コメディ・ライト小説(新)
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- 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。
- 日時: 2019/02/22 16:49
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
初めましての方、初めまして!もう知ってる方、超お久しぶりです‼︎
小説『タイムスリップ☆スター』の作者ミーミです。
『タイムスリップ☆スター』、2ヶ月程更新が止まっていて本当にごめんなさい(土下座)‼︎ネタが……、思いつかないのです、ガチめに。
そんな時国語の授業で書いたのが、この物語。
『シンデレラ』の世界で魔法が使えなかったら(=魔法使いが存在しなかったら)どうなるのかな〜と考え、連載を始めさせて頂きます。
授業で書いたのは他人に読まれる為恋愛なしバージョンでしたが、こちらではたくさん恋愛要素を入れますのでご安心を!
ちょっと不思議な異世界トリップっぽい物語、お楽しみ下さい。
0,プロローグ
皆さんは知っているだろうか。『シンデレラ』の世界に、魔法など存在しないことを。
カボチャの馬車も、12時で解ける魔法も、全て1人の人間が苦心して「そう見せかけた」だけだということを。
このお話は、その《1人の人間》の物語である。
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.9 )
- 日時: 2019/02/28 16:09
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
その時、見覚えのある小さな影が目の前を通り過ぎた。
「何してんだよ、お前」
「やっぱクロ?」
近頃自由きままに姿を消していたクロだった。クロは呆れたように言う。
「もう仕事してるほとんどの人間が食堂行ってるぞ。マジで何してんの?」
2人っきり(?)の廊下で、その問いに答えるナカト。
「ただ今絶賛迷子中!なんちゃって……えへへ」
「そうか、お前は方向音痴か」
「やめてその生暖かい視線痛いホントやめて」
「2回言う程嫌なのか……」
しゃーねぇな、とクロはナカトを食堂まで連れて行ってくれた。クロ優しい。
「ついでに俺にもくれよ。ほとんど何も貰えてないんだ」
「キャットフードじゃないけど大丈夫なの⁉︎」
「ああ」
驚く、というより疑うナカト。食べた後やっぱ無理だったとか言わないでよ?と言うと、クロは大人しくうなづいた。
昼食を料理人から受け取ると、ナカトはスプーンを落とす。
けれど、彼が屈む前にもう他の人が拾ってくれた。
それは、同じグレイスの家臣である細身の青年だった。
「どうぞ」
「あ、どうもです」
つい何時もの癖で雑に礼を言ってしまった。
失礼だったかな〜と相手の様子を伺うと、特に気を悪くしたようではなかったのでほっとする。
青年は、唐突に言った。
「平民だから、という理由だからではありませんが、言葉遣いには気を付けた方が良いです。要らぬ悪印象を買います」
「……ごもっともでございます」
超正論である。確か、この青年は低位貴族だった筈。過去にそういうことを経験したかのような口ぶりであった。ナカトがあまりに無礼なので、心配してくれたのか。
青年が、ふと質問する。
「その黒猫、貴方の飼い猫ですか?」
「?はい」
ナカトは首を縦に振った。
「……そうですか。けれど、食堂は動物禁止ですよ」
にゃああと切なげに鳴くクロ。それは、動物好きのナカトにとって胸が痛いものだった。今日だけでも、ダメだろうか。
その様子を見て、青年は己の見た光景を言う。
「貴方の飼い猫なら、いつも料理人からごはんを貰っているので大丈夫だと思います」
「えっ、そうなんですか⁈……クロ、嘘付いてたんだ?」
ナカトは驚いた。クロは目を逸らす。絶対図星である。
「ク〜ロ〜〜」
ナカトの凄みに逃げるクロ 。食事中の人々の足元を練り歩き、退散した。
ナカトはため息を吐く。時間なくなるし早くご飯食べよ。そう思った。
続く
