、頻繁におかずや野菜のお裾分けをしてくださるので、僕も鈴木さんには陰ながら感謝してるんだ。
 ちなみに僕、亡くなった鈴木さんの旦那さんとは仲良しなんだけどね。まぁそれは今話さなくてもいいや。

『お話って?』
「鈴木さんとこのお孫さんのバ先で今、人欲しいんだって。京汰くんどう? って言われてて、返事してなかったの忘れてた!」

 そーじゃんバイト良いじゃん悠馬天才〜! と言って、何を思ったのか、京汰はそのまま玄関に向かい出て行った。

 5秒後。

「鈴木さ〜ん俺ですぅ〜」

 ねえ、インターホン鳴らして。そんなバカでかい声出さないで。
 今19時なのね。さすがに辺りは暗くなってるのね。急に大声出したら不審者なのね。ダイニングにいる僕にまで聞こえるって相当だからね。
 しかも“俺”だけで通用すると思ってるあたり、詐欺グループの人間と同じ思考回路だからね。捕まりたいのかなこの子。

「鈴木さぁ〜ん、俺ですぅ〜京汰ですぅ〜こんばんわぁ〜」

 語尾伸ばすのやめて。

「あ、鈴木さん! こんばんは! お元気です?」

 割とすぐに天然記念物の鈴木さんが家から出てきたらしく、何やら楽しそうな声が聞こえる。
 京汰、「夜分に失礼します」くらいは言おうね。もしかして、それも僕が教育しないといけないかしら。

 それにしても、急に“俺”だと大声で言われても、またそんな大声を聞いても誰も通報しない、この平和な街が僕は好きだ。


 さて、今のうちに春巻き食べなきゃ。


 失恋したばかりの若いハイエナが帰ってくる前にね。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.196 )
日時: 2022/03/13 14:53
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第14話
「わーいわーい! 悠馬、俺バイトデビューすっぞ!」
『受かったの?!』
「そんなびっくりするこたぁねぇだろ。京汰様はやればできるのさ」
『じゃあそのスキルを発揮して、ぜひうちの家事の方も……』
「それとこれとは別物です」

 なんと京汰、鶴ならぬ鈴木さんの一声で、大した面接もなくバイトが決まったようで。
 清々しいくらいのコネである。

 京汰よ、今後もコネだけで通用するほど世界は甘くないからね。

 京汰に飲食店が務まるのか……と1人不安を抱える僕をよそに、京汰は初出勤を目前にしてすんごく楽しそう。華音ちゃんの一件はどこへ行ったのやら。


 そして今日、ついに初出勤日がやって来た。朝から「バイトデビューだぜっ!」とか、「今日わぁ〜バイトぉ〜ふふふ〜ん」などとはしゃぎまくっている京汰を見て、僕はますます不安になる。
 京汰よ、バイトは遊びではないのだよ。勤労に対して対価を得る、立派なお仕事なのだよ。君には対価を得るほどの覚悟と責任があるのかね……?

(バイトぉバイトぉ楽しみぃ♪)

 大貴と一緒に授業を受けた後、まるで印籠《いんろう》のように「じゃあ、俺バイトだから!」というセリフを自慢げに繰り出して駅に向かう彼は、新入生としてのフレッシュさを存分、いや余計なくらいに発揮している。

「へぇ〜、もうバイトデビューかぁ。いいなぁ京汰!」
「へへっ、いいだろぉ〜」
「頑張れよ」
「何じっと見つめてんだよもう。……おうよ!」

 大貴にも羨ましがられて、随分とご機嫌な様子。僕の右側を歩く茶髪男の口元はニヤつき、足取りは軽く、スキップでも始めてしまいそうだ。

<あのさぁ、あんまり浮かれてても良くないよ京汰>
(お前はほんとにお節介だな)
<世話係としての任務を全うしてるだけだよ>
(お節介も世話のうち、ってか)


