コメディ・ライト小説(新)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 平和主義の魔王は今日も頭を抱える~戦いたいとかお前らバカなん
- 日時: 2020/09/28 22:42
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
MMORPG『サタナス』の世界へ「魔王として」転移してしまった佐藤 ケイ。
『サタナス』内トップランナーとしての圧倒的な力を見せつけ、魔族達を味方につけるも「平和主義」の彼と好戦的な魔族達ではそりが合わなくて……?
これは平和に暮らしたい魔王と好戦的な配下達のドタバタ劇。
※お試し小説投稿様にも掲載させていただいてます。もしこのサイトでマルチポストが禁止されているのなら、知らせていただければすぐに削除します。よろしくお願いいたします。
>>1-
>>1 プロローグ >>2 第一話 召喚された……、魔王として。「は?」
>>3 第二話 とりあえず、邪神とやらはぶん殴る >>4 第三話 「全員まとめてぶっ潰す」
>>5 第四話 目標は世界平和 >>6 第五話 VS 四天王 >>7 第六話 竜の本気
>>8 第七話 王女の夢 >>9 第八話 無理だよ >>10 第九話 法律? 何それ美味しいの?
>>11 第十話 ゴーレム作成1 >>12 第十一話 ゴーレム作成2
>>13 第十二話 ゴーレム作成3 >>14 第十三話 VS ゴーレム生成機
>>15 第十四話 最強のスキル >>16 第十五話 ゴーレム完成 >>17 第十六話 VSゴーレム
>>18 第十七話 魔王の仕事 >>19 第十八話 とりあず、クロは処刑だ☆
>>20 第十九話 ぼくのせいぎ >>21 第二十話 王女の苦悩 >>22 第二十一話 知識チート
>>23 第二十二話 ガオンはやられ役 >>24 第二十三話 魔族って── やっぱりバカだ☆
>>25 第二十四話 竜の谷 >>26 第二十五話 VSゴールドドラゴン >>27 第二十六話 俺の拳
>>28 第二十七話 車両完成 >>29 第二十八話 魔族との協力
>>30 第二十九話 悪くは、ないだろ? >>31 第三十話 後は、任せた☆
>>32 第三十一話 人間と歩み寄る第一歩 >>33 第三十二話 ラノベの主人公にはなれないな
>>34 第三十三話 ドキドキトラベル >>35 第三十四話 王女再び
>>36 第三十五話 冒険者って一度はなってみたいよね
>>37 第三十六話 金稼ぎなんて、廃人の手にかかれば一瞬だ! >>38 魔族の危機
>>39 第三十八話 少女の一言 >>40 第三十九話 さみしいでしょ?
>>41 第四十話 ベルの年齢って…… >>42 第四十一話 もう一人の少女
>>43 第四十二話 少女の質問、決まる覚悟 >>44 第四十三話 最悪の選択肢
- 第三十九話 さみしいでしょ? ( No.40 )
- 日時: 2020/09/20 20:32
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
「何なんだよ、お前! 急に出しゃばってきやがって」
「その状況を見かねただけよ。多対一で弱者を虐げる。これほど見苦しいものはないわね」
少女の目は鋭い光を宿し、少年を威圧していた。
「……クソッ、行くぞお前ら!」
ジッと見つめてくる少女の目に耐えかねたのか、少年と取り巻きはケイを突き飛ばし、回れ右をして去っていった。
それを見届けた少女はこちらに振り向き、ケイに向かって手を差し伸べた。
「大丈夫?」
差し伸べられた手を取り、少女の顔を見上げたケイは改めてその美貌に見惚れた。
髪は夜空に浮かぶ満月のような薄い金色。
瞳は大粒のアメジストをはめ込んだかのような紫。
それらの整ったパーツを緻密に組み立て上げた顔立ちは、まさに一種の芸術と言っても過言ではなかった。
「私の顔に何かついているのかしら?」
どうやら、まじまじと見すぎてしまったらしい。ケイは少女に心配そうな顔をさせてしまった。
「ううん、そんなことないよ。」
ケイは慌てて否定する。
「とりあえず……助けてくれてありがと!」
「見苦しかったから、口出ししただけよ」
当たり前のことをしただけ、という調子で少女は答えた。その顔には誇らしさや照れもなく、ただつまらなさそうな表情を浮かべており、ケイを困惑させた。
「君は……怒ってるの?」
「そういうわけではないけど……」
「じゃあ、なんでそんなつまらなさそうな顔をしているの?」
「……同族嫌悪ってやつかしら。力で弱者を虐げることが端から見ているとどれほど醜いものだと実感したのよ」