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.10 )
- 日時: 2019/03/03 18:41
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
昼休みの鐘は鳴る。ただ、この日はナカトにとって初めてのことが起きていた。
「ナカト、早く飯行こうぜ!今日はなんだろな〜」
友達その1、アル・ヘレスがナカトに声を掛ける。彼は平民で、貴族の子弟が多いこの職場ではナカトと金銭感覚が似ている数少ない友人だ。赤髪に茶目の、気のいい兄貴分である。
「アル、五月蝿いです。まだ仕事をしている人の迷惑なので黙れ」
アルに毒を吐くのは友達その2、ユージーン・カトル・ソルレス。一昨日、ナカトのスプーンを拾ってくれた濃紺長髪の青年だ。ソルレス男爵家の次男で、アルと同い年の幼なじみ。クールで頭が良く、なんだかんだでナカトにいろいろ教えてくれる優しい友人である。一応彼らは奈々花と同い年なのだが、ナカトは14歳なので2人からは弟扱いされている。
……気付いただろうか、ナカトが2人を「友達」と呼んだことに。そう、昨日彼に念願の友人が出来たのだ。
毎日、いや朝食・夕食も含め毎回毎回迷っているナカトを偶然にも昨日2人が見つけてくれた。クロにも会えなかったので、特に昨日はアルとユージーンに会えなかったらご飯抜きになっていたことだろう。
ナカト発見後、2人に言われた。
「明日から一緒に飯食うか?」
「確かに、そうすれば貴方も迷わずに済みますね」
「是非ともお願いします超ありがたいです」
「俺、アルっつーんだ。よろしくな」
「私はユージーンです」
「ナカトです。これからご迷惑をおかけします‼︎」
そんな訳で、友達になった3人。彼らに付いて行けばいいだけなので、もうナカトは迷子にならずに済みそうである。
王城の中にある食堂でごはんを貰うと、アルが口を挟む。
「えっ。ナカト、お前その量で足りんの⁉︎俺の半分くらいしかないじゃん」
「いや、これで十分ですけど」
「貴方の食う量はおかしいということ、好い加減気付きなさいアル 。……けれど、確かにナカトの食べる量は少ないですね。成長期なのですから、もっと食べないと」
「……ユージーンさんは僕のお母さんですか」
思わず膨れる。細身だが筋肉質で大食漢のアルに心配されるのはともかく、細くあまり食べないユージーンに心配されるのはナカトとしては不服だ。お腹いっぱいに食べているのだが、男と女の食べる量はやはり差がある。
不機嫌なナカトの様子に、空気を読んで話題を変えるユージーン。
「そういえば、昼食後に王太子殿下の執務室に行くように言われていました」
「俺?」
「な訳あるか。ナカトです」
口を挟むアルの扱いが何気に酷いのは幼なじみ故……多分。
ナカトは頭痛をこらえながら言った。
「分かりました……(あんの迷惑王子、話があんならこっそり呼べよ!仕事中なんて嫉妬と詮索がヤバイこと知らないの⁈)」
口が悪くなってしまうのは、しょうがないので許して欲しい。(ちなみにグレイスは確信犯)
昼食を摂り終え、2人は仕事に・1人はお呼び出し先へ向かう。
その時、アルとユージーンはこちらに向く黒い視線に気が付いた。しかし、ナカトは気が付かなかった。
黒い視線ーー後々起こる、事件の火種に。
続く
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.11 )
- 日時: 2019/03/12 00:35
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
気分のままに乱雑に執務室の扉を開けるナカト。そして、つっけんどんに告げた。
「ナカト・リヴィスが来てやりました。失礼しますよKY殿下」
「ノックなしと言葉遣いは何も言わないけれど、‘けーわい’とは?」
「あーこの言葉通じないか。お気にせず」
イライラのあまりココが異世界(仮)だったこと忘れていたナカトだった。
ソレを笑顔で躱している辺り、グレイスの余裕が伺える。(確信犯)
この人と居てもイライラ溜まるだけだし、もう早く用件聞いて仕事戻ろう。ナカトは心に決めた。