 自宅の最寄り駅の商店街にあるそのお店は、居酒屋とご飯屋の中間みたいなお店だった。定食もつまみもある、オールマイティ対応。

「こんにちは、今日からお願いします」
「おお、藤井くん。来たね。ささ、まずは荷物置いて、このエプロン付けて」

 明るい店主に迎えられ(僕は迎えられてないけど)、京汰は早速店の裏に引っ込んでいく。
 店主は鈴木さんの元彼の息子らしい。元彼の息子の店で孫が働く……何だろう、この妙にザワつく気持ちは。きっと式神だけじゃなくて、人間の皆さんもザワつくと思うんです。孫もザワつかなかったんだろうか。
 まぁ、平和にやってる、ということでいいんでしょうか……。

 黒いエプロンを付けて出てきた京汰は、なぜか男前に見えた。できる男に見えてる。これはエプロンマジックなのか? ほらあの、某コーヒーチェーン店で限られた人しか付けられない黒のエプロンをつけてるような。それとも、僕なりの式神フィルターなのか。授業参観や運動会で我が子を見る時と同じフィルターかかってんのかな。
 外見だけはなかなか男前に見える京汰だが、その面持ちはさすがに緊張しているようだ。いつもより明らかに瞬きの回数が増えている。

「あ! 新入りの! ばあちゃんから聞いたよ!」
「エプロン、サマになってんじゃん」

 京汰を歓迎し、オレ達が面倒見るね! と言った、京汰と同い年くらいの2人の男の子が、それぞれ京汰に声をかけて来た。

「え、えーと……」
「あ、オレは髙橋海星「オレは髙橋龍星!」」
「……えーと…………」

 京汰が戸惑ったのも無理はない。
 どっちがどっち?! 見事な一卵性の双子くん。僕も見分けがつかないよ!

「おいリュウ、そんな食い気味に言ったら混乱するだろ」
「なんでカイが先に言うのさ」
「オレが一応兄ちゃんだろぉ!」
「兄ちゃんって、たったの2分差じゃん!」
「2分でもリュウが弟なの」
「なんで120秒で人生決まるの?! カイずるくない?!」

 その後もギャンギャンと1分くらい、しょーもない言い合いが続いたのだが、まぁそれは以下略、とでもしておこう。
 しばし静かに聞いていた京汰だが、おそるおそると言った感じで会話に割り込む。

「えーと、お取り込み中アレなのですが……」
「「ん、どした?」」

 つい今まで言い合いしていた2人が、揃って京汰の方を見る。反応のシンクロがすごい。シンクロするから混乱するのよ。

「お、お2人の、見分け方って……」
「カイは顎にホクロが「リュウは顎にホクロがある」」
「どっちにホクロ?!」
「リュウは顎にホクロが「カイは顎にホクロがない」」
「あの、どっちですか?!」

 噛み合いすぎている双子兄弟は、また揉め出した。

「あぁだからもう被せんなよリュウ!」
「最初に被せたのカイだから!」
「だって、リュウはたまに説明クソ長いから!」
「カイもそうだから!」

 夫婦喧嘩と兄弟喧嘩は犬も食わぬ。ここは傍観するのが吉だ。京汰もそう悟ったみたいで、もう突っ込むのを完全にやめて観客と化している。
 まぁとりあえず、この2人のわちゃわちゃ双子兄弟こそが、鈴木さんの孫ということで間違いなさそうだ。まとめると、顎にホクロのない兄が高橋海星、顎にホクロのある弟が高橋龍星、ということかな。
 彼らのおばあちゃんにあたる鈴木さんは、果たして彼らの区別がついているんだろうか。ぜひ聞きたいよなぁ〜そこんとこ、と僕は思った。

 すると僕の気配を察し、京汰が僕に語りかけた。

(ねえ悠馬)
<ん?>
(このやりとりに既視感を抱かざるを得ないんだが)
<やっぱり? 激しく同意するよ>


 そう。このカイ・リュウ兄弟は、僕達の家でのてんやわんやを見事に再現している……。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.197 )
日時: 2022/03/31 19:37
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第15話
・・・・・・・・・
 さて、ウキウキした気持ちでバ先に向かったは良いものの、初日からこんなに大変だとは思わなかった……。飲食が大変なのか、この特殊環境が大変なのか。