「ふーん。何かすごいねー」
ケイの見当違いな答えに少女は呆れた顔をする。
「わからないなら、わからないと言えばいいのに……」
「そしたら、さみしいでしょ」
「寂しい?」
「うん。自分を理解してくれる人がいないのは、とってもさみしいことなんだよ」
ケイの言葉に少女は目を見開く。
「ってメタルマンが言ってた」
続く言葉に見開かれた目は呆れたように細められた。
「一応聞くけど……メタルマンって誰?」
「日曜の十時に悪い怪人をやっつける正義のヒーローだよ!」
「あ、うん。大体わかったわ」
「そして、ぼくはメタルマンさえ超える正義のヒーロー、佐藤 ケイだ!」
「そ、そう……」
「それで、君の名前は?」
「……ベル」
「よろしくね、ベル!」
名前を呼ばれた少女──ベルはくすぐったそうに笑った。
- 第四十話 ベルの年齢って…… ( No.41 )
- 日時: 2020/09/22 16:55
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
「また来たの……」
ベンチに座っていたベルは溜息をつく。その原因は言わずと知れたケイであった。
「そんなに呆れ顔しないでよ……」
「するわよ。あなた、ここに何回来る気なの? 別に楽しいことなんてありはしないのに」
「君に逢えれば充分だよ」
「……どこで聞いたの、そんなセリフ?」
「莉奈が持ってた少女マンガ」
「…………」
ベルはこの数日間で、ケイが感化されやすい体質だということを学んでいた。
そして意味もわからず、聞きかじってきたセリフを使うケイを少し心配もしていたのだ。
「ケイ、そういう言葉は、本当に好きな人のためにとっておきなさい」
「……ぼくはベルのこと好きだよ?」
「そういう『好き』ではなくて、もっと、こう、女性に対する好意とか……」
「ベルって女の子じゃないの?」
「…………そう見えるなら心外ね」
どうやらケイへの教育は、難航を極めるようである。
----------
「何かさー、ベルってすごく大人っぽいよね」
「どうしたの、藪から棒に」
「だってベルってぼくと同い年に見えるのに、すごくむずかしいこと言うんだもん」
不思議そうに言うケイを見てベルは少し戸惑った後、からかうように笑う。
「まぁ、こう見えてあなたの何十倍も生きているもの」
「何十倍⁉」
「えぇ、そうよ」
「ベルっておばあちゃんだったんだねー」
ケイの無邪気な一言にベルの表情がピシリと凍る。
「あ……。ごめんね?」
「だ、大丈夫。悪気が無いのはわかっているから」
ベルは引きつった笑みを浮かべる。
「おばさんとかのほうが良かったよね!」
……がケイの『悪気はない』一言でその笑みすらも掻き消えた。
────その後ケイがどうなったかはあなたのご想像にお任せしよう。
- 第四十一話 もう一人の少女 ( No.42 )
- 日時: 2020/09/25 23:10
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
「ねぇ、ケイ。遊ぼうよ!」
ケイを誘うのは可愛らしい少女。
ボブカットの茶髪をふわりと揺らし、クリクリとした目でケイを見つめている。
小首を傾げているその可愛らしい姿は、男を虜にする美少女としての才能の片鱗を見せている。
……まあ、ベルというスーパー美少女に慣れ始めてるケイとしては、特に意識するようなことでも無いのだが……。
「遊ぶのはいいけど……。そうだ! せっかくだし、莉奈もベルに会ってみない?」
「ベル? 知り合い?」
「そう! ぼくを助けてくれた正義の味方だよ!」
「……女の子?」
「そうだよ。すっごく綺麗な……ってどうしたの?」
ケイの言葉に莉奈は不満そうな顔をする。
「別にっ! ……いいもん。私もそのベルって子に会ってみるから」
「うん、それがいいと思うよ。ベルって友達いなさそうだし」
「……ケイって無邪気にえげつないこと言うよね……」
「え?」
----------
「ケイ、その子は?」
いつものごとく現れたケイに、ベルは困惑した顔を見せた。
「ぼくの友達の莉奈だよ!」
「よろしくね、ベルちゃん」
「よろしく……」
ベルは差し出された手を取り、困惑気味に握手をした。
「それじゃ、遊ぼうよ! まずは……」
----------
「そういえば、今日出てた宿題ちゃんとやったの?」
聞かれたケイは怒った風に頬をふくらませた。
「むー、バカにしないでよ。ちゃんとやったに……き、ま……」
ケイの顔がだんだんと青くなり、目が泳ぎだす。
「やってなのね……」
ベルの溜息に絶望したような表情を浮かべるケイ。
「ちょ、ちょっと今からやってくる……」
「そうしさなさい。私のことは気にしなくていいから」