「私に用とはなんでしょう?」
営業スマイルを貼り付ける。多分、目は笑っていないだろうが。
グレイスは切り出した。
「来月、母上ーー王妃殿下の生誕祭の為、城で国王主催の貴族が全員参加するパーティーが開かれるのは知っているね?」
「……はい」
もちろん知らない。むしろ、異世界に来て数週間でそこまで把握している方がおかしい。ただ、恐らく国民の常識なので知っている風を装う。
彼をチラリと見つつ、続けるグレイス。
「それ、俺不参加しようと思うんだ」
「はあ(正直どーでもいいけど)……何故ですか?」
「だって、絶対令嬢方が寄って集ってくるんだよ?そりゃあ、次期国王で未婚のイケメンが居たら最高最良物件だろうけどさ。超面倒臭い」
「ご自分でイケメンと言ってしまうのはイタいです」
だから君に断りの手紙を書いて貰おうとね、というグレイスの言葉にナカトは適当にうなづき、退室した。
「……ってなことがあったの、今日」
その日の夜。日課の、クロへの1日の報告をする。何時も「そうか」の一言で終わるのに、今日の報告にクロは絶叫した。
「はあああああッ⁉︎⁈王子がパーティー欠席だと⁉︎」
「え、うん……。なんで叫んでんの?」
尋常じゃない相手の様子に戸惑うナカト(奈々花バージョン)。クロは興奮しながら言う。
「ド阿呆‼︎そのパーティーは王子とシンデレラが出会う舞踏会。王子が来なくてシンデレラと出会わなかったら2人は結婚出来ず、俺達は元の世界に帰れないんだぞ⁉︎」
ナカトの思考は停止した。きっかり5秒後叫ぶ。
「嘘おおおお⁈えっえっ、マジで⁉︎」
肯定するクロ。ナカトがブツブツ考える。
「あれ、シンデレラって貴族なの?お金持ちの娘としか書かれてなかったような……」
「未来の王妃が平民で許されるわけないだろ」
「うわ、そうですね!そっかシンデレラはお貴族様なのか」
クロの指摘は最もだ。つまり、今非常にマズイ状況に陥っている。どうすればいいのか。ナカトは思い立った。
「よし、今すぐ殿下を説得して欠席を撤回して貰おう‼︎」
「おう、それでいくぞ。けどお前、その格好で出歩くのはやめといた方が」
彼はすでに居なかった。頭を抱えるクロ。
「男として城に居るんだから、女の姿じゃ摘み出されるに決まってる」
思い立ったら即行動がモットーのナカトの脳内に、そのことはなかった。
「あーもー。ココは何処じゃー‼︎」
運が良かったのか悪かったのか、ナカトは誰にも見つからず迷子った。ちなみに現在、女の人の部屋っぽい所に居る。グレイスの執務室だと思ったのに。
住人が戻ってきたら大変になるなぁ、と想像していたら……本気で戻ってきた。
ドアを開けた銀髪青眼の女性が、驚いたように呟く。
「あら……?」
2人の女は対峙する。
女神のように美しい人だったが、ナカトにそんなことを感じる余裕は皆無だ。
「大ッ変、申し訳ございませんでしたアアア‼︎‼︎」
叫ぶと同時に全力ダッシュ。うまく暗闇に紛れ込め、運良く彼女の護衛に捕まらずに済む。神よ、ありがとう。
その後クロに救出され、なんとか自室に帰れたナカトであった。
「明日でいいよね〜……」
「それで大丈夫だ」
続く
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.12 )
- 日時: 2019/03/09 16:44
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
翌日、ナカトは目論見通りグレイスに前言撤回させることに成功した。「最高のお嫁さんに出会えるから!」というナカトの自信満々なの台詞に、彼が面白がって参加を決めただけだが。グレイスの面白いこと好きな性格は一生変わらないだろう。
そして今、ナカトは正式な招待状を貴族の屋敷に届けている最中だ。クロが道案内をしてくれているので、迷わずに済んでいる。
ちなみに、ナカトが届ける5つの家は全て低位貴族の家だ。この世界には、平民が用があるとはいえ屋敷を訪れるのをーー否、敷地を跨ごうとするのすら嫌がる高位貴族がいる。彼らの反感を買わないように、そういうことが比較的少ない低位貴族宛を割り振ったのはグレイスの思いやりなのだ。