 慣れないエプロンをつけて顔を出してみたら、教育係が2人共おんなじ顔してて(何とか区別つくようになったけど)、お客さん多くて、ジョッキいくつも一気になんて持てなくて、オーダー取る時の専門用語多すぎて「ここは魔法学校ですか」みたいになって、次から次へと料理が完成するから「ここは魔法学校ですか」みたいになって、どんな酔っ払いも店主の振る舞い1つでちゃんとお家帰るから「ここは魔法学校ですか」みたいになった。

 結論、ここは魔法学校。

 一見意味不明な用語で会話が成立し、光の速さで美味しいご飯が完成し、店主は謎の力で酔っ払いを閉店間際のテーブルから引き剥がす。うん、ただの魔法学校。店主の魔力が凄そうだ。
 初回ってことで片付けは免除してくれたけど、まぁ疲れた。覚えることの多さと、お客さんの多さと、教育係のキャラに疲れたのかもしれない。慣れればそうでもなくなるのかな。
 俺の疲労は、顔に出てしまっていたようだ。もしかして、お客さんがいた時間から出ちゃってたかなぁ……。
 そんな風に考えていると、あの先輩方が俺の肩をポンと叩き、話しかけてくれた。

「オレ達ついてるから大丈夫だって!」
「困ったらいつでも呼んで」
「あ、ありがとうございます! えーと」
「オレが海星「オレが龍星な」」
「えーと……」
「はい! 今からオレが喋りますっ! オレが弟の龍星です!」
「何弟が先喋ってんだし! オレが兄の海星です!」
「2分差でゴチャゴチャ言うなし!」
「ほんっとに生意気だなリュウこの野郎っ!!」
「は、ははっ……」

 家では俺がマシンガンの如く話す側なのに、ここじゃ形勢逆転だ。俺は乾いた笑いを返すことしかできない。
 でも今日だけで、俺の1つ年上の双子兄弟はめっちゃいい人達だってことが分かりました。今日帰ったらまた顔の区別つかなくなりそうだけど。それに、しょーもない喧嘩はマジで多いけど。俺が5時間シフト入っただけで20回くらい聞いた気がするのは気のせいでしょうか。ギャンギャンギャンギャンと。でも数十秒後には普通に喋ってるんだよね。あの人達の世界線どうなってんのマジで。

 そして、店主も良い人でした。きっと店主のお父さん、つまり鈴木さんの元彼も良い人なんだと思う。じゃあなぜ鈴木さんは別れたんだろうか。家族の反対にあったのかなぁ。どっか決定的に合わない所があったのかなぁ。

「ばあちゃんの元彼、ちょっと束縛と嫉妬が強かったらしいよ。なんでも、ばあちゃんのことが大好きすぎたみたいでさ。そんでエスカレートしてくる束縛と嫉妬に耐えかねて、ばあちゃんから別れを切り出したらしい」

 俺の思考を読み取るように、小さな声で教えてくれる。……えーと、今教えてくれたのは、顎にホクロがあるからリュウさんだ。弟の、リュウさん。「まぁ、今じゃこんな仲だから、もう気にすることないんだろうけどな!」と普通の音量でカイさんが言った。確かに元彼とこじれまくってたら、孫を働かせるなんてできないもんなぁ。何はともあれ、変にこじれることはなかったのだろう。

 エプロンを外した俺と、片付けを終えた双子兄弟で談笑していると、店主が「おーい」と俺達を呼んだ。

「今日唐揚げが少し余ったんだ。誰か食うか?」
「あ、良ければ家で食べたいので下さい」
「おお、藤井くん食べ盛りだね。全部持っていきな」
「え、リュウさんカイさんの分は?」
「「オレらは夕飯あるから大丈夫だよ」」

 双子兄弟は相変わらず、一言一句違わず完璧な台詞を言う。すげえなぁこのシンクロ率。
 俺が双子という生態に改めて感激している間に、気前の良い店主は唐揚げをささっとタッパーに詰めてくれた。

