コメディ・ライト小説(新)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。
- 日時: 2019/02/22 16:49
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
初めましての方、初めまして!もう知ってる方、超お久しぶりです‼︎
小説『タイムスリップ☆スター』の作者ミーミです。
『タイムスリップ☆スター』、2ヶ月程更新が止まっていて本当にごめんなさい(土下座)‼︎ネタが……、思いつかないのです、ガチめに。
そんな時国語の授業で書いたのが、この物語。
『シンデレラ』の世界で魔法が使えなかったら(=魔法使いが存在しなかったら)どうなるのかな〜と考え、連載を始めさせて頂きます。
授業で書いたのは他人に読まれる為恋愛なしバージョンでしたが、こちらではたくさん恋愛要素を入れますのでご安心を!
ちょっと不思議な異世界トリップっぽい物語、お楽しみ下さい。
0,プロローグ
皆さんは知っているだろうか。『シンデレラ』の世界に、魔法など存在しないことを。
カボチャの馬車も、12時で解ける魔法も、全て1人の人間が苦心して「そう見せかけた」だけだということを。
このお話は、その《1人の人間》の物語である。
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.4 )
- 日時: 2019/02/23 15:18
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
はっと我に返った青年が、訝しげに尋ねる。
「何故、俺が金髪碧眼たと分かった?目の色は分かっても髪色は分からないだろう」
最もである。奈々花は「こーゆー状況で会うのって、物語じゃ王子だよね〜」と安易な考えを口にしたことを後悔していた。
「あ、えと、最近、金髪碧眼の男の人がこの辺をよく訪れていると聞いて……」
奈々花の嘘に、青年は騙されなかった。笑顔でバッサリ斬る。
「嘘だね。俺、この町来たの初めてだから」
項垂れる奈々花。もう余計なことは何も言わずに黙っていた方が良さそうだ。
一方青年の方も、おそらく自分の正体を知っているであろう少女をどうしようか思案していた。
「……(井戸の件も、正体の件も、最後の最後でツメが甘い。ただ、そのツメの甘さをフォローできれば使えるはずだ。怪しい動きをしたら、処分すれば良いだけのこと)」
そう結論付けると、青年は改めて奈々花を観察する。
珍しいーー否、初めて見る黒目黒髪。胸下程の長さの髪に大きな瞳は所謂《美少女》の部類に入るのだろう。着ている変な服は民族衣装か。とりあえず、白く細い脚はきちんと隠してほしいものだ。いくら少女とはいえ、女性は女性。女は脚を晒すものではない。
そして何より彼が注目したのはーー胸だ。
「このサイズなら隠し通せるか……」
幸いにも、青年の失礼な呟きは奈々花の耳に届かなかった。届いていたら、強烈な拳が炸裂していたはずだ。
何か言った?と顔を上げると、2人の視線はバッチリ交差する。
青年は、胡散臭い笑みを貼り付けて言った。
「君、男として俺に仕えてみない?」
きっかり3秒後。
「はい⁇」
奈々花は耳を疑った。聞き間違いで無ければ、目の前の青年は初対面で自らの正体を感づかせるような発言をした少女を、家臣に誘ったのだ。しかも、男装を条件として。
「(いやいやいや有り得ないでしょ。この人絶対バカじゃないから騙された訳ないし。しかも男としてって言った?ソレってつまり、バリバリ手足となって働くってことじゃん)」
「よく分かってるじゃないか。全部合ってるよ」
どうやら心の声がだだ漏れだったらしい。拍手する青年。
「俺はね、そういう君の‘頭’が欲しいんだ」
奈々花は気付いた。この青年はトンデモない腹黒だ、と。こうなったらきっと逃げられない。
それに、話自体は自分にとっても悪いものではない。むしろ、良いものだ。王子の家臣になる、という作戦が男装するだけで実行出来るのだから。
「是非ともお願いします。あ、この黒猫も連れてっていいですか?王子様」
「もちろん。こちらこそよろしくね、不思議な少女さん」
こうして、後のシンデレラの旦那様ーーアルファ王国第一王子グレイス・ギデオン・ディ・アルファと奈々花は出会い、その日のうちに主従関係となった。
続く
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.5 )
- 日時: 2019/02/24 00:07
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
3,幕間〜第一王子の考察〜
グレイスは、公共馬車に揺られながら隣に座る小柄な少年、もとい少女について考えていた。
あの時、グレイスはあの町の視察をしていた。
面向きは平和そうだが、密偵からの報告で気になることがあったので調べてみたかったのだ。