残念ながら、腹黒王子でも部下思いな面があるとナカトは気付かない。
「よ〜し、次でラストだね。最後は……」
「クレイア子爵家だな。その道左の」
クロのナビに従って着いた家は、正直今日訪ねた中で一番趣味の悪い屋敷だった。
具体的に挙げると、オレンジ色の外装・やたらとキラキラした扉・色相環ガン無視な花壇の花。見栄を張って豪華に見せようとして失敗したんだろうなぁ、と想像できる外観であった。
クロが顔を顰める。ナカトも呆れた。
「目ぇチカチカする」
「美的センス0」
「「つーか目の毒」」
周囲に誰もいないのをいいことに、ボロクソに言う2人。全部当たっている。さらにこういう悪趣味な屋敷の住人は、大抵性格が悪く平民を馬鹿にするのだ。先に言わせて頂かないと頑張れない(大人しく黙っていることを)。
一通り言い合うと、仕方なくナカトはチャイムを鳴らした。気分は判決を言い渡される被告人だ。
しばらく待つと、ようやく使用人らしき人物が現れる。
所作の美しいその姿はまるでーー、
「え……?」
絵本の中の『シンデレラ』そのものであった。
続く
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.13 )
- 日時: 2019/03/12 00:32
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
金茶色の波打つ髪に淡紅色の瞳。華奢な身体と誰よりも愛らしい顔立ちは、挿絵の『シンデレラ』そのものである。
「……現実逃避ヤメロ」
「イエッサー」
現実逃避の為にシンデレラの可愛いさを褒め称えていたら、クロに怒られた。これが世に言うエンカウントか。物語でこういう状況でのエンカウント率高過ぎる。
ナカトはニッコリ笑顔を浮かべる。(別名・困った時の愛想笑い)
「失礼いたしました。私、王太子殿下の使いにございます。来月王宮で開催される、王妃殿下の生誕祭記念パーティーの招待状をお届けに参りました」
恭しく招待状を渡した。シンデレラは微笑む。
「ご丁寧にありがとうございます。確かに受け取りました」
うおおおおおっ、お貴族様が平民相手にお礼を言ったよ⁉︎初めてだわ。この人ホントに子爵令嬢なの?(良い意味で)
驚きで仰け反りそうになったのを堪えたナカトは、結構ガチめで凄かった。
その後はボロを出さない為、早々に退散するナカトであった。
「疲れた……。この世界に来て、私の寿命何年縮んだんだろ」
「まあ、5年くらいは」
「冗談でも言うなああああ‼︎あんたが言うと冗談じゃなくなるー!」
こんな会話が、人間と黒猫の間で繰り広げられていたとかいなかったとか。
その時、グレイスはある書類を前に考えていた。
「うーん、お手上げだなぁ……」
きっかけは、僅かに消し後が残ったそれをナカトに提出されたことだ。
見たことのない文字に似たものだった。グレイスはなんとなく気になったので、鉛筆をその文字の上で滑らせる。
浮かび上がってきたのは……どの国のものでもない{文字}だった。
グレイスは大国の王太子だ。外交の為数カ国語を操れるし、大陸に存在する全ての文字は知っている。つまり、少なくとも大陸内の文字ではない筈。
何故彼がそれを文字だと判断したかというと、規則性があったからだ。
[丸みを帯びたもの][角張ったもの][複雑なもの]
大きくこの3つに分けられる。
そこまで辿り着くのはさほど難しくなかった。問題は、その後である。
なんせ、ノーヒントで外国語(異世界語⁇)を解読しなければいけないのだ。普通不可能。流石のグレイスも断念する。3つに分類出来ただけで充分神ってる。
諦めた彼の脳内に、疑問が湧き出た。
「この{文字}は何処の国の文字か」「どうして、ナカトは大陸内に存在しない筈の{文字}を知っていて、尚且つ使えるのか」
1人しか居ない執務室に沈黙が訪れる。
ふと、グレイスは思い付いた。馬鹿馬鹿しい、けれどそうであるならば辻褄の合う答えを。
「はは、まさかね」
乾いた笑い声を上げる。そうだ、違う世界から人間が来るなんてありえない。
彼は気付かない。それが答えだということに。
続く