「このタッパー、次のシフトの時返してくれても返さなくてもいいから」
「あ、返しますちゃんと」

 店主や兄弟にバレないよう、俺は悠馬をチラリと視た。

(悠馬、食うだろ。お前も5時間以上いて疲れただろ)
<京汰くん! や、優しい……! 家でいただくわ♡>
(その口調はやめろ)

 今後、まかないを食えない悠馬の分として、余り物をいただくのはアリかもな。
 それと男だらけの環境ってのも、ある意味さっぱりしていて、割と良いかも。


 当面は、これで華音遠恋事件の傷を癒すしかないわな……。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.198 )
日時: 2022/04/12 17:18
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第16話
 1週間なんてのは、本当に光の速さで過ぎていく。

 頭の弱そうな教授率いる必修基礎教養15のクラスは、もう2回目を迎えていた。今日は渡されたテキストの輪読。つまりまぁ、ただの朗読会。小学校の国語の授業かな。俺の中の大学の概念が、結構な速さでガラガラと崩壊している。もっとこう、さ、アカデミックというか、テキスト読んで資料にまとめて発表する、くらいはさ、すると思ってたんだよ。
 授業後に俺がこうした率直な感想をボソリと呟くと、大貴が切れ長の目を丸くして聞いてきた。

「ん? 京汰ってガチ勢なの?」
「違う違う大貴違うって」

 大貴は同じ学部出身の兄貴を見ているから、「大学ってこんなもん」というイメージが掴めているらしかった。「大学生って、思ったより大人じゃねぇぞ」と、大貴は軽ーく先輩風を吹かせながら俺に言う。まぁ、こいつの言い方は全然嫌味っぽくないから、「へぇ」って感じで普通に参考になるんだけどな。


 次の授業がない俺と大貴と元会長こと瑠衣と華音、それから悠馬は、授業が終わると誰からともなく学食へと歩いていく。近くの店でもいいんだけど、学食だと気兼ねなく長居できるんだよね。ってことをこの7日間で既に学んだ。

 ちなみに今朝は、きちんと起きることができまして。ちゃんとご飯を食べてから家を出られたので、先週のようにガッツリカツカレーではなく、今はシュークリームを頬張っている。輪読だけでも小腹は空くのよ。瑠衣は菓子パン、華音はフルーツゼリーをチョイス。悠馬は俺のシュークリームと華音のフルーツゼリーを、指を咥えながら見つめている気配を強く醸し出している。まぁ悠馬が我が家にいる時みたいに食ってたら、大貴や瑠衣から見たら食べ物が浮いてるように見えちゃうからな。華音は悠馬の“気”がある方をチラチラ見ながら、申し訳なさそうに食べていた。いやいや華音様、こんなバケモンごときにそこまで気を遣わなくていいってば。

 みんなでしばらくもぐもぐした後、大貴が口を開いた。こいつが食べてたエクレアも美味しそうだったなぁ。

「なぁ、気になってたんだけど、なんで元会長って見た目チャラいの?」
「それ、私も気になってた。元会長って、会長だった時はきっと真面目だったんだよね?」
「生徒会長やってた奴って、今チャラいとダメなのか?……まぁ色々あったんだってば」

 てかさ、元会長元会長って長くない? 瑠衣って呼んだ方が早くない? それかせめて会長で良くない? 元ってわざわざいらなくない? とブツブツ言いながら、瑠衣は学生証をテーブルに出した。
 ……わーお。黒髪。七三。底の厚そうなメガネ。きっと制服だって、着崩したことなんかないんだろうな。鞄だって俺みたいにボロボロに使い古す的なことしてこなかったんだろうな。高校時代に彼を見つけ、仲良くしようとは正直、思わなかったかもしれない。ここまでの見事なガリ勉ルックスには近寄れねえわ。
 大貴が学生証を食い入るように見つめ、今の瑠衣と交互に見やる。華音もちょっと覗き込んで、目を丸くしていた。うっわぁ、至近距離の華音ちゃん可愛い。