「あ、私もベルちゃんと話したいことがあるし、残ってるからー」
「うん、わかった。それじゃあ、また明日ー!」
「別に無理して来なくても良いのよ?」
「わかってるよ、ぼくが来たくて来てるんだから!」
ケイが走り去り、その場にはベルと莉奈の二人が残る。
「それで、話したいことっていうのは?」
「うん、それはね……」
- 第四十二話 少女の質問、決まる覚悟 ( No.43 )
- 日時: 2020/09/26 00:26
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
「それで話したいことっていうのは?」
「うん、それはね……ケイのこと、どう思ってるのか聞きたいんだ」
「ケイのことを、どう思ってるか……?」
「そうだよ。ベルちゃんがどう考えてるのかは知らないけど、ケイにとってあなたは大切な存在なの。……そう、私よりも……」
「大切な、存在。私が?」
「ケイにとってあなたは憧れの存在であり、愛慕の対象であり、かけがえの無い親友でもある」
莉奈は胸の内にため込んだものを吐き出すように、言葉を発する。
「何を言って──」
ベルの困惑した顔を余所に莉奈は言葉を吐き出し続ける。
「きっと私がいなくなってもケイはケイとして存在し続ける。だけど、あなたを失ったら、ケイは何かを失くす。ケイのとってあなたは自らを構成する部品の一つなのだから」
「…………」
莉奈の吐き出した言葉を受け、ベルは茫然となる。
「私が……彼の……大切な……人」
「だから、ベルちゃんがケイのことをどう思ってるか知りたいの」
「私は……私にとってケイは……大切な子、かしら……」
「大切な子?」
言葉を探すかのように視線を宙に彷徨わせ、頷くベル。
「あの子の笑顔を見ていると、悩んでいたこともどうでも良くなるの。何も考えずに笑ってられるあの子が羨ましい……違うわね、守りたい、かしら」
「守りたい……」
「あの子にはこのままでいて欲しい。あの無邪気に笑ってる、あの笑顔を守りたい。私のように、暗い面に染まることなく歩んでほしい……」
「そっか……。ベルちゃんって良い人なんだね」
「良い人? ……そんなことを言われたのは初めてね」
「え? ……まぁ、いいや。私はこれで帰るね。変な質問だったけど、答えてくれてありがとう!」
そう言って莉奈はベルの前から走り去る。
「本当に、ありがとう。覚悟が決まったよ」
……少女の呟きは、ザワリと吹いた一筋の風に流されていった。
- 第四十三話 最悪の選択肢 ( No.44 )
- 日時: 2020/09/28 22:41
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
別れ(それ)はデパートでの出来事だった。
ケイの希望で、ベルとケイはデパートにいた。別段、深い理由があったわけではない。莉奈がデパートで買ったというお菓子が美味しかった、というだけであった。
「ケイ、あまりキョロキョロしないの」
「えー、だってここすごく広いんだもん」
「デパートに来たことぐらい、何回もあるでしょ?」
「むー、ベルといるとまたちがうんだもん」
「…………」
「どうしたのベル? 顔が赤いような……」
「いいから、早く行くわよ!」
「わ、待ってよー!」
そのとき、聞き慣れない甲高い音が鳴り響いた。その直後、デパートの数か所から火の手が上がった。
「か、火事だー‼」
だれかが叫んだと思うと、人々は我先にと逃げ始める。鳴り響く警戒音アラートは人々の混乱をさらに加速させていた。
「ケイ、私達も逃げないと!」
「う、うん!」
ベルはケイの手を引き、出口へと向かっていく。だが、火はどんどんと燃え広がっており、退路が断たれるのも時間の問題だった。
「どうしよう、ベル。火が……」
「……大丈夫」
ベルはそう言って手を前にかざす。
「え?」
一瞬、ベルの手が光った。そのままベルが前に進むと、道を開けるかのように炎が退いていった。
「これって……」
「話はあと! 早く進むわよ!」
「う、うん……」
----------
「あそこを出れば、外に出られる筈よ!」
「…………待って」
「え?」
「声が聞こえた気がする……」
「向こうからかな」と言ってケイは来た道を指す。
「何言ってるの! 戻ったら火に囲まれてケイも死ぬわよ! 私の力だって万能じゃないんだから!」
ベルの言ってることは正論だった。
ケイの聞いた声とてあくまで、『気がする』なのだ。いない可能性もあるし、もう手遅れの可能性だってある。
「……ぼくは正義の味方になるって決めたんだ」
だが、ケイは告げた。愚かで、偽善で、無知な、最悪の選択肢を取った。……取ってしまった。