1人でないと悪目立ちする為、護衛の男達を撒いて単身で行こうとしていた。
その途中で出会ったのだ。この頭の良いーー否、不思議な少女に。
彼女は、グレイスの隠れていた場所をあっけなく当てた。本人はなんとも思ってないようだが、ああいう状況で彼を見つけられる人はそうそういなかった。
挙げ句の果てに、奈々花はその正体すら見破った。流石にここまで来ると怪しいが別に悪意は感じず、むしろあちらの方が驚いていた。
その様子はいたって普通の女の子のもので、疑うのが馬鹿らしくなる。
互いの本音を隠したやり取りの末、少女は男装してグレイスに仕えることになった。
長い黒髪を緩く縛り、晒しを巻いて男物の服に身を包んだ奈々花は見事〈かわいい少年〉に様変わり。
やはり俺の目は間違ってなかった、とグレイスが満足げにうなづいてだいぶ時間も経った。奈々花の男としての振る舞いも、多少は板に付いたものだ。
これなら王宮に連れて行っても、なんとかなるだろう。
そんなことを考えながら、そういえば名前聞いてなかったな、と気付いたグレイスであった。
続く
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.6 )
- 日時: 2019/02/27 17:10
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
4,魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 〜ミッションその2 舞踏会を計画しろ〜
奈々花は洋服屋で男装に必要なものを揃え身に着け、グレイスと共に公共馬車に乗っていた。今はもう降りて歩いているが。
歩き途中、ふとグレイスが気付いたように言う。
「……そういえば、お互い名前を名乗ってなかったよね」
いろいろ有り過ぎて、2人にそんな時間という名の余裕がなかったのだ。
「もう分かっていると思うけど。俺はこの国の第一王子の王太子、グレイス・ギデオン・ディ・アルファだよ」
潔く告げるグレイス。きっとココでは{名前・苗字}の順で名乗るんだろうと見当を付け、奈々花も言った。
「奈々花・日野です。えっと、何とお呼びすればいいんでしょうか?」
ついでに質問をする。王子様でいいのか、それとも王子殿下なのか、はたまたグレイス様なのか。予想がつかなかった。地味に重要な問題である。
「そうだねぇ、【殿下】がいいかな?」
「了解です。殿下ですね!」
グレイスの応えに敬礼する奈々花。
元気な彼女に、申し訳なさそうにグレイスは無情なことを伝えた。
「そうそう。悪いけど、王宮には君のような平民を馬鹿にする輩が沢山いるから、そいつらの相手頑張って」
奈々花は表情を真っ青にする。
「ひえええ、恐ろしいこと言わないでください‼︎ただでさえ平民ってことで妬まれるのに、殿下の家臣って点で妬み100倍じゃないですか」
異世界トリップものの定番である。上位に入る程の、最悪な。
避けられない運命だろうね、と彼は笑みを深める。比例して悪くなる奈々花の顔色。
そうこうしているうちに、王城に辿り着いた。はたして、彼女に向かってどんな嵐が吹き荒れるのだろうか。
未来を予言するかのように(実際は存在を忘れられて不満なだけ)、クロが大きく鳴いた。
続く
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.7 )
- 日時: 2019/02/24 19:51
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
フードを取り堂々と正門から入るのかと思いきや、グレイスはグルリと旋回し裏門から入った。
疑問詞を浮かべる奈々花に、彼は答える。
「正門から入るとお説教が五月蝿いからね(家臣達からの)。まぁどっち道叱られるのは変わりないけど、最後の悪足掻き」
実際の所、日常茶飯事過ぎて皆怒る気が失せたいして怒られないのだが、そこはご愛嬌だ。家臣の胃に穴が開くまで、彼は全く気にしない。
そして、裏門の鍵をこっそり開けた。
「ちなみに裏門の門番は小さい頃からの共犯者なんだ」
ナイショだよ、とウインクする。門番仕事しろよ、というツッコミは禁止である。
その後も隠し通路を使い、誰にも会わず執務室に2人は辿り着いた。
ミッション・コンプリート。
「ようやく帰って来た」
……訂正しよう。全然コンプリート出来てなかった、むしろ新たな敵と遭遇した。
氷よりも冷ややかな声でグレイスと奈々花を迎えたのは、銀髪碧眼の青年であった。
人形のように整った顔立ちに、なんの表情も映していない切れ長の目。苛立ちを隠そうともしない姿は、威圧感が漂っている。
「また僕に執務を押し付け、自分は呑気に視察ですか?次やったらあんたの居場所売るぞ家臣に」
青緑色の瞳の視線は絶対零度だ。
彼の脅しにヘラリと笑うグレイス。
「いやあ、それは困るねぇ弟君」
奈々花の思考は停止した。弟君?ってことはまさか……!