「絵に描いたような真面目くんじゃないか……絵に描いたようなビフォーアフターじゃないか……180度違うじゃないか……」
「俺ね、父親も祖父も伯父も東大なの。だからママに東大行け行けってめっちゃ言われてて、生徒会長もママにやりなさいって言われたから立候補して。ママのルールなんて校則より厳しくてさ。外見もガリ勉スタイル強制されて。でも本当の俺はこうなわけ」

 こう、と明るいオレンジのシャツを着た自身を瑠衣は指差す。
 東大、という言葉が俺の胸にちくん、と刺さる。元カノの莉央ちゃん今元気かしら。莉央みたいに東大受験に超前向きな子もいれば、きっと実力はありそうなのに超後ろ向きな、瑠衣みたいな奴もいるらしい。瑠衣は続ける。

「んで、勉強して東大入ったら入ったで、ママはきっと弁護士か検事になれって言いそうだからさ。さすがにそこまで指図されたくなかったし、だったら大学受験の時点で反抗すればいいじゃん、って気づいて。だから模試ではママを安心させるために良い結果出してたけど、東大の本番は問題解いてないんだよね。併願なんてママはめっちゃ嫌がったけど、無理やりここ併願にして。センターの結果使えるからさ。センターは本気出したから、ここの合格をいただけたわけですよ」

 さっきから“ママ”の連呼が気になって仕方ないけれど、彼なりに一生懸命反旗を翻したらしい。今、俺の脳内にはレ・ミゼラブルの世界観が広がっている。会長にそんな過去があったとは。

「まぁ、東大落っこってママは悲鳴あげてたけどね。でも当の父親達は俺が落ちたことなんてさほど気にしてなくて、元々俺より賢い弟に期待してるっぽい。てなわけで俺は今、やっと自由にさせてもらってるわけですよ」

 大学受験を機に、親に反旗を翻して見事革命を成功させ、ありのままを表現し始めた元会長。いや、工藤瑠衣……。
 え、何このサクセスストーリー。カッコ良くない?!

「か、会長……よく頑張ったな……!」

 瑠衣の注文通り“元”を外してちゃんと呼び始めた大貴は、ちゃっかり瑠衣の肩を抱いている。瑠衣の顔は嬉しそうだ。良かったな、本当に。
 俺も泣きそうだよ。感動した。1時間枠の番組にしていいんじゃないかこれ。華音も、「大変だったんだね」と労っている。「うん、実は大変だった。何か、今言えてスッキリしたわ。ありがとな」と瑠衣。

 と、その時。

<かっ、会長……っ! そんな過去を抱えていたなんて……! ヒック>

 俺は突如聞こえた嗚咽にギョッとする。
 え。待って、お前ももらい泣き?!
 ……感受性豊かな式神だよなぁ、ほんと。

Re: 俺の恋敵は憎たらしい式神だった【Season2始動】 ( No.199 )
日時: 2022/05/02 17:41
名前: 美奈 (ID: lCrzzWFh)

第17話
 しばしの間、俺達は瑠衣のドキュメンタリーに感動しっぱなしだった。悠馬に至ってはハンカチ必須みたいな雰囲気出してるけど、この場で俺はどうしてやることもできないので放置しておく。

 すると。

「おお大貴じゃーん!」と、場にそぐわぬ明るい声が。今しんみりしてるシーンなんだってば。誰じゃ一体。

「巧じゃん! どしたん」
「5限あるんだけど、今空きコマで暇で、何となーく腹減って、学食を歩いていたら……大貴がいたからさ」

 てか女子1人ってどんなメンツだーい、と言いながら、ちゃっかりと大貴の隣に腰掛ける男子。だから、誰やこいつは。
 今までこの場を覆い尽くしていた感動を、この男の登場によって数秒で持ってかれた会長の顔がすごいことになっている。……ドンマイ。

 と、ここで俺達の「誰やこいつ」感をやっと悟ったようで、大貴が口を開く。

「あ、俺と同じ文化祭実行委員会の同期の……「峰さんじゃん!」」

「あ?」と、出鼻を挫かれた大貴。
「ん?」と、俺。
「え?……あっ」と、華音。

 ちなみにすごい顔をキープしたままの会長は沈黙《サイレント》である。

 待って、今なんか人増えてなかった?

「え、てかこのメンツ、もしかして、ってかもしかしなくても、私と同じ基礎教養のクラスの顔ぶれだ……ねぇねぇ私も混ぜて!……てか女子1人ってどんなメンツぅ?!」

 誰か分からない人①(♂)と同じセリフを言いながら、ちゃっかりと華音の隣に腰掛ける、誰か分からない人②(♀)。あ、ってかこの人今同じクラスって言ってたな。……でも名前が出てこない。こんだけキャピキャピしてる女子が自己紹介してたら、きっと記憶に残ってるはずなんだけどな。
 俺達の「ますます誰やこいつ」感を悟ったようで、誰か分からない人②(♀)が口を開く。さすがのコミュニケーションお化けこと大貴も、今は開いた口が塞がらないようだ。

「あ、私、曽根《そね》玲香《れいか》って言いまーす! なんか先週、もう自己紹介しちゃったんだって? 私先週休んでたからみんなの顔と名前一致してなくて。……あ、でも華音ちゃんは覚えた! さっき話しかけてくれたから♡」
「そ、そうだったね! 玲香ちゃん、よろしくね」
「うんっ♡」
「お、俺は永山大貴っていうんだけど、なんで、その……曽根さんは、巧のこと知ってるん?」
「え、全然玲香で良いから。てか、え、峰さんのことタメで呼んでるの? じゃあ私もそう呼ぼうかな」
「ちょ、人の話聞いてる?! なんで知ってるのって聞いたんだけど?!」

 大貴をも困惑させるニューヒロインのご登場。無敵かよ。そもそも新入生で初回授業休むってとこからして、無敵臭がプンプンしてる。

「もー待ってよ、答えるってば! 峰さんとは予備校一緒だったの。自習室でよく会うから割と話す間柄になって。同じ学部なのは知ってたけど、入学して初めて会ったぁ〜!」

 玲香の紹介を受けて、峰さんと呼ばれた誰か分からない人①(♂)は、やっと素性を明かした。

「峰《みね》巧《たくみ》って言います、よろしく! 玲香久しぶりじゃーん、すごいよな現役合格なんて」

 自己紹介して峰さんの元に集中したみんなの目線が、ちょっと強さを増す。なるほど、だから“さん”付けだったのね。峰さんもその視線をすぐにキャッチしたようだ。

「あ、俺浪人生コース出身なの! 一浪だけどね! もしかして、みんな現役?」

 明るくハキハキと、大きな声で浪人を早速カミングアウトした峰さん以外の全員がこくりと頷く。大貴は「え、年上だったの?」と1人驚いていた。「全然年齢とか、大学入ったら関係ねぇから。今まで通りタメでな!……あ、玲香以外は巧で全然大丈夫っすよ」と峰さん……じゃなくて、巧。

「ちょ、なんで私はダメなんですか!」
「だって、玲香に巧とか呼ばれるの、すっげぇ変な感じすんじゃん」
「しないから! ねっ、巧」
「サラッと呼ぶなぁ〜!……うわ、ほら、鳥肌立ったよ、見て見て」
「酷すぎませんか?!」

 なんか、巧と玲香は2人の世界に入っちゃってるし。最初からいた俺達の方が取り残されてるって、マジでどういう状況なのよ。
 俺達は新キャラに圧倒されすぎて、まともに声も出せない状況に陥っていた。しかし、そんな俺らをチラリと見ても、巧の明るさは変わらない。こいつ空気って概念を感じねえのか?
 その時、巧の目が再び俺達をきちんと捉えた。

「ってかさ、現役合格とか、めっちゃ頭いいじゃんみんな!……でもまぁ俺の方が人生経験豊富だけど!」

 よく意味の分からない浪人マウントを取ってきた巧は、「改めて、みんなよろしくな〜」とすんなり俺らの輪に入ってきた。

 あゝ、コミュ力お化けが何匹もここで爆誕している。今の所、永山大貴と峰巧っていうオスが2匹と、曽根玲香っていうメスが1匹。

 この学食はコミュ力お化けの繁殖地なのでしょうか。


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