しばらく言い合った後、青年はようやく奈々花の存在に気付く。
そして、まさかといった風に問うた。
「……誘拐、してきたんですか?」
「お前が俺のことをどう思っているか、よく分かったよ。でも流石にそれはない‼︎」
盛大な誤解をされていた。グレイスは珍しく取り乱す。しかし、奈々花にと ってはどうでも良いことだった。
「……(確かに2人共イケメンだし、殿下の瞳は空色・銀髪の人の瞳は青緑色で似てる。『シンデレラ』の王子って、弟いたっけ?兄弟姉妹の設定は特に何もなかったハズ。ということは、別にいてもおかしくない……?)」
予想外な人物のことで、頭がいっぱいだったからだ。
己のプライドを守ろうとする者、相手の頭の心配をする者、両者を放置し考え込む者。本日2度目の混沌である。
そんな訳で、混沌が過ぎ去った後は3人共ぐったりとしていた。
「もうこの話題は止めようか……」
「それですね。疲れました……」
「別にイレギュラーが1人位居たっていいよね……」
約1名違うことだが、そこは置いておこう。
「とりあえず、君が兄上の新しい家臣だってことは分かった」
奈々花が名を名乗る前に、グレイスが笑顔で言う。
「この子はナカト・リヴィス」
「そう」
興味なさげに言うと、青年は部屋を出ていった。
あまりに無愛想で失礼な態度に唖然とする奈々花。日本では信じられない行為だ。
グレイスが苦笑した。
「ごめんね。アイツ、いつもあんなんだから勘弁してやって」
奈々花は渋々うなづきつつ聞く(確認する)。
「はい。……あの、あの方って殿下の弟君ですか?」
「ああ。ランスロット・リーファ・ディ・アルファ。一応、アレでも第二王子だよ」
やっぱりィィィィ‼︎‼︎奈々花は心の中で叫んだ。声に出さなかったのを褒めて欲しい。
あまり深入りしないでおこう、と他のことを尋ねる。
「ナカト・リヴィスとは⁇」
「君の男装時の名前。これからはずっとそう名乗ってね。その姿での戸籍や経歴は適当に作っておくからさ」
これも、深入りしてはいけないヤツだ。奈々花はーーナカトは、そう思った。
続く
- Re: 魔法使い不在のまま、『シンデレラ』の物語は進む。 ( No.8 )
- 日時: 2019/02/27 17:08
- 名前: ミーミ (ID: xTLxRpAm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12258
ナカトとしての日々は過ぎる。仕事に忙殺されて。
新参者に沢山仕事を押し付けるグレイスには閉口するが、奈々花は彼に感謝と感服も感じていた。
理由は、彼の作った{ナカト・リヴィスの経歴}だ。
田舎町で育った世間知らずの14歳の少年。やや無礼な所もあるが、頭の回転が速く優秀という設定。これならマナーを知らないことや敬語が苦手なことに言い訳出来る。頭の件は「結果を出せば良いだけだよ?」と笑顔で言われた。失敗は許されないらしい。ちなみに奈々花は16歳なのだが、日本人は小柄で童顔な為グレイス曰く「14歳くらいにしか見えない」とのこと。解せぬ、と思った。
だったらやってやる、と殺る気でやれば、案外結果は付いてくるものだ。仕事をこなせばこなす程、ナカトの評価は上がった。おかげで、同じグレイスの家臣の人達ともお喋り出来る程打ち解けられた。
ただ、悲しいことにまだ食事はぼっち飯である。
そんなことを考えていると、お昼休みの鐘が鳴った。
「はあ……。未だに友達と呼べる人がいないとか、悲しすぎるでしょ……」
ため息を吐きながら食堂へ向かう。
ふらふら歩くこと十数分。ナカトは見事、迷子になった。
「うっわー、ホントお城広過ぎる。もう何度も来たハズなのに、毎回迷えるんだから」
原因はナカトが方向音痴というのもあるのだが、本人は全く気付いていない。
それも、宿命というヤツである。
続く